第10章 離婚後の親子のコンタクトと子どものアウトカム:空間移動の役割
この記事は「共同身上監護-子どもの監護の取決めにおける学際的な洞察」の第10章を翻訳したものです。この文献はオープンアクセスです。原題名、原著者名は以下の通りです。
掲載書:Shared Physical Custody
Interdisciplinary Insights in Child Custody Arrangements
原題名:Chapter 10
Postdivorce Parent-Child Contact and Child Outcomes: The Role of Spatial Mobility
原著者:Anne-Rigt Poortman
なお、shared residence を共同居所と訳出していますが、この用語をより一般的な用語に言い換えれば、共同身上監護(joint physical custody)、交替居所(alternating residence)に該当し、子どもの養育時間の比率が30:70~50:50の監護形態を指します(詳細は訳者註をご覧ください)。
第10章
離婚後の親子のコンタクトと子どものアウトカム:空間移動の役割
アン・リグト・ポートマン
要旨 共有身上監護、より一般的には、両方の親との頻繁なコンタクトは、往々にして子どもにとって有益であると考えられているが、両親の家を行き来しなければならないことは、特に両親が離れて住んでいる場合、有害である可能性もある。この研究では、頻繁な親子のコンタクトと複数の子どものアウトカムとの関連における空間移動の役割を調査した。「オランダの新しい家族」調査を使用した分析では、第一に、親子の頻繁なコンタクトは、平均して、子どもの良好なアウトカムと関係がないか、さほど関係していないことが判明した。第二に、空間移動性は重要だったが、その方法は様々だった。長い移動時間は、子どもの友人とのコンタクトや精神的ウェルビーイングにマイナスの相関関係があったが、学業成績にはプラスの相関関係があった。更に、一定間隔の行き来は、子どもが友人に会う頻度とマイナスの相関が見られたが、子どもの心理的ウェルビーイングにはプラスの相関が見られた。第三に、そして最も重要なことであるが、親子のコンタクトと頻繁な一定間隔の行き来が子どものアウトカムに与える影響は、移動時間に依存していることが判明した。
子どもの心理的ウェルビーイングや友人とのコンタクトに関して、頻繁な親子のコンタクトかつ/または頻繁な一定間隔の行き来は、移動距離が短い場合にはプラスの効果があることが判明したが、移動時間が増加すると、これらのプラスの効果は消失する。
キーワード 離婚 共同身上監護 空間移動性 子どものウェルビーイング
離婚後の共有養育がますます一般的になってきている。最近では、両親が共有身上監護(即ち、交替居所や共同居所)を選択することが多くなり、別居する父子のコンタクトが時間の経過とともに増加している(Cancianら. 2014; PoortmanとVan Gaalen 2017; Westphalら 2014)。特に共同居所の増加は、そのような取り決めが子どもにとって最善の利益であるかどうかについて活発な議論を引き起こした。そこには、3つの相反する理論的考え方が存在する(Westpal 2015)。第一に、両親との継続的なコンタクトは、一般に、子どもが親のリソース(例えば、収入、養育費)にアクセスすることが増え、引いては子どものウェルビーイングを高めると考えられている。第二に、共同居所は子どもが両親の間を頻繁に移動する必要があり、これが子どものウェルビーイングに(プラスではなく)マイナスの影響を与える可能性がある。第三に、共同居所で暮らす子どもは、親同士の葛藤や一貫性のない子育てに曝される可能性が高く、これも子どものウェルビーイングを低下させる。別居する父と子のコンタクトについても同様の議論が可能であるが、この文献はしばしば親のリソースの観点に依拠している(Amato 1993)。
殆どの研究では、子どものウェルビーイングにプラスの影響を与えるのは、共同居所や別居する父親と子どものコンタクトがあるケースとそうでないケースのどちらかを調査した(レビューを参照: AdamsonsとJohnson 2013; Nielsen 2018; Steinbach 2018)。このような全体的な関連性の評価を超えて、様々な理論的議論の妥当性を検討した研究は殆ど存在しない。本研究は、親子関係の役割、またはそれほどではないにしても、親のリソースの役割に焦点を当てた。研究では、両親が高葛藤の場合(Mahrerら. 2018)、または殆どコミュニケーションが成立していない場合(Sodermansら. 2013; Vanasscheら. 2013)、両親との頻繁なコンタクト(即ち、共同居所の父親または別居している父親と子どものコンタクト)が子どもにとって有益ではないかどうかを調査した。一握りの研究は、良好な(離婚前の)親子関係の場合に、頻繁な親子のコンタクトが特に有益であるかどうかを調査することによって、親のリソースに関する議論に踏み込んでいる(Poortman 2018; Vanasscheら. 2013; Videon 2002)。
両方の家の間を頻繁に移動しなければならないことの役割に関する研究は殆ど存在しない。この議論は、親子のコンタクトと子どものウェルビーイングとの関連において、2つの家を持つことによってもたらされる空間移動の役割を強調している。離婚と子どもの居所の取決めが、引っ越しや両親間の地理的距離とどのように関連しているかについては、幾つかの研究がなされているが(CookseyとCraig 1998; FeijtenとVan Ham 2013; Thomasら 2018)、空間移動の側面を子どものアウトカムに関連付ける研究は殆ど存在しない。幾つかの研究では、子どものアウトカムに対する地理的距離の影響を評価しているが(Jensen 2009; Kalilら 2011; RasmussenとStratton 2016)、通常は親子のコンタクトに対する尺度がないため、その代用として一般に距離を使用している。他の研究では、長距離移動による潜在的なストレスの影響に特に関心を持って、地理的距離と親子のコンタクトの両方の役割に焦点を当てている(Schier 2015; Viry 2014)。これらの研究では、往々にして一定間隔の行き来の頻度が考慮されていない。しかし、子どものウェルビーイングに悪影響を与えると主張されているのは行き来の頻度であり、頻繁なコンタクトは必ずしもこの交替居所の頻度と同じではない。例えば、1週間毎の取決めでは、子どもが3~4日毎にそれぞれの親の家に滞在する取決めよりも一定間隔の行き来が少なくなる。従って、親子のコンタクト、地理的距離、居所の交替頻度との関連を考慮し、それらが子どものウェルビーイングに及ぼす影響を同時に評価することが重要である。
本研究では、地理的距離と頻繁な一定間隔の行き来が子どものアウトカムに及ぼす影響と、親子のコンタクトと子どものアウトカムとの関連におけるそれらの役割を調査する。私の知る限り、頻繁な一定間隔の行き来が子どもの精神的ウェルビーイングに及ぼす役割を調査した大規模な研究は2つだけであり(Sodermansら 2014; Westphal 2015)、それらの研究のうち1つだけが子どもの主たる居所、距離、および居所の交代頻度を同時に考慮したものだった(Westpal 2015)。現在の研究は、以前の研究、特にWestphalの研究を3つの方法で拡張している。第一に、複数の子どものアウトカムを調べる。子どもの精神的なウェルビーイングだけでなく、子どもの学業成績や社会的統合も考慮する。後者のアウトカムは殆ど研究されていないが(但し、Franssonら 2018; Prazenら 2011を参照)、友人関係によって示されるように、子どもの社会的統合の程度は、特に高い空間移動性によって悪影響を受ける可能性がある。第二に、共同居所の父親の訪問と頻繁な父親の訪問の間の相違は穏やかなものでしかない可能性があるため、分析では、親子のコンタクトの尺度を子どもの主たる居所を超えて拡張し、別居する父親と子どものコンタクトを含めている。
第三に、そして最も重要なことであるが、本研究は、親子のコンタクト、地理的距離、両親の家の間の頻繁な行き来が子どものアウトカムに与える影響の交互作用を調査している。Westpal(2015)および他の研究(例えば、Kalilら 2011; Sodermansら 2014; Viry 2014)は、親子のコンタクトかつ/または距離かつ/または頻繁な交替居所の主な影響を調査した。しかし、長距離移動のストレスに関する議論は、親子のコンタクトと距離の間の交互作用を示唆する、子どもが実際に移動する場合-即ち、もう一方の親を訪問する場合-にのみ意味を持つ。遠距離が特に問題になるのは、子どもが両親と頻繁に親子がコンタクトする場合である。あるいは、逆に解釈すると、頻繁な親子コンタクトのプラスの効果は、子どもが一定間隔で長距離を行き来しなければならない場合には弱まるか、マイナスになる可能性さえある。同様に、そして恐らく、コンタクトそのものよりも、寧ろ交替居所がストレスの原因であることを考えれば、猶更であろう。両親が遠く離れて住んでいる場合、頻繁に両方の親の家を移動しなければならないことは特に有害となる可能性がある。従って、親子のコンタクトと子どものアウトカムとの関連における空間移動の役割をよりよく理解するには、交互作用に注目することがより有益であると私は主張する。私の主な主張は、頻繁な親子のコンタクトや両親の家の間を頻繁に移動することが子どものアウトカムに及ぼす影響は、両親の家が遠くに離れている場合にはプラスにならないかマイナスにさえなるということである。
大規模調査「オランダの新しい家族」(Westphal (2015)と同じデータ)を使用して、第一に、親子のコンタクト、地理的距離、および両親の家の間を移動する頻度との間の関連性について説明する。親子のコンタクトとは、子どもが主たる居所(共同居所や父親の家や母親の家)で過ごすことと別居する父親と子どもがコンタクトすること(母親が母親と同居している場合)を指す。地理的距離は、一方の親の家からもう一方の親の家までの移動時間で示される。第二に、親子のコンタクト、距離、頻繁な一定間隔の行き来が子どもの3つのアウトカム、つまり心理的ウェルビーイング、学業成績、社会的統合、即ち子どもの友人関係に及ぼす影響を調査する。第三に、頻繁な親子のコンタクトや両親の家の間の頻繁な移動が子どものアウトカムに及ぼす影響が、両親がどれだけ離れて住んでいるかに依存するかどうかを研究する。
10.1 理論的背景
離婚後、両親は別々の家に引越をする。このことは、稀に、子どもが1つの家に留まり、両親が一定間隔で行き来することもあるが、多くの場合、子どもが2つの家を行き来しなければならないことを意味する。子どものアウトカムに悪影響を与えると主張されているのは、子どものこの「循環空間移動性」(Schier 2015: 206)である。共同居所で暮らす子ども、または別居親と頻繁に会っている子どもは、居住地に連続性がないことや現実的に移動に骨が折れるため、更に状況が悪化すると主張されている(Viry 2014; Westphal 2015)。この推論は、空間移動には一定間隔で行き来する頻度と移動距離という2つの側面が重要であることを示唆している。第一に、長時間の移動は子どもにとってストレスとなる可能性があり、子どもが異なる環境に曝されることを意味する(Jensen 2009; Viry 2014)。両方の親が近くで暮らしている場合、恐らく子どもは、もう一方の親を訪問する際に別の近所や町に移動する必要がない。従って、距離が近いことで子どもは社会活動を続けることができ(Jensen 2009)、それが子どもに利益をもたらす可能性がある。数少ない研究の結果はまちまちであり、長距離の移動が子どもの精神的ウェルビーイングにマイナスの影響を与えることを示唆する研究もあれば(Jensen 2009; Viry 2014; Westphal 2015)、教育のアウトカムにプラスの効果を示す研究もある(Kalilら 2011; RasmussenとStratton 2016)。
第二に、一定間隔で両親の家の間を行き来する頻度が重要である。子どもが家の間を頻繁に行き来する場合、子どもにとって安定した家が存在せず、持ち物を運んだり、友人に居場所を知らせたりするなど、頻繁な行き来による構造的な困難に直面する(Schier 2015; Westphal 2015)。また、頻繁な交替居所は、日常生活、例えば、宿題をしたり、友人に会ったりすることを中断する可能性もあり、このこともまた子どものアウトカムに悪影響を与える可能性がある。数少ない研究の結果はまちまちである。Sodermansら(2014)は、毎月両親の家の間を移動する回数が子どもの心理的ウェルビーイングに悪影響を及ぼしていることを発見したが、彼らの分析には事実上追加の変数が含まれていない。Westphal(2015)には、距離や子どもの主たる居所を含む、多くの統制が含まれている。彼女は、頻繁な一定間隔の行き来が子どものウェルビーイングにプラスの効果をもたらしていることを発見しており、そのプラスの効果を、頻繁に居所を交替した場合に、両親が子どもの日常生活に継続的に関与することになるためと説明している(Westphal 2015)。
共同居所、またはより一般的には、頻繁な親子のコンタクトに関連して、空間移動の2番目の側面が一般に強調されてきた。即ち、頻繁な親子のコンタクトは、子どもが頻繁に両方の家の間を移動するため、子どもにとって有害である可能性があり、両親のリソースへのアクセスが容易になることによるプラスの効果を上回る可能性がある(Schier 2015)。この推論では、両親の家の間の距離は考慮されていない。距離の議論は、反対の仮説を導き出す。頻繁な親子のコンタクトや頻繁な交替居所は、多くの場合、両親が互いに近くに住んでいる場合にのみ可能であり、この距離が短縮すれば、子どものウェルビーイングにプラスの効果が予測される。更に、Westphalの研究(2015)で頻繁な交替居所が子どものウェルビーイングにプラスの効果をもたらすことを示唆しているように、頻繁な交替居所は必ずしも有害ではない可能性がある。従って、私はより微妙な仮説を提案する。移動距離が長い場合、頻繁な一定間隔の行き来は、特に社会的統合の観点から、子どものアウトカムに悪影響を与える可能性がある。頻繁な一定間隔の行き来によるストレスや構造的な面倒は、長距離の移動の場合に更に増加する可能性があり、暮らす場所が空間的に遠く離れている場合には、安定した居所がないという感覚がより強く感じられる可能性がある。更に、子どもが頻繁に一定間隔で長距離を行き来する場合、特に社会生活の面で、日常生活が混乱する可能性が高くなる。例えば、子どもが町の別の場所、ましてや別の町にいることが多い場合、友人に会うことは困難である。社会的統合に対する反論は、特に遠距離の場合、頻繁に居所を交替することで、別々の家に付随する社会的コンタクトや社会生活を維持できるというものである(例えば、潜在的なステップファミリーのメンバーや、それぞれの両親の家にいる友人など)。それでもなお、殆どの議論がマイナスの影響を示唆しているので、全体として、長距離の場合、頻繁な交替居所は破壊的な影響を与えると私は推測する。両親が互いに近くに住んでいる場合、こうした破壊的な影響が起こる可能性は低くなる。その場合、頻繁に交替居所することでプラスの効果が得られることさえある。両親が近くに住んでいる場合、頻繁な交替居所は、子どもに利益をもたらす可能性のある子どもの日常の活動や習慣に、両親がともに等しく関与していることを示している可能性がある(Westpal 2015)。更に、頻繁な交替居所は、子どもが必要なときに自由にもう一方の親の元に行けるという柔軟性を示している可能性がある。従って、私は、一定間隔で家の間を頻繁に行き来することによるプラスの効果は、距離が遠くなると弱まるか、子どものアウトカムへのマイナスの影響に変わるものと予想している。頻繁な親子のコンタクトは頻繁な交替居所を意味するため、この推論の当然の帰結として、頻繁な親子のコンタクトは、移動距離が長くなると、子どものウェルビーイングにプラスの関係が殆どなくなる(またはマイナスの場合さえある)ということになる。その場合、頻繁な居所変更による破壊的な影響が、親のリソースにより多くアクセスすることで得られる有益な効果を覆い隠す可能性がある。更に、移動距離が長いほど、一般に子どものアウトカムが悪化すると私は予想している。頻繁な親子のコンタクトと一定間隔の行き来、およびそれらの移動距離への依存の主たる影響に関する反論を考慮して、私は、一方での子どものアウトカム、他方での親子のコンタクト(即ち、主たる居所、父親の訪問)と交替居所の頻度との間の全体的な関連性についての仮説を立てることを差し控える。
10.2 方法
「オランダの新しい家族調査」(NFN; Poortmanら 2014)」の第1波(2012/13)のデータを使用する。NFNは、2010年に離婚した、または同棲関係を解消した約4,500人の親を対象としたインターネット調査である。オランダ中央統計局は、その年に離婚や別離した未成年の子どもがいる世帯をサンプリングしており、私たちは元世帯主の両親にアプローチした。約30%の世帯では両親が参加していた。回答率は以前の「オランダ家族調査」と非常に近く、個人では39%、元世帯では58%を数えた。元同居者、男性(特に幼い子どもがいる人)、若者、非西洋系の人々、低所得者、生活保護を受けている人々が少ない一方で、正式に住所に登録されている子どもを持つ男性が多かった。元同棲者の群では、最も都市化された地域出身の親や子どもが1人いる男性も少なかった。
子どもの居所の取決めと子どものアウトカムに関する質問は、特定の注目する子どもについて行われた。調査時点で親に10歳以上の子どもがいる場合は、注目する子どもを最年少の子どもとし、子ども全員が10歳未満の場合は最年長の子どもとした。研究されたアウトカム(以下を参照)を考慮して、この子どもが4~17歳である場合だけを選択した。また、子どもの主たる居所が母親、父親、または共同居所以外である場合や、独立変数と統制変数に欠損値がある場合も除外した。これらの除外により、基本サンプルのN数は3,567になる。別居する父親と子どものコンタクトの分析では、母親が子どもと同居していると報告した回答者だけを選択し、結果としてN数が2,342の基本サンプルを得た。父親が子どもと同居ているケース数は少ないため、別居する母親と子どものコンタクトの役割は分析していないことに留意して頂きたい。これらの基本サンプルを、一方では親子のコンタクト、他方では両親の家の間の移動距離と交替居所の頻度の間の関連性を記述するために使用する。また、中心的な独立変数(即ち、親子のコンタクト、移動距離、頻繁な一定間隔の行き来)および統制変数の記述統計は、これらの基本サンプルに基づいている(表10.1を参照)。多変量解析では、最終的なN数は、調査された子どものアウトカムと各アウトカムの欠落ケースの数に応じて変化する(表10.2および表10.3を参照)。
10.2.1 従属変数の測定
子どもの心理的ウェルビーイング。4~17歳の子ども向けに開発され、子どもの行動に関する項目で構成される、子どもの強さと困難さアンケート(SDQ; Goodman 1997)で測定する。例を挙げると、「落ち着きがなく、多動で、長時間じっとしていられない」または「他の子どもよりも大人との方が仲良くできる」などがある。親は、過去6か月間または現在の学年度中において、注目する子どもの行動について、項目がどの程度当て嵌まる記述しているかを示した(0=当て嵌まらない、1=ある程度当て嵌まる、2=確かに当て嵌まる)。サイト(www.sdqinfo.org)の指示に従って、子どもの多動性、仲間関係の問題、素行問題、および感情的症状に関する下位尺度のスコアを合計して、総合的困難さを算出した(クロンバックのα係数=0.84、全項目に基づく)。変数は右に偏っているため、対数変換した。
子どもの学業成績。子どもが中学校に通っていた場合、数学、オランダ語、英語のコースの成績を入手し、平均スコア(範囲1~10)を計算した。
子どもの友情。第一に、子どもに友人(ソーシャルメディア上ではない)が何人いるかで測定した。この情報は当初、「0=なし」から「7=20人超」までの範囲で離散的な形で報告を受けたが、連続変数に再コード化した。この変数は右に偏っていたため、対数変換した。第二に、親に、子どもが1カ月にどれくらいの頻度で友人に(学校外で)会ったかを報告するように依頼した。また、この情報はもともと離散的な形(「0=全くない」から「7=毎日」)で報告を受けたが、子どもが1カ月当り友人に会った回数を示す連続変数に再コード化した。
10.2.2 中心的な独立変数の測定
子どもの主たる居所。子どもが最も多くの時間を一緒に緒に過ごしていたのは誰なのか、母親か、父親か、または両方の親とほぼ均等だったのかを両親に尋ねた。後者の選択肢を共同居所としてコード化し、母親、父親、および共同居所の3つのダミー変数を作った。
別居する父親と子どものコンタクト。子どもが年間に別居している父親とコンタクトした日数の尺度(子どもが母親と同居している場合)。この変数は、父親とのコンタクトの大まかな尺度と、父親と子どもが月に1回以上会っている場合の交替居所スケジュール表に記載された情報を組み合わせて作成した(Sodermansら 2014)。大まかな尺度では、別居する父親が子どもと会う頻度を、「一度もなかった」、「年に1~2回」、「年に数回(毎月ではない)」、または「少なくとも月に1回」で尋ねた。最初の3つの回答を、年間のコンタクト頻度(1つ目が0、2つ目が2、3つ目が7)として記録した。毎月のコンタクトの場合、交替居所スケジュール表には、平均的な月における4週間の各日に、子どもが日中および夜間に誰と過ごすのか(「私」または「元パートナー」)が記入してある。この情報を、年間コンタクト量のより正確な測定値を作成するために使用した。結果として得られる変数は右に偏っているため、極端な影響を避けるために対数変換した。
両親の家の間の距離。一方の親の家までの片道に通常要する時間(分)を示す尺度。オランダを北から南に移動するのに要する時間は最大4時間程度であるため、極端な値は240分で切り捨てた。また、極端な値が過度に影響するのを避けるために、この変数も対数変換した。特に移動手段を尋ねていないため、移動時間は地理的距離の大まかな尺度であることに注意が必要である。移動に要する時間が同じ30分であっても、徒歩で30分を要していたので、電車を利用した30分の場合より移動距離が短かったということもあり得る。
一定間隔の行き来の頻度。子どもが月にどれくらいの頻度で両親の家を行き来するかを示す尺度。この変数は、交替居所スケジュール表を使用し、子どもの居所(自分の家または元パートナーの家)に変更があった回数をカウントして作成した。この変数は右に偏っていたため、対数変換した。
統制変数の測定。この分析では、回答者が女性かどうか(1=はい)、および以前の二人暮しが同棲であったか(1=はい)、結婚であったか(=0)を統制する。また、次のような離婚前の特徴(選択バイアス問題に取り組むため)と離婚後の子どものアウトカムの決定要因も統制する。親の学歴。回答者は自分自身と元パートナーの最終学歴を報告した(「1=初等教育未満」から「10=大学院」まで)。この情報は、母親と父親の学歴を描くために使用した。
両親の離婚前の勤務時間。回答者は、離婚前年に自分と元パートナーが1週間に働いた契約時間数を報告した。母親と父親の離婚前の労働時間を測定するために、性別に応じた尺度を作成した。失業中の親にはゼロ時間が割り当てられ、週当り80時間を超える労働時間には80のスコアを割り当てた。
離婚前の葛藤。離婚前の最後の1年間に、以下の行為がどれだけの頻度で発生したかを測定する尺度。「あなたと元パートナーの間に緊張や意見の相違があった」、「あなたと元パートナーの間で激しい議論があった」、「あなた方はお互いを激しく非難した」、「あなた方は往々にしてお互いに話すのをやめた」、「議論が手に負えなくなった」。回答の範囲は1(=全くない)から4(=頻繁にある)までである。尺度を作成するために平均スコアを取得した(クロンバックのα係数=0.87)。
離婚前の世帯収入。両親が正式に別離または離婚した年(結婚している場合)より1年前の年を参照して、年間の標準化された世帯収入を示す。これらのデータは、セキュリティ環境でNFNをオランダ中央統計局の記録簿にリンクすることにより、記録簿のデータから取得した。
離婚前の親の問題。回答者またはその元パートナーが関係解消前に経験していた問題、即ち、「深刻な身体的疾患または障害」、「深刻な精神的問題」、「暴力、薬物またはアルコール依存症」、「警察沙汰(交通違反を除く)」の数。
子どもの性別。 注目する子どもが女子の場合は、1にコード化する(それ以外の場合は0)。
子どもの年齢。注目する子どもの年齢(年単位)。
深刻な離婚後の葛藤。別れた後に元パートナーが行った次の行為の数。「あなたに対して深刻な非難をした」、「他人にあなたの悪口を言った」、「招かれてもいないのに電話をかけたり訪問した」、「子どもをあなたに敵対させた」、「何かにつけあなたを不当に非難した」、「共通の過去の悪口を言った」、「叱られた、喧嘩した」、「暴力を振るうと脅迫した」。
離婚後の緊張関係。調査時に元パートナーとの間で葛藤や緊張状態がどのくらいの頻度であったかを測定する:「1=全くない」から「4=非常に頻繁に」まで。
新たなパートナー関係の構築。どちらかの親が新しいパートナーと同棲したか、結婚したかを示す。
離婚後の世帯収入。登録データを使用した、2011年(調査の前年)または収入データが入手可能な2011年より前の直近1年の回答者の世帯収入の尺度を作った。
10.2.3 分析戦略
分析は3つのステップからなる。まず、空間移動の側面が親子のコンタクトにどのように関連しているかを理解するために、親子のコンタクト、移動時間、一定間隔の行き来の頻度の関連性について説明する。次に、中心的な独立変数の主たる効果を検定する。1番目のモデルには、(統制変数を除いて)親子のコンタクトのみが含まれている。このモデルは、空間移動性を統制せずに、親子のコンタクトと複数のアウトカムとの関連を示している。本研究には、離婚後の子どもの居所の取決め、即ち社会的統合に関する文献では殆ど研究されていない子どものアウトカムが含まれているため、このモデルはより一般的な観点から有益である。2番目のモデルでは、移動時間と一定間隔の行き来の頻度がモデルに追加され、それらの主たる効果と、空間移動性を考慮した後で親子のコンタクトの効果がどのように変化するかを調べる。別居する父親の訪問(対数変換)と交替居所の頻度(対数変換)との相関が高すぎる(相関係数r=0.73)ため、移動時間のみをモデルに追加するが、一定間隔の行き来の頻度や移動時間を含めたモデルも評価する。3番目のステップでは、交互作用モデルを評価する。モデル4は、親子のコンタクトと移動時間の尺度間の交互作用を含む。モデル4では、親子のコンタクト変数を一定間隔の行き来の頻度の尺度に置き換え、一定間隔の行き来の頻度と移動時間の間の交互作用を推定する。30%の世帯では、両親ともに参加しているため、重層回帰分析を行った。統制変数のみを含むベースラインモデルを付録に示す。紙面の都合上、主たる表には統制変数の推定値は含んでいない。一部の感度分析では、子どもの数を統制したときに結果が異なるかどうかを確認したが、結果は変わらなかった。子どもが成長するにつれて仲間の重要性が高まるため、全てのモデルに主たる独立変数と子どもの年齢の間の交互作用を含めることで、親子のコンタクトと空間移動が社会的統合に及ぼす影響が子どもの年齢に応じて変化するかどうかも検定した。しかし、これらの交互作用は、「父親の訪問」×「子どもの年齢」が「友人の数」に及ぼす影響-子どもの年齢が高いほど、父親の訪問が悪影響であることを示唆している-を除き、いずれも統計的に有意ではなかった。
10.3 結果
図10.1と図10.2は、子どもの主たる居所と父親の訪問が空間移動の側面とどのように関連しているかを示している。図10.1は、単独居所に比べて共同居所の場合の移動時間が大幅に短いことを示している。一方、母親の居所からと父親の居所からの平均移動時間はそれぞれ22分と24分(訳者註 25分のタイプミス?)であり、相互にほんの僅かな有意な差しかない(p=0.06; 分析は示していない)。共同居所の子どもの移動時間は大幅に短くなり、平均時間は約8分である。これらの違いは、移動時間の分布を見ると更に顕著になる。単独居所の移動時間は0~240分で、子どもの75%は移動時間が25~30分以内である。対照的に、共同居所の場合、0~最大75分で、子どもの75%は移動距離10分以内の範囲に両親が暮らしている。別居する父親と子どものコンタクトと移動距離との関連性は負であり(相関係数r=-0.22)、距離が長いほど訪問回数が少なくなる。散布図は、近似された回帰直線の周りに観測値が大きく広がっていることを考慮すると、関連性は子どもが主たる居所を持つ場合ほどは顕著でないことを示唆している。
図10.2は、一定間隔の行き来の平均頻度は、父親の居所からが最も低く(平均m=6回)、共同居所が最も高く(平均m=8.5回)、その中間に母親の居所からの行き来があることを示している。これらの違いは全て重要であるが、移動時間ほど顕著ではない。このことは、図10.2に示す分布からも明らかである。この分布は、特に母親の居所の最も一般的な取決めと共同居所の最も一般的な取決めを比較した場合に、異なる居所の取決めの間でかなりの類似点と重複を示している。どうやら、今日の母親の居所では、かなり頻繁な一定間隔の行き来も必要なようで、子どもの50%が月に6回以下の往復をしている(「2週間に1回の週末+α」の取決め、Nikolina 2015を参照)。これは、共同居所の中央値と比較すると、僅か2分の1である。別居する父親の訪問と一定間隔の行き来の頻度の散布図は、面会交流の多さと強い相関関係があり(相関係数r=0.59)、当然のことながら、一定間隔の行き来の頻度の高さと関連している。
多変量解析の結果を表10.2および表10.3に示す。表10.2は、子どもの主たる居所、移動距離、一定間隔の行き来の頻度を中心的な独立変数とした、子どものアウトカムごとの4つのモデルの結果を示している。最初のモデルは、空間移動の側面を統制せずに、子どもの主たる居所と子どものアウトカムの間の全体的な関連性を示す。推定では、共同居所の子どもは母親または父親との居所の取決めをしている子どもよりも困難が大幅に少なく、従ってウェルビーイングが高いことを示しているが、効果量はそれほど高くない(平均値差0.096/標準偏差0.74=0.13および平均値差(0.096+0.085)/標準偏差0.74=0.24)。更に、共同居所の子どもは他のアウトカムにおいてプラスにもマイナスにも目立っていないが、父親の居所の子どもは母親の居所や共同居所の子どもよりも成績が著しく低かった。効果量はSDQよりも若干大きくなるが、それでも控えめである(0.35および0.33)。子どもの主たる居所は、社会的統合の尺度とは何の関連性もない。
モデル2は、モデル1に移動距離と一定間隔の行き来の頻度を追加している。これらの空間移動性の側面は、子どもの4つのアウトカムのうち、子どもの心理的ウェルビーイングと友人との毎月のコンタクト量の2つに影響を与える。予想通り、移動時間が長くなると、子どもはより社会的、心理的困難を抱える(従って、子どもの心理的ウェルビーイングは低下する)。加えて、一方の親の家からもう一方の親の家に移動する際に時間を要するほど、子どもは友人とのコンタクトが少なくなる。移動距離は友人の数には影響しないことに注意せねばならない。更に、頻繁な一定間隔の行き来は、友人とのコンタクトが減少することに関連しているが、子どもの心理的ウェルビーイングが(低下するより寧ろ)高くなる。後者の調査結果は、同じデータを使用したWestphalの研究と一致している(Westphal 2015)。共同居所は移動時間が短く、居所の交替が頻繁であるため、SDQに対する共同居所の主たる効果はモデル2では若干小さくなるが、依然として重要である。
モデル3と4では、より微妙な図式が浮かび上がってくる。ここには、移動距離と主たる居所(モデル3)および移動距離と一定間隔の行き来の頻度(モデル4)の間の交互作用項が含まれている。交互作用項は僅かに有意だが(p値=0.076)、移動時間が最小の場合、共同居所では子どもの困難が母親の居所よりも軽減するが、この有益な効果は、もう一方の親の家への移動に時間を要するほど弱くなる。モデル4で一定間隔の行き来の頻度を考慮すると、発見した結果はより説得力のあるものになる。移動距離が最小の場合、頻繁に両親の家の間を移動することで子どもの困難は少なくなるが、この有益な効果は子どもの移動時間が長くなるほど小さくなる(交互作用項=0.040、p値=0.005)。図10.3のパネルAは、移動距離(対数変換)と一定間隔の行き来の回数(対数変換、最小値0、中間値2、最大値4の3つの値)の様々な組合せに対する予測SDQ(対数変換)をプロットすることにより、モデル4の結果をグラフ表示したものである。この図は、移動時間が最小の場合、頻繁な一定間隔の行き来が特に有益であることを明確に示している。可能な最大移動時間5.5では、頻繁な居所の交替の影響は逆転するが、統計的に有意ではない(p値=0.154; 分析は示していない)。
友人とのコンタクトに関しても、モデル3と4は有意な交互作用を示している。移動距離が最小の場合、共同居所の子どもは母親の居所の子どもよりも友人に会うことが多くなるが、この利点は移動時間が長くなるにつれて小さくなる(モデル3、表10.2の交互作用項=−1.24;p値=0.002)。図10.3のパネルBは、最小移動距離と最大移動距離を比較した場合、共同居所が相反する効果をもたらすことを示すこの結果を示している。両親が移動時間0分の距離の家に離れて住んでいる場合(例えば、数軒離れたところに住んでいる場合)、共同居所の取決めの子どもは、より頻繁に友人に会うが、両親が遠く離れて住んでいる場合(最大4時間、即ちln(距離)=5.5)、共同居所の子どもはどちらか一方の親の居所で暮らす子どもよりも、友人と会う頻度が低く、この差は統計的に有意である(結果は示していない)。共同居所の子どものより現実的な最大距離は60分である(図10.1参照)。この移動距離では、共同居所の子どもは、(示していないが)どちらか一方の親の居所で暮らす子どもより友人に会うことも(統計的に)大幅に少なくなる。また、一定間隔の行き来の頻度と移動距離との交互作用も統計的に有意である(交互作用項=−0.458;p値=0.031)。図10.3のパネルCのグラフが示すように、移動距離が最小の場合、一定間隔の行き来の頻度は子どもが友人に会う頻度に影響を与えないが、取り得る最大の移動距離では、頻繁な一定間隔の行き来は友人とのコンタクトが統計的に有意に少ないことを意味する(b=−1.876;p=0.005;結果は示していない)。他の子どものアウトカムには有意な交互作用が見つからないことに留意せねばならない。
表10.3は、同様のモデルの結果を示しているが、今回は親子のコンタクトが別居する父と子どものコンタクトによって測定された場合である(子どもが母親と同居している場合)。モデル1は、父親の訪問と子どものアウトカムとの全体的な関連性を示しており、父親の訪問が子どものアウトカムに殆どまたは全く影響を及ぼさないことを示唆している。従来のレベル5%では、どの推定値も統計的に有意ではない。モデル2aおよび2bには、空間移動性の側面を追加している。父親と子どものコンタクト(対数変換)と一定間隔の行き来の頻度(対数変換)の相関関係が高すぎて(相関係数r=0.73)、これらの変数を両方ともモデルに含めることができないため、モデル2aは父親の訪問と移動距離が含むのに対し、モデル2bは移動距離と一定間隔の行き来の頻度を含む。結果は、友人の数を除く全てのアウトカムにおいて空間的側面が重要であることを示している。移動距離は子どもの学年にとって重要だが、それは予想外の意味においてである。一方の親からもう一方の親までの移動に要する時間が長ければ長いほど、子どもの学年が高くなる。一定間隔の頻繁な行き来は、子どもの心理的ウェルビーイングや友人とのコンタクト量にとって重要である。より頻繁に両親の間を移動する子どもは、それほど頻繁に移動しない子どもよりも困難が少ない(従って、ウェルビーイングがより高い)。また、頻繁な一定間隔の行き来は友人とのコンタクト量に悪影響を及ぼす。
モデル3およびモデル4では、移動距離と父親の訪問(モデル3)および移動距離と頻繁な一定間隔の行き来(モデル4)との間の交互作用項を追加している。子どものSDQについてのみ、有意な交互作用が存在し、図10.4はそのことを示している。このパターンは、父親と子どものコンタクトに注目しても、両親間の居所の交替の頻度に注目しても同様であり、これらの変数間の高い相関関係を考慮すると、これは驚くべきことではない。頻繁な親子のコンタクトや頻繁な一定間隔の行き来は、両親が互いに近くに住んでいる場合には社会的困難および心理的困難を軽減するが、移動距離が長い場合はそうではない。移動時間が最大の場合、頻繁な訪問や頻繁な居所の交替は、5%の有意水準で子どもの困難と統計的に有意な関連性はない(但し、居所の交替の回数は僅かに有意である;b=0.085;p値=0.091-結果は示していない)。
10.4 結論
共同居所が最近増加しているため、共同居所の取決めが子どもの利益にかなうかどうかについての議論が高まっている。一般に、共同居所、またはより一般的には両親との頻繁なコンタクトが子どもにとって利益になると考えられているが、一部の学者は、両親の家を行き来しなければならないことは有害である可能性があると主張している(Westpal 2015)。本研究は、空間移動性と、頻繁な親子のコンタクトと子どものアウトカムとの関連における空間移動性の役割を調べることにより、この議論の妥当性を検証した。本研究の主な貢献は、複数の子どものアウトカムに焦点を当て、移動距離、一定間隔の行き来の頻度、親子のコンタクトの相互作用を調査したことである。
第一に、頻繁な親子のコンタクトは、平均して、子どものアウトカムと関連していないか、あるいは僅かに関連していた。本研究の調査は空間移動性の役割が中心であるが、複数の子どものアウトカムを初めて含めた研究の1つであるため、親子のコンタクトと子どものアウトカムとの主たる関連性についてここで言及する価値がある。先行研究と一致して、父親の訪問は、調査した子どものアウトカムのいずれとも関連していなかった。一人っ子の心理的ウェルビーイングは、どちらか一方の親の居所で暮らす子どもと比較して、共同居所の子どもで有意に良好だったが、効果量は控えめだった。他のアウトカムについては、共同居所によるプラス(またはマイナス)の効果は見つからなかった。父親と同居する一人っ子は学校での成績が悪いことが判明したが、この群は小規模で、選択バイアスが掛かっている可能性がある(例えば、母親が病気である)。
第二に、空間移動性は子どものアウトカムにとって重要であるが、常に期待されるような形になるわけではない。子どもの社会的統合に関して言えば、移動時間が長くなり、両親の家の間を頻繁に行き来せねばならず、子どもは友達と会う機会が減った。一定間隔の行き来がより頻繁になり、移動距離がより長くなれば、友人と会うことがより困難になることを考えると、これらの結果は予想通りである。これらの調査結果は、親子のコンタクトの頻度が子どもの友人関係に与える影響について、相反する影響を示唆していることに留意せねばならない。頻繁なコンタクト(即ち、共同居所や父親の訪問)は、マイナスの影響を示唆する頻繁な居所の交替と関連していたが、むしろ友人とのコンタクトにプラスの影響を与えると予測される移動時間の短縮とも関連していた。また、空間移動性は子どもの友人との(身体的)コンタクトに影響を与えるが、友人の数には影響を与えないことも注目に値する。恐らく、ソーシャル・メディアを介したデジタル・コンタクトが、遠距離や頻繁な一定間隔の行き来の場合に友人関係を維持するために使用されている(Viry 2014)。移動時間が長くなると子どもの心理的ウェルビーイングに悪影響を与えることも判明したが、これはこれまでの調査結果と一致しており(Viry 2014)、移動や異なる環境がストレスを与える可能性があるという議論を裏付けるものである(Jensen 2009; Schier 2015)。
対照的に、別居する父親を訪問するために移動する場合、学業成績は移動距離とプラスの相関があった。この調査結果は、以前の調査結果と一致している(Kalilら. 2011; RasmussenとStratton 2016)。先行研究では、このプラスの効果は、近距離の場合にはコンタクトが多くなり、それによって葛藤に曝される可能性が高くなり、遠距離の場合には両親の世帯の間を移動することが少なくなるためと考えられていた(同上)が、本研究では、親子のコンタクト、衝突、頻繁な一定間隔の行き来を統制した。ここでは、選択バイアスと逆転した因果関係が役割を果たしている可能性がある。子どもが学校で良い成績を収めている場合、親は、子どもの成績がそれほど良くない親に比べ、長時間の移動による成績への悪影響を心配しないため、より離れて暮らす傾向があるのかもしれない。もう1つの理由は、長距離の一定間隔の行き来は、宿題や補習などの日常生活に殆ど支障を来さないからかもしれない。何故なら、長距離移動の予定日は、短距離の行き来とは違う週間内のタイミングだからである。長距離の移動は平日ではなく週末に計画される可能性が高い。もう1つの予想外の調査結果は、頻繁な一定間隔の行き来が全体として子どもの心理的ウェルビーイングにプラスの影響を与えるということである(Westpal 2015が既に示しているが、Sodermansらを参照)。両親の家の間を頻繁に移動することは、子どもにとって有益である可能性がある。何故なら、両親はどちらも子どもの日常生活に平等に関与し(Westpal 2015)、頻繁な移動が、子どもが望むだけ、または必要に応じて自由にもう一方の親のところに行くことができるという柔軟性を示している可能性があるからである。従って、空間移動性は、共同居所の子どもにとって殆ど害を及ぼさないことを示唆している。子どもの心理的ウェルビーイングにプラスの影響がある共同居所の場合、移動距離が短いので、居所交替の頻度が高くても、子どもの心理的ウェルビーイングにマイナスの影響を与えないようである。
第三に、そして最も重要なことであるが、親子のコンタクトと頻繁な一定間隔の行き来が子どものアウトカムに与える影響は、移動時間に依存していることが判明した。頻繁な親子のコンタクト(共同居所や父親の訪問の形であっても)は、移動距離が短い場合には子どもの心理的ウェルビーイングにプラスの相関があることが判明したが、移動距離が増加すると、このプラスの効果は消失した。このパターンは、一定間隔の行き来の頻度についてより顕著だった。両親が互いに近くに住んでいる場合、頻繁な居所交替は、子どもの心理的ウェルビーイングの向上と関連していたが、両親が離れて住んでいる場合、これは当て嵌まらなかった。更に、両親が近くに住んでいる場合、共同居所の子どもは単独居所の子どもよりも頻繁に友人に会ったが、両親が離れて住んでいる場合、友人に会う頻度は減少した。また、一定間隔の行き来が頻繁になると、長時間の移動の場合には友人とのコンタクトが減少することがわかった。しかし、別居する父親の訪問を見ると、そのような相互作用は見出されなかった。頻繁な父親と子どものコンタクトは、移動距離に関係なく、子どもの友人とのコンタクトにとって殆ど影響を及ぼさなかった。この矛盾は、空間移動性の時間的側面によって説明し得るかもしれない。共同居所の子どもは平日に居所交替する可能性が高いが、別居する父親の家への訪問は週末に行うことが多く、そのため子どもの社会活動や友人とのコンタクトに支障を来すことが少ないのかもしれない。
これらの調査結果は、子どもが両親に頻繁に会う場合、両親の家の間を行き来することが混乱をもたらす役割を果たす可能性について、より微妙な解釈を求めている。異なる場所に曝されることによるストレスや、居所を交替するという実践上の障害は、両親が離れて住んでいる場合にのみ重要になるようである。両親が近くに住んでいる場合、頻繁な親子コンタクトは、両親のリソースへのアクセス、親の継続的な子どもの生活への関与、両親の家の間を自由に移動できるという点でプラスの効果がある。しかし、両親が遠く離れて住んでいる場合、長距離の移動や新しい環境に適応しなければならないストレス、そして子どもの社会生活に関しては日常生活に混乱をもたらす影響によって、このようなプラスの効果は打ち消されてしまう。この調査結果はまた、頻繁な親子のコンタクトが子どものアウトカムに与える役割について、より楽観的な見方を求めている。本研究は、共同居所と父親の訪問が全体的にプラスの効果を示さないか、あるいは僅かしかないことを示唆する以前の調査結果を裏付けるものであるが(AdamsonsとJohnson 2013; Nielsen 2018)、頻繁な親子のコンタクトは、両親が近くに住んでいる場合、子どものアウトカムとより強いプラスの関連性を示しており、共同居所の場合、殆どの親が移動距離10分以内に場所に暮らしているため、このことがよく当て嵌まる。
本研究には幾つかの限界もあり、更なる研究が必要である。研究の横断的デザインでは、強力な因果関係を推論することはできない。例えば、移動距離と教育成績の間の正の関連性について議論した際に示唆したように、選択バイアスと逆の因果関係で、観察された関連性の一部を説明できるかもしれない。理想的には、将来の研究ではパネルデータを使用してこれらの問題に対処する必要があるが、十分な数の離婚者を含む大規模なパネルデータを見つけるのは困難である。もう1つの限界は、使用する距離の尺度に関するものである。NFNに含まれている情報は移動時間だけであり、両親間のキロメートル単位地理的距離や移動手段に関するより具体的な情報は含まれていない。子どもが徒歩、自転車、車、公共交通機関のどの手段で移動するかということも、その移動手段によっては重要になり得るかもしれない。このことは、例えば、移動における構造的および実践上の障害が他の人よりも大きい、またはよりストレスを感じている可能性があることを意味する。将来の研究では、地理的距離を把握したり、移動手段を調査したりするために、より大雑把ではない尺度を使用することが望まれるかもしれない。将来の研究に関連した提案は、複数の場所の時間的構成-子どもが週のどの日に一方の親のところに行くのか、平日と週末の何れか-を詳しく調べることである。先に推測したように、平日の移動は、週末の移動よりも、友人と会ったり、宿題をしたりするなど、子どもの日常生活により大きな混乱を持ち込む可能性があるかもしれない。最後に、NFNは離婚と別離の直後に両親を調査した。サンプリング・デザインを考慮すると、両親が離婚や別居をしてから平均して僅か2年しか経過していない。暫くすれば、子どもは移動をますます退屈に感じるかもしれない。将来の研究では、空間移動の影響を長期的に調査する可能性がある。
全体として、本研究は、2つの家の間を移動することで生じる空間移動が必ずしも悪いことではないことを示唆している。両親が近くに住んでいる場合、頻繁な親子のコンタクトや頻繁な両親の家の間の移動は、子どもにとって有益であると思われる。このような利点が失われるのは、子どもが長距離を移動しなければならない場合だけである。共同居所の取決めをした両親は、通常お互いの近くで暮らしているため、本研究では全体として、共同居所で暮らす子どもの空間移動がより大きくなった場合の懸念を、実証的に裏付けることが殆どできていない。
謝辞 NFNデータは、ユトレヒト大学がオランダ中央統計局(CBS)と協力して収集し、オランダ科学研究機構(NWO)の中規模投資基金とユトレヒト大学からの助成金 480-10-015 によって資金提供されました。本章は、オープンアクセスを可能にしたアントワープ大学の人口・家族・保健センター(CPFH)の支援からも恩恵を受けました。
付録:ベースラインモデル
参考文献
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アン・リグト・ポートマン ユトレヒト大学社会学部教授(学部長:「家族の多様性と人生行路のアウトカム」)。家族社会学と社会人口学を専門とする離婚と別離、新しい人間関係の種類、パートナー関係の法的側面に特に興味を抱く。現在は、離婚後の様々な家族タイプによって親と子のアウトカムがどのように、またなぜ異なるのかに関する大規模なデータ収集および関連研究プログラムのプログラムリーダーを務める。
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[訳者註]オランダの新しい家族 New Families in the Netherlands survey
縦断調査「オランダの新しい家族(NFN)」は、2009年以降に離婚した、または同棲から別居した未成年の子どもを持つ親を対象に実施された。当時(2009年3月)、子どもに均等な養育を受ける権利を与える新しい法律が施行され、両親は養育計画を立てることが義務付けられた。NFNは、離婚時の両親の法的取り決め、特に子どもの居所の取決めと養育計画、およびこれらの取決めが親と子どもにどのような影響を与えるかに関する情報を収集することを目的としていた。NFNは、オランダの人口登録から採取した2009年以降に離婚や別居をした親の無作為サンプル(主要サンプル)に基づいている。更に、2つの対照群、即ち2009年以前に離婚した両親と、対照群、即ち、2009年以前に離婚した両親と、同居や結婚している両親(両親が揃った家庭)間のデータが収集された。統制サンプルも、人口登録から採取した無作為サンプルに基づいていた。第1波は2012年から2013年に行った。回答者はウェブアンケートに記入し、最終通知時に紙と鉛筆で記入するアンケートを回答者に送った。合計すると、参加した人数は、主要サンプルの親が4,481人、両親が揃った家庭の対照群が2,173人、離婚した親の対照群が792人だった。
[訳者註]共同居所 shared residence
共同身上監護(joint physical custody)、共同配置(shared placement)、交替居所(alternating residence)とも言う。共同生活の定義は正確ではないが、子どもが両親の家でかなりの時間を過ごすような取り決めも含まれる。アメリカの離婚研究では、子どもが養育時間の30%から50%の間、両親の一方と同居している場合、共同身上監護(joint physical custody)に分類される。経験則から言えば、30/70の割合までは共同居所と言えるかもしれない。共同居所を、一方の親との合理的なコンタクト/アクセス/訪問、もう一方の親との単独居所という概念と区別することは重要である。共同居所の支持者は、コンタクト/アクセス/訪問という考え方全体を、「卑屈で、疎外的で、人為的な概念」だと考えている。
[訳者註]社会的統合 social integration
個人の「社会」とのつながりの程度を示す概念である。
[訳者註]オランダ中央統計局 Statistics Netherlands(Centraal Bureau voor de Statistiek)
オランダ政府の統計機関。オランダでは、略してCBS(セー・ベー・エス)とすることが多い。1899年に設立された。2004年1月3日以降は、独立組織である「クアンゴ」となっている。経済省に属しており、庁舎はデン・ハーグとヘールレンにある。主に経済成長、消費者価格、個人・世帯の収入、人口、失業などの統計資料を収集している。
[訳者註]記述統計 descriptive statistics
統計の手法のひとつで、収集したデータの平均や分散、標準偏差などを計算して分布を明らかし、データの示す傾向や性質を把握する手法のことである。
[訳者註]多変量解析 multivariate analyses
複数の変数に関するデータをもとに、これらの変数間の相互関連を分析する統計的技法の総称。
[訳者註]独立変数 independent variable
臨床研究において何らかの因果関係について検討する際に,ある要因によって結果に影響を及ぼすか,あるいは少なくとも結果と関連すると考えられる要因となる変数のことを独立変数あるいは説明変数といいます.
[訳者註]従属変数 dependent variable
臨床研究において何らかの因果関係について検討する際に,ある要因によって影響された結果として表れる変数のことを従属変数あるいは目的変数という。
[訳者註]クロンバックのα係数 Cronbach’s α
性格検査の質問項目のように、ある特性に対して複数の質問項目を設け、回答の合計値(尺度得点)を特性尺度として用いるときに、各質問項目(変数)が全体として同じ概念や対象を測定したかどうか(内的整合性)を評価する信頼係数。0から1までの値をとり、1に近いほど信頼性が高いと言える。1951年にリー・クロンバックによって開発されたため、クロンバックのα係数と呼ばれる。
[訳者註]ダミー変数 dummy variable
数字ではないデータを数字に変換する手法のこと。具体的には、数字ではないデータを「0」と「1」だけの数列に変換する。
[訳者註]選択バイアス問題 selection problem
研究の対象者を決める時点で生じるバイアスを選択バイアスという。選択バイアスは、研究を行う場所、対象者を集める方法、研究参加後の脱落など、様々な場面で生じうる。選択バイアスが生じると、曝露群と非曝露群に差がないにもかかわらず差があるという結果になったり、逆に差があるにもかかわらず差がないという結果になったりする可能性があり、適切な比較が困難になるという点で問題となる。
[訳者註]交互作用項 interaction term
交互作用とは2つの因子の組合せで初めて現れる相乗効果のこと。交互作用を重回帰分析などで扱うための方法が交互作用項で、2つの変数の積で作った新しい変数である。
(了)