見出し画像

第4章 親のためのサービス 「私はどうなるの?」両親離別後の家族への支援を見詰め直す

「私はどうなるの?」
両親別離後の家族への支援を見詰め直す
家族問題解決グループの報告書
(私法作業部会のサブグループ)
2020年11月12日

※この報告書がハーム・レポート発表半年後に公表されたことに留意して下さい


A.概要と原則

126.  以下のページでは、親が必要とするサービスについて説明します。私たちは、以下の見出しで私たちの見解を示します。
  ・公教育
  ・情報と支援へのアクセス
  ・初期の情報および評価会議
  ・正しい道筋
  ・家庭内暴力の安全なスクリーニング
  ・包括的アプローチ
  ・子育てプログラム
各項目を順に説明する前に、法廷に行く前にあらゆる面で心に留めておくべき3つの原則があります。

原則1:「一緒に働く」か「別々に働く」か

127.  コホート1とコホート2において、裁判所に関わる以前の期間では、「一緒に働く」アプローチと「別々に働く」アプローチを区別する必要があります。

128.  大人同士が「一緒に働く」ことが常識的に期待できないケースに、正式な裁判手続きによる保護が必要なケースが存在します。このようなケースは、「一緒に働く」という不適切な期待を背負わせるより寧ろ、保護を要することを特定し、専門家による支援や裁判所への保護申請に導かれなければなりません。MoJハーム・レポート69は、虐待被害者の脆弱性と、被害者とその子どもの保護における裁判所の重要な役割をタイムリーに喚起しています。このようなケースでは、安全が何よりも重要です。

129.  このような保護を必要としないケースでは、子育ての問題を解決するために「一緒に働く」ことに重点を置き、期待を高めることが必要です。

130.  2019年にカフカスの代表を退任したアンソニー・ダグラス氏は、法廷にいる家族の少なくとも25%は子どもの保護や福祉の問題を抱えていないことを示唆し、法廷が「第三の親」になってしまう危険性を警告しました70。子どもや家族にとってのメリットとは別に、裁判所の介入を必要としないケースを取り除くことで、介入を必要とする家族のために、より注力した裁判所サービスが可能になります。

131.  同様に、家庭内暴力や子どもの保護などの問題を抱えていて、裁判を受ける必要があるにもかかわらず、現在は受けていない家族もいるでしょう。

132.  どのようなシステムであっても、効果的に機能するためには、早い段階で、どの家族が安全経路を必要としているのか、どの家族が問題解決のための支援を必要としているのかを見極めることが重要です。

133.  安全経路が大きな焦点ではないケースでは、「一緒に働く」アプローチをとるように促し、(その必要もないのに)文化の問題として、敵対的な法的紛争に巻き込まれないようにする必要があります。課題は、社会の考え方や期待を変えることです。家庭崩壊は自動的に親同士が対立する法的な問題であるという古い考えから脱却し、問題解決のために専門家のサポートを受けながら、必要に応じて「一緒に働く」ことを規範として受け入れる必要があります。

134.  したがって、私たちの提言の核心は、両親が一緒に問題を解決するための適切なアドバイス、サポート、境界が与えられれば、殆どの親は自分たちで問題の答えを見つけることができるという点にあります。これはもちろん、裁判官とカフカスが長年にわたって送信してきたメッセージであり、少なくとも、4月に発表された私法ワーキンググループの報告書に添付された、現在修正中の「ミッドランド裁判官の期待する声明」を作成したグループ(現会長を含む)から発信されたメッセージでもあります71。

原則2:長期的な視野に立って

135.  このような「一緒に働く」アプローチと「別々に働く」アプローチの違いは、家庭内暴力が原因ではない家庭にも長く影響を与えることになります。

136.  順調な共同子育て関係を築くには、関係が破綻してからでは時間がかかります。夫婦関係(長期的なものであれ、一夜限りのものであれ)から、別離していても子どもにとって上手く機能する養育関係への移行は、複雑で時間を要し、様々な種類の専門家の支援とともに、個人的なコミットメントが必要です。別離中の家族にとって、この多感な時期は、紛争解決と同様に、個人的な転機でもあります。これを単に法的紛争のレンズを通して見ることは有益ではありません。

137.  離婚後の親子関係の質は、家族のその後の人生を左右しますが、別離に備える比較的短い期間の問題解決方法によって影響を受けることを避けられません。「親の離婚が子どもに影響を与えるのではなく、離婚の仕方が子どもに影響を与える」という昔からの言い伝えは、今も変わりません。

138.  別離中の家族が必要としているのは、特定の問題の「紛争解決」だけではありません。親が子どものために、子ども時代とその後の数十年にわたって(協力的な祖父母になってさえも)、「十分に良い」協力的な子育ての関係を再構築するための長期的なニーズもあります。

原則3:言葉の力

139.  子どもの紛争を巡って使われる言葉を改善するのにやるべきことはたくさんあります。法曹界は「監護権」を巡る児童法以来の変化を受け入れてきましたが、弁護士は子どもの取決めを検討するのではなく、依然として「居所residence」と「接触contact」に踏み込んでしまうことがあります。法制度で用いる言葉や背景が敵対的なのに、どうして両親が協力して一緒に働くことができるでしょうか。「当事者parties」や「接触contact」という言葉は、裁判の場で使われるものです。両親がお互いに持続可能な取決めをすることを支援するには、別の言葉を使うことが推奨されています。実際、私たちは「法廷に行く前の期間」を検討することを課題としていますが、この言葉自体が、「避けられない」法廷申請の前の期間を意味しています。恐らく、「提訴検討期間の代替」または「非提訴期間」は、私たちが関心を持っている領域をより正確に表しています。

140.  一般の人々が子どものための取決めを共同子育てという観点から自然にアプローチしないのは当然のことです。「共同子育て」という言葉自体が混乱を招いています。50対50の時間配分を意味すると考える親もいます。離婚法に対する司法省の回答では、「共同子育て」ではなく「協力的な子育て」としており、こちらの方が理解しやすいと考えています。

141.  また、裁判所の書式にも工夫が必要です。裁判所の見出しにある「対versus」という敵対的な用語は不適切です。この点については、1月に家族司法青年委員会(FJYPB)の代表者から特に指摘がありました。一つの選択肢として、事件名を両親ではなく子どもの名前にすることで、皆の関心を子どもの利益に向けることができます。この提案について、FJYPBのメンバーに意見を求めてみるのも面白いかもしれません。もう一つの選択肢は、単に両親の名前を使うことであり、不必要な法律用語の構造の中で両親にレッテルを貼らないことです。

142.   子どもを育てる務めは、子どもが生まれてから大人になるまで続きます。この務めは、一緒にいる親も、別離中の親も、別離した親であっても課され続けます。夫婦関係が終わったからといって、子育ての責任がなくなるわけではありません。別離後には異なる形で子育ての責任を果たすことになるかもしれませんが、それでも続きます。

143.  つまり、司法制度に先立って行われる情報提供や支援の中の言葉を、安全が確保できているならば、一緒にいても、別離中や別離後であっても、子どもが生まれてから大人になるまで子育ての任務を遂行し続ける二人の親という言葉に変えていく必要があります。

B.公教育

144.  親が自分の選択肢を理解し、適切な支援にアクセスする方法を改善し、子どもや若者の経験を向上させるための出発点は、教育です。1989年児童法と2014年子どもおよび家族法は、家族のために役立っており、新しい法律は必要ありませんが、その背景にある哲学は社会に浸透していません。私たちは、改善された効果的な教育を通じて、既存の法律がよりよく理解される必要があります。

145.  昨年の「リゾリューション」の基調講演で家族部部長が述べたように、家族司法制度に携わる人々からは、公教育キャンペーンを求める声が多く聞かれました。「子どもに焦点を当てた親同士の別れ方や、別れた後の親の争いが子どもに与える影響などについて、広く一般に知らしめる必要があります」

146.  私たちは、「児童法」や「子どもおよび家庭法」が親に対し親として期待していることを殆ど理解していない家族と仕事をすることがよくあります。

147.  司法省は、このようなキャンペーンが効果的かどうかは、裁判に訴える親の行動要因を対象とした調査をしてみないことには分からないと仄めかしています。この点について検討しましたが、同意できません。キャンペーンは、単に裁判を起こした親を対象とするだけでなく、社会全体を教育するために必要です。

148.  「司法への様々な道」報告書72は、友人や家族が自らも助言してくれるだけでなく、どこに助けを求めればよいかを教えてくれる社会的ネットワークが、司法制度への参加者の選択に重要な役割を果たしていることを示しています。

149.  家族司法制度全体の利害関係者を代表する家族問題解決グループは、別離している親だけでなく、より広い一般市民にも届くような公教育キャンペーンが必要であるという立場にいます。これは、子育てと夫婦関係の破綻に対する社会の態度に変化をもたらし始めるでしょう。

150.  タイミングが今こそ重要なのです。離婚改革はメディアの大きな関心を呼ぶでしょう。新しい離婚法が成立したとき、離婚や家族の問題に対する世間の注目をうまく集めるための準備が必要です。

151.  1996年家族法の失敗から教訓を学ぶ必要があります。メディアの関心は過去、即ち、結婚破綻理由と過失の問題に焦点を当てていました。これは、25年後の現在でも見られるような、別離している親に対する社会の無益な姿勢を強固にしただけです。今回、世間の関心は、より広い理解、特に、険悪な離婚が夫婦と子どもに害を及ぼすということを一般的な認識に向けられる必要があります。

152.  私たちは、以下の対策を実施するよう勧告します。
・スローガンを備えた包括的な全国宣伝キャンペーンを実施すること。
・インターネットを介した宣伝の支援
・ネットまたはその他の全ての公式情報源で使用されているスローガン、ブランド戦略、検索語句によるバックアップ(下記参照)

153.  私たちは、これは政府の責任であると考え、司法省が他の省庁やウェールズ政府と協議し、この提案に対応することを求めます。誰がこれを管理するにしても、離婚改革によってもたらされた機会を逃さないことが極めて重要です。

C.情報と支援

インターネット情報

154.  親は、選択肢に関する明確な情報を得るための信頼できる情報源を欠いています。「家族司法への道を創造する」73と「司法への様々な道」74の両方が、親はインターネットの情報に頼っていることを明らかにしました。この状況は、COVID-19以降、更に進んでいるでしょう。明確で信頼できる、利用しやすいインターネット情報に対する強い欲求が存在しています。現在、インターネットには膨大な量の情報がありますが、混乱し、圧倒されてしまいます。「家族司法への道を創造する」によると、インターネット情報は品質にばらつきがあり、殆どが規制のないプロバイダーによって提供されています。

155.  「家族司法レビュー」にまで遡る複数の勧告では、信頼できるインターネットの一元的な情報源が必要とされています。最近では、「家族司法への道を創造する」が「家族司法への道を位置付ける」の調査を基に、次のような提言を行っています。
・明確で曖昧でない情報にアクセスできる、確かで信頼のある「ワンストップ・ショップ」ウェブサイトを政府が優先的に開発する必要があります。
・ウェブサイトが適切で正確であり続けるためには、長期にわたる十分な資金が必要です。
・親が一貫して「ワンストップ・ショップ」のウェブサイトを利用し、そこから他の適切なイギリス規格協会の認証を取得したサービスや組織へリンクされるように、主要な家族司法組織と別離家族と一緒に働く人々が連携して取り組む必要があります。
・ユーザーがどのように参加し、どのように参加し続けるか、そしてどのようにその情報を活用するかについての継続的な研究が、インターネットサービスの開発に活かされねばなりません。

156.  COVID-19の危機が始まって間もなく、カフカスは両親に情報とサポートを提供するために、共同子育てのハブをリニューアルしました。このウェブサイトは、特に子どもに関する親を対象としていて、有益ですが、別離する全ての親や別離する親の子どもにとっての包括的で信頼のおけるウェブサイトではありません。

157.  私たちは包括的なウェブサイトを推奨します。そのサイトは、全ての道が繋がった構造(現在の目的では「別離家族のハブ」と呼ぶ)になります。親は共同養育のセクションや金銭的な解決に関する情報に誘導され、子どもは子ども中心のスペースに誘導されるかもしれません。そこには家門家のための第3のセクションが設けられているかもしれません。関連する検索をすればこのサイトにたどり着くように、様々なルートからアクセスできるようにコーディネートする必要があります。これはまた、別離家庭の最前線にいながら、現在殆ど指針を持たない非法律専門家(開業医、青年支援カウンセラー、学校)のための資料ともなり得ます。「離別家族のハブ」は、他のリソースと連携し、公教育、物理的リソースやモバイルアプリ、ブランド戦略や宣伝などとの相乗効果を図る必要があります。

一般的な情報

158.  信頼のおけるウェブサイトだけでなく、親は書面やその他の媒体でも同じように一貫した情報を見つける必要があります。

159.  リズ・トリンダー氏とその同僚は、私的家事事件における本人訴訟人(LiP)に関する研究の中で、LiPが特定した主な支援ニーズは、プロセスと手順に関する情報、精神的支援、実務的支援、そして個別の法的助言であったと報告しています。法的助言は、権利に関する幅広い質問から、戦術や作業に関する具体的な質問までをカバーすることが求められました。裁判を起こさずに家族法の問題を解決しようとする親も、情報、支援、助言に対して同様のニーズを持っていると思われます75。

160.  段階によって必要とされる情報のレベルが異なる場合があります。私たちは、次のことを推奨します。
・社会一般に広く理解されるような包括的なスローガンや重要なメッセージ。これらは、インターネットのメッセージ交換に裏打ちされた全国的なキャンペーンによって提供することができます76。
・離れて暮らす親のための見出しの原則。「FJYPBの最高のヒント/LGBのためのFJYPBの最高のヒント」のように、簡単に理解できること。これらのような原則は、離れて暮らす親に一般的に適用されるものであり、裁判の申請を考えているような深刻な争いのある親を特に対象としたものではありません。使う言葉は、長期的な子育ての文脈で組み立てねばならず、司法制度の影で組み立てるものであってはなりません。この情報は、インターネットでアクセスできるだけでなく、家族のハブ、市民相談協会、一般開業医、セラピスト、学校の家族連絡担当官、図書館、その他のコミュニティの場でも提供することができます。また、離婚手続きを行う親に送られる書類に添付することもできでしょう77。
・それに関連して、「協力的な子育て」が実際には何を意味するのかをはっきりと親に理解してもらう必要があります。そこで、「協力的な子育て」が単に時間を分けることとは全く異なることを具体的に説明するため、様々なメディア資源を利用します。映像は言葉よりも強力なので、子どもによるナレーションが入った、協力的な子育ての目標を説明する短い映画クリップ(例:労働年金省の「両親間葛藤低減」プログラムのパートナーであるグッドシングス財団の#SeeItDifferently78やフィーガンの共同子育てクリップ79)を作成することをお勧めします。これは、多くの親に手を差し伸べるための簡単で安価な方法でしょう。この点は、以下の241節の「デジタル情報」のセクションでも指摘し、デジタルメディアの有効性に関する試験的な取り組みを提案しています。
親は、様々なプロセスと選択肢について、明確で信頼のおける情報を必要としています。家庭内虐待の被害者を保護するための裁判所の役割と、それを遅滞なく利用する方法についての実用的な情報を必要としています。また、子育ての問題を解決するのに役立てるのに、どのような選択肢があるかを知る必要もあります。この後者のカテゴリーでは、互いに対立するのではなく、協力して問題を解決することに重点が置かれます。ここでも、映像は有用なメディアであり、「家族司法への道を創造する」80が制作したクリップは、より広く活用される可能性があります。
・次のレベルでは、問題解決に苦慮し、裁判所への申請を検討している親のための情報が必要です。私法作業部会(PrLWG)の第2回レポート81には、付属資料2の旧ミッドランド州期待文書を見事に更新した新しい「家庭裁判所情報シート」が含まれています。裁判の申請を検討している親は、問題が発生した早い段階で、この情報を入手する必要があります。この情報は、インターネットで閲覧できるだけでなく、メディエイター、事務弁護士、市民相談協会、家族のハブに相談する際や、裁判所やその他の家庭裁判所に出席する際に受け取ることもできます。
・最後に、また、裁判所への申請を考えている人のために、裁判所が子どもの取決めを検討する際に適用する要素について詳しい情報を提供する必要があります。家族司法評議会の「離婚に関する経済的ニーズに関するガイダンス」と同様に、子どもの取り決めに合意できない両親のために、どのような決定がなされるかの原則を説明した、同様の詳細なガイドが提案されています。家族の専門家数名が、司法当局と協力し、検討のための草案を提供する作業部会の一員になることを申し出ています。

161.  これらの様々なレベルの情報が一貫性を持ち、互いに補完し合うこと、それらが全ての公教育キャンペーンや集中型ワンストップ・ショップのウェブサイトと連携することを確かなものにするために、コミュニケーションの専門家に相談されることを推奨します。

現地情報と「別離家族支援連合」

162.  インターネット情報や一般的な情報に加え、親は地元でどのような支援サービスが受けられるかについての情報を必要としています。親が必要なあらゆる支援を、イギリス規格協会の認証を取得したような確立された基準に沿って提供されるようにするためには、家族組織と別離家族に関わる人々の連携した取り組みが必要です。そのため、PrLWGは「別居家族支援同盟(SSFA)」を提唱しています。私たちは、全国的に一貫した青写真を持った地方レベルのSSFAに対するPrLWGの勧告を全面的に支持します。2回目のPrLWGレポートが認めているように、これには注意深いコスト計算と必要性、恐らく受け入れ可能性と有効性の分析が必要になります82。

163.  SSFAのネットワークの構築には時間と資源が必要であり、私たちはこの構築が家族司法改革実施グループの権限に含まれることを希望しています。ドーセット州、ケント州、ウェストミッドランズ州では、地域連合の設立に向けた第一歩を踏み出しましたが(子育てプログラムについては付属資料5で詳述)、SSFAの全国ネットワークの実現は、裁判に訴える前の状況を改善するための応急処置という我々の権限の及ぶ範囲を超えています。

164.  私たちは、ウェールズ子ども家庭省が監督するウェールズ全域の親に対する包括的なサービスマッピングを掲載したウェールズ政府の政策文書を参照しています83。ウェストミンスターには、この重要な仕事に責任を持つ同等の部署が存在しません。

165.  国や地方自治体など、様々な組織から支援や助言を受けることができます。これらは、地方政府の取組み、労働年金省(DWP)の「両親間葛藤低減」プログラム(RPC)プログラムのパートナー、慈善セクター、民間診療所による取り組み、信仰団体などです。SSFAが実現するまでの間、このように断片化されてマッピング不可能な範囲の対策は、上述した別離家族のハブの地理的領域、つまり一元化された、統一された信頼できるリソースセンターを参照して登録することができます。私たちは、HSSFマークを復活させることを勧告します。そうすれば、地域の団体がイギリス規格協会の認証を受け、「別離家庭のハブ」に登録できるようになります。そこから、地域のリソースのデータベースが構築されるでしょう。

[訳者注]HSSFマーク(Help & Support for Separated Families Mark,別離家族のための応援と支援マーク)はDWPによって運営され、一連の政府基準に基づいて、両親が家族問題を解決するために協力的かつ協調的なアプローチを取り、子の最善の利益に焦点を当てることができるよう支援する個人と組織に授与していました。このスキームは廃止となり、マーク保有者に2020年3月31日までに当該マークを削除するようDWPから要請されました。

166.  それまでの間、イングランドでは、家族のハブを地域の情報源として使用し、地域の信頼できるサービス提供者に適切に道標を示すことができると考えています。上記のように、家族のハブは地域密着部と信仰部があり、単一のモデルは存在しません。安全スクリーニングやニーズのトリアージを提供するレベルのスタッフが配置される可能性は低いですが、情報源や標識となり、他の人がより焦点を絞ったサポートを提供するための場を提供することができます。家族のハブの多くは、幼児支援チームが使用しているため、午後の半ば以降は誰もいません。午後や夕方には、早期情報収集および評価会議(IAM)(詳細は後述)、子育てプログラム、メディエーションまたはCIM、カウンセリング、治療プログラムなどを実施する場として利用することができます。

167.  全国子どもコンタクトセンター協会(NACCC)が運営する子どもコンタクトセンターの全国ネットワークを通じて、情報の普及と支援も可能です。イングランドとウェールズ全域でこのように良好な網羅範囲を有するということは、家族のハブの発展を支援するインフラを提供できる可能性があることを意味します。家族のハブは、子どもとのコンタクトだけでなく、ワンストップ・ショップとして利用することも可能です。利用できるサービスには、メディエーションやCIM、子育てプログラム、DV加害者プログラム、子どもグループ、女性グループ、法律情報、人間関係サポートは当然ながら、情報提供、カウンセリング、アドボカシーなど、親は勿論、子どもや若者への直接サービスが含まれます。

168.  重要なのは、家族のハブがコンタクトセンターであろうと他の場所であろうと、現在あまりにも不足している、子どもに対する他の様々な直接支援サービスへの道標と入り口を提供することができることです。

169.  私たちは、別離後の家族を支援するための専門的な地域資源として、家族のハブをどの程度利用できるかを評価し、資金調達方法を検討するための試験的取組みを行うことを勧告します。

170.  当面は、暫定措置として、全ての地方家事司法委員会(LFJB)、メディエイター、事務弁護士が、家族のハブの存在やその運営方法など、地方で利用できるあらゆる支援サービスについての情報を常に得るようにすることを勧告します

その他の接点:学校、一般開業医、保健師、青年支援カウンセラー、市民相談協会、図書館、コミュニティセンター、家族のハブ

171.  親は、どこを向いても、離婚と子どもに関する同じ情報とガイダンスにアクセスする必要があります。インターネット情報に頼るだけでなく、他にも、家族の崩壊の危機的な時期に親や若者に提供するのに十分な情報とリソースを提供する必要のある社会的接触点があります。

172.  家庭崩壊への全体的なアプローチには、このような家族に関わる法律家と非法律家の間の連携したアプローチが必要です。教師、一般開業医、保健師、青年支援カウンセラーなど、家庭崩壊の「最前線」で働く専門家が、危機に瀕した家族のニーズに応えるには、リソースの確保が必要です。

173.  多くの場合、学校は家族の別離を最初に知るかもしれませんが、教育関係者の間では別離する家族に関する情報、ガイダンス、支援、およびメディエーションが利用できることについての認識は低くなっています。最近終了したDWPの試験的な「心のメディエーション」では、恵まれない家庭と関わる専門家、特に教師に、メディエーションのプロセスと親同士の葛藤や離別が子どもに与える影響についての研修を行ったところ、メディエーションのプロセスに対する認識と自信が高まり、親をメディエーションに紹介する意欲も高まったことがわかりました。ある経験豊かな教師はこう言っています。

・・・(両親が別れる)非常に多くの場合、ただ単に「あらまぁ、お気の毒に」となっています・・・私たちは本当に、「メディエーションを検討したの?」と言うことができませんでした。・・・「ほら、このリーフレットが役立つかもしれないわ」と言うことができませんでした。私たちの道具箱の中に、そのような道具はありませんでした84。

174.  私たちは、ネットとネット以外で教師が利用できるトレーニング教材の作成と、専門家向けのリソースに特化したウェブサイト「別離家族のハブ」上に「スペース」を設けることを推奨します。やがて、このトレーニングは、教師のとっての主要なトレーニングプログラムの1つに数えられるようになるかもしれません。学校における人間関係と性教育(RSE)に関する法定ガイダンスは、家庭崩壊が生徒にどのような影響を与えるかを認識するよう教師に求めています85。このトレーニングは、教師がこの要件を満たすのに役立ち、両親が別離している学齢期の若者に対する情報と支援に対するより明確なルートを提供することになります。

175.  私たちは、開業医、保健師、青年支援カウンセラーなど、別離している親に出くわす法律家以外の専門家にも同様のトレーニングを行うことを勧告します。特に家庭内虐待の被害者である患者や顧客のニーズに対応する場合、開業医やその他の医療専門家は、専門家の擁護や支援への明確な紹介経路を必要としています。

176.  法律家以外の専門家が別離家族に情報や道標を提供する上での連携不足は、別離家族に対する政治的空白を生み出しています。非法律専門家への情報提供は費用をかける必要はなく、施行される新しい離婚法、および私たちが推奨する公教育キャンペーンとよく連動しているはずです。しかし、政府の誰かが、法律専門家以外の人々への明確で一貫した情報の普及を調整する責任を負う必要があります。

D.早期情報および評価会議

177.  PrLWGは早期介入の概念を支持しており、メンバーは家族のために何らかの形でサービスの「トリアージ」を行うことを熱望しています。

178.  現在、法定メディエーション情報および評価会議(MIAM)への出席は、裁判所への申請の前提条件となっているため、定義上、裁判所への申請を検討している人が出席しています。この段階で、家族の状況を把握し、裁判以外の選択肢について話し合うために、家族の専門家に会うという要件を課すようでは遅過ぎです。

179.  昨年のPrLWGのコンサルテーション回答の多くと同様に、選択肢を見直すためのこの重要な話し合いは、できるだけ早い機会に行うべきであると提案します。私たちは、夫婦関係が壊れたり別れたりした後、問題がエスカレートして立場が強固になる前に、できるだけ早く「情報および評価会議」(IAM)を開くことを勧告します。その目的は、両親が、裁判の申請に至る前に問題に対処するため、その人のニーズに応じたサポートを利用できるようにすることです。

180.  私たちは、この会議がより早い段階で、適切な支援のネットワークとともに行われることで、多くのカップルが争いを伴う裁判から離れ、家族にとってより良いアウトカムをもたらすと信じています。この会議は、紛争という文脈から、子どもに焦点を合わせ、将来を見据えた協力的な子育てという目標に向かって、考え方をシフトさせようとするものです。

181.  初期の「IAM」なら、親は以下の項目を得るようになります。

181.1  家族の専門家と対面(直接会うかインターネットを利用して)し、内密の面談をする機会。一般的な情報や道標を提供することは有用かもしれませんが、調査によると、親は家族の専門家と対面で話をすることを望んでいます86。これによって、親は自分の家庭の状況を話し、ニーズを正確に把握し、選択肢について自分のニーズに応じた情報を受け取ることができます。

181.2  早期段階での経路の評価:・家庭内虐待の場合、弱者である家族の安全を第一に考え、確立された経路を即座に踏まなければなりません。支援体制が整わず、加害者と何らかの関わりを持つことが安全でない限り、また、安全になるまで、一緒に働く、協力的な子育てをするという言葉は適切ではありません。虐待の性質やその虐待が虐待範囲のどこに位置するかにもよりますが、安全であれば、子どもは「一緒に働く」アプローチから恩恵を受けることができます。このアプローチが実現しないケースもありますが、適切な支援と慎重に管理されたプロセスによって、後の段階で可能になる場合もあります。家庭内暴力については、以下のセクションFと付属資料4を参照してください。・家庭内虐待が要因でない場合は、子どもへのサービス、子育て、心理、紛争解決、法律、その他のニーズ、およびそれらに対処するための選択肢などを含む、家族のニーズを検討することができます。以下の節は、協力的な子育てをするための経路に適した家族に対する初期のIAMの利点を示しています。

181.3  未来志向と子どもに焦点を当てた語りの提示と協力的な子育てというコンセプトの紹介。これには、紛争という言葉と紛争する立場を、子どものウェルビーイングに対する共通の利益という言葉と立場に再構成することが含まれます。親同士の意見の相違(正常で健全なもの)と親同士の葛藤(子どもにとって有害なもの)を区別することです。また、両親に対し、協力的な親として、子どものために決断する親責任を果たすように促します。

181.4  親が親責任を果たすための法的な期待についての紹介。法的な期待に関する理解には、子どもには両方の親と関係を持つ権利があり、親にはそれを可能にする適切な取り決めをする責任があるという理解が含まれます。安全上の懸念がなければ、一方の親がもう一方の親に会うことを妨げる権利はなく、コンタクト(接触)の推定が存在します。NACCCの担当者は、親との関係を失うことによる子どもの苦痛が非常に大きいことを話してくれました。この「親責任」という要素は、あまり理解されていません。現家族部部長は、2014年に子どもへの暴力防止プログラム(CAP,Child Assault Prevention)が初めて提示されたとき、次のように言っています。「以前は、コンタクト(接触)を機能させることに焦点が当てられていました。今は、『「親責任』」を果たすことが重要です。これは語呂の良いフレーズです。私たちが親である以上、私たち全員が負っている責任です。私たちは、親が自分の子どもに対して責任を持ち、子どものために決断できるよう、奨励し、支援する必要があります」

181.5  重要なのは、子どもが早い段階で自分の意見を表明し、意思決定においてそれを考慮するために利用できるUNCRC第12条の取扱いの検討。

181.6  利用可能な様々な種類の専門的な支援と親同士の問題を解決するための選択肢の紹介。

182.  この初期のIAMは、家族のニーズを早期に「トリアージ」する役割を果たします。私たちは、これを「事前申請プロトコル」または同様のものと呼ぶことには反対します。これは、困っている親ではなく、裁判の手続きを意味します。また、目的は、この手続きが裁判の申請に先行することではなく、大多数の親が申請せずに済むようにすることです。両親が離別する場合、新しい基準では、IAM出席を義務付け、上節で述べた点に対処するようにすべきです。親は、私たちが提案するインターネットの「別離家族のハブ」から、あるいは家族のハブ、学校、一般開業医、市民相談協会、その他の窓口を通じて、あるいはメディエイターや弁護士とコンタクトを取ることによって、この会合について知ることができます。

183.  初期のIAMは、情報交換と利用可能な選択肢のオープンな評価という点で、法定MIAMと類似しています。主な相違点は2つあります。第一に、裁判所への申請の下で行われるものではないので、裁判所の書式に署名する必要はありません。第二に、名称を変更することで、親がメディエーションするように言われているという印象を払拭し、選択肢と支援源を早期に検討することを強調します。他人と対立しているときに、一緒に問題を解決するように言われるのは、歓迎されないメッセージです。それゆえ、社会的な期待をより子どもに配慮したものに変え、問題の本質、親の対立が子どもに与える害、協力的な子育てが子どもに与える長期的な利益について話し合うために、1対1の面談をすることが重要です。親はメディエーションをするように言われることを望んでおらず、非敵対的ルートを自ら選択するための情報と励ましを必要としているのです。

184.  初期のIAMは、子育ては生まれてから大人になるまで、一緒にいる親も離れている親も継続的な役割であり、問題は親が解決する必要があるという物語を持っています。別離後、「自分の味方」である専門家を求めるのは、理解できる反応です。しかし、異なる法的助言者を利用することで、勝者か敗者かを争う姿勢や立場が助長され、親同士を対立させることになり、長期的には非生産的です。

185.  法律相談に特化するのではなく、他の関連情報とともに法律情報を提供することに重点が置かれます(詳細は後述します)。これにより、別離中の親が子どもについて意見の相違がある場合、法的な対応が必要であるという現在の推定のバランスを取り戻すことができます。

186.  初期のIAMは、前向きな子育てをするために、全体的、統合的、共同的なアプローチを促進します。それぞれの親に別々の助言者がつくと、家族のニーズを独自に把握することができず、バラバラのプロセスになってしまいます。

187.  初期のIAMは、子どもに焦点を当てると同時に、家族に焦点を当て、異なる形の家族モデルに移行するための選択肢を創造的に検討することになります。両親を互いに代表させることは、子どもの利益にも家族全体の利益にもなりません。

188.  初期のIAMは、適切な場合には、最初から、「別々に働く」アプローチを採用するのではなく、問題を解決するために「一緒に働く」ことを両親に奨励します。

189.  初期のIAMは、基本的に関係性のアプローチを提供し、今後何年にもわたって両親がコミュニケーションをとるという、子どもの長期的なニーズに対応します(受渡し時の積極的なアイコンタクトの管理などの重要な側面も含みます)。これは、関係が破綻した時点では不可能かもしれませんが、今後数ヶ月または数年の間に、両者が努力できる目標になるかもしれません。

190.  この初期のIAMの名称を決めるには、「行動洞察チーム」87の助言を仰ぐことをお勧めします。

191.  私たちは、PrLWGのコンサルテーション回答の中にある、早期法律相談の復活を求める提言に注目しています。私たちは、法的助言や情報、カウンセリング、メディエーションなど、別離する人々を支援するための政府による資金提供の申し出を歓迎します。法的助言のない中で別居後の経済的な決断をすることは、ある人々にとっては困難であり、不当な結末を招いたり、ある人々にとっては、裁判によらずに解決できたかもしれないのに裁判に頼ることになりかねません88。

192.  しかし、子どもをめぐる紛争が発生した場合、虐待の疑いがなければ、法的情報、(必要であれば)資金を提供するカウンセリング、およびメディエーションは、殆どの家庭のニーズに合っていると思います。

193.  上記のように、別離後の経済的な判断は、法的助言なしに行うべきではありません。しかし、子どもに関する取決めについては、法的情報を得ることは法的な背景を理解するのに役立つかもしれませんが、法律の専門家に相談することで、子育ての争いは法的な問題であるという見方が強まります。安全上の問題がない私法の子どものケースでは、その目的は、紛争を「法的問題」から「子育ての不一致」に再構成することです。

194.  実際、LASPO以前の無料法律相談は、多くの親がメディエーションに導かれるきっかけになっていました。無料法律相談が廃止されると、弁護士からの紹介が激減して多くのメディエーションサービスが廃業し、本人訴訟で裁判に訴える人の数が増え始めました。家族が親責任について学ぶための入口として法律相談を復活させるのではなく、私たちが求めているような文化の変化をもたらすための資金提供の努力は、社会一般における「子育ての不一致」のとらえ方を見直すものです(それゆえ、上記の提言がなされているのです)。容認された最初のアクセス先は、時間の経過とともに、協力的な子育てという目標と(資格のある人には)無料のメディエーションの提供をその人のニーズに合わせた方法で提供できる初期のIAMになります。[訳者注]LASPO:the Legal Aid, Sentencing and Punishment of Offenders Act 2012,2012年犯罪者の法的援助、判決および処罰法。同法施行以前は、メディエーションへの紹介の大部分は、法的援助の資金提供を受けた弁護士によって行われていたが、同法により法的援助の範囲から私的家族法が削除されたことで、事件をメディエーションに向けて紹介する機会がなくなったとされています。

195.  DWPの試験的な「心のメディエーション」の評価89では、別居後の両親のニーズに対応するための総合的なアプローチが有益であることが確認されました。この試験的運用では、カウンセリングとメディエーションに加え、(法的助言とは異なる)法的情報を両親それぞれに個別に提供するという一括した支援を行い、両親の問題解決の成功率を著しく向上させました。DWPの試験的な「心のメディエーション」の評価は、理想的な資金パッケージは、法的情報、カウンセリング、メディエーションを組み合わせた総合的なアプローチであることを示しています(詳細は「セクションG:総合的アプローチ」、「第5章:家族専門家」で述べます)。

196.  子育ての問題より寧ろ法的な問題が発生した場合に、親は独立した法的アドバイスを受けるよう指示されるかもしれません。私たちはIAMで法律相談が必要だと判断された人には、無料で法律相談ができるよう資金を提供すべきと考えます。

197.  法的情報と法的助言は、重要な違いがあります。親は当然、自分たちの法的立場を知りたがるものであり、法的情報を提供することで、一般的な言葉で説明することができます。法的情報はIAMでも、提案したインターネットの「別離家族のハブ」でも、地域の窓口やメディエイターからも入手可能です。

198.  相互の法律情報を提供するために必要なスキルは、法律上の助言を行うために必要なスキルとは異なります。法的助言は法的なトレーニングを必要とするため、資格を持った法律の専門家だけが行うべきです。メディエイターは、決して法的助言をしてはなりませんが、定期的に法的な情報を相互に提供します。家族問題解決グループの事務弁護士は、訓練を受けたメディエイターでもない事務弁護士が依頼人と会い、相互に法的情報を提供する前に、訓練、保護、職業上の責任といった取り組むべき重要な問題が存在していることを示唆しています。

199.  第一歩としての事務弁護士による法的助言の提供は、全く違うものです。このため、どちらの弁護士も一方の親に会う機会がなく、相反する助言をする可能性がある状態で、別々の弁護士に相談しなければならい仕組みになっています。これでは、プロセスがバラバラになってしまいます。未解決の感情的な問題が紛争の根底にある多くの場合(下記の223節を参照)、両親が助言を得るために別々の弁護士に相談することは、火に油を注ぐことになりかねません。子どもに焦点を当てた繊細な方法で法的助言が提供されるかどうかは、助言を行う事務弁護士の子どもに対する認識、紛争解決、人間関係のスキルに完全に依存することになります。これらはいずれも、事務弁護士となるための専門的要件ではありません。「リゾリューション」は、その実践規範90と、様々な研修やイニシアティブを展開し、事務弁護士という職業がこうしたスキルを身につけるよう率先して働きかけています。しかし、親がそのような必要なスキルを持つ弁護士に会うかどうか、従って、家族が一緒に問題解決する形で支援されるのか、採用されたアプローチによって家族が更に引き離されていくかは、未知数です。(第5章「家族の専門家」の項参照)。

200.  従って、私たちの考えは、全ての親が初期のIAMで法的情報にアクセスできるようにすべきだということです。本当に法的な問題が特定された場合に、親は法的助言のために弁護士に紹介してもらうべきであり、その際に経済的適格性のある人には資金を提供すべきです。

201.  初期のIAMを実施するために必要な専門的スキル、知識、経験の範囲は、付属資料3に記載されています。家事メディエーション評議会(FMC)認定メディエイターは、法定MIAMを実施するのと同様に、初期のIAMを実施するのに必要な訓練と技能を既に持っています。これは、これらの会議がメディエーションの前段階として扱われるからではなく、FMCの認定を得るための訓練、実証されたスキル、メディエイターの経験に関するものです。メディエイターは、純粋なメディエーションのスキルを超えた、以下のような分野の知識、理解、実務経験に関する正式な基準を遵守していることを証明しなければなりません。
  ・家庭内虐待のスクリーニング(下記セクションFおよび付属資料4にて詳述)
  ・別離の影響、家族に与える喪失感、葛藤・問題解決に取り組むための感情的準備の評価
  ・子どもの発達と、別離やその他の家族の変化が子どもや若者に与える影響・法的情報を相互に提示する能力・あらゆる支援選択肢に関する情報の提供と潜在的適性の評価
  ・葛藤、協力、競争の管理、家族紛争から子どもに焦点を当てた共同意思決定への転換・家族に関わる全ての専門家やその他の人々、即ち、カウンセラー、メディエイター、事務弁護士、ソーシャルワーカー、会計士などの適切な関与の特定と適切な指針提示

202.  家事メディエーション基準委員会(FMSB)は、法定MIAMの効果的な実施のための基準を確立し、MIAMの提供の質を確立し、厳格に監視し、一貫して維持することを任務としている。もし初期のIAMが実現すれば、FMCはFMSBに対して、メディエイターによるIAMの実施基準が法定MIAMの基準と異なるとすれば、法廷MIAMの基準とどのように異なるべきかを検討するよう要請することができます。

203.  私たちは、定められた地域の全ての家族の専門家、地域の一般開業医、保健師、学校、市民相談協会、家族のハブ、自治体チーム、RPCパートナーが、離別している親を、できるだけ早くIAMに参加させるように指示することを試験的に行うよう勧告します

E.経路の選択

204.  家庭内虐待と高葛藤による別離の違いを、家族の専門家は最初から理解しておかねばなりません。前者では、加害者と被害者がおり、承認済のスクリーニングツールのいずれか一つを使用すれば、このことが明らかになるはずです(下記参照)。後者では、メディエイターが葛藤に対処するのに必要な技術と経験を持っていれば、メディエーションは、葛藤を減らし、両親間のコミュニケーションを改善するのに役立つ可能性があります。このようなケースは、共同メディエーションに適していると思われます91。

205.  2つの異なる経路のケースを正しく識別することが基本的に重要です。安全を確保する経路、または協調的な子育て経路。安全を確保する経路が必要なケースは、直ちに適切な法的支援やその他の支援を受けるための指針を得る必要があります。協調的な子育ての経路に該当するケースでは、子どもの長期的なニーズを理解するように支援され、もう一人の親との問題を解決するための選択肢を提供されます。

206.  このようなケースは、裁判の過程で異なる扱いを受けるのと同様に、裁判の前や裁判の外でも異なる扱いを受ける必要があります。家族専門家(または開業医、学校スタッフ、市民相談協会のアドバイザー、家族のハブの専門家など、関連する専門家)と最初のコンタクトを取る時点から、虐待を発見した場合、それに対処する必要があります。「一緒に働く」や「協調的な子育て」という言葉は使ってはいけません。代わりに、その加害者との接触も含め、あらゆるプロセスの適切性について、慎重な評価が必要になります。

207.  子どもや若者への危害を回避することが、上記の2つの経路の基本です。子どもや若者は、未解決の親同士の葛藤によって、感情的かつ重大な被害を受けます。別離後も継続する両親間の高葛藤への影響に対し、家庭内虐待と同じ緊急性で対処せずに、家庭内虐待による被害だけに対処することは、若者に対する私たちの責任を放棄することになるのです。

208.  この2つの経路は、相互に排他的になることはできません。大人や子ども、若者が受ける虐待の防止に関心が集まるのは当然ですが、だからといって未解決の家族間の葛藤から生じる精神的な被害の防止について対処を放棄してはいけません。虐待を受けた家族紛争のケースにおいて、適切なスクリーニングと保護手段を備えた安全なプロセスの開発は、裁判所を基盤とした経路によって排除されていません。この2つの介入は、戦略的なレベルでも、個々のケースでも、互いに対話し続けなければなりません。

F.家庭内虐待

209.  夫婦関係の破綻に伴う親への支援を検討する際には、家庭内虐待に遭いやすい人、あるいは遭ったことのある人への安全なシステムが必要です。虐待の被害者は、相談する家族の専門家にその脆弱性を十分に理解してもらう必要があり、また、自分と子どもが必要とする保護を提供する裁判制度が必要です。ここでは、法律を反映するために「法定MIAM」を実施するメディエイターに焦点を当てましたが、同じ基準の枠組みが、メディエイターがそれ以前の段階で実施する全てのIAMにも適用されます。家庭内虐待を正確に特定するための保護基準は、情報・評価会議を行う全ての家族専門家にとって必要なスキルです。

210.  MoJハーム・レポートは、主に裁判のプロセスにおける問題を取り上げています。しかし、88ページの7.4.1項では、PD12Jの義務付けにも拘らず、虐待の被害者である母親が、コンシリエーションやメディエーションに参加することを要求されたり、指示されたと感じている証拠があることが分かりました。身体的、心理的にリスクがあり、不平等な力関係が助長される可能性があるにも拘らず、です。私たちは、家庭内虐待の申し立てがまだ確定していない以上、最初の審問で、以下のようなレポートの勧告を支持します。「裁判所は、虐待の申し立てが認められ、対処され、当事者が自らのために自由に話し、交渉できるという明確な証拠がない限り、予防的アプローチをとるべきです」93[訳者注]メディエーションは、決定権限のない中立的な第三者による紛争当事者の合意を促す交渉手法です。メディエイターは紛争の実体を評価するにあたり、積極的な役割を果たします。コンシリエーションは、第三者であるコンシリエイターが交渉の枠を作り、進行します。コンシリエイターは事件の実質的な問題点を追求することはなく、むしろ紛争当事者が話し合いを持ち、交渉が潤滑に、かつ促進されるよう助力します。

211.  安全でないメディエーションや地域社会の紛争解決慣行の報告を読みましたが、これは憂慮すべきことです。私たちは、「道を位置付ける」も安全でないメディエーション実践の例を発見したことを承知しています94。保護と専門家の支援が必要な人には適切な指針が示されねばならず、加害者と直接問題を解決するよう圧力をかけてはなりません。メディエーション界では、一部のメディエイターが安全でない状況でもメディエーションを提供することを厭わないという歴史があったかもしれません。これは、メディエーションが可能かどうかを判断する上で、効果的なスクリーニングや安全なアセスメントの方法について十分な理解がないまま、依頼者を「助けたい」という本能から生じているのかもしれません。

212.  また、メディエイターは、依頼者にとって身体的、心理的、結果的に安全な裁判プロセスを提供する家庭裁判所を信頼しなければなりません。家族問題解決グループのメディエイターは、家庭内虐待の被害者が、メディエイターよりも裁判を恐れ、2つの害悪のうち、まだ害が少ないと思われるメディエーションに同意するよう寄り添った経験があります。私たちは、MoJハーム・レポートの結論を歓迎し、これが家庭内虐待の全ての被害者のための安全な裁判手続きにつながることを望んでいます。メディエイターは、被害者に対し、彼らの事件が安全に処理されること、そしてそれが彼らにとってより安全なルートであることを再確認させる必要があります。

213.  過去の失敗から学ぶには、家庭内虐待の元被害者がどのような経験をしてきたかを聞くことが有益でしょう。私たちは、MoJパネルが彼らの仕事で受けた相談の回答について知る由もありませんが、それらは主に裁判手続きに関連するものであっただろうと理解しています。

214.  私たちは、「ウーマンズ・エイド」のネットワークを通じて被害者に簡単なアンケートを送るというアイデアについて議論しました。メディエーションに関して何を提供されたのか、査定はどのように行われたのか、何がうまくいき、何がうまくいかなかったのか、何を希望していたのか。既に簡単なアンケートの作成に取り掛かっており、今年の後半には完成する予定です。

215.  私たちは有難いことに、ディッキー・ジェームズ大英帝国勲章MBE95とSATEDA(「家庭内暴力を終わらせるための支援と行動」)のライザ・トンプソン博士からのご意見を頂きました。お二人のご意見は、私たちの議論に大いに役立ち、また家庭内虐待の被害者との査定会議を安全に実施するための最善の実施例を理解するのに役立っています。

216.  ジェームズMBEは、家庭内虐待部門は歴史的にメディエーションに対して根強い反感を持っており、それは当然だと考えていると語りました。しかし、メディエーションのやり方が変わり、虐待から立ち直った人たちが適切なタイミングでメディエーションを行うことで、非常に効果的で力を与える事例を見てきたため、その態度は和らいだ、と話してくれました。彼女は、家庭内暴力(DA)部門がメディエイターと協力して、依頼者が安全で将来のための選択ができる状態になった時点で、そのニーズに応える必要があると考えています。一律に どのような依頼者に対しても、どのような段階でもメディエーションを検討することを拒否すれば、一部の依頼者は、自分にとって力を与えてくれる可能性のあるプロセスに参加することができないのです。

217.  しかし、この重要な区別を最初に理解しておく必要があります。
  ・メディエーションは虐待関係において決して解決策にはなりません。
  ・被害者が安全で適切な支援を受けられるようになれば、場合によっては、メディエーションが回復の道筋において重要な役割を果たすかもしれません。

218.  私たちは家庭内暴力の安全で信頼できるスクリーニングを管理するための詳細な提案を付属資料4で取り上げています。これは、以下のような我々の提言を網羅しています。
  ・MoJハーム・レポートを参考に、主要な知識分野を理解する・安全なスクリーニングプロセスを確保する
  ・家庭内虐待の専門家認定を行うべきか否か検討する(私たちは行うべきではないと考えています)
  ・メディエーションは不適当と査定する:ノーと言うことの重要性・他の経路を理解する
  ・MoJの家庭裁判所向けハーム・レポートが推奨する、メディエーション実務に適合した「実務声明」を提供する

219.  ケント州SATEDAのライザ・トンプソン博士との別協議で、ケント州のメディエイターとケント州の家庭内暴力部門のための共同主催のワークショップの計画について話し合いました。これは、ケント州別離家族支援連合が主催する研修会に続くものです。このワークショップでは、家庭内虐待、特に強制的支配の複雑さと影響を理解する必要性、これらの行動の特定、そしてメディエーションがどのようにそれらを悪化させる可能性があるのかを取り上げる予定です。

220.  ワークショップの後、ケント州では、家庭内虐待サービスと地域のメディエーションサービスとリンクさせ、虐待が要因となっているケースでのパートナーシップ作業と協調的な対応を可能にするプロジェクト計画が期待されています。家庭内虐待部門は、困難な査定を処理する上で貴重な支援を提供することができ、共同作業アプローチにより、適切な時期に虐待被害者がメディエーションに参加することを決めた場合、虐待被害者を支援するための家庭内虐待専門業者の関与が可能となります。第一段階として、家庭内虐待を受けた依頼者に関する質問や懸念がある場合に、メディエイターがいつでも連絡を取れるよう、家庭内虐待部門のキーワーカーを置くことを検討しました。これは、正確な査定を確保するための支援となり、また、ケースがメディエーションに適さないと判断された場合に必要となる「管理された譲渡」を可能にすることができます。

221.  トンプソン博士は、資金が許せば、査定プロセスを安全に管理するために特別に設計された、シンプルで一貫した査定ツールを開発することに関心を示しました。

222.  家族問題解決グループは、2つのセクター間の議論を始めるための貴重なプラットフォームを提供しました。ジェームズ大英帝国勲章CBEとトンプソン博士は、両セクターが歴史的な相違から脱却し、両セクター間のより強力な業務提携を促進することを望んでいることは、心強いことでした。FMCが今後もこのような議論を続けていくことを期待しています

G.包括的アプローチ

223.  感情的な行路は、多くの対立する争いの中心にあり、利用可能なサポートを提供する際に考慮されなければならない。親が長期にわたって協力的な子育てをするための支援を受けるには、未解決の感情的な対立に対処しなければならない。「葛藤」は、元パートナー間で繰り広げられる未解決の感情という概念を包含しているので、意味のある支援は、しばしば本当の問題であるこれらの未解決の感情に向けられている必要があるのです。「紛争」は、問題よりもむしろ症状を説明するものです。

224.  喪失や死別を経験した家族のニーズに応えるには、感情的な状況を理解することが重要です。異なる段階にある親は、両名が後期段階にある別離中の夫婦よりも、その違いを怒りにまかせて演じたり、敵対的になったりする可能性が高い。報告資料「道を創造する」は、親密なパートナーは「非対称」に離別する傾向があるため、メディエーションに対する感情的な準備の非対称性はよくあることで、当事者の立場が二極化することにつながると論じています96。以下の図2のグラフは、全ての人が同じにはなりませんが、関係破綻の感情的な行路の一例を示しています。

225.  別離中の夫婦の間で感情的な問題が繰り広げられるのに、裁判所は適切な舞台ではありません。家族部部長のアンドリュー・マクファーレン卿が2019年4月の「リゾリューション」の基調講演で述べたように、虐待や保護の必要性を伴わないケースにおける裁判所の「不格好な法律主義的アプローチ」は、永続的な解決を達成したり、親やその子どもに利益をもたらす最良の場所ではない可能性があります。むしろ、「場合によっては、大人の競技で更なるラウンドをプレイするためのピッチャーと審判を提供するだけかもしれない」97。

226.  もし、コホート1と2の家族が問題を解決し、争議手続きを回避することを支援するのであれば、彼らの「感情的準備」に関する認識を深めることが必要です。これに関して私たちが支持する「道を創造する」の重要なメッセージは、以下の通りです。
  ・紛争解決DRプロセスに入る準備ができている当事者同士が非対称なのは、おかしなことではありません
  ・選択肢に関する情報提供には、依頼者の感情的な状態を考慮する必要があります
  ・両当事者の心構えができていない状態でDRを試みると、プロセスの拒否、遅延、プロセスの破綻、不当なアウトカムにつながる可能性があります
  ・一方の当事者が心情的に交渉に応じない場合、一時的な取決めだけを行わざるを得ないことがあります
  ・時間の経過は、一部の当事者がDRプロセスに入る準備ができていると感じるのに十分なこともあれば、他の当事者にとっては、治療的介入が必要なこともあります
  ・当事者がある問題に対処するための感情的な準備ができていたからといって別の問題には対処できるとは限りません
  ・DRプロセスを成功させるには、そのペースが重要です

227.  「道を位置付ける」によると、両親ともに感情的な準備と実際的な準備が整っていない状態で、両親が法廷以外の家事紛争解決プロセス、特にメディエーションに参加すると、法廷以外の家事紛争解決プロセスはしばしば決裂し、裁判所への申請が行われることがわかりました98。従って、両親の心の準備を支援することが、裁判によらない問題解決を成功させる鍵になります。

228.  この問題は、家族法の記事でブライアン・カントウェル99が力強く要約し、別離後の両親に提供される現在の「大きなギャップ」は家庭崩壊に関連する感情領域の中にあると説得力を持って主張しています。怒りや葛藤として現れることの多い、別離中の大人の感情的な側面を十分に考慮していません。これは、参加者が心理的、感情的な「折り合いをつける」過程において、「様々な感情的な場所にいる」場合、特に当てはまります100。

229.  家族への包括的なアプローチは、関係する親と子の未来を変える可能性を秘めています。また、大幅なコスト削減にもつながる可能性があります。DWPの「両親間葛藤低減チャレンジ基金」の資金提供を受けた「心のメディエーション」構想から得られた証拠によると、不利な立場にある別離した親にトリアージと指針提示、法的情報、コミュニケーションセッション、カウンセリングを提供すると、メディエーションへの関与とメディエーションにおける和解の可能性が高まり、裁判所への再訴減少につながるとのことです。2018年から2019年に法的支援を受けた依頼者のMIAMからメディエーション開始への転換率は約62%でした101。通常、メディエーションへの参加率が低い不利な依頼者グループとの共同作業にも拘らず、「心のメディエーション」構想における転換率は72%でした。また、この構想に参加した親は、メディエーションで完全合意または部分合意に達する確率が高く、全国平均が62%であるのに対し、68%でした102。最後に、最近の推計では、別離した親が裁判所に申請する数は全体の約3分の1とされています103が、本構想終了時(2020年3月31日)までにメディエーションが終了した親のうち、メディエーション決裂後に裁判所に申請したことがわかっている親は僅か6%でした104。

230.  私たちは、子どもの取決めに合意するのに苦労している親にとって最良の方法が、法的情報、カウンセリング、メディエーションの一括パッケージであると正式に認識することを提言します。私たちは、そのような一括パッケージを提供するために、全ての別離中の親が利用できるスキームを試験的に導入することを勧告します。

231.  私たちは、全ての家族専門家に、別居や離婚の際に生じる感情的な問題についての基本的なトレーニングを推奨します(付属資料7、法律専門家に必要なトレーニング参照)。裁判所と法律専門家は、単独で、あるいは問題解決のための他のプロセスと並行して、治療的支援を提案することの価値を、更に認識する必要があります。

232.  民間企業には、離婚や別居のプロセスと並行して精神的な問題を抱えた親をサポートするサービスが多く存在します。私たちは、法律事務所の中で、あるいは法律事務所と一緒に働く「リゾリューション」公認の家族コンサルタントを更に活用することを勧告します。また、自主セクターでは、夫婦関係の崩壊と折り合いをつけるのに苦労している人々のニーズに応えるために、様々なリソースが開発されています。その一例が20年以上続いている、グループワークを中心とした6セッションのコースを提供する「生き返った人生」105です。COVID-19以降、こちらはインターネットで続いています。私たちは、この種の提供の有効性を査定するために、試験運用することを勧告します。地域支援の更なる発展を待つ間の暫定措置として、全てのLFJB、メディエイター、事務弁護士は、法的サービスの提供以外の、親が利用できる治療やその他の支援サービスの全範囲について、常に情報を得るようにすることを勧告します。

H.子育てプログラム

233.  両親の関係の質が子どもに影響を与えることは、国際的にも国内的にも明確な研究結果があります106。親がどのようにコミュニケーションをとり、互いに関わり合うかは、効果的な子育ての実践や子どもの長期的な精神的健康、将来の人生のチャンスに大きな影響を与えるものとして認識されつつあります。二人の間で葛藤が頻繁で、激しく、うまく解決されていない親やカップルは、子どもの精神的健康と長期的な人生のチャンスを危険にさらしているのです。

234.  破壊的な両親間の葛藤は、あらゆる年齢の子どもに影響を与え、乳幼児期、児童期、青年期、成人期にわたって影響を及ぼすことが証明されています。親は、自分たちの相互作用が子どもにどのような影響を与えるか、また、葛藤の緩和が子どもの保護要因になりうることを知る必要があります。別離している、または別離した両親のためのプログラムには、コミュニケーションを改善し、両親間の葛藤を減らすための行動が含まれていなければなりません。

235.  様々な子育てプログラムが国際的に利用されていますが、親の別離後の計画的な子育てと子どもの取決めを可能にするため、統合的な国家的アプローチを採っている点で共通しています。私たちは、登録された子育てプログラムに親が参加することが、別離後の標準となるべきであると勧告します。私たちは、新しい離婚法の施行の一環として、これを歓迎します。

236.  イングランドでは、高葛藤の親、別離後の親を支援し、親同士の関係を改善し、子どものために最良のアウトカムを確保できるようにすることを目的とした幾つかのプログラムが公的部門と民間部門に存在します。様々なタイプのプログラムがあり、ばらばらで多様です。そのようなプログラムの一つである「別離した親の情報プログラム」(SPIP)は、義務化され資金援助を受けることができますが、皮肉なことに、裁判所から命令された場合のみ資金援助が提供されます。私たちは、イングランドにおける子育てプログラムの自己調整、標準化を提案し、国全体で一貫した質の高い子育て情報と支援を確保することを勧告します。

237.  提案された「協力的な子育て支援プログラム」(SCPP)の旗印のもと、以下の分野で勧告がなされています。
  ・法廷に行く前の資金提供プログラムによる法廷利用の削減、および親がアクセス可能なデジタル情報の増加
  ・プログラムの主要な部品/要素の特定
  ・既存の多様なプログラムからの最善の方法の特定、および特に「別離家族支援連合」と接点
  ・事業者が使用するプログラム標準の開発
  ・自己調整基準、認定機関の創設
  ・初期および継続的なプログラム/プロバイダーの認定プロセスの開発
  ・全国プログラム名鑑の作成と伝達
  ・家族専門家(法律家、メディエーター専門家を含む)の間でのプログラムの認知度とメリットの向上、および密接な協力関係の促進
  ・プログラムへの出席、具体的には、特にメディエーション会議を通じた奨励/要求する方策の検討

ユニバーサルネーム:協力的な子育て支援プログラム(SCPP)

238.  SCPPの利用可能性は多様です。私たちは、DWPが資金を提供し、30の地方自治体で試行されている8つのプログラム、更に私たちが知っている10の別プログラム、そして私たちに知られていない多くの別プログラムがあるであろうことを認識しています。

239.  様々な子育て支援が利用可能であり、全て異なるタイトルを使用しているため、私たちは「協力的な子育て支援プログラム」(SCPP)を、葛藤状況にある親や別離後の親を支援し、親同士の関係を改善し、子どものために最善のアウトカムを確保できるようにするため、全ての認められたプログラムに使用する用語とすることを勧告します。

裁判前/裁判中/裁判後のSCPPへのアクセス

240.  現在、資金援助された「子育てプログラム」を利用するには、裁判所がこのサポートを受けるよう命じなければなりません。私たちは、資金提供された子育て支援を確保するために裁判所が介入するという、この逆インセンティブを取り除くことを勧告します。親は、子どものために最善の結果を確保するために、裁判前、裁判中、裁判後に利用できる普遍的な提案を必要としています。これを達成するために、SCPPのための資金は、裁判前、裁判中、裁判後に利用可能であるべきです。特に、裁判前に資金提供されたSCPPを利用することが、裁判申請の削減に繋がるかどうかを確認するために、評価試験を行うことを私たちは勧告します。

デジタル情報

241.  特にDWPが推奨するカフカスや地方自治体だけでなく、自主セクターや任意団体を通じて、別離している親向けデジタル情報の提供が増加しています。このデジタルコンテンツは簡単に利用でき、アクセスしやすく、魅力的で効果的であり、しかも手頃な価格です。この開発は、部門や組織間で重複や混乱が生じる恐れがあるものの、将来的には更に順調に機能することができるでしょう。利用可能なデジタルコンテンツを評価するために、そして、デジタル・ソースとの関わりを求めることが裁判申請の削減に繋がるかどうかを確認するために、評価試験を行うことを私たちは勧告します

SCPPに関する私たちの勧告

242.  SCPPに関する包括的な勧告事項を付属資料5に示しました。その内容は以下の通りです。
  ・SCPPの基準を設定するための自主調整機関の設立
  ・認定されたSCPPプロバイダーのリストの作成
  ・SCPPの普及促進
  ・専門家の連携と位置づけ
  ・専門家紹介経路
  ・「別離家族支援連合」とSCPP
  ・SCPPの内容展開の基準
  ・SCPPの勧告事項のまとめ

I.親向けサービス-勧告事項の要約

言葉とプロセス

中核をなす勧告
私たちは、法的紛争から、両親が一緒に問題を解決することを支援する言葉に、言語をシフトすることを勧告します。(133節)

243.  私たちは、両親が一緒に問題を解決することを支援するプロセスと、両親が別離するプロセスとを区別することを勧告します。そうすることが安全な場合、両親は子どものために、「十分に」協力的な子育て関係を再構築するべく、子ども時代とその後の数十年間を通じて(協力的な祖父母になってさえも)、長期的なニーズに焦点を当てるべきです。(138節)

244.  言葉や期待は、「親責任」を有する二人の親が、安全であれば、一緒にいても、別離していても、別離した後も、子どもが生まれてから大人になるまで協力的に子育てを続けるというものであるべきです。(143節)

245.  協調的子育ての経路にある家庭には、児童福祉を促進するために、期待される定義可能な子育ての閾値を導入することを勧告します。子どもの受渡しの際に、親同士が積極的にアイコンタクトをとることを基本的な閾値として採用することを勧告します。(189節)

教育

中核をなす勧告
私たちは、家庭崩壊を司法上の苦悩から児童福祉への理解へと捉え直すため、幅広い公教育キャンペーンを行うことを勧告します。(149節)

246.  私たちは次のことを勧告します。
  ・スローガンを備えた包括的な全国宣伝キャンペーン
  ・インターネットメディアを通じた宣伝の支援
  ・インターネットまたはそれ以外の全公式情報源で使用するスローガン、ブランド戦略、検索語句によるバックアップ(152節)
私たちは、MoJが他の省庁やウェールズ政府と協議し、この提案に対応することを求めます。離婚制度改革がもたらす機会を逃さないことが極めて重要です。(153節)

情報

中核をなす勧告
私たちは、全ての道がそこから始まり、そこに繋がる信頼できるウェブサイトを推奨します。私たちが提案するサイトは、明確で正確な情報を提供する「別離家庭のハブ」です。(157節)

247.  更に、様々なレベルで広く情報を発信することを勧告します。
  ・社会一般に広く理解される包括的なスローガンまたは検索語句
  ・離れて暮らす親に理解しやすい見出しの原則(例:FJYPBの最高のヒント)
  ・「協調的な子育て」が実際に何を意味するかを親が明確に理解できるように、協調的な子育ての目標を説明する短いフィルムクリップを作成
  ・親のための様々なプロセスや選択肢に関する、明確で使いやすい、信頼できる情報
  ・問題解決に苦慮し、裁判所への申請を検討している親のための情報(家庭裁判所情報シート)
  ・子どもの取決めを検討する際に裁判所が適用する要素に関する親向けの詳細な情報(160節)

248.  これらの異なるレベルの情報が一貫性を持ち、互いに補完し合うこと、公教育キャンペーンや集中型ワンストップショップ・ウェブサイトと連携することを保証するために、コミュニケーションの専門家に相談することを勧告します。(161節)

249.  私たちは、HSSFマークを復活させ、地域の組織がイギリス規格協会の認証取得を申請し、別離家庭のハブに登録できるようにすることを勧告します。(165節)

250.  私たちは、別離後の家族を支援するための専門的な地域資源として、家族のハブをどの程度利用できるかを評価し、資金調達の選択肢をレビューするための試験的な取り組みを行うことを勧告します。(169節)

251.  暫定措置として、私たちは、全ての地域の家事司法委員会(LFJB)、メディエイター、事務弁護士は、家族のハブの存在とその運営方法を含め、地域で利用できるあらゆる支援サービスについて、常に情報を得るようにすることを勧告します。(170節)

252.  私たちは、教師、一般開業医、保健師、市民相談協会、家族のハブなど、家族のための「接点」の基本的な訓練と資源を提供し、それにより複数の情報源から同じ一貫した信頼できる情報を親に提供することを勧告します。(174節と175節)

早期情報および評価会議(IAM)

中核をなす勧告
私たちは、家族の別離後、問題が深刻化し立場が固まる前に、できるだけ早い段階で「情報および評価会議」(IAM)で家族の状況とニーズをトリアージすることを勧告します。(179節)

253.  私たちは、別離している全ての親が、メディエイターや適切な訓練を受けた専門家が実施する初期のIAMに参加できるよう、確立された経路を導入することを勧告します。これには多くの利点があり、特に重要な点は、どの家族が安全を確保する経路を必要とし、どの家族が問題解決のための支援を必要とするかを早い段階で選別することです。(181節)

254.  私たちは、この初期のIAMの名称をどうするか、行動洞察チームから助言を受けることを推奨します。(190節)

255.  私たちは、法的助言(弁護士から)と相互提供される法的情報(メディエイターや他の情報源から)を区別しています。子どもに関する紛争については、全ての親が法的情報にアクセスできるようにすることを勧告します。(200節)

256.  私たちは、定められた地域の全ての家族の専門家、地域の一般開業医、保健師、学校、市民相談協会、家族のハブ、自治体チーム、RPCパートナーに、別離している親をできるだけ早い機会のIAM参加に誘導するよう依頼する試験的な取り組みを勧告します。(203節)

家庭内虐待の正しい経路と安全なスクリーニング

中核をなす勧告
私たちは、2つの実践可能な経路を、明確に区別して理解することを勧告します。
・安全を確保する経路:安全が必要な人には、適切な法的支援やその他の支援を直ちに方針として示す
・協調的子育ての経路:親は、子どもの長期的なニーズを理解し、もう一人の親との問題を解決するための選択肢を提供するように支援する。(205節)

257.  承認済みのスクリーニングツールを使用して、2つの異なる経路のケースを正しく識別する必要があります。(204節)

258.  私たちは、評価を実施するメディエイターのために付属資料7に定められた強化された訓練要件とともに、付属資料4で家庭内虐待の安全で信頼できるスクリーニングを管理するための詳細な推奨を行います。

包括的アプローチ

中核をなす勧告
家庭内の紛争における感情的な状況に対処することは、関係する親と子どもの未来を変える可能性があります。私たちは、両親の感情的な状況を考慮した包括的なアプローチを勧告します。(229節)

259.  私たちは、法律サービス、メディエーション、カウンセリングを一括した支援パッケージが最善の方法として認識されることを推奨します。全ての別離中の親が、このような専門家による一括した支援パッケージを受けられるような制度を試験的に導入することを提案します。(230節)

260.  私たちは、全ての家庭医に別離や離婚の際に生じる感情的な問題に関する基本的トレーニングを行い、裁判所や法律の専門家が、単独であるいは他の問題解決のためのプロセスと一緒に、治療的サポートを提案することの価値をより促進することを勧告します。(231節)

261.  私たちは、法律事務所の中で、あるいは法律事務所と一緒に働く、「リゾリューション」認定の家族コンサルタントをもっと活用することを勧告します。(232節)

262.  私たちは、困難な感情と闘っている親を支援する利用可能なプログラムの有効性を評価するために、試験運用することを勧告します。(232節)

263.  地域支援のさらなる発展を待つ暫定措置として、私たちは全てのLFJB、メディエーション、事務弁護士は、法的サービスの提供以外の、親が利用できる治療やその他の支援サービスの全範囲について、常に情報を得るようにすることを提言します。(232節)

子育てプログラム

中核をなす勧告
私たちは、イングランドに、イギリス規格協会の認証された合意基準に沿って認定された、子育てプログラムの自己調整団体を設立することを提案します。(236節)

264.  私たちは、両親が別離後に、登録された子育てプログラムに参加することが当たり前になることを推奨します。私たちは、新しい離婚法の一環として、これを歓迎します。(235節)

265.  私たちは、「協力的な子育て支援プログラム」(SCPP)という旗印のもと、イングランドにおける子育てプログラムの自己調整、標準化を提案します。SCPPについては、付属資料5に包括的な提言を示しました。(子育てプログラムは権限委譲された問題であり、ウェールズではすでに作業が進行中です)。(236節と237節)

[訳者注]イギリスでは、立法権限の一部がイギリス議会からスコットランド議会、ウェールズ議会、北アイルランド議会、ロンドン議会に、行政権限の一部がスコットランド政府、ウェールズ政府、北アイルランド執行部、グレーター・ロンドン・オーソリティー、各合同行政機構に対して委譲されています。

266.  裁判に行く前に資金提供されたSCPPを利用することで、裁判申請が減少するかどうかを確認するため、評価済みの試験的取組みを行うことを勧告します。この試験運用の中で、私たちは利用可能なデジタルコンテンツを評価し、デジタル・ソースとの関わりを要求することが、裁判所への申請の減少につながるかどうかを確認することを推奨します。(240節と241節)

(了)

いいなと思ったら応援しよう!