第6章 離婚後の子どもの生活の取決めと父子関係の質;重要な基礎的メカニズムとしての父親の関与
この記事は「共有身上監護~子どもの監護の取決めにおける学際的な洞察~」の第6章を翻訳したものです。この文献はオープンアクセスです。原題名、原著者名は以下の通りです。
掲載書:Shared Physical Custody
Interdisciplinary Insights in Child Custody Arrangements
原題名:Chapter 6
Children’s Living Arrangements After Divorce and the Quality of the Father-Child Relationship; Father Involvement as an Important Underlying Mechanism
原著者:Paula Vrolijk & Renske Keizer
なお、翻訳にあたっては、英語のニュアンスを大事にして、“shared physical custody”を「共有身上監護(権)」と訳出しています。
第6章
離婚後の子どもの生活の取決めと父子関係の質;重要な基礎的メカニズムとしての父親の関与
パウラ・ヴロイク と レンスケ・カイザー
要旨 本研究は、複数の関係者によるフランダースの離婚調査のデータを使用して、離婚後の子どもの生活の取決めと父子の関係の質との関連性をより包括的に理解することを目的としている。第一に、父親の関与と共同子育ての質が、生活の取決めと父子関係の質の間の関連性を説明できるかどうかをテストした。第二に、子どもの忠誠葛藤と子どもの性別が、生活の取決めと父子関係の質との間の関連性を緩和するかどうかを調べた。最後に、父親または子どもが自分たちの関係について報告した場合に、結果が異なるかどうか探った。結果は、(報告者に関係なく)父子関係の質が、JPCで暮らす子どもの方が有意に高かったことを示していたが、それは母親とだけ一緒に暮らす子どもと比較した場合に限られていた。更に、父親の関与は、生活の取決めと父子の関係の質との関連性を(再び報告者とは関係なく)説明していた。共同子育ての関係もこの関連性を部分的に説明するが、それは子どもが父子関係の質について報告した場合に限られた。子どもの生活の取決めと父子関係の質との関連性は、娘よりも息子の方が強かった。この関連性には忠誠葛藤による違いはなかった。これらの調査結果は、父親と子どもの間の質の高い関係を維持するには、離婚後も父親が関わり続けられるようにすること、そして望ましい共同子育ての関係を築くことが重要であることを浮き彫りにした。
キーワード 生活の取決め 父子関係の質 共同身上監護 父親の関与 共同子育ての関係
6.1 はじめに
最近の傾向として、ヨーロッパでは両親の離婚を経験した子どもの数が増加している(「ユーロスタット統計の説明」 2016)。研究は、両方の親との良好な関係は子どもの精神的ウェルビーイングに短期的および長期的に有益な結果をもたらすことを示しているが(Staffordら 2016)、離婚した家庭では平均して父子のコンタクトが少なく、両親の揃った家庭と比較し父子関係が希薄になる。(Dunlopら 2001; PetersとEhrenberg 2008; ShapiroとLambert 1999)。この影響の一部は選択バイアスに起因する可能性が高い(即ち、育児に殆ど関与せず、父子関係の質が低い父親は離婚を経験する可能性が高い)とはいえ、縦断的研究により、離婚自体が父子関係を弱めることが明らかになっている(Amato と Booth 1996; Shapiro と Lambert 1999)。子どものウェルビーイングにとって良好な父子関係の質が重要であることを考慮すると、離婚後に父子関係が希薄になる条件と、質の高い父子関係を維持するのにどのような要因が考えられるかを包括的に理解することが重要である。
子どもの生活の取決めは、離婚と父子関係の質との関連において重要な役割を果たしているようである。大多数の子どもは離婚後母親と暮らしているが、親と暮らす時間の少なくとも3分の1をそれぞれの親と過ごすことを意味する、共同身上監護(JPC)の子どもの数も増えている。多くの研究者は、この種の取決めにより、離婚後も父親と子どもが良好な親子関係を維持できると強調している(Baudeら 2016; Bauserman 2012; SpruijtとDuindam 2009; Vanasscheら 2017)。この章では、離婚後の子どもの生活の取決めと父子関係の質との関連性を調査する。私たちは4つの方法で文献に貢献している。第一に、子どもの実際の生活状況を反映して、JPCの取決め、子どもが主として(父親との訪問を取決めている)母親と暮らす取決め、子どもが母親のみと暮らす取決めの3つのタイプに区別する。最近の総説研究は全て、後者の2つのカテゴリーを1つにまとめている(Baudeら 2016; Nielsen 2018)。但し、この区別は、父子関係の継続にどのような機会があるかについて重要な結果をもたらす。第二に、離婚後の生活の取決めが父子関係の質に影響を与えるかどうかという問題に留まらない。この関連性を説明し得る様々なメカニズム、即ち、父親の関与のレベルと共同子育て関係の質について詳しく説明し、検証する。第三に、程度の差はあれ、JPCが、母親とだけ、あるいは主として母親と暮らすよりも、どのような条件下で父子関係の質に有益であるかを調査することを目的としている。私たちは、離婚後の生活の取決めと父子関係の質との関連性が、⒜子どもが経験した忠誠葛藤(即ち、両親の間で板挟みになっているという感情)、および⒝子どもの性別によってどの程度影響を受けるかを調査する。第四に、データセットの複数作用因子の性質により、父親と子どものどちらが父子関係の質について報告するかによって、生活の取決めと父子関係の関連性が異なるかどうかを調査することができる。異なる生活の取決めにおける父子関係の質を調査した先行研究は、子どもの報告のみを使用していた(例えば、BjarnasonとArnarsson 2011; Carlsundら 2013; Låftmanら 2014)が、その定義によれば、父子関係は(少なくとも)二人がその関係についてそれぞれ独自の認識と見解を持っていることで成り立っている(HarachとKuczynski 2005)。私たちは仮説を立てるために家族システム理論を使用した。家族システム理論によれば、常に相互に影響を及ぼし合う個人とサブシステム(例えば、親サブシステム、親子サブシステム)で構成される、より大きな家族の文脈の中で個人を研究することが重要である(CoxとPaley 2003; Minuchin 1985)。
6.1.1 離婚後の生活の取決めと父子関係の質との関係:自己選択バイアスの問題
前述したように、JPCでは他の生活の取決めと比較して、特に母親の単独監護と比較して、父子関係がより強固なようである(例えば、Carlsundら 2013; Låftmanら 2014; Nielsen 2018; SpruijtとDuindam) 2009; Vanasscheら 2017)。子どもは離婚後の生活の取決めによって父親との関係の質を形作ると信じる強固な理由が存在するものの、自己選択の可能性、即ち、様々な家族のメンバーの特徴やメンバーの関係が特定の生活の取決めに関する家族の選択に影響を与える可能性を考慮せねばならない。例えば、子どもとの強い絆で結ばれた父親は、積極的に監護に関与し、JPCの取決めを取得する可能性が高くなる。また、より良好な共同子育ての関係にある親は、JPCを選択する可能性が高くなる。自己選択は生活の取決めに関する研究において一定の役割を果たす可能性があるが、最近のエビデンスは、JPCが子どもにもたらす利点を殆ど説明していないことを示している(BraverとVotruba 2018)。
この章では、自己選択の一部を除外するために2つの選択を行った。まず、2つの重要な自己選択要素を統制することにした(BraverとVotruba 2018)。JPCは低葛藤の家族が過半数を占めており(Sodermansら 2013)、親同士の葛藤は父子関係に悪影響を与える可能性があるため(Kalmijn 2015)、離婚前の親同士の葛藤を統制した。また、親の社会経済的地位(SES)についても統制した。なぜなら、高学歴の親は平均して子どもとの関係が良好であり(Congerら 2010)、低学歴の親と比較してJPCを採用する可能性が高い(Sodermansら 2013)ためである。
次に、研究上の疑問に答えるためにフランドルのデータを使用することにした。ベルギーでは、離婚後にJPCで暮らす子どもの割合は7%(1994年以前に離婚した夫婦)から27%(2007年以降に離婚した夫婦)に上昇した(Sodermansら 2011)。この増加は、ベルギーにおける離婚後の平等な親権に向けた傾向とそれに伴う法律や政策の変化に関連している。2007年以降、JPCはベルギーの法律で離婚後のデフォルトの居所モデルとして導入された。従って、離婚後の子どもの取決めに両親が同意しない場合、裁判官は調査を行い、均等に分割した交替居所の可能性を真剣に検討せねばならない(Vanasscheら 2017)。この法改正により、JPCの生活の取決めは、元夫婦間で葛藤がある家族、または婚姻中に父親が相対的にあまり育児に関与しなかった家族に対し、デフォルトの開始オプションとしても提示されている(Sodermansら 2013)。結果として、2007年以降、ベルギーでは、離婚後の様々なタイプの生活の取決めに対して、自己選択が果たす役割は小さくなった可能性がある。従って、離婚率が高い(ユーロスタット統計の説明 2016)ことと相俟って、ベルギーは離婚後の様々な生活の取決めの影響を研究する興味深い環境を整えている。
6.1.2 離婚後の生活の取決めと父子関係の質との関連性:因果関係
子育ての時間はより良い父子関係を予測するため(Fabriciusら 2010)、研究者は、子どもが母親と父親の間でより均等に時間を費やすほど、父子関係の質が高まることを示唆している。研究は、たとえ親子関係が希薄であっても、父親と子どもが一緒に過ごす時間が増えると関係が改善することを示している(Fabriciusら 2010)。以下では、子どもの生活の取決めと父子関係の質との間の関連性を説明できるであろう2つの要因、即ち父親の関与のレベルと共同子育て関係の質について詳しく説明する。
6.1.3 離婚後の生活の取決めと父子関係の質との関連性:父親の関与の媒介的役割
家族制度の観点から見ると、子どもと同じ屋根の下で暮らすことは、強固な親子関係に寄与する、親としての役割を維持するのに役立つ(Fabriciusら 2010; MelliとBrown 2008; Vanasscheら 2013)。一晩滞在することにより、父親は日中接触するだけで得られるレクリエーションの役割を超えて、より監護的な役割を果たすことができるようになる(Cashmoreら 2008; Stewart 1999)。これにより、父親は登下校や宿題の手伝いなど、子どもの日常生活や日課に関わることができる。このより高いレベルの父親の関与は、より質の高い父子関係に関連している(Cashmoreら 2008)。
6.1.4 離婚後の生活の取決めと父子関係の質との関連性:共同子育て関係の媒介的役割
離婚後、両親は配偶者としてのお互いの関係を終了するが、共同で子育てをする親としての関係は維持する。家族制度理論は、家族全体がこれらの新しい役割、期待、境界に適応する必要があると述べている(Ahrons 1980; Carrollら 2007)。両親は子ども(たち)に関する決定を共同で行う必要があり、子ども(たち)の生活に関する情報を共有する必要があり、自分たちの子育て活動をどのレベルで調整するかを決定する必要がある。即ち、(葛藤がある場合)自分たちの葛藤をマネージメントせねばならないということである。要するに、元配偶者は共同子育ての関係の中で、自分たちの新しい役割において共同で子育てする方法を見つけねばならない。研究は、JPCは単独監護と比較して、より感情的な支援と肯定的な感情によって特徴付けられる強固な共同子育ての関係を予測することを示している(Bauserman 2012; SpruijtとDuindam 2009)。次に、この共同子育ての関係は、父子関係の質に利益をもたらすことが示されている。研究は、母親と別居する父親が望ましい共同子育て関係を築くと、父子関係がより強固になることを示している(SobolewskiとKing 2005)。
6.1.5 離婚後の生活の取決めと父子関係の質との関連性:忠誠葛藤の緩和要因
一般に、JPCの家庭では父子関係の質が最も高くなるが、これは全ての状況、特に親同士の葛藤が激しい場合には当てはまらない可能性がある(Smythら 2016 のレビュー参照)。JPCについての主な懸念の1つは、子どもが親同士の葛藤に曝されている場合、この種の生活の取決めは有益ではない可能性があることである(Pruettら 2014; Smythら 2016; 但し、別の学者は、JPCが常に最善の生活の取決めであると主張していることに注意を要する、例えば、Kruk 2012; Warshak 2014)。両親の間の多くの葛藤を経験した子どもは、往々にして忠誠葛藤を経験し、両親のどちらかを「選択」しなければならないという感情を抱く。板挟みに陥っていると感じている子どもは、もう一方の親や自分自身を傷つける感情なしに、一方の親への愛情を自由に表現することができなくなる(AfifiとSchrodt 2003)。この推論に沿って、学者は、板挟みになっていると感じることは質の低い親子関係に関連していることを示した(AfifiとSchrodt 2003; AmatoとAfifi 2006)。親サブシステムの行動(即ち、親同士の葛藤)は、親子サブシステムに波及する(即ち、希薄な親子関係)ようである。そのため、離婚後の子どもの生活の取決めと父子関係の質との関連性は、どの程度子どもが板挟みになっていると感じているかによって異なる可能性がある。
6.1.6 離婚後の生活の取決めと父子関係の質との関連性:子どもの性別の緩和要因
生活の取決めと父子関係の質との関係に影響を与える可能性のある2つ目の緩和要因は、子どもの性別である。JPCの利点は(子どもが母親だけと暮らす、または主として母親と暮らす取決めと比較して)、父親が子どもとの緊密な絆をより容易に維持できることである。研究は、父親は離婚後も娘よりも息子と連絡を取り合い、強固な関係を維持する可能性が高いことを示している(Marsiglio 1991; PetersとEhrenberg 2008; SobolewskiとKing 2005)。これは恐らく、通常、父親は娘よりも息子に対してより深く関わることが多いためだと考えられる。加えて、調査によると、離婚後の父親と娘の関係は、父親と息子の関係に比べてより大きなリスクに曝されることが分かっている(レビューについては、Nielsen 2011 を参照)。これらの結果は、父と息子の絆は、生活の取決めに関係なく強固である可能性を示唆しているが、娘の場合、質の高い父子関係を確保するには、父親と同居することが特に重要である。
6.1.7 本研究の目的
本研究の目的は、3つの生活の取決めを区別することで、子どもの生活の取決めと父子関係の質との関連性を包括的に理解することである。更に、2つの根底にあるメカニズムを実証的に検証し、どのような条件下で子どもの生活の取決めと父子関係の質との関連性が異なるのかを検討する。私たちは次の仮説を検証することを目的としている。
父子関係の質は、JPCで最も高く、子どもが主として母親と暮らしている家庭ではやや低く、子どもが母親だけと暮らしている家庭では最も低い。
母親とだけ暮らしている子どもの父親や、程度は低いが主として母親と暮らしている子どもの父親は、JPCの父親と比べて子どもへの関与が少なく、このことが、生活の取決めと父子関係の質との関係性を説明している。
母親とだけ暮らしている子どもの親や、程度は低いが主として母親と暮らしている子どもの親は、JPCの親と比べて共同子育ての関係が悪く、このことが生活の取決めと父子関係の質との関係を説明している。
忠誠葛藤を経験する子どもにとって、生活の取決めが父子の関係の質に及ぼす影響はより弱い。
生活の取決めが父子関係の質に与える影響は、息子に比べて娘の方が強い。
更に、私たちの研究結果が、父子関係の質について報告する人によって異なるかどうかを探究する。私たちは構造方程式モデリング(SEM)を利用して研究上の疑問に答える。
6.2 方法
6.2.1 データ
私たちは、2009年から2010年に実施された横断的な「フランダースの離婚」研究を使用した(Mortelmansら 2011)。この複数作用因子の研究には、ベルギー国家登録簿から抽出された、1971年から2008年の間に結ばれた4550件の初婚(基点婚)に関する情報を含んでいる。回答者は、それぞれの基点婚の(元)配偶者の一方または両方であった。更に、対象となる1名の子どもを研究に参加させるために無作為に選んだ。私たちは、面接時点で両親の少なくとも一方と同居しており、10歳から17歳までの未成年の対象となる子どもがいる離婚家庭にだけ焦点を当てた(n = 414)。次に、関心のある3つの取決め以外の取決め(即ち、父親とだけ暮らす取決め、主として父親と暮らす取決め、あるいは柔軟な取決め)をしている家庭を除外した(n = 57)。これらの生活の取決め内のサンプルサイズは、比較から有意義な結論を引き出すには小さすぎた。最後に、子どもが父親と対面で接触していない家庭は除外した。なぜなら、これらの子どもには父親との関係を質問しなかったためである(n = 35)。最終サンプルには、322件の離婚家庭に関する情報が含まれている。研究参加者の面接は、対面式のコンピューター支援個人面接(CAPI)を使用して実施した。
総計では、780人の家族、父親173人(平均年齢M = 43.62、標準偏差SD = 4.52)、母親285人(平均年齢M = 41.42、標準偏差SD = 4.06)、子ども322人で、私たちの調査サンプルは構成されていた。研究に参加した子どもの平均年齢(51.2% 男子)は 13.71歳(標準偏差SD = 2.16)だった。親の大多数は高学歴(父親 = 37.0%、母親 = 43.5%)、または中程度の教育を受けていた(父親 = 41.6%、母親 = 44.2%)。父親のほぼ全員(87.9%)と母親の半数(50.9%)がフルタイムで働いていた。母親の約3分の1(35.1%)がパートタイムで働いていた。面接時点では、親の半数は新しいパートナーと暮らしていた(父親 = 54.9%、母親 = 44.9%)。
6.2.2 測定
生活の取決め 家庭を生活の取決めに分類するために、子どもの実際の居所に関する情報を使用した。この情報は、月間予定を使用して収集した(Sodermansら 2014)。私たちは通常の月に対応する居所予定表を親に提示した。親は、子どもが自分と一緒に住んでいるのか、元パートナーと一緒に住んでいるのかを昼夜毎に明示した。両親の回答が一致しない場合は、平均点を求めた。次に、頻繁に使用されているカットオフ基準に基づいて、3つの異なる生活の取決めを区別した(例えば、Fabriciusら 2012; Smythら 2008):⑴母親とのみ同居している(100%母親の住居で暮らしている)、⑵専ら母親と同居している(子どもが母親と暮らす時間が66~99%、父親と暮らす時間が33%未満)、および⑶JPCで暮らしている(子どもが各親と同居する時間が少なくとも33%)。その結果、母親とのみ同居している子どもは85人(26.4%)、専ら母親と同居している子どもは118人(36.6%)、JPCで暮らしている子どもは119人(37.0%)となった。表6.1は、全家族の生活の取決めがどのような割合を占めているかを示している。
父子関係の質 父親と子どもが別々に父子関係の質を報告した。父子関係は、時間の経過とともに意思疎通の履歴を蓄積する二対関係として定義される(Hinde 1976)。生活の取決めと子どものアウトカムに関する最新のレビュー(Nielsen 2018)では、親子関係の質とは、親と子のコミュニケーションがどの程度良好で、お互いにどれだけ親密に感じているかであると説明されている。父子関係について具体的な概念を探るために、多くの研究者が様々なアイテムを使用している。例えば、学者は親と子の間の愛情と葛藤の両方(例えば、FauchierとMargolin 2004)、あるいは子どもの世話と管理の両方(例えば、Dunlopら 2001)を評価している。本研究でも同様に、父子の関係の感情的要素と評価的要素の両方を利用することを目指した。第一に、子どもと父親に、自分たちの父子関係の質(「父親との関係あるいは子どもとの関係はどの程度良いか、あるいは悪いか?」)を「⑴非常に悪い」から「⑸非常に良い」までの5段階で評価するよう求めた。第二に、親子コミュニケーション測定尺度(PACS)によって親と青年のコミュニケーションを評価した(BarnesとOlson 1985)。子どもと父親は、⑴全くそう思わないから⑺とてもそう思うまでの9項目を7段階評価で回答した。例としては、「私は父親に対して公然と愛情を示しています/私の子どもは私に対して公然と愛情を示しています」などである。コミュニケーション測定尺度は、子ども(α = 0.83)と父親(α = 0.78)に対して良好な信頼性を示した。最後に、関係項目とコミュニケーション測定尺度は、父親( r(169) = 0.48、p <0.001)と子ども( r(315) = 0.68、p < 0.001)の両方で有意な相関があったため、父子関係の質を示すのに、それらの平均値を求めることにした。父親の視点から見た父子関係の質と子どもの視点から見た父子関係の質を別々に分析した。父子関係に関する父親と子どもの報告には有意な関連があった( r(169) = 0.45、p < 0.001 )。
父親の関与 父親の関与は、父親が報告した定量的な尺度である。この尺度は、父親が子どもと一緒に特定の活動(即ち、宿題を手伝う、子どもの問題について話をする、一緒に楽しむ、余暇活動に参加する、学校への送迎をする、保護者の夕べに参加する)を行う頻度に関する6つの質問で構成されている。父親は、「⑴全くない」から「⑺毎日」までの7段階のスケールで答えることができる。スケールは許容できる信頼性を示した(α = 0.70)。
共同子育ての関係 共同子育てとは、子どもに関する両親の共同行為、または両親が親としての役割において協力する方法を指す(Feinberg 2003)。これは親同士の関係や夫婦関係とは若干異なる。Van Egeren と Hawkins (2004) は、共同子育てには、共同子育ての連帯、共同子育ての支援、共同子育ての弱体化、子育ての分担といった4つの側面があると述べている。これらの異なる次元に対応する様々な項目を採り入れることで、共同子育ての多次元的概念を獲得することを目指した。共同子育ての関係を測定するために、両親は3つの項目について報告した。まず、面接時点における自分たちの関係の質(「現在の[元配偶者]との関係についてどう思いますか?」)を「⑴非常に悪い」から「⑸非常に良い」までの5段階で評価するよう両親に求めた。次に、両親は共同子育ての実践に関連する2つの質問、⑴「元配偶者と私は、子育ての責任をどのように分担するかについて同意しています」、⑵「元配偶者と私は、 子どもの経済的な問題について話し合うことが困難です」(逆)に回答した。項目は、「⑴全くない」から「⑸ほぼ常に」までの5段階のスケールで回答する。これら3つの質問と共同子育ての関係の質問は、父親(α = 0.71)と母親(α = 0.72)にとって許容できる信頼性を有していた。父親と母親とを分けて共同子育ての関係を示すために、3つの項目の平均値を計算した。スコアが高いほど、共同子育ての関係が良好であることを示す。父親と母親の報告は、強い相関があり、r(134) = 0.55、p < 0.001であった。 これは、全ての生活の取決めに当て嵌まった(r = 0.47 から r = 0.62 までの範囲にあった)。平均は、両方の親(n = 136)が共同子育ての関係について報告した場合に計算することにした。
忠誠葛藤 過去12か月間、両親間の葛藤(即ち、お互いを非難する、怒鳴り合う、暴力を振るう、故意に物を壊す、お互いに口を利こうとしない)を経験したかどうかを子どもに尋ねた。親同士の葛藤を経験したことがないと答えた子どもには、忠誠葛藤について質問しなかった(n = 129)。親同士の葛藤を経験したと答えた子どもは、両親の言い争いの際に板挟みになったと感じたかどうかを、「⑴全くない」から「⑸全くその通り」までの5段階のスケールで答えることができた。データが正規分布していないため、⑴親同士の葛藤を経験したことがない子ども(n = 129)、⑵親同士の葛藤を経験したものの、忠誠葛藤に関する記述が「全く違う」「違う」「どちらでもない」と答えた子ども(n = 113)、⑶親同士の葛藤を経験し、忠誠葛藤に関する記述が「その通り」または「全くその通り」と答えた子ども(n = 61)の3つのカテゴリーを作成することにした。
別離前の葛藤 父親と母親の両方が、別離前1年間の葛藤を報告した。どのくらいの頻度でお互いを非難したり、怒鳴りあったり、身体的暴力を働いたり、故意に物を投げたり壊したり、あるいは暫くお互いに口を利かなかったことがあるかを両親に尋ねた。両親は、「⑴全くない」から「⑺毎日あった」までの7段階のスケールで答えることができた。これらの5つの項目は、父親(α = 0.72)と母親(α = 0.78)に対して良好な信頼性を示した。
子どもの性別 子どもの性別は面接官が確認し、男子は0、女子は1としてコード化した。
6.2.3 データ分析
研究課題に答えるために、Mplusバージョン8(MuthénとMuthén 2017)の構造方程式モデリングを使用した。私たちは3つのモデルを使用して仮説を検証した。⑴生活の取決めが父子関係の質に与える直接的な影響に関する飽和モデル、⑵媒介効果をテストするためのモデル、および⑶調整効果をテストするための飽和モデル。全てのモデルを2回計算した。1回は子どもが報告した父子関係の質について、もう1回は父親が報告した父子関係の質についてである。
第一に、JPCを参照カテゴリーとして扱い、父子関係の質に主な影響を与える生活の取決めが存在するかどうかをテストした。この直接的な影響を調べるために、全ての統制変数を含む飽和モデルを使用した。私たちは、前述の自己選択要因、即ち父親のSES、母親のSES、父親が報告した別離前の親同士の葛藤と母親が報告した別離前の葛藤を統制した。更に、父親の関与は子どもの年齢によって異なることが示されている(Lamb 2000; Marsiglio 1991)ため、面悦時の子どもの年齢も統制した。次に、別離時の子どもの年齢を統制した。これは、先行研究で、別離時の子どもの年齢が高ければ高いほど、父親と子どもが強固な親子関係を築く機会が増えることが示唆されているためである(Cheadleら 2010)。また、新たなパートナーができる影響も統制した(「0 = パートナーがいない」、「1 = 新しいパートナーがいる」)。母親と父親の両方に新たなパートナーができることは父子関係の質に影響を与える可能性があるためである(例えば、Kalmijn 2012; Noël-Miller 2013;Tachら 2010)。最後に、忠誠葛藤と子どもの性別の影響も含めた。これらの変数は父子関係の質に関連している可能性があるためである。
第二に、重大な主効果があった場合、間接効果をテストした。モデルには父親の関与と共同子育ての関係の両方を含めた。両方の変数に生活の取決め境の影響を追加した。また、父子関係の質に対する両方の変数の影響も追加した。次に、モデルの適合性を向上させるために、より多くのパラメータを含め、χ²差分検定で各モデルを比較した。モデルの適合性が大幅に改善されなかった場合は、間接的な影響をテストした。
最後に、忠誠葛藤と子どもの性別の調整効果は、最初の飽和モデルに6つの潜在変数を追加し、モデルに父親の関与や共同子育ての関係を除いて検討した。2つの潜在変数は、子どもの性別とダミーでコード化した生活の取決め(0 =JPC)の間の相互作用を表した。他の4つの潜在変数は、ダミーでコード化した忠誠葛藤(0 = 親同士の葛藤なし)とダミーでコード化された生活の取決めの間の相互作用を表した。父子関係の質は、これらの潜在変数に基づいて回帰分析を行った。
研究対象となった子どもの家庭322件のうち、父親149人、母親37人が研究に参加しなかった。研究に参加しなかったためデータが欠損している親と研究に参加したためデータが欠損していない親との間には、幾つかの重要な差異が見つかった。研究に参加しなかった父親(平均M = 4.23、標準偏差SD = 0.94)には、データを欠損していない父親(平均M= 4.53、標準偏差SD = 0.90)と比較して、父子関係の質が低いと報告した子どもが多かった[t(315) = 2.88、p値 = 0.004、効果量d = 0.32]。研究に参加しなかったためデータが欠損している母親(平均M = 4.71、標準偏差SD = 0.64)の場合、その母親の子どもは、研究に参加しデータが欠損していない家庭の母親(平均M = 4.35、標準偏差SD = 0.96)と比較して、より高い父子関係の質を報告した[t(60) = 3.07、 p値 = 0.003、効果量d = 0.45]。研究に参加しなかった母親は、養育時間を均等に分割した生活の取決めをしていることが多く[V(1, 322) = 0.30, p値 < 0.001]、一方、研究に参加しなかった父親は、母親とだけ同居している子どもがいることが多かった[(V(1, 322) = 0.30, p値 < 0.001)。研究に参加せず、データが欠損している親は、子どもが報告した忠誠葛藤、パートナーが報告した離婚前の葛藤、パートナーが報告した共同子育ての関係、または父親が報告した父子関係の質に差がなかった。Little(1988)の完全にランダムな欠損の検定(MCAR検定)では、ノルム値χ2(χ2/df) が 1.51 だった。これは、データがランダムに欠損している可能性が高く、欠落項目の補完が問題ないことを示している(Bollen 1989)。欠損データは、R言語のパッケージ「missRanger」を使用して補完した(Mayer, 2019)。非正規性を考慮に入れ、ロバストな標準誤差を用いた最尤推定法(MLR)を、推定法として使用した (SatorraとBentler 1994)。MLRを使用するため、χ²差分検定はスケーリング補正により信頼性がない。そこで、スケーリング補正係数は、Satorra-Bentler尺度化χ²を使用して考慮している。近似誤差2乗平均平方根(RMSEA)が0.05より小さく、比較適合度指標(CFI)が0.95より大きく、モデルの適合が適切であることを示している(HuとBentler 1999)。
3 結果
6.3.1 説明文
全ての変数の度数、パーセンテージ、平均および標準偏差を、生活の取決めごとに表6.2および表6.3に示す。また、全ての変数について異なる生活の取決めを比較するために、一元配置分散分析(ANOVA)とクラメールのVの結果も表示する。主要な変数に関し、子どもが報告した父子関係の質、父親の関与、共同子育ての関係においてグループには有意な差があった。事後テストの結果、母親とだけ暮らしている子どもは、主に母親と暮らしている子ども(d = 0.37、p = 0.003)やJPCの子ども(d = 0.45、p < 0.003)と比較して、父子関係の質が低いと報告したことが明らかになった。更に、JPCの家庭では、父親は、子どもが主に母親と暮らしている家庭(d = 0.62、p < 0.001)または母親だけと暮らしている家庭(d = 0.87、p < 0.001)と比較して、より多くの父親の関与あったと報告した。また、子どもが母親だけと暮らしている家庭に比べて、子どもが主に母親と暮らしている家庭では、父親の関与が有意に多かった(d = 0.41、p = 0.025)。最後に、JPCの家庭では、子どもが母親だけと暮らす生活の取決めと比較して、両親の共同子育ての関係はより良好であった(d = 0.28、p = 0.037)。父親が報告した父子関係の質、子どもの性別、忠誠葛藤については、3つのタイプの生活の取決めの間に有意な違いは見出されなかった。全ての概念の間の相関関係を表6.4に示す。
6.3.2 子どもが報告した父子関係の質
まず、全ての統制変数を含む飽和モデルで、子どもが報告した父子関係の質に及ぼす生活の取決めの主たる影響をテストした。JPCで暮らす子どもと母親とだけ暮らす子どもの間だけに差異が存在した(β = −0.38、p = 0.008)。JPCで暮らす子どもは、母親とだけ暮らしていた子どもたちと比較して、より高い親子関係の質を報告した。JPCで暮らす子どもと主に母親と暮らす子どもの間には、父子関係の質に差異は存在しなかった(β = 0.03、p = 0.790)。
媒介の質問に答えるために、父親の関与と共同子育ての関係を飽和モデルに含めた。モデルの適合性が有意に向上している間、パラメータを追加した(表6.5参照)。8番目のモデルの後、モデルの適合性が大幅に改善されなかったため、そのモデルを媒介分析に使用することにした(χ2(13) = 16.07、p = 0.246、RMSEA = 0.03、CFI = 0.99)。表6.6は、この最終モデルのパラメータを表している。
一番目の媒介分析(父親の関与)では、母親とだけ、または主に母親と暮らしている子どもの父親は、JPCの父親と比較して父親の関与が少ないと報告していたことがわかった。更に、父親の関与が多ければ多いほど、父子関係の質が高くなることが予測された。私たちはJPCの子どもと母親だけと暮らしている子どもとの間に父子関係の質の差異を見出したが、その差異を父親の関与で説明できるかどうかテストした。結果は、父親の関与がこの差異を実際に説明できることを示した。母親とだけ暮らしている子どもは、父親の関与が少なかったため、JPCの子どもと比べて父子関係のレベルが低いと報告した。
2番目の媒介分析(共同子育ての関係)の結果は、JPCの親は母親とだけ暮らしている子どもの親、および(五分五分のレベルの有意差に近い)主に母親と暮らしている子どもの親と比較して、より良い共同子育ての関係を有していることを示した。更に、共同子育ての関係が良ければ良いほど、父子関係の質がより強固になることが予測できた。共同子育ての間接的な影響も有意であった。結果は、JPCの子どもは、両親がより良い共同子育ての関係にあるため、母親とだけ暮らしている子どもと比較して、より強固な父子関係の質を有していることを示している。
次に、生活の取決めの影響が少年と少女で、また忠誠葛藤の様々なレベルで同じであるかどうかを分析した。ダミーコード化した忠誠葛藤とダミーコード化した生活の取決めの相互作用を表す4つの潜在変数を飽和モデルに追加した。また、子どもの性別とダミーコード化した生活の取決めの間の相互作用の影響をモデルに追加した。この飽和モデルのパラメータを表6.7に示す。
第1に、このモデルは、忠誠葛藤が父子関係の質に及ぼす主たる影響を示している。忠誠葛藤を経験した子どもは、親同士の葛藤を経験しなかった子どもに比べて、より低い父子関係の質を報告した。また、親同士の葛藤は経験したが、忠誠葛藤はなかったと回答した子どもは、親同士の葛藤を経験しなかった子どもと比較して、より低い父子関係の質を報告した。忠誠葛藤の調整効果に関する交互作用条件は有意ではなかった。そのため、生活の取決めと父子関係の質との関係には、忠誠葛藤のレベルによる違いはなかった。
第2に、このモデルは、女子が男子に比べて父子関係の質が低いと報告したことを示している。子どもの性別の相互作用効果の1つは有意であり、父子関係の質におけるJPCと母親だけと暮らす取決めとの差異は、男子に比べて女子ではそれほど強くないことを示している。他の相互作用効果は、父子関係の質におけるJPCと主に母親と暮らす取決めの違いについて、男子と女子に差がないことを示した。
6.3.3 父親が報告した父子関係の質
また、父親が報告した父子関係の質について、私たちは第一に、全ての統制変数を含めた飽和モデルで、離婚後の子どもの生活の取決めが父子関係の質に及ぼす直接的な影響を調べた。子どもの報告を使用した際に得られた結果と同様に、JPCの父親と、母親だけと暮らしている子どもの父親との間でのみ、父子関係の質に違いがあるという結果だった(β = −0.28、p = 0.048)。従って、全ての統制変数がモデルに含まれている場合、JPCの父親は、母親とだけ暮らしている子どもの父親と比較して、より高い父子関係の質を報告した。JPCの父親と、主に母親と暮らしている子どもの父親との間に違いはなかった(β = 0.14、p = 0.334)。
父親の関与と共同子育ての関係が、父子関係の質に対する生活の取決めの影響を媒介するかどうかを確認するために、父親の関与と共同子育ての関係を含む新しいモデルを計算した。再び、モデルの適合性が有意に向上している間、パラメータを追加した(表6.8参照)。この結果、最終モデルは子どもが報告した父子関係に使用したモデルと同じになり、モデル適合も同じになった(χ2(13) = 16.07、p = 0.246、RMSEA = 0.03、CFI = 0.99)。このモデルの全パラメータを表6.9に記載した。
子どもの報告書に頼って得た結果と同様に、離婚後の子どもの生活の取決めは、父親の関与のレベルを予測する重要な因子だった。私たちの予想通り、母親とだけ暮らしている、あるいは主に母親と暮らしている子どもの父親は、JPCの父親と比較して父親の関与が少ないという結果だった。父親の関与が増えるにつれ、父親が報告する父子関係の質がより良くなると予測された。父親が報告した父子関係の質における、子どもがJPCで暮らしている場合と母親とだけ暮らしている場合の違いは、父親の関与によっても有意に説明できた。従って、父親の関与がより多いことから、JPCの父親が、母親とだけ暮らしている子どもの父親に比べて、より高い父子関係の質を報告した理由を説明している。
次に、共同子育ての関係については、生活の取決めが共同子育ての関係に有意な影響を及ぼした。JPCの親は、母親とだけ暮らしている子どもの親と比較して、良好な共同子育ての関係を有していた。しかし、子どもの報告とは対照的に、共同子育ての関係は父子関係の質を予測しなかった。共同子育ての関係親関係の間接的な影響も有意ではなかった。要するに、共同子育ての関係は、父親が報告した父子関係の質におけるJPCの場合と子どもが母親だけと暮らしている場合の違いを説明できないことを意味する。
続いて、父親が報告した父子関係の質に及ぼす生活の取決めの影響が、忠誠葛藤のレベルや子どもの性別によって異なるかどうかを分析した。私たちは、ダミーコード化した忠誠葛藤とダミーコード化した生活の取決めの間の相互作用効果、および子どもの性別とダミーコード化した生活の取決めの間の相互作用効果を飽和モデルに追加した。
このモデル(表6.10参照)内では、父親が報告した父子関係の質に及ぼす子どもの忠誠葛藤の影響を見出せなかった。更に、生活の取決めと父親が報告した父子関係の質との関係は、子どもが経験した忠誠葛藤の様々なレベルによって有意な違いは存在しなかった。
第二に、父親が報告した父子関係に及ぼす子どもの性別の主な影響は存在しなかった。最後に、生活の取決めと父親が報告した父子関係との関係は、息子と娘で大きな違いはなかった。
6.3.4 統制変数
最後に、統制変数に関して、モデルは、母親が報告した別離前の親同士の葛藤は、子どもが報告した父子関係の質にマイナスの影響を与える一方、父親の関与にはプラスの相関があることを示している。次に、父親が報告した別離前の親同士の葛藤レベルが高いほど、父親が報告した父子関係の質が低下すると予測できる。父親に新しいパートナーができた場合、このことは子どもが報告した父子関係の弱化に関連していた。しかし、母親に新しいパートナーができた場合、このことは子どもが報告する父子関係の質の向上に関連していた。母親に新たなパートナーができることは、共同子育ての関係の改善にも関連していた。更に、親のSESは、子どもが報告した父子関係の質を予測していた。父親のSESがより高いと、このことは子どもが報告する父子関係の質がより高いことに関連し、母親のSESレベルがより高いと、子どもが報告する父子関係の質がより低いことに関連していた。父親が高学歴であるほど、父親がより積極的に関与する可能性も高くなった。最後に、年長の子どもは年少の子どもに比べて父親の関与が少なかった。
6.4 考察
本研究では、離婚後の子どもの生活の取決めが父子関係の質に及ぼす影響を調査した。私たちは生活の取決めを、JPCの取決め、子どもが主に母親と暮らす取決め、子どもが母親とだけ暮らす取決めの3つに区別した。私たちは、離婚後の子どもの生活の取決めと父子関係の質との関連性の根底にあるかもしれない2つのメカニズム、即ち父親の関与のレベルと共同子育ての関係の質を検討した。更に、これらの関連性が、子どもが経験した忠誠葛藤のレベルまたは子どもの性別によってどの程度条件付けられるかをテストした。最後に、私たちは、父子関係の質について報告した人(父親か子どもか)によって、結果がどの程度異なるかを調べた。
生活の取決めが父子関係の質に及ぼす影響についての私たちの最初の仮説は、部分的に確認された。自己選択要因(即ち、親のSESや別離前の親同士の葛藤)、子どもの年齢、別離時の子どもの年齢、子どもの性別と忠誠葛藤を統制しながらも、子どもが母親とだけ暮らしている家族と比較して、JPCにおける父子関係の質は高かった。とはいえ、先行研究が、両親の間で養育時間をより均等にすることがより良い父子関係につながる(Fabriciusら 2010)ことを示唆していたにも拘らず、JPCの家庭と子どもが主に母親と暮らしていた家庭との間に違いは見られなかった。この結果は、より高い親子関係の質を維持するために実際に一緒の時間を過ごすよりも、2つの親の家で暮らすことの方が親子関係の質にとって重要であることを示唆している(Vanasscheら 2013)。
次に、父親の関与が、父子関係の質に及ぼす生活の取決めの影響を説明できるのではないかという仮説を立てた。この仮説は、JPCの家庭と母親だけと暮らす子どもを持つ家庭との間に見出された違いによって確認された。JPCの父親は、他の生活の取決めをしている父親と比べてより子どもに関与しており、そのため、より高い父子関係の質が予測された。つまり、子どもが父親の家に一晩滞在することで、父親はより監護の役割を果たし、子どもの日常生活や日課により関わることができるようになるのかもしれない(Cashmoreら 2008)。このように父親がより高いレベルで子どもに関与することは、父と子の絆がより緊密になることも予測する。従って、強固な父子関係を確保するために、父親が離婚後も関与し続けることが特に重要である。このことは、父親が報告した父子関係の質と子どもが報告した父子関係の質の両方に当て嵌まった。
共同子育て関係の媒介効果に関する私たちの3番目の仮説は部分的に確認された。父親が報告したモデル内ではなく、子どもが報告したモデル内でのみ、JPCの子どもと母親とだけ暮らしている子どもとの間に見出した父子関係の質の違いを、共同子育ての関係によって説明できることがわかった。JPCは、母親とだけ暮らしている場合に比べて、共同子育ての関係が良好であると予測し、その結果、子どもが認識する父子関係の質もより高いと予測した。この発見は先行文献と一致しており、子どもの養育時間をより均等に分割する生活を取決めた親は力を合わせ、共同で決定を下す必要があり、その結果、より良い共同子育ての関係がもたらされることを示唆している(Bauserman 2012; SpruijtとDuindam 2009)。共同子育ての関係の質は、子どもが報告した父子関係の質と正の相関があったが、父親が報告した父子関係の質とは有意な相関はなかった。私たちの結果は、父親ではなく子どもは、共同子育ての質が低い場合、父子関係の質が低くなると認識していることを示唆している。考えられる説明としては、共同子育ての関係が子育ての実践に影響を及ぼし(Feinberg 2003)、その子育ての実践が、父親が父子関係の質をどのように認識するかより、子どもがどのように認識するかにより大きな影響を与え得るということである。この説明の妥当性を検証するには、今後の研究が必要である。
次に、忠誠葛藤の調整効果に関する私たちの仮説は確認されなかった。親同士の葛藤が存在する場合のJPCに関する懸念(Pruettら 2014; Smythら 2016)から導き出された私たちの予想に反して、生活の取決めが父子関係の質に及ぼす影響には、忠誠葛藤のレベルによる違いは見出せなかった。このことは、忠誠葛藤が認識されているかどうかに関係なく、養育時間をより均等に分割した生活の取決めが父子関係にとって有益であることを示唆している可能性がある(Kruk 2012; Warshak 2014)。子どもの報告によると、忠誠葛藤のレベルは、父子関係の質に直接的に悪影響を及ぼすだけであった。要するに、子どもは親同士の葛藤を経験し、両親の間で板挟みになっていると感じ、その結果、父親との関係の質が弱くなったと認識する。続いて、私たちの結果は、多くの忠誠葛藤のケースで、父親ではなく子どもだけが父子関係の質が低くなると認識していることを示唆している。従って、父子関係に対する子どもの見方は、父子関係に対する父親の見方よりも、親同士のサブシステム内の遣り取りによってより強く影響されるようである。別の原因として、サンプルの均一性に起因している可能性がある。家族の大部分には父親の報告が含まれていなかった。一方で、研究の参加に積極的ではなかった父親の子どもと比較し、私たちのサンプルの子ども、より高い父子関係の質を報告していた。そういうわけで、親は親子関係についてより肯定的なイメージを提供する可能性が高い(Aquilino 1999)ため、父親が報告する父子関係の質のばらつきは、一般集団よりも私たちのサンプルの方が小さく、影響の拾い上げを阻害している可能性がある。
最後に、離婚後の子どもの生活の取決めと子どもの性別との間には、逆方向ではあるものの、子どもが認識する父子関係の質に有意な相互作用効果があることを発見した。JPCの子どもと母親とだけ暮らしている子どもとの間に見出された父子関係の質の違いは、女子よりも男子の方が大きかった。この発見は、父と息子の関係の質は、父と娘の関係の質に比べて、父と子のコンタクトの変化により影響されやすいことを示唆している。社会的学習理論によれば、子どもは模倣と模倣を通じて振舞い方を学び、親が主たるロールモデルになる。BusseyとBandura (1984)は、子どもは同性の親との関係から振舞い方を学ぶ可能性が高いことを示した。この研究結果は、父親と子どもの間のコンタクトが増えると、父親と娘の関係に比べて父親と息子の関係に大きな影響を与える理由を説明する可能性がある。とはいえ、読者は、これらの調査結果が子どもの報告にのみ関係していることを考慮する必要がある。
この章では、誰が父子関係の質を報告するかによって結果が異なるかどうかを検討した。全体像、即ち、父親の関与のレベルが、離婚後の子どもの生活の取決めと父子関係の質との関係の基礎となるメカニズムであることが非常に類似していることがわかったものの、注目に値する興味深い違いも見つかった。共同子育て関係の質は、子どもが認識する父子関係の質における、JPCの暮しと母親だけとの暮らしの違いを説明するものであったが、それは父親が認識する父子関係の質の基礎となるメカニズムではなかった。更に、父親ではなく子どもは、自分が板挟みになっていると感じると、父子関係の質が低下することを経験した。最後に、子ども報告モデルにおいてのみ、子どもの性別による調整効果が見つかった。これらの調査結果は、離婚が親子関係に与える影響について様々な視点を持つことの重要性を浮き彫りにしている。なぜなら、それぞれの視点が、離婚に関わる様々な家族間の複雑な相互作用についての理解を深めるからである。加えて、これらの発見は、これらの違いがどこから来て、どのように説明できるかを理解するには、更なる研究が必要であることも示唆している。
この研究には2つの重要な限界がある。第一に、縦断的研究は因果関係を証明するには限界がある。例え親のSESや別離前の葛藤を統制したとしても、3つの異なるタイプの生活の取決めの間に見られる父子関係の質の違いの根底には、依然として自己選択バイアスが存在する可能性がある。とはいえ、私たちのサンプルでは、離婚後に父子関係が変化するという強力な証拠を発見した。私たちは、研究の参加者に、面接時点の父子関係が、両親が別居を始める前と比べて、良いか悪いかを尋ねた。母親だけと暮らしている子どもは、主に母親と暮らしている子どもやJPCの子どもと比較して、父子関係の質においてより好ましくない変化を報告した。自己選択バイアスがその役割を果たしていないとは言えないが、これらの発見は因果メカニズムについて示唆的な証拠を提供する。第二に、私たちのサンプルは以前に結婚したことのある親だけで構成されているため、異なる家族構成を持つ家庭への一般化が制限される可能性がある。また、本研究への参加に同意した親は比較的高学歴だった。このことは、父子関係の質についてより肯定的な見方を与える可能性がある。なぜなら、先行研究は、より教育を受けた(別居する)父親は、子どもとの頻繁なコンタクトを維持する可能性が高いことが示されているためである(CookseyとCraig 1998; Congerら 2010)。
これらの制限はあるものの、私たちの研究は、離婚後の子どもの生活の取決めと父子関係の質との関連性、およびこの関連性の根底にあるメカニズムについてのより包括的な理解を提供することにで、既存の文献に貢献した。私たちは、同じモデル内の複数の複雑な関係を調べることができる洗練されたSEMモデルを使用した。私たちは、親が報告した共同子育ての関係を考慮するだけでなく、子どもが経験した忠誠葛藤も評価した。また、別離前1年間の親のSESと親同士の葛藤についての自己選択バイアスの影響も統制した。なぜなら、これらの特性が家族にJPCを選択させる原因となっている可能性があり、また、父子関係の質にも影響を与えている可能性があるためである。最後に、本研究が、様々な生活の取決め内の父子関係の質について、子どもの報告と父親の報告の両方を調査した最初の研究だったことである。
私たちの分析により、父親の関与のレベルは、離婚後の子どもの生活の取決めが父子関係の質に与える影響の重要な基礎メカニズムであることが明らかになった。JPCと父親のための訪問の取決めは、父親が子どもの生活に深く関与し続けることができるため、父子の関係の質に有益であると思われる。両親と質の高い関係を築くことは、子どもの精神的ウェルビーイングに短期的および長期的に有益な結果をもたらすため、政策立案者、弁護士、親は、離婚後も両親が子どもの生活に関与し続けることができる生活の取決めに努めるべきであると提案するかもしれない。子どもの観点からすると、良好な共同子育ての関係を築くことも非常に重要である。両親の間で板挟みになっていると感じた子どもは、父子関係の質が弱くなったと報告した。更に、強固な共同子育ての関係は、JPCの子どもが自己申告した父子関係の質と母親だけと暮らしている子どもが自己申告した父子関係の質との違いを(部分的に)説明した。結論として、強固な父子関係を築くためには、父親が子どもの日常生活に常に関与し、好ましい共同子育ての関係を維持することが重要であることが今回の研究は示している。
謝辞 この原稿の前バージョンの分析に関する有益なコメントを下さったCaspar J. van Lissa博士(ユトレヒト大学)に感謝いたします。本研究は、オランダ科学研究機構からレンスケ・カイアーへの助成金(NWO MaGW VIDI; 助成金番号 452-17-005)および欧州研究評議会からレンスケ・カイザーへの助成金(ERC StG; 助成金番号 757210)の支援を受けた。
この章は、オープンアクセスを可能にしたアントワープ大学の人口・家族・保健センター (CPFH) の支援からも恩恵を受けた。
付録
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ポーラ・ヴロイク オランダのエラスムス大学ロッテルダム行政社会学部の博士課程候補者。主な研究対象には、家族関係と青少年のウェルビーイングが含まれる。2017年にユトレヒト大学で「児童期および青年期における発達と社会化」の修士課程を修了。ユトレヒト大学の次席研究員として、離婚家族を主な研究対象とした。博士論文では、青年期における親の自立支援の先行事例とその結果に焦点を当てている。
レンスケ・カイザー オランダのエラスムス大学ロッテルダムで家族社会学の正教授を務める。主な研究対象は、社会的不平等の強化、維持、弱体化において家族、特に父親が果たす役割である。研究は、社会学、教育科学、人口統計、発達心理学に跨っている。研究の中心は、理論に基づいた人生行路のアプローチを個人および(拡大)家族の行動とウェルビーイングに適用することである。また、実証済の実績として、「結婚と家族ジャーナル」、「家族心理学ジャーナル」、「人口と開発レビュー」、「ヨーロッパ社会学的レビュー」、「ヨーロッパ人口ジャーナル」等の一流雑誌で多く引用された幾つかの出版物を通じ、これまで複数の分野や政策議論に多大な貢献をしている。ERC開始時助成金、NWO-VENI助成金、NWO VIDI助成金等、幾つかの名誉ある助成金も受賞している。2016年、オランダとフランドルの全ての大学から最も才能のある若い学者25人の1人に選ばれた。2019年以降、オランダ王立科学アカデミーであるヤングアカデミーの会員である。
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[訳者註]総説論文 review study
総説論文ないしレビュー論文とは、ある主題における現行の理解の状態を要約した記事である。総説論文は、新しい事実や分析を報告するというよりは、既に公表された題材を再提示するものである。時に展望論文ないしサーベイ論文、あるいは解説論文とも呼ばれる。
[訳者註]ユーロスタット Eurostat
欧州連合に関連する資料・統計を作成し、加盟国全体の調整を促進することを目的とした欧州委員会においての統計を担当する部局。EU統計局ともいう。
[訳者註]ユーロスタット統計の説明 Eurostat Statistics Explained
電子出版プラットフォームであると同時にユーロスタットの統計情報へのゲートウェイでもある。Wikipedia と同じように機能するため、使いやすく、ナビゲートしやすいです。「統計の説明」の役割は、以下の3つである。①欧州連合統計に関する百科事典、➁一時的なユーザーと通常のユーザーの両方のための詳細情報へのポータル、③統計用語集。「統計の説明」は、インターネットが提供するハイパーリンクや同様の可能性を広範囲に利用して、様々なレベルでの情報へのシームレスなアクセスを提供している。「統計の説明」には、統計データと説明が含まれているが、統計を理解するのに役立つあらゆる種類の関連背景情報への直接リンクも含まれている。
[訳者註]構造方程式モデリング structural equation model SEM
直接観測できない潜在変数latent variableを導入し,その潜在変数や観測変数observed variableの間の因果関係を表現する構造方程式を構築し,推定することによって自然現象や社会現象を説明する統計モデルを指す。SEMと略され,回帰分析regression analysisと因子分析factor analysisを統合・拡張したもの。SEMの伝統的なモデルでは,変数の分布は連続型で構造方程式は線形であるが,近年,離散型分布をもつ変数や非線形の構造方程式を扱うことができるようになり,潜在構造モデルや項目反応モデル,有限混合モデルなど多変量解析の多くのモデルを含む包括的なモデルになった。また,多段抽出法など複雑なサンプリング方法にも対応する。統計的推測には観測変数間の分散・共分散構造を利用することが多いので,共分散構造分析analysis of covariance structureとよばれることもある(Bock,R.D.,& Bargmann,R.E.,1966)。歴史的にはヨレスコフJöreskog,K.G.(1969)が確認的因子分析confirmatory factor analysisを提案したことに始まる。そして,ヨレスコフとソルボムSörbom,D.の一連の論文によって開発されたLISRELモデルと同名のプログラムが,構造方程式モデルを発展・普及させた。
[訳者註]コンピューター支援個人面接 Computer Assisted Personal Interviews CAPI
統計調査のデータ収集方法は、回答者自身が回答を記録する「自記入式調査」と調査員が記録する「調査員調査」に大別される。自記入式調査における回答者への調査票配布(チャネル)手段には、郵送やファックスといったものが挙げられる。インターネット回答も自記入式調査の1分類とみなすことが可能である。PC等を用いる場合は CASI(Computer-Assisted Self Interview: コンピューター支援による自記入式調査)、と呼ばれる。調査員調査は実際に調査員と回答者が対面して行う「面接調査」と、電話によるやり取りを行う「電話調査」に分類される。面接調査では、調査員が回答者による調査票の記入を面接で支援し、面接は回答者の住居や職場など様々な場所で行われる。特に、紙による調査票を用いる場合はPAPI(Paper And Pencil Interview: 紙と鉛筆による調査)、PC等を用いる場合は CAPI(Computer-Assisted Personal Interview: コンピューター支援による面接調査)、と呼ばれる。電話を利用して回答データを収集しする電話調査では、紙による調査票を用いる場合もあるものの、PC 等を利用する場合を特に CATI(Computer-Assisted Telephone Interview: コンピューター支援による電話調査)と呼ぶ。
[訳者註]親子コミュニケーション測定尺度 Parent-Adolescent Communication Scale PACS
親子間のコミュニケーションは,生活の満足度や各種依存症,抑うつ等の独立変数,即ち「原因」として取り上げられており,その際によく用いられる測定尺度である。この尺度の欠点は,その因子として「開放型コミュニケーション」と「問題型コミュニケーション」を想定しているため,この尺度を用いて親子のコミュニケーション状態を把握したとしても「具体的な介入方法」を提示することが困難な点である。また,測定尺度は妥当性並びに信頼性を担保しなければならないが,この尺度の場合は信頼性の検討にとどまっている点も挙げられる。
[訳者註]Mplus
Muthénらによって開発された構造方程式モデリング(SEM)のソフトウェアで、数あるSEMソフトウェアの中でも、最も柔軟性が高く、ロバスト推定法、特殊な変数(カテゴリカル変数、打ち切り変数、回数データ等)を含むモデル、マルチレベルSEM、混合分布モデル棟の広範囲のモデルや推定法を扱うことが出来る。このソフトの特徴は、①頻繁に使用する解析が最低限の命令で実行可能、➁基本的な解析のために覚えるルールが少ない、③モデルをパス図として確認できる、④初学者が犯しやすいモデル指定上おミスを回避するために仕様上の工夫がなされている、⑤サポートが充実し、価格も比較的安価でることが挙げられる。
[訳者註]飽和モデル saturated model
SEMにおいて、全ての変数の間に因果関係を示す矢印が存在しない、完全に無相関だと仮定した最悪モデルを「独立モデル」と呼び、反対に,全ての観測変数間に両方向の矢印を引いたモデル(共分散を独立に推定するモデル)のことを「飽和モデル(フルモデル)」と呼ぶ。
[訳者註]MCAR検定 Missing Completely at Random Test
データに欠損値が生じる要因は、以下の3つに大別される。①データが,完全にランダムに欠損する、➁データが,測定されている値に依存して欠損する(欠損データとは無関係)、③データが,欠損データに依存して欠損する。これらは、それぞれ①完全にランダムに欠損(Missing Completely At Random, MCAR)、➁観測データに依存する欠損(Missing At Random, MAR)、③欠損データに依存する欠損(Missing Not At Random, MNAR)と呼ぶ。LittleのMCAR検定とは、データがMCARまたはMARであるという帰無仮説のもとで、欠測のランダム性を確認する検定である。
[訳者註]ノルム値 norm
ノルム値(ノーム値、Norm)とは、同手法で行われたアンケート調査等の統計データの基準値のことを指す。
[訳者註]R言語 R
R言語はオープンソース・フリーソフトウェアの統計解析向けのプログラミング言語及びその開発実行環境である。ニュージーランドのオークランド大学のRoss IhakaとRobert Clifford Gentlemanにより作られた。
[訳者註]ロバスト標準誤差 robust standard errors
最小二乗法による推定には、一般的に次のような仮定がおかれる場合が多い。①誤差項の期待値が0、➁説明変数と誤差項が無相関、③均一分散。これらが満たされる場合、推定量は不偏性と一致性、有効性を持つ(Gauss-Markovの定理)。しかし、③の均一分散の仮定が満たされなかったとしても、推定量は依然として、不偏性と一致性を有する。そのため、不均一分散が起きていようとも、計算される推定量の値は変化しないが、計算される標準誤差の値にはバイアスが生じてしまう。結果として、本当は有意でないにも関わらず、有意であるという結果が得られる危険性(あるいはその逆)がある。そこで、そのバイアスを修正するために標準誤差として使用する値をロバスト標準誤差という。
[訳者註]最尤推定法 maximum likelihood estimation
手元のデータが、どの母パラメータに従う分布から得られる確率が最も高いかに基づいて考えられる推定。
[訳者註]RMSEA root mean square error of approximation
近似誤差2乗平均平方根。モデルの分布と真の分布との乖離を1自由度あたりの量として表現した指標。一般的に,0.05以下であれば当て嵌まりがよく、0.1以上であれば当て嵌まりが悪いと判断する。
[訳者註]CFI comparative fit index
比較適合度指標。独立モデルを比較基準とした場合に、どれだけモデルとデータの乖離度が改善されたかを示す指標である。0以上1以下の値をとり、1に近い値ほど、モデルの適合度が高いと評価することができる。
[訳者註]一元配置分散分析one-way ANOVA one-way analysis of variance
F分布を用いて3つ以上の標本の平均を比較するために使われる手法。
[訳者註]クラメールのV Cramer’s V
r行×c列のクロス集計表における行要素と列要素の関連の強さを示す指標。0~1の値をとり、1に近いほど関連が強い。クラメールの連関係数(Cramer's coefficient of association)とも言う。サンプルサイズをn、カイ二乗値をχ²とすると、クラメールのは以下の式で表される。
V=√(χ²/(n×min(r-1,c-1))
[訳者註]媒介 mediation
変数Xで変数Mを説明し、さらに変数Mから変数Yを説明するという連作的な関係性を指す。一方、調整(moderation)は、変数Mの値によって、変数Xと変数Yの関連の強さが変化する、という関係性を指す。例えば、季節X、気温A、性別B、アイスクリームの消費量Yとすると、XとAとYの関係が媒介で、XとBとYの関係が調整である。
[訳者註]媒介分析 mediation analysis
影響を与える変数(独立変数)と,影響を受ける変数(従属変数)との間を,他の変数(媒介変数)が介在しているようなモデルを検討する分析であり,独立変数と従属変数の間にある心理的なプロセスを検討するのに有効な方法である。
[訳者註]社会的学習理論 Social Learning Theory
人は自身の体験だけでなく、他者の行動を観察・模倣すること(=モデリング)によっても学習する、とした理論。1970年代、カナダ出身の心理学者でスタンフォード大学の教授であるアルバート・バンデューラ(Albert Bandura)によって確立された。バンデューラが「社会的学習理論」と名付けた理由は、「学習は社会のなかで行われるもの」と強調するためで、著作では「人間の学習は、人間と社会との相互的制御関係のなかで行われる」とも述べている。
[訳者註]ERC開始時助成金 European Research Council Starting Grants
独自の独立した研究チームまたはプログラムを開始するキャリア段階にある優秀な主任研究者をサポートする助成金制度。主任研究者は、科学的提案の画期的な性質、野心、実現可能性を実証しなければならない。開始時補助金は5年間で最大150万ユーロまで授与する。
[訳者註]NWO-VENI助成金
NWO VENIVeni助成金は有能な科学研究者の育成を狙いとしたNWO(オランダ科学研究機構)の制度のひとつであり、その助成額は最大で25万ユーロとなっている。研究者は、脳のストレスに対する脆弱性や、(欧州における)社会連帯の境界線、プラズマの利用により航空機の空力性能を高める方法など、多岐にわたる分野の研究を行うことになる。
[訳者註]NWO-VIDI助成金 NWO VIDI
Vidi は、NWO(オランダ科学研究機構)才能プログラムの助成金制度。Vidiの対象者は、際立った独創的な才能と、挑戦的で革新的な研究を行うことに大きな魅力を持った優秀な研究者(博士号取得後8年以内)で構成されている。
(了)