ヨーロッパにおける子どもの共同身上監護:増加する現象
この記事は下記のオープンアクセスの文献を翻訳したものです。文献の原題名、原著者名は以下の通りです。
掲載書:DEMOGRAPHIC RESEARCH VOLUME 49, ARTICLE 18, PAGES 479ー492 PUBLISHED 6 SEPTEMBER 2023
原題名:Joint physical custody of children in Europe: A growing phenomenon
原作者:Mia Hakovirta, Daniel R. Meyer, Milla Salin, Eija Lindroos, Mari Haapanen
ヨーロッパにおける子どもの共同身上監護:
増加する現象
ミア・ハコヴィルタ¹、ダニエル・R・マイヤー²、ミラ・サリン³、
エイジャ・リンドロス⁴、マリ・ハーパネン⁵
要旨
背景
子どもの身上監護権(両親の別離後に子どもがどちらの親と暮らす)に関する大規模な国を跨いだ比較は、調査をして以降、かなり時間が経過し、対象となる子どもの年齢範囲も限られている。
目的
2021年のデータを使用して、ヨーロッパ諸国の子どもの単独および共同身上監護(JPC、均等および不均等の両方)のレベルを文書化する。
方法
この論文事では、EUの所得と生活条件に関する統計調査において、子どもの生活の取決めに関する新しい測定基準を使用する。 私たちの最終サンプルは、ヨーロッパ17か国の9,102人の子どもで構成されている。分析方法には記述的分析を用いた。
結果
離別家庭の子どもの8人に1人は、均等なJPCの取決めで暮らしている。それ以外の8.2%は、それぞれの親と自分の時間の少なくとも3分の1を過ごしており(但し、きっかり半分ではない)、つまり。20.%が何らかのJPCで暮らしている。以前の推定値と直接比較すると、20年未満でJPCの占める割合が2倍になっていることがわかりる。JPCの割合は国によって大きなバラツキがある。北ヨーロッパ諸国、ベルギー、フランス、スロベニア、スペインでは、子どもがJPCで暮らす可能性が最も高くなる。6~10歳および11~15歳の年齢層の子どもは、年少または年長の子どもよりもJPCで暮らす可能性が高くなる。
結論
2002年から2010年のデータを使用した以前の研究と比較して、ヨーロッパの別離家庭の子どもに対するJPCは増加している。国ごとの違いは大きいが、JPCの増加は一部の国に限定されない。この論文は、より最近のデータを使用し、全ての年齢の子どもを組み込み、均等な時間は勿論、不均等な時間を考慮することにより、以前の国を跨いだ分析を改良している。
1.はじめに
両親の離婚や別離を経験する子どもが増えている(Andersson 2002; Andersson, Thomson, and Duntava 2017)。両親が同居していない場合、子どもの生活の取決め(身上監護)は、親自身が決めるか、家庭裁判所が決める必要がある。過去一世紀の殆どの期間、ヨーロッパでは、身上監護権は子の最善の利益に基づいて与えられ、通常は母親のみに与えられ、一部の父親には制約のある計画的な訪問が与えられることもあった。前世紀の終わりに政策が変更され、父親に子どもと過ごす時間をより多く与え、両親に共同身上監護権(JPC、分担養育とも呼ばれる)の可能性を与えるようになった。現在、子どもは母親または父親と主に一緒に暮らすことも(単独身上監護またはSPCと呼ばれる取決め)、あるいはそれぞれの親とかなり一緒の時間を過ごすことも(JPC)可能である。JPCは、子どもがそれぞれの親ときっかり半分の時間を過ごす取決めだけを指すと考える者もいるが、ここではより広い定義を使用し、JPCとは、子どもがそれぞれの親と少なくとも3分の1の時間を過ごす取決めであると考える。
世界中で両親の関係解消を経験する子どもが増えているため、このような子どもの生活の取決めは重要な問題となっている。JPCの実践は、子どもと親にとって幾つかのプラスの結果に結びついているが、因果関係を判断するのは困難である。例えば、JPCは、より良い共同子育てと、より少ない両親間葛藤の両方に関連していることがわかっている(Augustijn 2023)。JPCは、子どもの社会感情的および心理的ウェルビーイングの向上(例えば、Nielsen 2018; Steinbach 2019)、および子どものストレスレベルの低下と関連している。(Turunen 2017)。更に、幾つかの研究では、母親のウェルビーイングと人生の満足度は、SPCよりもJPCの方が高いことが示されている(例えば、Augustijn 2023; Riser et al. 2022)。
親が同居していない子どもの構成率については、国を超えた推計が幾つか存在するが(例えば、Andersson, Thomson, and Duntava 2017; Bjarnason and Arnarsson 2011; Nieuwenhuis 2021)、既存の一連の研究は、このような家庭の間での様々な身上監護の取決めの構成率について、国固有および国境を越えた推計をほんの僅かしか提供していない(例えば、Nieuwenhuis 2021; Smyth 2017)。それにも拘らず、JPCの構成率を、国を超えて同じ方法で測定できるものは殆ど存在しない。また、このような取決めが子どもの間でどの程度一般的であるかについての公式統計も存在しない。BjarnasonとArnarsson (2011) は、2005年から2006年の学齢児童の健康行動(HBSC)研究⁶とヨーロッパおよび北アメリカ36か国の11歳、13歳、および15歳の学童の無作為サンプルを使用して、JPCの構成率に関する最初の比較推定値を発表した。彼らは、全体として、JPCの取決めのもとで暮らしている子どもは1%未満であると報告した。但し、国によってはかなりの差異が存在する。JPCの取決めは、南ヨーロッパおよび東ヨーロッパの多くの国では非常に珍しかったが(これらの国のうち8か国では、適用された子どもは0.5%未満)、ベルギー、デンマーク、アイスランド、スウェーデンではより一般的だった(3%~4%)。同じデータソースとサンプルを使用し、2002年、2006年、2010年に実施されたHBSC調査を組み合わせて、Steinbachと彼女の同僚(2021)は、ヨーロッパおよび北アメリカ37か国の離別家庭の子どものみに焦点を当てた。両親と同居していない子どもの合計5.7%は、それぞれの親と同じ時間を過ごしていた。比率は国によって大きく異なり、8か国では2%未満、7か国では6%~10%、ベルギーとアイスランドではほぼ12%、スウェーデンでは22%だった(Steinbach, Augustijn, and Corkadi 2021)。Zilincikova (2021)⁷はまた、世代とジェンダー調査の第1波(2004年から2010年まで。但し、スウェーデンは2010年から2013年まで)のデータを使用して、ヨーロッパ9か国の子どもの身上監護の取決めに関する国を跨いだ概要を提供した。以前の研究と同様に、彼女の結果は、JPCがスウェーデンと比較して東ヨーロッパとドイツ語圏(オーストリアとドイツ)で僅かであることを明らかにした。
これまでの比較研究には多くの限界があった。第1に、特にJPCが一部の国で増加している人口動態現象であることを考慮すると、使用されているデータは比較的古いものになっている(2002年のデータもある一方で、2013年以降のデータはない) (Meyer, Carlson, and Alam 2022; Vanassche et al. 2017)。第2に、HBSCデータには、11歳、13歳、15歳の青年のみが含まれており、経験が異なる可能性がある年少(または年長)の子どもに関する情報は提供されていない。(特に、幾つかの単一国の研究では、記録はまちまちであるものの、年少の子どもはJPCで暮らす可能性が低いことが判明している[例えば、Zilincikova 2021])。第3に、HBSCに基づく研究では、子どもが両親と過ごした時間が等しい場合のみデータに記録するため、JPCの取決めの一部しか捕捉できていない。研究と実践では、両親の分け合う時間が完全に均等ではなくとも、子どもが両親と過ごす時間の25%~50%であれば、JPCであると見做している(Bernardi and Mortelmans 2021; Smyth 2017)。
本論文では、「欧州連合の所得と生活条件に関する統計(EU-SILC)」の調査データを使用して、子の身上監護の取決めに関して、国を跨いだ差異は勿論のこと、ヨーロッパにおけるJPCの全体的なレベルを記述的に分析する。以前の研究と比較して、私たちは3つの新たな貢献を果たしている。第1に、私たちのデータは以前の研究のデータよりもはるかに新しいものある。私たちの分析はHBSCの以前の分析と完全に一致するわけではないが、私たちのJPCの定義と分析サンプルをHBSC研究と一致させることで、JPCが成長しているかどうかを推測することができる。第2に、以前の比較研究の11歳から15歳だけでなく、あらゆる年齢の子どもに関するデータを提供する。第3に、比較文献における新しい貢献である、均等なJPCと不均等なJPCの両方を含めることができる。
2. データ、測定、手法
私たちは、ユーロスタットが提供したEU-SILC調査(ユーロスタット 2022)の一部として2021年に収集された、特別主題モジュール「離別家族および混合家族における子どもの生活の取決めと状況」からのマイクロデータを使用する。
ユーロスタットが提供したEU-SILC調査(ユーロスタット 2022)の一部として2021年に収集された、特別主題モジュール「離別家族および混合家族における子どもの生活の取決めと状況」からのマイクロデータを使用する。EU-SILC 調査は、全国的な確率サンプルを使用して、個人および世帯レベルでの収入、貧困、社会的排除、生活状況に関する情報を毎年収集する(詳細については、Wirth および Pforr 2022 を参照)。データが国をまたいで比較できるよう、正確な指示に従って国別の調査を実施した。データは2022年12月に初めてリリースされ、リリースされたバージョンには25か国の情報が含まれている⁸。私たちの分析単位は子どもであり、サンプルには世帯員であるが親が世帯外に暮らしている0~17歳の子ども全員が含まれている⁹。なお、情報が大量に欠落または矛盾しているため、8か国を除外した¹⁰。最終的なサンプルには、ヨーロッパ17か国の9,102人の子どもが含まれている。また、以前の研究で地域的なパターンが示されているため、国を地域ごとに以下にグループ化している:東ヨーロッパ諸国は、チェコ共和国(CZ)、エストニア(EE)、クロアチア(HR)、ハンガリー(HU)、リトアニア(LT)、ルーマニア(RO)、およびスロベニア(SI)、北ヨーロッパ諸国は、デンマーク(DK)、フィンランド(FI)、スウェーデン(SE)、南ヨーロッパ諸国は、キプロス(CY)、ギリシャ(EL)、スペイン(ES)、イタリア(IT)、西ヨーロッパ諸国は、オーストリア(AT)、ベルギー(BE)、フランス(FR)。
身上監護変数は、通常の1か月間に子どもが家庭に何泊滞在したかを示す¹¹。分析では、3つのカテゴリ変数を使用して、次の状態にある子どもを分離する:⑴単独身上監護(世帯外に住む親のもとで月に0~9泊)、⑵不均等な共同身上監護(世帯外に住む親のもとで月に10~14泊、または月に16~20泊)、⑶均等な共同身上監護(両方の親のもとで15泊ずつ)。即ち、不均等な共同身上監護の基準を泊数の33%に設定し、均等な共同身上監護の基準を泊数の50%に設定している。JPCを定義するための閾値は、JPCを使用している管轄区域および状況によって異なる。JPCは、別離または離婚後、両親が子どもに対する重要な身体的ケアと責任を共有する取決めとして定義される場合がある。子どもの時間をどのように実際に配分するかについては、世帯毎の多様性がある。JCPに関する多くの実証研究では、JPCとSPCを区別するために、各親と過ごす時間の25%または30%~50%という閾値を使用している(Smyth 2017; Steinbach 2019)¹²。
手法としては、加重記述統計とクロス集計分析を使用する。また、合計(加重していない)サンプルサイズも報告する。分析では、ユーロスタットが提供する横断的な重みを使用して、無回答と単位の選択の確率、および全国サンプルの世帯と人の分布についてサンプルを調整する¹³。
3. 結果
図1は、子どもの身上監護の取決めを単独身上監護と不均等/均等JPCに分けて示している。ヨーロッパ全土では、別離家庭の子どもの12.5%が均等なJPCの取決めで暮らし、8.2%が不均等なJPCの取決めで暮らし、79.3%がより伝統的な単独身上監護の取決めで暮らしている。
国によって、かなりのバラツキが存在する。スウェーデンでは、子どもの42.5%が均等なJPCで暮らしており¹⁴、フィンランド(23.8%)、ベルギー(19.6%)がそれに続く。スロベニア、デンマーク、スペイン、フランスでは、10人に1人以上の子どもがこのタイプの取決めで暮らしている。一方、9か国(CZ、HR、HU、LT、RO、CY、EL、IT、AT)で均等なJPCで暮らす子どもは5%以下である。不均等なJPCの取決めはデンマーク(26.2%)で最も一般的で、スウェーデン(11.2%)、スロベニア(11.1%)、ベルギー(10.7%)が続く。一般に、均等なJPCのレベルが低い国は、不均等なJPCのレベルも比較的低い。均等なJPCが5%以下の9か国は全て、不均等なJPCのレベルが最も低い11か国に入っている。スウェーデンを除く全ての国では依然として単独身上監護の取決めが主流であり、一部の東ヨーロッパ(LT、RO、HR、HU)および南ヨーロッパ(EL、IT)諸国で最も構成率が高い。
年齢差を調べるために、子どもを0~5歳、6~10歳、11~15歳、16~17歳の4つの年齢層に分けた。これらの年齢層は、11歳から15歳までの子どもを対象とした Steinbach, Augustijn, および Corkadi (2021)の研究と比較をするために選択した。
表1の最初のパネルは、子どもの年齢に応じた身上監護の取決めの変化を示している。年齢差は比較的緩やかである。それでも、単独身上監護が0〜5歳(84.8%)で最も一般的であり、不均等および均等なJPCは6〜10歳で最も一般的である(それぞれ9.5%と15.8%)。均等なJPCと不均等なJPCは、年齢とともに僅かに逆U字型を示している。これらは最年少と最年長の年齢層では最も稀で、2つの中間の年齢層で最も一般的である。
また、件数が結果の信頼性を得るのに十分な数である(つまり、各年齢範囲で50以上の観察がある)10か国の結果も個別に示す。合計に見られる年齢パターンは、一般的に個々の国でも見られる。ハンガリーを除くこれら全ての国において、単独身上監護が最も一般的なのは、最年少(FI、IT、BE、FR)または最年長(CZ、EE、DK、SE、ES)のいずれかであるが、その違いはかなり小さい。対照的に、2つの形態のJPC(不均等と均等)は、2つの中間の年齢層で最も一般的である。
4.考察
最近のデータを使用したヨーロッパの子どもの身上監護の割合は、殆ど知られていない。2002年から2010年を対象とした以前のデータでは、別離家庭の11歳から15歳の子どもの均等なJPCを調査した(Steinbach, Augustijn,および Corkadi 2021)。2021年の新しいEU-SILCモジュールはHBSCのレプリカではないが、HBSCのJPCと同じ概念的尺度(均等な時間)を選択し、年齢層(11~15歳)を模倣し、(家庭ではなく)子どもを分析単位にすることで、JPCが増加しているかどうかの凡その尺度を得ることができる。私たちの研究結果は、実際にJPCがより一般的になっていることを示唆している。私たちの2021年の調査では、11~15歳の子どものうち両親と同居していない子どもの割合は13.0%だったが、2002~2010年には5.7%だった(Steinbach, Augustijn,および Corkadi 2021)。幼少期中期のJPCは、年少の子どもや年長の子どもよりも若干高いため、全体的なJPCの割合は12.5%とやや低く見積もられるが、それでも相当な割合である。
均等なJPCの割合が最も高い年齢層は、6歳から10歳の幼少期中間の年齢層であり、それより年少の子どもや年長の子ども、特に16~17歳の子どもでは割合が低くなる。これは、年少の子どもには住居の安定がより必要である(または母親のアタッチメントがより必要である)と見做され、年長の子どもが仲間関係を促進するために住居の移動を減らしたいと考えれば、予想し得るパターンである(Vanassche et al. 2017)。
本論文のもう1つの新しい貢献は、均等なJPCは勿論のこと、不均等なJPCを調査できることである。均等なJPCの12.5%の子どもに加えて、更に8.2%の子どもがそれぞれの親と相当な時間を過ごしている(宿泊数の3分の1以上であるが、きっかり半分ではない)。このような子どもをJPCに含めると、JPCの割合は別離家庭の子どもの約5人に1人になる。
全ての年齢層において、均等なJPC勿論、不均等なJPCも考慮すると、国によって相当バラツキがあり、明らかな地域差が存在する。先行研究と一致して、北ヨーロッパ諸国、ベルギー、フランス、スペイン、スロベニアでは、子どもがJPCで暮らす可能性が最も高いことが示されている。法的背景は国によって異なる。例えば、ベルギーとスペインでは、少なくとも過去10年間、JPCが推定上の取決めとなっている(Fernández-Rasines 2017; Vanassche et al. 2017)。法的背景や母親と父親の適切な役割に関する規範が、国レベルの違いに寄与している可能性がある。
一部の国では他の国よりも実質的にJPCの割合が高いが、私たちが推定する全体的なJPCの割合の増加は、単に少数の国で生じていることではない。Steinbachと同僚(2021)の2002年から2010年のデータがあり、指標的な比較を行うのに十分な11歳から15歳の子どもの数が揃っている10か国のうち、8か国で均等な共同身上監護の取決めが増加している。均等な共同身上監護の減少が見られたのはハンガリーとイタリアだけであり、これらの国では両方とも均等なJPCは非常に稀である(初期のデータでは2.5%と2.8%、本データでは0.5%と1.9%)。幾つかの国では特に増加代が大きく、クロアチア、エストニア、フィンランド、スペイン、スウェーデンでは均等なJPCの割合が2倍以上になっている。このように、ヨーロッパ全体で均等なJPCのレベルが相当高いだけでなく、時間の経過とともに比較的広範囲にわたって増加している。
親の別離や離婚が高水準で発生し、JPCがより一般的になっていることから、JPCのパターンと決定要因、およびその結果についてより理解を深めるために、更なる研究、特に比較研究が必要である。国を跨いだ違いについて理由を探ることは有益であり、一部の国では政策変更を検討すべきだと示唆するかもしれない。様々な国で同じ個人の特徴がJPCに関連しているかどうかを調査する研究は、家庭が別居後にどのように組織化されているかについての理解を深める可能性がある。不均等なJPCは特に研究が進んでいない分野である。不均等なJPCで暮らす子どもの生活、子どもが自分たちに第一の住居と第二の住居があると考えているかどうか、子どもの移行パターンがどのように機能するか、またはこのような取決めの影響について、殆ど分かっていない。本比較研究は、子どもの実際の生活の取決めに焦点を当てている。もう一つの潜在的に重要な研究分野は、実際の生活の取決めが、子どもが住むべき場所に関する正式な合意とどのように関係しているのか、またこの点が国によって異なるのかどうかということであろう。更に、JPCの定義におけるカットオフポイントと、異なるカットオフポイントがどのようにJPCの構成率に不一致をもたらすかの両方に関して議論してきたが(例えば、 Sodermans et al. 2014; Steinbach and Augustijn 2021)、私たちが知る限り、 データのサンプリングと重み付けの手順が構成率にどのように影響するかに関しては、これまで議論されていない。両方の親がそれぞれ、自分を世帯の居住者として報告した場合、JPCの子どもを二重カウントしている可能性があるため、この点は将来の研究で対処する必要があるかもしれない。最後に、JPCの結果に関する研究は幾つか存在するが(Steinbach 2019 など)、更に多くの研究が必要である。特に、JPCがより一般的になるにつれ、効果が異なり得るためである。
私たちは、ヨーロッパの別離家庭の子どものJPCが大幅に増加していると推定している。社会政策がこの変化に追いついているかどうかは明らかではなく(Miho and Thévenon 2020)、政策立案者はこのような新しい子どもの生活の取決めにどのように対応するかを検討する必要がある。
5. 謝辞
この研究は、補助金契約番号 338282、PI: Mia Hakovirta に基づいてフィンランドアカデミーから資金提供を受けている。この研究は、INVEST研究主力基金、No. 320162 からも部分的に支援を受けた。
データから導き出された全ての結論に対する責任は全て著者にある。
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[訳者註]記述的分析 descriptive analysis
記述的分析は、データの条件をすべて満たすようなパターンを開発するために、データポイントを説明、実証、または役に立つように要約することを支援する一種のデータ研究である。
最近のデータや過去のデータを活用して、パターンやリンクを特定する技術である。それ以上踏み込まずにパターンや関連性を特定するため、最も基本的なデータ分析としてよく知られている。
経年変化を記述する場合、この分析が有効である。意思決定のための更なる研究の出発点としてパターンを活用する。計画的に行えば、厄介でもなければ、面倒でもない。
[訳者註]ユーロスタット Eurostat
ユーロスタットとは、欧州委員会において統計を担当する部局。欧州連合に関連する資料・統計を作成し、加盟国全体の調整を促進することが目的となっている。ユーロスタットはルクセンブルク市におかれている。日本では欧州連合統計局やEU統計局とも呼ばれる。
[訳者註]カットオフポイント cut-off point
正常とみなされる範囲を区切る値。ある検査をした場合に、陽性と陰性を区分する分割点。
(了)