Custody X Change 実子誘拐と実子誘拐が監護権に与える影響
Custody X Changeは、「離婚や別居をした親や法律家の生活を少し楽にし、苦痛を軽減する」を目的に、親の養育計画と実践を支援するソフトウェアを提供している2003年に創業したアメリカの会社です。
こちらのサイトで「実子誘拐」を綺麗に纏めていたので、翻訳紹介します。
実子誘拐は、一方の親がもう一方の親の監護権を侵害して、もう一方の親から子どもを引き離すことを言います。
しばしば監護権の侵害または親による子どもの拉致と呼ばれ、通常、高葛藤の監護権紛争と離婚の事件で発生します。また、ドメスティックバイオレンスや児童虐待を含む事件で発生することもあります。
実子誘拐は犯罪であり、子どもの監護権に重大な影響を及ぼします。
実子誘拐とは何か
実子誘拐は、複数のシナリオがあり得る幅の広い用語です。州法、両親の婚姻状況、監護権命令が発行されているかどうか、子どもをもう一方の親から引き離す一方の親の理由などが、実子誘拐が発生したかどうかを判断する要素になります。
用語に関する注意点:州によっては、監護権侵害-監護権命令を意図的に無視する-と実子誘拐、もう一方の親に子どもを会わせない目的で子どもを連れ去る行為とを区別して定義しているところもあります。他の州では、この用語を区別せずに使用しています。各州の法律と用語をよく調べてください。
結婚している親と離婚している親
両親が結婚している場合、両親間の監護権を分ける法的監護権および身体的監護権の取決めを示す命令を家庭裁判所が発行するまで、両方の親は同等の監護権を持っています(通常、離婚や法的別居のケースに含まれる)。
結婚している親が別々に暮らしている場合でも、身体的監護権に関する裁判所命令を持っていないなら、一方の親がもう一方の親から子どもを引き離しても、その行為は監護権侵害ではありません。
しかし、州によっては、結婚している親が、もう一方の親から子どもを引き離すために、子どもを州外に連れ出した場合、監護権命令がなくても、実子誘拐の罪に問われることがあります。
申立てから最終的な命令が発行されるまで、離婚のプロセスは、2ヶ月から2年以上かかることがあります。訴訟が進行中の間、裁判所は、最終的な命令が決定されるまで、通常続く監護権(例えば、養育時間のスケジュール)の分割を割り付ける一時的な監護権命令を発行することができます。
離婚する両親のために一時的な監護権命令を自動的に発行する州もあれば、一時的な監護命令がオプションで、訴訟進行中に監護権を管理する裁判所の支援を必要とする親のためにだけ発行する州もあります。
一時的な監護命令発行がオプションの州に住み、一方の親が自分から子どもを引き離そうとしている懸念を抱いた場合には、離婚や法的別居分離を申立てる際に(あるいは、申立てられたなら、答弁書を提出する際に)、一時的な監護権命令を要求してください。
差し迫った実子誘拐の危険がある場合、緊急監護権命令、即時発行する短期的な命令を求めることができます。但し、裁判所は通常、もう一方の親が子どもを州外に連れ出そうとする意思を証明するよう、命令を求めた親に要求します。
いったん緊急監護権命令、一時的監護権命令、または最終的監護権命令が発行されたら、両方の親はそれに従わなければなりません。命令違反は、監護権侵害または実子誘拐の罪に問われ、裁判所の最終的な監護権決定に影響を与える可能性があります。
結婚していない両親
両親が結婚していない場合、家庭裁判所が監護権の取決めを簡潔に纏めた監護権命令を出すまでは、母親が完全な法的監護権と身体的監護権を有しています。結婚していない親が監護権命令を持っていない場合、実子誘拐は父親が母親から子どもを引き離す場合のみ発生します。
パタニティ(生物学的な父親であること)を、裁判所が監護権命令を発行する前に、法的に確立しなければなりません。パタニティが確立されている、あるいは父親の名前が子どもの出生証明書に記載されている場合でも、裁判所は、父親が監護権を取得する前に、まず育児時間を認める監護権命令を発行する必要があります。
母親と父親のどちらの親も、パタニティを確立し、監護権命令を取得する法的手続きを開始できます。命令が発行されたら、両方の親が命令に従わなければならず、どちらの親が違反しようと、その親の行為は監護権の侵害または実子誘拐と見なされる場合があります。
実子誘拐から即座に子どもを保護する必要がある場合は、パタニティや監護権に関する裁判を開くとき、または対応するときに、裁判所に緊急監護権命令を求めてください。
実子誘拐、ドメスティックバイオレンス、および児童虐待
ドメスティックバイオレンスや児童虐待がある場合、被害者は自分と子どもを守るために、子どもをもう一方の親から引き離すことがあります。この事態が発生した場合、虐待している親は、実子誘拐(特に被害者が子どもを連れて州境を越えた場合)で被害者を訴えることがあります。
州法によっては、被害者は刑事責任を問われる可能性があります。しかし、この状況では、多くの州が、いわゆる積極的抗弁を認めています。告訴された親が情状酌量に値する状況を証明した場合-例えば、もう一方の親が、自分や自分の子ども安全を脅かしていたこと-、告訴の却下のまたは大幅な酌量減軽となる可能性があります。
暴力から子どもや自分自身を守るために、子どもをもう一方の親から引き離すことを検討しているなら、犯罪を犯している可能性があることに注意してください。自分が暮らす州の法律を研究し、ドメスティックバイオレンス支援組織に助けを求め、顧問弁護士に相談してください。
虐待する親が子どもを誘拐したり、一方の親から子どもを引き離す場合、起訴することができるかどうかは、両親の婚姻状況、既存の監護権命令と州法によって異なります。
自分の子どもが虐待的な親から実施誘拐の差し迫った危険に晒されていると思う場合は、地元の警察と経験豊富な顧問弁護士にすぐに連絡してください。
実子誘拐事件では誰が監護権を取得するのか
家庭裁判所は、子どもともう一方の親との継続的な関係を支援する可能性を含め、子どもの全体的なウェルビーイングを支援するそれぞれの親の能力を評価した後、子どもにとって何が最善であるかに基づいて監護の決定を下します。
監護権に関する裁判では、もう一方の親から子どもを引き離した親に好意的な見方をせず、もう一方の親に有利な裁定を下す可能性が高くなります。しかし、実子誘拐が発生した場合、裁判所は通常、そこに至った状況、実子誘拐が子どもにどのような影響を与えたか、そして実施誘拐が再び発生する可能性があるかどうかを検討します。
たとえ子どもが誘拐を実行した親と一緒にいたいと思っていても、子どもをもう一方の親から引き離す行為は、通常、その親が子どものもう一方の親との関係を支援するつもりがない証拠と見做されます。裁判官はこの点を非常に重く受け止め、罪を犯した親の監護権を制限する場合があります。
誘拐を実行した親が子どもに身体的または心理的危害を加える場合(実子誘拐事件では一般的)、裁判所は子どもを保護し、多くの場合、その親の身体的監護権を監視付き訪問に限定します。このような事件では、もう一方の親は単独身体的監護権を得ることができます。
実子誘拐で告訴された親がドメスティックバイオレンスの被害者であったり、子どもを守るために誘拐をした場合、裁判官は監護権を決定する際に、往々にしてこの点を考慮します。虐待する親が子どもの安全への脅威である場合、裁判官は、恐らく、その親の身体的監護権を監視付き訪問に制限します。裁判官はまた、両方の親同士の遣り取りを制限するために、子どもの受渡しを監視下で実施するよう命ずることができます。
実子誘拐が事件の問題である場合、高葛藤の事件で実施誘拐を経験している顧問弁護士を雇うべきです。弁護士を雇う余裕がない場合は、法律扶助、低所得者の法的プログラムとお住まいの地域の法律クリニックを調べてください。
実子誘拐防止に関する法律
「親による拐取防止法(PKPA,Parental Kidnapping Prevention Act)」
PKPAは、「子の監護事件の管轄および執行に関する統一法典(UCCJEA)」とともに、子の監護権管轄に関する国家標準を確立する連邦法です-州は子どもの監護権命令を発行および変更する権限を持っています。その州を、子の「本拠州(home state)」と呼びます。
PKPAによると、子の本拠州とは、監護権命令の申請時に、少なくとも連続6ヶ月間住んでいた州のことです。また、この法律では、子どもが6ヶ月間連続してその州に住んでいない限り、その州の裁判所が別の州の監護権命令を変更することを禁じています(UCCJEAは、子どもの出身地を変更するための規則を定めています)。
PKPAは1980年に、フォーラムショッピング(親が自分に有利な監護法がある別の州で監護権命令を得ようとすること)を防止するために制定されました。この行為は、実子誘拐事件でよくある問題でしたが、PKPA、UCCJEA、および各州における子どもに関する監護法の標準化が進んだため、現在ではそれほど心配する必要はありません。
「親による国際的拐取罪法(IPKCA,International Parental Kidnapping Crime Act)」
IPKCAは、一方の親がもう一方の親の監護権を侵害する目的で子どもを国外に連れ出すことを連邦犯罪とするものです。
重要なことは、IPKCAにより、国際的な実子誘拐に関して誰かを調査し、告訴することが可能になりますが、この法律は子どもを外国から連れ戻すことを保証するためにプロセスを作成するものではありません。
一方の親がIPKCAに基づいて告訴されたとしても、もう一方の親は子どもを取り戻すために法的問題に直面する可能性があります。一方の親は、もう一方の親によって国際的に誘拐された子どもを安全に返還してもらうために相手国と交渉するよう国務省に対し請願することができます。
もう一方の親が国際的な実子誘拐を試みる可能性があり、子どもがパスポートを持っている場合は、子どもと一緒に出国することを防ぐために、裁判所にパスポート(場合によってはもう一方の親のパスポートも)の所有権を取得するよう依頼してください。
もし子どもが米国市民であり、まだパスポートを持っていない場合は、国務省の「子どものパスポート発行通知プログラム(CPIAP)」に登録し、誰かが子どものパスポートを申請した場合に通知されるようにすることができます。
州法
各州は、犯罪の定義や、刑罰を軽減または免除できる積極的抗弁をどのように考慮するかを含む、監護権侵害や実子誘拐に関する独自の法律を持っています。
例えば、コロラド州法では、子どもが14歳以上の場合、子どもに家出を焚きつけたり、犯罪目的で連れ出したのでないなら、監護権侵害の申立てに対する積極的抗弁を認めています。
一方、ジョージア州には、監護権侵害に対する積極的抗弁を規定する法律はなく、親が監護権侵害を2回以上行うか、子どもを州外に連れ出さない限り、軽犯罪にとどまります(2回以上行ったり、州外に連れ出した場合は重罪となります)。
しかし、ミシガン州法では、子どもがもう一方の親から身体的または精神的な危害を受けるという直接的な脅威にさらされていた場合、積極的抗弁を認めています。更に、親が子どもをドメスティックバイオレンス・シェルターに連れて行った場合、裁判所は監護権を決定する際に、子どもをもう一方の親から引き離そうとした証拠とは見做しません。
自分に実子誘拐のリスクがあると思う場合、あるいは、実子誘拐で告訴された場合、必ず自分が暮らす州の法律を研究し、顧問弁護士に相談するようにしてください。
(了)