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親による子どもの誘拐

 「ミッシングキッズ・カナダ」は、カナダの行方不明の子どもに関する情報センターです。カナダ児童保護センターが所有、運営しており、行方不明の子どもを見つけるために家族を支援し、子どもの行方不明を防ぐための教材を提供しています。また、警察やその他の関係者と緊密に連携して、行方不明の子どもの捜索に当たっています。
 この記事は、ミッシングキッズ・カナダのウェブサイトの中の「Parental Child Abduction」を、翻訳・公開するしたものです。

親による子どもの誘拐

 カナダでは、子どもの誘拐の最も一般的な形態は、親または保護者によるものです。「親による子どもの誘拐」という用語は、親また保護者がもう一方の親や保護者から子どもを連れ去ったり、拘留したり、または、子どもを隠匿する場合を指します。誘拐犯となった親や保護者の家族のメンバーが、子どもの連れ去りや隠匿の支援をすることは珍しいことではありません。
あなたの子どもがもう一人の親や保護者によって誘拐された場合、子どもを一刻も早く安全に取り戻すために、迅速に行動することが重要です。親による子どもの誘拐の殆どは、捜索中の親や保護者によって迅速に解決し、誘拐された子どもは直ぐに親や保護者と再会します。しかし、親による子どもの誘拐は、関係者に生涯にわたって影響を及ぼす可能性のある重大な問題なのです。
リスクの指標
一方の親や保護者によって子どもが誘拐されるリスクを判断する際に注意すべきこと。
防止策
一方の親や保護者によって子どもが誘拐されるリスクを減らすためにすべきこと。
緊急対策
子どもが一方の親や保護者によって誘拐された場合、即座に行うべきこと。
上記の情報は、情報提供のみを目的としています。法的助言として提供しているものではありません。読者は、自分自身の状況、保護したい子どもの年齢や成熟度、その他関連する要素に照らして、全ての情報を評価してください。

リスクの指標

してはいけないこと:
・子どもを連れ去るという、一方の親や保護者の直接的または間接的な脅迫を無視する。
・一方の親や保護者が、あなたの子ども、あなた自身、あるいは自分自身に危害を加えるという直接的または間接的な脅迫を無視する。

するべきこと:
・警察に相談し、法的助言を受ける。警察に相談する場合、あなたが存在していると感じている危険を最小限に抑えて相談することはしないでください。

親による子どもの誘拐に共通する危険因子は以下の通りです。
・一方の親や保護者が以前にあなたの子どもを誘拐したことがある。
・一方の親や保護者が、直接的あるいは間接的に、あなたの子どもを連れ去ると脅迫したことがある。
・一方の親や保護者が、直接的あるいは間接的に、あなたやあなたの子ども、あるいは自分自身に危害を加えると脅迫したことがある。
・一方の親や保護者が、過去に支配的かつ/または暴力的な行為をしたことがある。
・一方の親や保護者が、あなたやあなたの家族に対して強い敵意、怒り、恨みを抱いている。
・一方の親や保護者が、ストーカー行為や嫌がらせ、執拗な行動(例えば、学校や習い事に顔を出す、絶え間ない電話やメール、ネット通信)をするようになった。
・あなたと一方の親や保護者は、よく喧嘩をするが、特に監護権/アクセス/子育てに関して喧嘩をすることが多い。
・家庭裁判所の判決で、一方の親や保護者が怒っていることがある。このような判決が出た後、しばらくは感情が高ぶり、親による子どもの誘拐の危険性が高まる可能性がある。
・一方の親や保護者が、あなたの保護下にある子どもの安全やウェルビーイングについて継続的に馬鹿げた懸念を抱いている。
・一方の親や保護者が、他の国や地方に家族または他のつながりを持ち、帰国することに関心を持っている可能性がある。
・あなたの子どもが、「パパ(ママ)が、どこか暖かいところで暮らそうって言ってるよ」、あるいは「ママ(パパ)が、もうすぐ引っ越すって言ってるよ」などと、あなたを心配させるような発言をしたことがある。
・一方の親や保護者に大きな生活の変化(例えば、仕事を辞めた、家を売った)があった。
・一方の親や保護者が無職である、どこでも働ける、経済的に自立している、言葉を変えると、経済的な理由でその地域に縛られていない。
・一方の親や保護者が、リースを解約した、銀行口座を閉じた、資産を清算した、書類を隠したり破棄した、パスポートかつ/またはビザを申請した、出生証明書を申請した、学校の記録や医療記録を申請した、子どもの航空券を購入した、あるいは外見を変えた。
1つ以上の指標があるからといって、親による子どもの誘拐が起こるとは限りませんし、1つ以上の指標がないからといって、親による子どもの誘拐が起こらないとは限りません。リスクを評価する際には、一方の親や保護者、あなたの子ども、あなたとの関連性について知っていることを念頭に置き、最善の判断を下してください。

誘拐防止

一方の親や保護者があなたの子どもを誘拐するのを防ぐ上で、検討すべき多くの因子が存在します。

一方の親や保護者との関係
一方の親や保護者が、子どもを監護している親や保護者から誘拐する場合、往々にして、離婚や別居を背景としており、お互いの親や保護者の間の関係の悪化や不安定さに起因している可能性があります。一方の親や保護者にその意思があるなら、お互いの関係を改善するためにカウンセリングを受けたり、メディエーションを行うことが有効な場合があります。
あなたが支配的または敵対的な元パートナーに対処するのに苦労している場合は、専門家の支援および/または助言を求めてください。

正式な監護とアクセスの取決め
意思決定権、生活の取決め、およびあなたの子供へのアクセスの期間を明確に概説する監護命令または書面による合意は非常に役立ちます。あなたの状況(例えば、子どもを誘拐するという脅迫、以前に子どもを誘拐した履歴、ドメスティックバイオレンス、虐待)によっては、弁護士と利用可能な選択肢について話をすること検討して下さい。選択肢には次の内容を含むことでしょう。
・親や保護者は、一方の親や保護者の同意なしに管轄区域(州または国)から子どもを連れ去ることができないことを明記した連れ去り禁止条項。この条項には、同意は常に書面で取り交わすよう明記することも可能です。
・アクセス期間(日時)の明確な規定。そうすることで、紛争が生じた場合に、両当事者が争点を明確にできます。
・監視付きのアクセス。これは、第三者がアクセスを監視しているため、子どもが特定の親や保護者と二人きりにならないことを意味します。この監視付きアクセスは、承認された監督者とともに、またはアクセスセンターで行います(あなたの地元にそのようなセンターがある場合)。
しかし、上述したような措置を講じることにより、既に不安定だった状況を更に悪化させる可能性があるため、潜在的なリスクと利益を慎重に検討する必要があります。
あなたが監護命令または取決めを持っている場合、それが最新の状態に保たれ、簡単に利用できることを確認してください。

予防策
・子どものもう一方の親や保護者について、必ず最新の情報(電話番号、メールアドレス、ソーシャルメディアのハンドルネーム、住所、就職先、家族、友人など)を入手しておく。
・学校、ベビーシッター、保育園などで、子どもの世話をする人が、必ず監護やアクセスの取決めについて知らせておく。誰が子どもを引き取ることができるのか、また、承認されていない状況に出くわした場合にどうすればよいのか、スケジュールを理解してもらっておく。学校や保育園に監護命令のコピーを提出しておけば、事が起こった場合に、学校や保育園の対応を支援することができます。
・子どもに、(可能な限り)自宅の電話番号(市外局番も含む)と住所を教えておく。
・子どもに、緊急に助けが必要な場合は、911に電話するよう教える。
・子どもに以下の違いを教える。
〇秘密を守る:誰も傷つけず、いずれは明らかになり、幸せな結末を迎える秘密(サプライズ誕生日パーティーのようなもの)。
〇秘密を話す:有害な可能性のある秘密、または子どもが不快にさせる、恐怖を与える、混乱させる、または悲しくさせる秘密。このような秘密には結末がなく、子どもは決して誰にも言わないようにと言われます。
子どもの身の安全に関するその他の情報については、児童保護のためのカナディアンセンターのウェブサイトをご覧ください。

緊急対策

あなたの子どもが一方の親や保護者に連れ去られたと確信し、子どもに危険が迫っていると思われる場合は、即座に子どもが行方不明になったことを警察に届け出てください。

子どもの一方の親や保護者または子どもとの連絡を取る努力をする
・連絡可能な全ての電話番号に架電したり、メールをする。
・会話した内容や受け取ったメッセージは全て記録する。
・可能であれば、いつから連絡が取れなくなったかを記録しておく。

最寄りの警察署に電話し、行方不明者届を提出する
カナダでは、子どもの行方不明に気づいてから時間をおいて行方不明の報告をする必要はありません。-警察に報告する前に最低限必要な待機時間というものは存在しません。
以下の点を必ず警察に伝えてください。
・あなたが抱いている具体的な懸念と、あなたのその懸念が監護権およびアクセス権の問題に対抗して行われた誘拐であると信じている理由

「親による子どもの誘拐」という用語は、一方の親や保護者がもう一方の親や保護者から子どもを連れ去ったり、拘留したり、または子どもを隠匿した場合を指します。あなたの状況が該当するか分からない場合は、詳細についてミッシングキッズ・カナダに連絡をとることができますし、あるいは弁護士と話をする必要があるかもしれません。

・一方の親や保護者が、あなたの子どもを誘拐すると脅迫したり危害を加えると脅迫したかどうか
・一方の親や保護者が過去に暴力を振るったり、精神疾患に罹っているかどうか。
・あなたの子どもに注意を払うべき病気があるかどうか。
・あなたの子どもの持ち物や一方の親や保護者の持ち物がなくなっているかどうか。
・あなたの子どもが州外またはカナダ国外に連れ去られる危険性があるかどうか。
・パスポートがなくなっていないかどうか。
上記に加えて、
・該当する場合は、監護命令を手元に用意してください(子どもの行方不明を報告するために監護命令は必要ありません)。
・あなたの子どもの身分証明書(例えば、出生証明書、パスポート)を用意してください。
・あなたの子どもと誘拐したと思われる親や保護者の描写を提供する準備をしてください

もしあなたの子どもが、一方の親や保護者によって誘拐された場合、法執行機関の指導なしにいかなるメディアにも関与しないことが極めて重要です。この点は、強調してもし過ぎることはありません。状況によっては、メディアが関与することで、あなたの子どものリスクが高まる可能性があるからです。

ミッシングキッズ・カナダに連絡する

ミッシングキッズ・カナダの相談電話
📞1-866-kid-tips (543-8477)
✉連絡先
オンライン受付フォームに記入

ミッシングキッズ・カナダのケースワーカーは、あなたの子どもの捜索をサポートし、支援します。私たちは次のような支援を行います。
・関係する様々なシステムを誘導する際の支援を提供する(例えば、どの機関に連絡するか、どのように支援できるかに関する情報)。
・あなたの子どもや家族と捜索に関わる他の機関(例えば、警察、児童福祉)との連携。
・子どもがカナダ国外に連れ去られたと確信する場合、捜索中の親を適切な機関につなぐ(例えば、カナダ外務省)。
・あなたの行方不明の子どもについて関心を高めるためのソーシャルメディアやその他の方法に関する情報とガイダンスを提供する。
・一般市民への通知や支援が必要と判断された場合、ミッシングキッズ・アラート™公共通知システムを使用する。
・メディアの統御やメディアへの関与を支援する。
・あなたの子どもの記録(例えば、学校記録、パスポート、医療記録)に目印の旗を立てる方法に関する情報を提供する。
・あなたの家族を適切な支援サービスにつなぐ
ミッシングキッズ・カナダのケースワーカーは弁護士ではないため、法的助言を提供することはできませんのでご了承ください。親による子どもの誘拐とあなたの法的権利に関する詳細については、弁護士またはあなたが住んでいる地域の法執行機関にお問い合わせください。

(了)

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