第5章 親が離婚した子どもへの支援システムとしての学校の役割
この文献はオープンアクセスです。原題名、原著者名は以下の通りです。
掲載書:Electronic Theses and Dissertations. Paper 704. https://dc.etsu.edu/etd/704
原題名:The School's Role as a Support System for Children of Parental Divorce.
原著者:Constance Myers
第5章
調査結果、結論、および推奨事項の要約
要約
離婚の問題と、離婚が子どもに影響を与えるのか、影響を与えるならどのような影響を与えるかは、今日の社会の関心事である。Divorce Magazine.Com (2001) で報告された1998年の統計によると、初婚の50%が離婚で終わる。これだけでも、学齢期の子ども100万人以上が影響を受ける可能性がある。学校で過ごす時間のおかげで、学校は両親の離婚から生じ得る問題を認識し、特定する場所になり、介入を行うのに適切な環境を提供する。
本研究の目的は、親、教師、およびスクールカウンセラーが、両親が離婚した子どものための支援システムとしての学校の役割をどのように見ているかを判断することである。本研究では、調査のために選択した4つの学校のうちの1つに子どもが通う離婚した親から、介入と提案に関する意見も調査した。
本研究の参加者は、特定の基準を満たす親、担任教師、およびスクールカウンセラーだった。本調査は、定性データを収集するために設計された複数拠点の研究で構成した。データは自由回答形式のインタビューを使用して収集した。情報には、人口統計データと参加者に提示した質問に対する一般的な回答を含めた。データを管理しやすい単位に整理し、テーマについて調査した。
幅広い社会経済的背景を代表する20人の離婚した両親(母親14人、父親6人)が選ばれた。本研究のためにインタビューを受けた両親は、結婚歴が1年から20年で、年齢は20歳から48歳だった。各家庭の子どもの数は1人から6人だった。研究のために選んだ4つの学校から、幼稚園から6年生までの20人の教師が選ばれた。彼らの教育経験は6年から32年だった。選ばれた8人のスクールカウンセラーは、担任教師とカウンセリングの両方の経験があった。カウンセラーとしての経験は2年から18年だった。
調査結果
親
20人の親にインタビューした結果、学校と、両親が離婚した子どもの支援システムとしての担任教師とスクールカウンセラーの役割について、4つの主要なテーマが浮かび上がった。これらのテーマは、学校への情報開示に関する親の意見、感情的な問題に対処するために教師が果たす役割を親がどう考えているか、両親が離婚した子どもにとってプラスのリソースとしてのカウンセラー、スクールカウンセラーにとって有益だと親が考える提案で構成されていた。
インタビューを受けた親は、学校に離婚を知らせるかどうかについて明確な意見を持っていた。15人の親は、離婚に際して学校に知らせたと答え、7人の親は、問題が発生した場合に学校職員が分かるようにと学校に伝えた。5人の親は、既に家庭で子どもとの問題を抱えており、助けを求めて学校を訪れた。3人の親は、監護権の問題で学校に離婚を知らせた。対照的に、5人の親が、離婚について学校に知らせる必要はないと考えた。
インタビューを受けた20人の親は、それぞれ、離婚に対する子どもの反応に担任教師が関与すべきかどうかについて語った。5人の親は、教師が子どもとともに課題に取り組むだけでなく、家庭で使える介入で自分たち親を支援してくれることを望んでいた。20人の親全員が、離婚手続き中に子どもが教室で感情的な助けを必要とした場合、担任教師が支援を提供するべきだと述べた。彼らは、この時期に教師が子どもの声に耳を傾け、支援を示し、少しの愛情と理解を示すことを期待していた。
20人の親全員が、カウンセラーを離婚に対処する分野の研修を受けた専門家と見做していた。彼らは、自分たちと子どもがスクールカウンセラーと話すことに抵抗がなく、彼らの提案を喜んで利用するだろうと認めた。親は、スクールカウンセラーが子どもを支援する際に知っていて欲しいこと、理解してほしいことを指摘した。これらには、支援すること、親に情報を提供すること、個人および小グループのカウンセリングを開始すること、話を聞く際に気遣いを示すこと、離婚とは何か、離婚は自分のせいではないことを子どもに理解させることなどが含まれていた。
教師
20人の教師にインタビューした結果、両親が離婚した子どもへの介入における教師の役割とカウンセラーの役割について、3つの主要なテーマが浮かび上がった。これらのテーマは、離婚に起因する問題が発生した場合の教師の子どもに対する責任、教室で最も役立つと思われる介入、スクールカウンセラーの重要性と有用性で構成されていた。
インタビューを受けた20人の教師のうち8人は、離婚問題に対処するのは自分の責任ではないと考えていた。8人全員が、教師はカウンセラーではなく学問を教える専門職であることの重要性を強調した。これらの教師は、8人全員が教育経験は15年未満だった。
インタビューを受けた12人の教師は、学業だけでなく感情面でも子どもとともに課題に取り組むことが自分の責任であると述べた。これらの教師のうち6人は15年未満の教育経験しかなく、残りの6人は15年以上の経験があった。彼らは感情面の支援は自分の責任であると指摘したが、追加の支援のためにカウンセラーと話をしたり、カウンセラーの元に子どもを送ったりすることに抵抗はないとも述べた。
20人の教師全員が、自分の教室で子どもとともに課題に取組むのに際し、最も効果的と思われる戦略を採用したと述べた。彼らは、即座にカウンセラーに相談する、生徒と過ごす時間を増やす、授業や行動に関する警告に十分な時間をかける、慰めたり抱きしめたりするために傍にいてあげる、離婚に関する自分の経験を生徒に話すなどの提案をした。
インタビューを受けた20人の教師全員が、スクールカウンセラーは両親が離婚した子どもへの介入に関する特別な研修を受けており、必要に応じてリソースとして利用していると述べた。カウンセラーをリソースとして利用した理由を尋ねると、カウンセラーはこの目的のためにより多くの時間を割いていると信じていることなどの理由を挙げた。教師たちはまた、教室のリソースを入手したり、子どもに大人1人と2人きりになる時間を与えたり、1対1および小グループでのカウンセリングを提供したり、親に教材を提供したりするためにカウンセラーを利用できると述べた。
カウンセラー
8人のカウンセラーにインタビューした結果、学校の役割、特に両親が離婚した子どもへの介入におけるカウンセラーの役割について、4つの主要なテーマが浮かび上がった。これらのテーマは、両親が離婚した子どもへの支援技術に関するカウンセラーの知識、介入が自分の責任であると認めた理由、両親が離婚した子どもを支援しようとする際の最大の障害、カウンセラーが最も効果的だと判断した介入方法で構成されていた。
8人のカウンセラー全員が、両親が離婚した子どもへの介入に関する特別なまたは正式な研修は受けていないと述べた。彼らは、他の手段で知識と情報を得たと述べた。カウンセラーのうち5人は、両親が離婚した子どもへの介入技術に関する特別な研修は受けなかったものの、修士号取得中に受講した授業が知識の源になったと考えていた。2人のカウンセラーは、離婚問題に関する研修の殆どをセミナーやワークショップで受けたと述べた。5人のカウンセラーは教育専門家の学位を取得していたが、それが研修として役立ったと述べた者は1人だけだった。
8人のカウンセラー全員が、両親が離婚した子どものカウンセリングは自分の責任だと考えていると述べた。8 人のカウンセラー全員が、子どもの感情的なニーズに対処することで、学業で成功する可能性が高まると述べた。また、子どもに対処スキルを提供し、子どもにとって安全で安心できる存在になり、親や教師をリソースで助けることが自分たちの仕事の重要な部分であると述べた。
8人のカウンセラーのうち7人は、時間的制約が仕事の最大の課題であると考えていた。彼らは、教室での指導と事務作業の両方でますます多くの要求が課され、これらの要求が両親が離婚状況にある子どもを支援する試みを妨げていると述べた。あるカウンセラーは、子どもが教室を離れる時間の問題を懸念事項として表明した。時間制約について言及しなかったカウンセラーは1人だけだった。このカウンセラーは、自分は個人的に離婚を経験したことがないので、子どもに同情することはできるが、子どもに共感することは難しいと述べた。
調査結果の追記
インタビュー前、各親、担任教師、スクールカウンセラーは私がスクールカウンセラーであることを知っていた。親のインタビューが終了し、テープレコーダーを止めた後、各親は個人的な会話を続けようとし、もっと話したいという希望を示した。インタビューを受けた者は誰も学校の専門家について否定的な発言をせず、各個人が子どもへの懸念を表明した。
結論
インタビューにより、親、教師、カウンセラーが、親が離婚した子どもとともに課題に取り組む際の学校の役割について述べた内容を詳細に調べることができた。各グループを個別に検討したが、全体としてグループ間で想定が存在していた。親と教師の両方に最初に見られた共通点は、スクールカウンセラーが、親が離婚した子どもへの介入に関する特別な研修を受けているという認識であった。スクールカウンセラー8人全員が、両親が離婚した子どもへの介入について特別な研修を受けたことはないと述べたが、親が離婚をした子どもへの介入は自分たちの責任だと考えており、参加した授業やワークショップ、カウンセリングの経験から得た知識が役立ったと述べた。加えて、両親、教師、スクールカウンセラーは全体として、学校は両親が離婚した子どもに必要に応じて感情的な支援を提供する場所であることに同意した。
結果は、カウンセラーが自分の立場や行動を通じて親や教師から信頼を得ていることを示した。この事象は研究全体に織り込まれており、親や教師が両親が離婚した子どもを支援するカウンセラーの能力を信じていることを示すたびに認識できた。
実践のための推奨事項
親、担任教師、スクールカウンセラーへの推奨事項は、研究に参加した親、担任教師、スクール校カウンセラーの洞察と、それらのデータを統合した研究者の思考の結果である。
親
インタビュー中に親が自分の子どもについて表明した懸念に基づき、親には子どものウェルビーイングに役立ち、子どもが一生懸命に勉強をするのに役立つリソースを与えることが推奨される。
両親が離婚した子どもは怒りを感じ、賢明でない選択をすることがある。この事象は、本研究に参加した親のコメントが示しており、文献のレビューと一致している。両親が離婚した子どもにアンガーマネジメントと問題解決のスキルを教えるには、学校や家庭センター、教会などのコミュニティ機関が提供する両親が離婚した子ども向けのプログラムに親が参加することを推奨する。
文献のレビューと本研究の調査結果から、離婚中に子どもに影響を与える多くの要因は親が引き起こしているという認識が高まっていることが分かった。親は子どもの変化の担い手となり、この移行期間を乗り切る支援をしなければならない。子育てスキルの向上を支援するためのプログラムを更に提供することを推奨する。これらは、スクールカウンセラー、家庭生活センター、教会を通じて提供されるべきである。
本研究で示されているように、スクールカウンセラーの研修と職務内容に関する知識が不足しているため、親は会議に出席し、利用可能なリソースについて、学校事務局、担任教師、またはスクールカウンセラーを通じて学校と緊密にコンタクトを取るこことを推奨する。
本研究に参加した数人の親が指摘したように、時として非監護親による実子誘拐が懸念されることがある。監護権問題については、親が学校に伝えることを推奨する。親は、単独監護権に関する法的文書を学校事務局と子どもの担任教師に示し、誰が子どもを迎えに行けるか、誰が迎えに行けないかを学校が把握していることを確認すべきである。
教師
本調査の調査結果は、家庭と学校の間のコミュニケーションが重要であることを示している。離婚手続き中の教師と親とのコミュニケーションは重要であるため、担当するクラスに子どもが転入してきた際に、親が記入できる情報シートを教師が作成することを推奨する。これにより、家族の状況と子どもが誰と一緒に住んでいるかに関する情報が得られる。
文献のレビューと本研究の結果から、教師が親に効果的な情報を確実に提供する必要があることがわかった。6週間ごとに学校で保護者面談を行い、親が出席できない場合は、各親に対しメモを家に送るか、電話をかけることを推奨する。そうすることで、親が子どもの感情、行動、学業の発達におけるどんな変化にも気付くことを直ちに保証できる。
調査結果から、両親が離婚した子どもにカウンセラーが提供できる介入や支援技術があることが実証された。カウンセラーが提供できるものを、教師が認識していることは非常に重要である。教師はカウンセラーと頻繁に話し、サービスやリソースについて質問する時間を取ることを推奨する。
本研究のデータは、教師は芸術プロジェクトや文章作成、物語の語りなどを利用して、子どもが自分の気持ちを表現できるようにする必要があることを示している。担任教師は、学習プロセスを継続しながらも子どものニーズに気づくために、教室でこのような方法を使用することを推奨する。
本研究のデータから、両親の離婚を経験している子どもは、人生のあらゆる変化に戸惑い、不安を感じることがあることがわかった。担任教師は、この移行期に必要な支援と一貫性を提供しなければならない。担任教師は、両親が離婚した子どものために構造化された教室を維持し、そこで子どもにルールを認識させ、子どもが自分は有能である、自分は必要とされている、安心していられる、自分は重要な存在であると感じられるような技術を使用することを推奨する。
本研究の文献レビューは、離婚後、両方の親とコンタクトを取っていると子どもは最もよく成長することを示した。監護権の取決めが許す限り、教師は父親と母親の両方を子どもの学校生活に巻き込むよう意識し、巻き込むためにかなりの努力を払うことを推奨する。教師は、両方の親にニュースレターや通知を送ったり、フィードバックを提供するために個別の面談時間を利用したり、授業の課題や成績表のコピーを送ったり、子どもの発達について個別に意見を求めたりすることができる。
カウンセラー
インタビューを受けた各カウンセラーは、両親が離婚した子どもへの介入に関する正式な研修を受けていないと話した。大学がこれらの調査結果を考慮し、学部レベルで介入および支援技術におけるスクールカウンセラーの研修を更に提供することを推奨する。
スクールカウンセラーは、子どもへのカウンセリングを通じて直接、また学校管理者、教師、親へのサービスを通じて間接的に貴重な支援を提供できる。スクールカウンセラーがこれらの人々に、学校での日々の活動で子どもに役立つ可能性のある技術に関する情報を提供することを推奨する。
子どもが両親の離婚を経験している場合、教師は言葉の選択を変えたり、様々な家族形態を網羅するようにカリキュラムや教室の教材を調整したりする必要があるかもしれない。学校カウンセラーが、離婚が子どもに与える影響、離婚した親への対処、両親が離婚した子どもの教室での行動の管理に関する研修を実施することを推奨する。
本研究のデータに基づき、カウンセラーは親にとって豊富な情報源になり得ることが判明した。親の中には、子どもに生じる問題にどう対処したらよいか分からず、圧倒されていると感じる人もいるであろう。そんなとき、カウンセラーが離婚の移行期に子どもが必要とする特別なニーズを親に理解してもらうことを推奨する。これは、地域の離婚支援グループに親を紹介したり、離婚した家族を扱う読み物を勧めたり、親の話に耳を傾けたり、子どもが離婚に適応できるよう親が手助けできる方法を提案したりすることにより実現できる。
研究結果は、本調査に参加した親が言い放ってもいる通り、批判されることなく話したり、自分の気持ちを表現したりできる人がいることが、離婚した子どもにとって助けになることを示した。グループでうまくやれない子どもや、長期的な問題を抱えている子どもを支援するために、カウンセラーが1対1のカウンセリングを利用することを推奨する。カウンセラーは、子どもに本を読んであげたり、離婚について書いてある本を提供したりすることもできる。
文献のレビューでは、離婚に関する子どもたちのグループは、このような子どもたちのニーズを満たすための特別な戦略を持つ小学校のカウンセラーが主導し、非常に成功していることを指摘していた(Robson, 1982)。また、子どもたちのグループは、子どもたちが仲間の話を聞くことができ、時間が限られている場合にカウンセラーが一度に多くの子どもたちを支援するのに役立つ。両親が離婚した子どもに利益をもたらすために、カウンセラーが小グループで離婚プログラムを使用することを推奨する。
本研究に参加した親と教師は、スクールカウンセラーに対し先入観と期待を抱いていた。カウンセラーが、職務内容、提供するサービス、利用可能な時間を記載した簡潔なパンフレットまたは小冊子を作成することを推奨する。学年の初めに各教師と親にこれらを配布するのも良いかもしれない。
学校全体
学校は、両親が離婚した子どもに支援サービスを提供するのに最適な立場にある。研究では、親、教師、カウンセラーは両親の離婚によって生じる問題を認識しており、学校がこれらの問題にどのように対処するかについて先入観を持っていることが示されている。学校が、両親が離婚した子どもに安全で安心できる環境を提供することを推奨する。管理者、教師、カウンセラー、その他の学校職員は、離婚を経験した家族にサービスと支援を提供できるようにすべきである。
更なる調査における推奨事項
調査により、離婚は学齢期の子どもたに影響を及ぼすことが明らかになっている。本研究では、親、教師、カウンセラーがこの問題を懸念していることを確認した。両親が離婚した子どもと課題に取組む際に役立つ介入技術を学校に提供するために、更に調査をすべきである。
本研究は、両親が離婚手続き中の学校と学校の役割に関する子どもの見解を含んでいない。本研究は、子どもたちの視点と、この離婚移行期間における学校の子どもの支援に関し、子どもがどのように指摘するかを含めるように修正できるのではないだろうか。
学校がどのように見られているかという認識、および教師、スクールカウンセラー、および親がお互いについて理解していることは、本研究全体を通して取り上げられている。これらの問題に更に取組み、管理者や他の学校職員の意見を取入れることもあり得る。
調査では、両親が離婚した子ども向けの小グループプログラムは、子どもの社会的、感情的、学校適応の問題を検出して予防するのに役立ち、子どもの行動や学業を改善する可能性があることが示唆されている。これらの調査結果を評価し、学校で使用できる有効な介入および支援技術を作成するための研究を実施することもできるだろう。
(了)