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ビクトリア州政府 学校運営-生徒の意思決定責任
この文献はオープンアクセスです。掲載サイト、原題名は以下の通りです。
掲載書:Victoria State Government education.vic.gov.au
原題名:School operations – Decision Making Responsibilities for Students
Including family law, parent disputes and informal carer arrangements
オーストラリアは、6つの州と2つの準州(テリトリー)から構成されている連邦国家です。6つの州は、ニューサウスウェールズ州(NSW)、クイーンズランド州(QLD)、南オーストラリア州(SA)、タスマニア州(TAS)、ビクトリア州(VIC)、西オーストラリア州(WA)。2つの準州は、ノーザンテリトリー(NT)、オーストラリア首都特別地域(ACT)です。このうち、ビクトリア州は、オーストラリア大陸の南東部に位置し、その面積は6つの州の中では最小ですが、州都のメルボルンは同国でシドニーに次ぐ2番目の人口を有し、世界一住みやすい都市と呼ばれています。
オーストラリアには、連邦法と州法があり、国防や外交、結婚と離婚といった国内全域で一貫性が求められる事項は連邦法の管轄と憲法で定められており、残りの項目、要するに地域ごとに異なるニーズに対応した方が良い項目、例えば、教育や健康、警察等は州法の管轄となります。
ビクトリア州政府 学校運営 生徒の意思決定責任
家族法、親同士の紛争、非公式の監護者の取決めなど
方針
本方針は、生徒の教育と福祉に関連して行う必要のある一般的な決定を含む、生徒に関する決定の責任者が誰であるかについてのガイドラインを提供する。
要旨
18歳未満の子どもの親は、裁判所命令、養育計画、または本方針に定めるその他の方法によって変更されない限り、子どもに対する親責任を負う。
意思決定責任を有する別離中の両親は、互いに協議し、問題について共同で決定を下すよう真剣に努力することが求められる。法律では、学校などの第三者が、両親が互いに協議し、共同で決定を下すようにすることを義務付けていない。ただし、学校には、重要な長期的問題について別離中の両親の意見を求めるための手続きを整備することが推奨されている。-「重要な長期的問題」の詳細については、以下を参照のこと。
学校職員は、生徒に関する意思決定をめぐる親同士の紛争に巻き込まれないように努めなければならない。
生徒が特定の決定の目的において分別のある未成年者であるか、成人(18歳以上)である場合、その生徒は自分で決定を下すことができる。既に分別のある未成年者になった可能性のある生徒は、親または監護者が自分に代わって決定を下すこと、または親または監護者と共同で決定を下すことに最早同意しないことを示す情報を提供するか、そのことを示す行動をとらない限り、特定の問題について自分で決定を下すつもりはないものと一般に見做される。-「分別のある未成年者と意思決定」を参照のこと。
ビクトリア州立学校の校長は、特定の裁判所命令や家族および生徒の状況について、教育省の法務部に電話(03 9637 3146)または電子メール(legal.services@education.vic.gov.au)で法的助言を求めることができる。
詳細
18歳未満の子どもの親は、裁判所命令や養育計画、または本方針に定めるその他の方法により親責任が変更されない限り、その子どもに対する親責任を有する。生徒に関する決定を下す責任者を決定する際、校長または関係職員は以下の事項を適用しなければならない。
生徒が特定の決定に関して成人または分別のある未成年者である場合は、生徒は自分で決定を下すことができる。生徒が分別のある未成年者である場合、生徒が親または監護者から独立して決定を下す意図を明らかにしていないなら、生徒が特定の決定に関して分別のある未成年者として評価されることを望んでいないものと見做す。18歳未満の生徒が自分で決定したいと表明した場合、校長は生徒がその決定に関して分別のある未成年者であるかどうかを判断すべきである。-「分別のある未成年者と意思決定」を参照のこと。
生徒が成人または分別のある未成年者でない場合は、誰がその子どもの親責任を有しているかを検討する(例えば、子どもの出生証明書に記載されている両親は誰か)。
両親が別離している場合は、次の点を考慮する。
意思決定の責任に影響を与える裁判所命令があるか?-例えば、養育命令(家族法命令とも呼ばれる)、ファミリーバイオレンス介入命令、保護命令など。
意思決定の責任に影響を与える非式の取り決めがあるか?-例えば、養育計画や非公式の監護の取決め(生徒が祖父母や親以外の監護者と同居している場合など、そのような取決めについて裁判所命令が発出していない場合)
決定が子どもに影響を及ぼす日常的な問題に関するものである場合、特定の日に子どもと一緒に時間を過ごしている親または監護者が決定を下すことができる。
決定が子どもに影響を及ぼす長期にわたる主要な問題に関するものである場合、学校は子どもに関する意思決定責任を有するそれぞれの親または監護者の意見を求めることが推奨される。本方針または他の部門方針に別途規定されていない限り、もう一方の親または監護者からの反対意見または連絡がない場合、一方の親または監護者のみが決定を下しても差し支えない。
親および監護者は、関連する裁判所命令または非公式の監護の取決めに関する最新の情報と文書を学校に提供することを求められている。ただし、関連する裁判所命令または交わしている非公式の監護の取決めを学校が認識している場合は、学校は親または監護者に命令のコピーまたは取決めのエビデンスを要求し、それらの命令および取決めについて親および監護者に随時合理的な問い合わせを行うべきである。
生徒に関する決定を下す責任者と、決定を下す責任者に提供する情報を決定する際に、学校職員は、2006年人権および責任法(ビクトリア州)(以下「憲章」)に定められている関係者の人権(例えば、生徒の権利やその親または監護者の権利)も考慮し、憲章に従って行動しなければならない。詳細については、人権憲章を参照のこと。
教育省の法務部門では、必要に応じて、 legal.services@education.vic.gov.auまたは03 9637 3146にて、学校が意思決定の責任を決定する上で役立つアドバイスを提供することもできる。
主要な長期的問題に関する決定
意思決定の責任を有する別離中の両親は、互いに協議し、問題について共同で決定を下すよう真剣に努力することが求められている。法律は、学校などの第三者が、必ず両親が互いに協議し、共同で決定を下せるようにすることまでは求めていない。しかしながら、学校に、主要な長期にわたる問題について別離中の両方の親の意見を求めるための手続きを整備することを推奨している。
以下は、一般的な決定に関する通常の分類についての幾つかのガイダンスである。
主要な長期的な問題は次のとおりである。
入学または転校と学校の選択
学年の移動(つまり、留年や飛び級)
海外遠足についての同意
重大な医療や健康に関する決定
特別な宗教教育への子どもの参加に関する決定
慢性化した不登校
子どもの名前
特定の子どもに長期にわたって大きな影響を及ぼす可能性のある日常的な問題に関する決定
日常的な問題には次のとおりである。
特定の日に授業があり学校が開いている場合の不登校
日帰り遠足の参加についての同意
重大ではない医療や健康に関する決定
別離中の親同士または監護者同士の紛争
子どもに関する決定を下す責任を有する者同士で紛争が発生した場合、校長と学校職員は以下のことに努めなければならない。
紛争への関与を避ける
紛争を解決しようとしない
中立的に行動し、どちらか一方に肩入れしない
関与する子どもや若者の最善の利益のために行動する
学校コミュニティの最大の利益のために行動する
学校職員は、学校は紛争を解決する場所ではないことを親に伝えるべきである。これらの紛争は、話し合い、家族関係センターへの参加、または裁判所を通じて、親同士や監護者同士で解決すべきである。
その他の意思決定の取決め
子どもの親以外の者が生徒に関して決定を下す可能性がある状況は他にも多数ある。
成人生徒
人は18歳になると成人と見做される。成人生徒は、親や監護者が為し得る全ての決定を行うことができる。例えば、成人生徒は以下の行為を決定できる。
自らの入学申込書に署名する
学校が取り組む健康支援または生徒支援サービスへの紹介に同意する
医療処置に同意する
遠足、キャンプ、学校が承認した活動への参加に同意する
他の人(治療医、親、監護者を含む)が個人情報や健康情報を受け取ることに同意する
コンピュータをリースするなどの強制力のある契約を結ぶ
生徒は18歳になると、学校に対して、両親と共同で、あるいは両親とは独立して、一部または全ての決定を下したい旨を伝えても構わない。学校はこの希望を尊重しなければならない。
分別のある未成年者
法律は、子どもが成長して分別を持つにつれ、様々な問題について自分で決定を下す能力が高まり、18歳になる前にこの段階に達する可能性があると認めている。このような子どもを「分別のある未成年者」と呼ぶ。特定の決定に関して生徒が分別のある未成年者であるかどうかを判断するには、「分別のある未成年者と意思決定」を参照されたい。
子どもは、幾つかの決定については分別のある未成年者と見做し得るが、それ以外の決定については見做し得ない。分別のある未成年者が為さない決定(分別のある未成年者が為すことができない幾つかの事項に関する決定を含む)については、親または監護者が引き続きこの方針に定められたとおりに意思決定の責任を有する。生徒が親または監護者から独立して決定を下す意思を明らかにしていない場合は、親が分別のある未成年者に代わって決定を下していると見做し得る。
非公式な監護の取決め
親が子どもを監護できない、または監護する意思を有していない場合は、往々にして親戚や子どもに大きな影響を与える者が子どもを監護する責任を負う。この監護は非公式に提供されることがあり、その場合、子どもに対する法的地位や正式な監護人としての認知を得ることはない。
このような状況では、このような監護者が子どもの通っている、または通学を希望している学校と一緒に取組みを行うために、監護者に非公式監護者法定宣誓供述書の記入を依頼するべきである。これは、子どもの監護の取決めを定めた、監護者の書面による宣誓供述書である-非公式監護者法定宣誓供述書テンプレート(PDF)を参照のこと。
一般的に、記入を終えた非公式監護者法定宣誓供述書を学校に提出した非公式監護者は、この方針に定められているとおり、子どものために学校に基礎を置いた決定を下すことができ、通常は親に提供する学校情報にアクセスできる。
ただし、一般的に、親責任を有する親の決定は、それが非公式の監護者の決定と矛盾する場合、非公式の監護者の決定よりも優先されることに注意を払うことが重要である。
公式な監護の取決め
保健福祉省(DHHS)児童保護局による介入の結果、保護命令が発出され、子どもが家庭外で保護されている場合、子どもに関する決定を下せるようにするために、監護者に「許可書」を発行することがある。
監護者が子どものために行う権限のある決定の種類は、許可書に明記されており、一般的には教育や日常的な医療に関する日常的な決定が含まれる。
一般的に、DHHS児童保護局が介護者に長期的な性質の問題について決定を下すことを許可する特別な許可書を発行しない限り、監護者には、子どもに関する主要な長期的な決定を下す権限はない。
監護者は、署名入りの許可書を校長と学校職員に提供し、加えて、監護の取決めの変更に関する最新情報をどんな変更であっても提供する責任がある。ただし、校長と学校職員は、変更があったことに気付いたときはいつでも、この許可証のコピーを要求するべきである。
状況によっては、これらの命令により、子どもの主要な長期的問題や日常的な決定についての親責任が、子どもの日常的な監護者、DHHS長官、DHHS長官の認可書に基づいて認可された者、または子どもを永久に世話する両親など、子どもの実の親以外の人物に付与することがある。
保護命令が発出されている場合、校長は学校が必ず保護命令のコピーを保管し、これらの保護命令が生徒の監護の取決めや意思決定責任に及ぼす影響を反映するように生徒の記録を更新するようにしなければならない。
校長またはその代理人が意思決定プロセスのあらゆる側面について懸念がある場合は、法務部門に助言を求めること。
定義
親
子どもの親責任を有する者。これには、実親や、裁判所命令によって親責任を与えられた実親以外の者が含まれ得る。
親責任
法律により親が子どもに関して有する全ての義務、権限、責任、権威。
養育命令(家族法命令とも呼ばれる)
1975年家族法(連邦法)に基づいて発せられる裁判所命令であり、以下の問題のいずれかを扱い得る。
子どもが一緒に暮らす者
子どもが他の者と過ごす時間
子どもが他の者と行うコミュニケーション
親責任の分配
子どもの養育、福祉、発達のあらゆる側面
ファミリーバイオレンス介入命令
2008年ファミリーバイオレンス防止法(ビクトリア州)に基づいて発せられる、家族のある者が家族の別の者または別の者たちに対して特定の行動や行為を行うことを禁止する裁判所命令。ファミリーバイオレンス介入命令は、親責任を剥奪したり付与したりするものではないが、親が子どもを監護したり、子どもとのコンタクトをとる能力に影響を与える可能性がある。
保護命令
DHHS児童保護局による保護介入に基づいて、2005年児童・青少年・家族法(ビクトリア州)に従って発せられる裁判所命令。保護命令には、次のような様々な種類がある。
家族保護命令
家族再統合命令
長官の命令による監護
長期監護命令
永久監護命令
養育計画
以下の全ての特徴を満足する、親同士の書面による合意。
子どもの親同士で行う
子どもの両親が署名し、日付を記入する
以下の事項の一部または全てを扱う
子どもが一緒に暮らす者
子どもが他の者と一緒に過ごす時間
親の責任の分配
子どもの養育、福祉、発達のあらゆる側面
養育計画は、裁判所が下した命令ではないにも拘らず、親責任に影響を与える可能性がある。養育計画は養育命令の後に作成され、裁判所の養育命令を変更することができる。
関連方針
遠足
退学
介入命令
分別のある未成年者と意思決定
学生支援団体
学生支援サービス
停学
関連法
2006年人権および責任憲章法(ビクトリア州)
2005年児童・青少年・家族法(ビクトリア州)
1975年家族法(連邦法)
2008年ファミリーバイオレンス防止法(ビクトリア州)
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(了)