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ファミリーバイオレンスおよび児童虐待の一形態としての片親疎外を否定する主張への反論

この文献はオープンアクセスです。原題名、原著者名は以下の通りです。
掲載書:The American Journal of Family Therapy
原題名:Countering Arguments Against Parental Alienation as A Form of Family Violence and Child Abuse
原著者:Edward Kruk & Jennifer J. Harman]

[クリエイターからのひと言]
 国連は、人権の擁護や推進等の人権に関する様々な活動を実施しており、この活動を支える組織には、①人権理事会、➁国連人権高等弁務官、③特別手続きがあります。人権理事会の最も革新的な特徴として挙げられているのが、「普遍的・定期的レビュー(UPR)」です。国連の全加盟国の人権記録を4年毎に審査するもので、2023年2月に日本が「子どもの権利条約と調和する国内法の見直し」「ハーグ条約の遵守」の勧告を受けたことを記憶している方も多いでしょう。国連人権高等弁務官は、国連の人権活動の総括と調整を行う役職です。特別手続きは、人権侵害を調査し助言を行う組織を指し、この任務を特別報告者と呼ばれる個人が担当する場合と5人の専門家で構成される作業部会が担当する場合とがあり、更に特定の国別、テーマ別に任務を課しています。
 さて、この文献の要旨には、「片親疎外は実証的妥当性に欠ける疑似概念と結論付けた『国連報告書(原文直訳)』」との記載があります。しかし、人権理事会が片親疎外に関して公式な見解や勧告を発表した事実は確認されていません。恐らく、原著者が言及した「国連報告書」とは、特別報告者であるリーム・アルサレム氏が第53期「国連人権理事会に提出した報告書」を指すものと思われます。特別報告者の見解や勧告は、国連全体が正式な政策として採択されたものではありません。加えて、法的拘束力もありません。勉強不足なのか、恣意的なのか、あるいは意図的なのか、「国連から片親疎外を否定する勧告があった」と喧伝する方がおられるようなので、読者が特別報告者が理事会に提出した報告書を、国連が採択した報告書と取り違えないよう、この記事では「国連に提出された報告書」と意訳しました。
 アルサレム氏の報告書に関するプレスリリースを翻訳して本文の後に掲載しております。ご一読下さい。

ファミリーバイオレンスおよび児童虐待の一形態としての片親疎外を否定する主張への反論

エドワード・クルック & ジェニファー・J・ハーマン

要旨

 片親疎外はマルトリートメントやファミリーバイオレンスの一形態であると科学的に認識されているにも拘らず、この概念に異議を唱える批判が数多くなされてきた。最近国連に提出された報告書は、片親疎外は実証的妥当性に欠ける「疑似概念」であり、ファミリーバイオレンスや虐待の危険に曝されている女性や子どもに重大な事態をもたらすと結論付けた。本論文では、片親疎外と疎外行動はファミリーバイオレンス力や児童虐待の一形態であるという主張に対して提起されてきた最も一般的な議論を提示し、反論する。私たちは、100件を超える査読済み研究で発表された実証的証拠と関連させて、それぞれの議論を検討する。

キーワード:片親疎外、ファミリーバイオレンス、児童虐待、共同養育

はじめに

 片親疎外(PA)とは、通常は両親が高葛藤を伴う別離や離婚をしている子どもが、一方の親(贔屓にしている親)と強く結びつき、正当な理由もなくもう一方の親(疎外された親)との関係を拒否する精神状態と定義される(Bernet, 2020)。この不当な拒絶は、標的となった親に対する子どもの見方が殆ど否定的なものばかりで、親を悪者扱いし邪悪な存在と見做すほどであり、ほぼ感謝されることのない虐待行為に従事する親が、もう一方の親を支配したり傷つけたりするために子どもを武器や道具として使用する、強制的に支配する家族力学から生じている(Harman & Kruk, 2022; Sharples et al., 2023)。
 片親疎外は、子どもが他の形態の児童虐待(身体的虐待など)の被害を受けた場合や、親の虐待を目撃し、その結果標的となった親を恐れている場合を指すものではない。学者は、PAの特定に役立つ5つの主な因子を定義している。⑴子どもがコンタクトを拒否し、標的にされた、あるいは拒絶された親に対して憎悪や無関心を示す。⑵子どもと現在拒絶されている親との間に、以前は良好な関係があった。⑶標的となった親が虐待やネグレクト、または著しく問題のある子育てをしていない。⑷疎外する親が複数の片親疎外行動(PAB)をしている。⑸子どもにはPAの8つの行動的兆候が見られる:子どもが標的となった親を中傷する、子どもがくだらない、説得力に乏しい理由、または虚偽の理由で、標的にされた親の拒絶を正当化する、子どもが親に対するアンビバレンス(両価性)を欠いている、標的にされた親に対する拒絶やマルトリートメントに対して、子どもが罪悪感を欠いている、子どもの意見が疎外する親からシナリオを借りてきたかのように一致している、贔屓にしている親を反射的に支持する、標的にされた親に対する否定的な態度や行動は、贔屓にしている親の影響を受けているせいではないと子どもが意見表明する、所謂「独立した思考者」現象を観察できる、標的となった親の親戚や社会的ネットワークを拒絶する(Baker, 2020; Bernet & Greenhill, 2022)。5因子モデルに関する誇張した批判が幾つかある(Garber & Simon, 2023など)一方、PAの特定に関するモデルの実証的テストでは、幾つかの査読済み研究で信頼性と妥当性が実証されており(Baker, 2020; Morrison & Ring, 2023)、家庭裁判所の裁判官を対象とした定性調査では、裁判官が意思決定を行う際に5因子モデルに反映された要因に依拠していることが示されている(Marques et al., 2022)。
 疎外する親が疎外プロセスで採用する戦略は、ダルースモデルのパワーとコントロールの車輪に描かれているような、強制的に支配する虐待行為として知られているものと一致している(Harman & Matthewson, 2020)。片親疎外行動は、2020年以前に発表された50件を超える研究(Harman et al., 2022)で調査、記録されており、感情的虐待(例えば、子どもを拒絶する、堕落させる、搾取する、子どもの感情的反応を否定する)、威嚇と脅迫(例えば、恫喝、ストーカー行為、法的および行政的攻撃)、孤立化、経済的虐待、特権の使用などのその他の強制行為に分類される(Harman & Matthewson, 2020)。これらの行動が家族力学に与える影響により、子どもと標的にされた親との間の心理的距離を拡げ、嫌っている親を拒絶する子どもの感情を過度に強化し、標的にされた親が抱く、子どもから拒絶されることに対する否定的な感情を高め、標的にされた親と子どもとの間に葛藤が生じる可能性がある(Baker, 2005; Harman & Matthewson, 2020; Kelly & Johnston, 2001)。自分の子どもをもう一方の親から引き離そうとする親は、子どもに次の3つのメッセージを伝える。「私はあなたを愛している唯一の親であり、あなたは自分自身に対して肯定的な気持ちを抱くために私を必要としている。もう一方の親は危険で、役に立たず、あなたを愛したことがなく、あなたを捨てた。その親との関係を追求することは、私とあなたとの関係を危険に曝すことになる」(Baker, 2005)。
 PAの定義と特徴については、PAの研究者と監護権評価者の間でコンセンサスが得られている(Bernet et al, 2021)が、家族法、政策立案、専門職の分野では依然としてPAは議論の的となっており、PAと疎外行動をファミリーバイオレンスの一形態として認めることに対する反対は依然として強い。誤解を招くような発言、誤報、誤り、科学否定手法の使用、親密なパートナーによる暴力とPAに関する査読済みの公開研究と判例法の現状について、声高な批評家によって不当な説明がなされてきた(Bernet & Xu, 2023; Varavei & Harman, 2024)。例えば、子どもを虐待する父親が起訴を逃れようとして、PA被害に関し虚偽の申立てを持ち出すのは、親密なパートナーによる暴力の加害行為から注意を逸らすためだという主張は、PAという概念の信用を失墜させ、その概念についての誤解に基づく一般的なメディアの報道によって道徳的パニックを引き起こすために使用されている(Harman et al, 2023; Varavei & Harman, 2024)。

片親疎外理論を反駁する14の議論

 PAの概念に反駁する議論は数多くなされてきたが、それぞれに対し、特に過去20年間において、ファミリーバイオレンス、親密なパートナーによる暴力、PAに関する実証研究から明らかになった豊富な科学的エビデンスによって簡単に反駁できる(Harman, Warshak, et al., 2022)。本稿では、PAの科学的構成に対して、およびPAとPABが児童虐待および親密なパートナーによる暴力の一形態であるという主張に対して提唱されてきた最も一般的な14の議論を提示し、反駁する。このような欺き偽ることを意図した、誤った議論は、一般的なメディアは勿論、現在の司法、法律の現場や臨床の現場に蔓延している。以下の主張は、科学的構成としてのPAに反対し否定する批評家が唱えてきたものである。それぞれの議論に対し、その主張を反駁する科学的証拠を示す。

  1. 信頼できる査読済み研究が不足しているため、PAは実証的妥当性に欠ける疑似概念であり、結果として、PA理論は似非科学として却下される可能性がある。
     科学的地位に欠けるとしてPA分野を却下することはもはや妥当ではない。
     PAに関する論文や書籍は1000冊以上存在し(Vanderbilt University Medical Center, 2017)、過去10年間に発表された幾つかの研究レビューは、PAが成長している科学分野であることを示している(例えば、Harman, Warshak, et al., 2022; Marques et al, 2020; Miralles et al., 2023; Saini et al., 2016)。査読済みの実証的研究を特定するために4つのデータベースを利用したこのトピックに関する最大規模のスコーピングレビューで、Harman と同僚(2022)は、過去20年間に様々な方法とサンプルを使用して10の言語で発表された200を超える研究を特定した。PA分野の科学的基盤はこのように強固かつ頑健である。彼らは次のように結論付けている。

    「片親疎外に関する研究の現状は、成熟しつつある科学的調査分野の3つの基準を満たしている。即ち、文献の拡充、定量的研究への移行、理論に基づく仮説を検証する研究の増加である。片親疎外に関する研究の約40%は2016年以降に発表されており、この分野が科学的発展の初期段階を過ぎ、科学的に信頼できる知識基盤を生み出していることを立証している」。

     更に、PA行動は親密なパートナーによる暴力と児童虐待の両方の深刻な一形態であること、認識されないことが多いこと、多くの人が想定しているよりも遥かに一般的であることについて科学的コンセンサスが得られつつある。疎外する親の虐待的な戦略は、PAが子どもと親に与える影響と同様に、十分に文献で立証されており、極めて有害な形態を成している(Bates & Hine, 2023; Harman et al, 2018; Hine & Bates, 2023; Kruk, Citation2018; Rowlands et al., 2023)。要約すると、PAの科学的地位は、多数の査読済み研究を通じて確認されており(Harman, Warshak et al., 2022)、PAの科学的エビデンスが存在しないと述べることは、よく言っても時代遅れの意見であり、悪く言えば、意図的な改竄、ミスリード、誤った情報の提供を行う試みである。PAを軽蔑的に「疑似概念」と呼ぶことも、反科学的志向の明らかなエビデンスである。

  2. アメリカ心理学会などの臨床団体は、片親疎外を正当な科学的概念として認めておらず、DSM-5-TRでは症候群として取り上げられていない。片親疎外理論は頗る信用を失っており、いかなる分類制度や信頼できる専門組織でも診断として受け入れられておらず、主流をなす医学協会、精神医学協会、心理学協会によって拒否されている。
     私たちはまず、「片親疎外」という用語がそれほど広く使用されておらず、研究者、実務者、専門家協会がPAの代わりに「非自発的な子どもの不在」「親の疎遠」などの他の用語が使用されることがあることを認めた上で、この主張に反論する。アメリカ心理学会は、「片親疎外」という用語を、Baker(2020)が特定した5つの特徴的な臨床兆候を有する一連の症状を表すために使用している。1985年に精神科医Richard Gardnerが作った「片親疎外症候群」という用語は、現在この分野の研究者や実務家は殆ど使用していない。この用語の進化は、PAが単なる個人の症候群ではなく、法的監護権争いで優位に立つために親としてお互いを蔑むように促すことで葛藤状態にある別離中の両親を二極化させる敵対的プロセスの性質を含む、家族的かつ制度的な根源を持つ現象であるという事実を認識した上でのものである。したがって、PAは、個人的な病理であると同時に、制度的な問題でもある(Kruk, 2018)。
     アメリカ精神医学会が発行する精神疾患の診断と統計のマニュアル(DSM)は、心理的状態や心理的現象が科学的に妥当または正当であるかどうかの重要な指標である。最近、「親子関係の問題」というDSMの症状に「片親疎外」という用語を追加するよう要請があった。この症状には「相手の意図を否定的に評価すること、相手に対して敵意を抱くこと、正当な理由なく疎遠感情を抱くこと」が含まれる(Bernet & Baker, 2013)。「片親疎外」という用語はDSM-5-TRに追加されなかったが、運営委員会のメンバーは、その理由として「親子関係の問題の説明には、しばしば「片親疎外」と呼ばれる種類の相互関係が既に含まれており(L.Yousif, 私信、2023年7月27日)、「現在の説明には、一方の親と子どもとの関係がもう一方の親からの圧力によって悪影響を受ける可能性がある状況が含まれている」ことを示した(L.Yousif, 私信、2023年9月12日)。したがって、DSMにPAが明示的に記載されていないのは、PAが科学的裏付けを欠いているため除外されたこと、あるいは科学的裏付けが認められなかったことを示すものではない。
     PAが「症候群」であるかどうかは、かなり議論の余地があるものの、PAが実際に存在していることは、家族調停裁判所協会(AFCC)、国際共同養育評議会、片親疎外研究会などの子どもと家族の団体によって広く受け入れられている。AFCCや同様の団体によれば、PAの存在、発生率、影響に関して科学的コンセンサスが得られている。PAの概念は、アメリカ児童青年精神医学会(1997)、イタリア児童青年神経精神医学会 (SINPIA, 2007)、スペイン親の干渉に関する学際研究協会(ASEMIP, 2010)、家族調停裁判所協会(AFCC, 2006, 2019; AFCCおよびNCJFCJ, 2022)、アメリカ小児科学会(子どもおよび家族の健康の心理社会的側面に関する委員会, 2016)、全国少年および家族裁判所判事協議会(AFCCおよびNCJFCJ, 2022)、アメリカ婚姻法弁護士協会(2015)など、他の多くの専門組織によって受け入れられている。
     2022年、アメリカ心理学会(APA)は、家族法手続きにおける子どもの監護権評価のガイドラインを発表した。APAはそのガイドラインの中で、「子どもの監護権評価の焦点には、身体的虐待および精神的虐待、ネグレクト、強制、片親疎外行動の存在、親同士の葛藤、暴力、虐待、拡大家族間の敵対的な遣り取りに曝されることなど、子どもの安全とウェルビーイングに対する脅威等の他の要因も含む場合がある」と述べている(強調追加、APA, 2022, p.5)。したがって、PAをAPAが支持していない、または専門組織が拒否しているという発言は不誠実で不正確である。

  3. 片親疎外の概念の支持者は、子どもが親とのコンタクトを拒否する全ての行為は片親疎外によるものであると推定し、ファミリーバイオレンスや児童虐待に起因するものでさえ、全てのコンタクト拒否を片親疎外に分類する。更に、父親が片親疎外を申立てている場合、裁判所は男性のファミリーバイオレンスの履歴や母親が提出した親密なパートナーからの暴力や児童虐待のエビデンスを却下する。虐待によってトラウマを負った別離家庭の子どもたちに降りかかる害悪は、子どもの監護権決定に片親疎外理論を適用した結果である。
     PA理論の支持者には、子どものコンタクト拒否は常に子どもが贔屓にしている親による洗脳の結果であると「推定」する人は殆どいない(Bernet & Xu, 2023を参照)。支持者は、子どものコンタクト拒否には多くの原因が考えられ、特定のケースで原因を確定するには慎重な評価を行う必要があることを認めている(Warshak, 2020a)。実際、PA分野における最優良事例では、虐待する親によって被害を受けた、またはトラウマを負ったと主張する子どもの話をまず信じ、ファミリーバイオレンスや児童虐待が排除された場合にのみPAの可能性を調査すべきであるとされている (Fidler & Bala, 2020)。ファミリーバイオレンスや児童虐待に起因するものであっても、全てのコンタクト拒否がPAに分類されるという考え方も、PAの5因子モデルに関する取り違えを反映している(Baker, 2020; Bernet & Greenhill, 2022)。PAの定義の中心にあるのは、コンタクト否は以前のマルトリートメントの結果ではないということである。PA事件では、親と子どもは以前にいかなる形態の深刻なマルトリートメントやネグレクトもなく、良好な関係を維持していたはずである。
     父親の暴力歴を裁判所が却下することに関する限り、家庭裁判所の成果研究から、監護権事件におけるファミリーバイオレンスや虐待の履歴、または父親がPAを申立てた際のファミリーバイオレンスに対する母親の懸念のいずれも家庭裁判所は却下していないことが明らかになっている(Paquin-Boudreau et al, 2022; Varavei & Harman, 2024)。Harman et al.(2021, 2023)は、疎外する母親が、「虐待をしている」ことが分かっている疎外された父親に対して虐待を主張しても、より往々にして、疎外する父親が虐待を主張するよりも信用されていないこと見出した。更に、Bala et al.(2010)、Paquin-Boudreau et al.(2022)、およびHarman et al.(2023)はいずれも(実証的調査結果に基づいて)監護権の状況などの要因は性別よりも子どもの監護権の結果のより良い予測因子であると主張している。例えば、Harman et al. 2023)は、性別は彼らの仮説の1つである子どもの監護権の結果を説明するだけであり、その結果の分散の10%しか説明できず、性別による違いは少ないか、統計的に有意ではないことを見出した。最後に、控訴審(Harman & Lorandos, 2021)および裁判レベル(Harman et al., 2023; Paquin-Boudreau et al, 2022)のPA事件のうち、その他の虐待の申立てが含まれていたのは半分未満であった。したがって、PAが発生したと判断された全ての法的事件を、その他の虐待の申立てがあった事件と同一視するのは誤りである。

  4. 片親疎外支持者は、共同養育の法的推定を支持し、ファミリーバイオレンス事件でも共同養育を推奨している。
     PAの概念に反対する議論は、家族法における推定としての共同養育に反対する議論と対になることが多い。先ず、共同養育の法的推定を支持する強固な研究エビデンス(Nielsen, 2018; Baude et al., 2016)、この概念に対する国民の支持(例えば、Braver etal., 2011)、およびアメリカおよび海外における家族法の基礎としての共同養育を確立することに関するパラダイムシフトにも拘らず、法制化された共同養育は依然として議論の余地のある問題であり、反対の立場が主張され続けている(例えば、Dale, 2021)ことを認めるべきである。今日のほとんどの法域において、「子の最善の利益」(BIOC)が依然として、争われている子どもの監護権決定の根拠としている唯一または主要な基準となっている。しかし、BIOC基準の曖昧さと不確定性は、子どもの発達と家族力学の複雑さについて訓練を受けていない裁判官に無制限の裁量を与えるものであり、ますます厳しく精査されるようになっている。アメリカの法科大学院のカリキュラムを監督する家族法教育審査委員会は、裁判官は監護権や養育計画に関するBIOCについて決定を下す能力が備わっていないと結論付けた(Millar 2009)。
     2人の「十分な」親が離婚後の子育ての取決めをめぐって争っている場合、どちらか一方を監護親または同居親として選ぶ法的根拠や心理学的根拠は存在しない(Kelly & Johnston, 2005)。事件は主に法廷でのエビデンスの提示方法によって大きく左右され、それゆえ、BIOCは司法上の誤謬を犯しやすく(Firestone & Weinstein, 2004)、裁判所は勧告を行うために専門の監護権評価者に大きく依存することになる。不幸なことに、子どもの親権評価の科学的根拠は激しく争われており、そのような評価の実証的根拠が欠如していることから、子どもの監護権に関する勧告は倫理的に問題があると論じられている(Tippins & Wittman, 2005)。
     BIOC基準は、離婚後の子育てについて意見が対立する両親に肥沃ない戦場を提供し、両親を争いに駆りたてる。BIOC基準を取り囲む不確実性は、葛藤の激化と持続を招き、訴訟や、場合によっては暴力を煽る。離婚手続きにおける敵意は、子どもに悪いアウトカムをもたらす最も強力な予測因子である(Semple, 2010; Millar, 2009)。Pruett & Jackson (1999) は、71%のケースで、訴訟手続によって監護権訴訟当事者の怒りと敵意の感情が極端になり、75%の親が、訴訟手続によってもう一方の親に対する否定的な認識が強まったと報告していることを見出した。多くの場合、この敵意がPAの原因となる。共同養育の法的推定はPAに対する防壁となり得るものの(Kruk, 2013)、共同養育の支持者は、ファミリーバイオレンスの場合に反証可能な共同養育の法的推定を主張している(Kruk, 2020)。ファミリーバイオレンスで、子どもを親から保護する必要があると判明した場合、子どもと配偶者に危害が及ぶ懸念があることから、子どもの安全のために、虐待する親の子どもとのコンタクトを制限したり、監督したり、あるいはコンタクトを一切認めないようにせねばならない。共同養育の推定が反証可能であるべきかどうかを個別に検討する際には、子どもの安全が最重要事項である。重度の暴力行為の履歴が証明されている親には、異なる解決策が必要になる。しかし、子どもの養育と監護権をめぐって葛藤状態にある暴力のない親の大多数にとって、ファミリーバイオレンスの防止という観点から、子どもの監護権に対する共同養育のアプローチは最も効果的である(Bauserman, 2002; Kruk, 2013; Nielsen, 2018)。
     共同養育の支持者は、ファミリーバイオレンスの問題を非常に深刻に受け止めている。例えば、国際共同養育評議会は、ファミリーバイオレンスと親密なパートナーによる暴力は刑事司法の問題として扱われるべきであり、加害者に責任を負わせ、被害者を保護するための障壁を認識し、取り除く必要があると指摘している。家庭裁判所は、こうした事件を適切に裁定するリソースを持ち合わせていない。なぜなら、深刻な暴力の被害者は刑事司法制度による完全な保護を必要としているからである。加えて、子どもが、疎外行為を含むファミリーバイオレンスを目撃することは児童保護の問題であることを児童保護当局が認識しなければならない(Kruk, 2020)。
     更に、共同養育の支持者は、高葛藤の離婚にはファミリーバイオレンスを伴わないものの、初回のファミリーバイオレンスが非常に高い割合(50%)で両親の別離中や別離後に発生することを認めている(Fernández-Kranz & Nollenberger, 2020; Halla, 2013; Kruk, 2013)。これは、監護権争いで子どもを失うという恐れが、葛藤を激しくし、暴力を生み出し得るからである。一方、共同養育は親同士の葛藤レベルの減少と関連している(Fernández-Kranz & Nollenberger, 2020; Halla, 2013; Kruk, 2013)。

  5. 虐待する男性は、片親疎外を隠れ蓑にして虐待を続け、子どもの法的親権を獲得する。父親は、母親に対する自身の暴力行為から注意を逸らすために、片親疎外の被害者であると主張する。片親疎外の被害者であると主張する親は、虐待親である可能性が高い。片親疎外の申立ては虚偽である。元妻に対する虐待と支配を継続するために、法的戦略として、父親は裁判所で単独監護権または共同養育を申請する際に、このような申立てを利用する。
     暴力的で虐待的な親には子どもの法的親権を与えないこと、および別離後の子育ての取決めの法的決定において引き続き子どもの安全を第一に考慮することは、必須事項だと考えられている。また、虚偽の否認や虐待に関する虚偽の申立てが蔓延していることから、暴力や虐待が実際に起こっていたかどうか、また誰が起こしたかを判断することが困難な場合があることも認識すべきである。
     疎外する親は疎外された親よりも虐待親である可能性が高く、虐待に関する虚偽の申立てをする可能性が高いことを示す研究が多数ある。ファミリーバイオレンス・ジャーナル(Sharples et al, 2023)の最近の研究によると、子どもを疎外したことが判明した親は、子どもから疎外された親よりも、虐待の訴えが立証される確率が82%高いことがわかった。また、疎外された親は、疎外する親よりも、虚偽または虐待に関する根拠のない申立てを受ける可能性が86%高いこともわかった(Sharples et al, 2023)。このような虚偽の申立ては、法的および行政的攻撃の一形態を構成し(Hines et al, 2015)、強制的な支配的虐待の一形態でもあると考えられている。
     カナダで16年間にわたってPAが発生したことが判明した全ての家族法訴訟を代表する500件の裁判レベルの訴訟の裁判所ファイル分析で、Harman et al(2023)は、疎外された親に対する虐待の申立てのうち、裁判所または捜査機関(警察や児童保護サービスなど)が、根拠がある、あるいは実証されたと判断した申立ては僅か10.9%であり、これは虐待の申立てのほぼ90%が虚偽または根拠がないと判断されたことを意味する。注目すべきは、この500人のサンプルのうち、虐待の判定を受けた疎外された親は僅か35人(7%)で、そのうち25人が母親で、10人が父親だったことである。したがって、虐待を行う疎外された親の殆どは父親であるという仮定は、過去16年間のカナダの裁判レベルの事件では真実ではないことが判明した。
     母親が虐待の申立て(立証する・しないに拘らず)をした場合、共同監護権になる、あるいは監護権を喪失するよりも母親が単独監護権を取得する可能性が高くなる(Ogolsky et al., 2022)。実際、性別に関係なく、一方の親に対する虐待の虚偽または根拠がない申立てが活用されればされるほど、その申立ての標的にされた親は養育時間を失う可能性が高くなる-このような申立ては家庭裁判所で「特効薬」として機能し、監護権獲得で有利になるため監護権争いにおいて虚偽の申立てを使用し続けることを助長する(Harman & Lorandos, 2021)。
    カナダの裁判レベルの事件を調査した最近の研究によると、実際には存在しない、父親が行ったPAの主張とそれに伴う母親の監護権の喪失との間の相関関係を、一部のドメスティックバイオレンス擁護者やメディアが作り出し、流布し、現実の家庭裁判所の事件では存在しない関係についてモラルパニックを引き起こしている(Varavei & Harman, 2024)。加えて、別離した父親や離婚した父親に関する研究では、PAの影響を受けた男性は、子どもの単独監護権を求めるよりも共同養育の取決めを求めることがわかった。そして、虐待的な男性が、彼ら自身が行った親密なパートナーによる暴力から注意を逸らすためにPAを主張するパターンがあるという主張を裏付けるエビデンスは存在しない(Kruk, 1993)。研究では、親密なパートナーによる暴力やPAを含め、ファミリーバイオレンスの発生率に関して男女の対称性も明らかになっている(Dutton, 2012; Hamel et al, 2012; Rozmann & Ariel, 2018)。しかし、監護権を持つ親は片親疎外をする可能性が高い(Bala et al., 2010; Pacquin-Bodreau et al., 2022)。法的単独監護権が決定すると、片親疎外をする親は力を得て、この力を乱用して別居親を子どもの生活から排除し得る。

  6. ファミリーバイオレンスや親密なパートナーによる暴力(IPV)が存在する状況では、圧倒的に男性が加害者で、女性が被害者である。
     一部の学者は、離婚後に共同養育の取決めが命じられた場合、強制的な支配は勿論、身体的暴力を含めたファミリーバイオレンスを母親が経験することが増えると報告しており(Meier, 2020)、フェミニスト学者は、家族法紛争ではファミリーバイオレンスのスクリーニングが見落とされることが多いことを見出した(Archer-Kuhn et al., 2023)。ファミリーバイオレンスの完全な生態学を包含する体系的なアプローチの中で、ファミリーバイオレンスの法的、感情的、心理的側面に対処するためのエビデンスに基づく家族政策と臨床介入が緊急に必要であることについては、一般的な合意がある。
     過去四半世紀にわたり、親同士の葛藤、ファミリーバイオレンス、IPVに関する伝統的な考え方が精査され、IPVの時代遅れの概念化がファミリーバイオレンスとIPVの問題を永続させ、介入に対する継続的な課題を引き起こしている重要な要因であると多くの人が結論付けている(Dutton, 2012; Spencer et al., 2022)。ファミリーバイオレンス家、特に親密なパートナー間の暴力に関する現在の科学的知識は、IPVは性差のある現象ではなく、ジェンダーパラダイムには本質的に欠陥があると結論付けている(Hamel, 2020)。ファミリーバイオレンス状況において女性が被害を受けることを決して軽視するべきではないが、親密なパートナー間の暴力の被害者は女性が最も多く、加害者は男性であるという仮定は誤りである。数多くのメタ分析(Archer, 2000; Fiebert, 2004; Hamel et al, 2012; Li et al, Citation2020; Rozmann & Ariel, 2018; Sparrow et al, 2020; Spencer et al., 2021, 2022)により、ファミリーバイオレンスの状況では、女性と男性がほぼ等しく親密なパートナーによる暴力の被害者と加害者になっていることから、よく想定されているよりも男女比は対称であることが明らかになっている(Karakurt et al, 2019; Leemis et al, 2022; Li et al, 2020; McNeely et al, 2001)。アメリカ疾病予防管理センターによると、過去1年間に男性の6.5%と女性の6.3%がIPVを経験している。カナダでは、「公共および私的空間の安全に関する調査」で、女性の12%、男性の11%が過去12か月間に何らかの形のIPVを経験していることがわかった(Roebuck et al., 2023)。親密なパートナーによる暴力の殆どは相互的または双方向的な性質を持ち、女性がIPVを振るう主な目的は防御ではない (Dutton, 2012; Hamel et al., 2012; Rozmann & Ariel, 2018)。女性は親密なパートナーによる暴力によってより大きな傷害を受けるが、これは男性がこのような状況で受けた傷害を否定するものではない(Hamel et al., 2012)。
     親密なパートナーによる暴力の殆どは、一方向の暴力というより寧ろ相互的な虐待であり(例えば、Whitaker et al., 2007)、強制的な支配行動の連鎖を反映しているというより寧ろその時の状況で生じた暴力である。非相互的な虐待の場合、約3分の2の事件で女性が加害者であることが判明している(Whitaker et al., 2007)。親密なパートナーによる暴力は、力と支配を維持するために身体的暴力を時には含む、強制的で支配的な行動パターンであるが、多くの場合はその時の状況で生じた、またはその場限りの出来事であり、深刻なケースはファミリーバイオレンスの約5%だけである(Whitaker et al., 2007)。したがって、女性が親密なパートナーに対してIPVを振るうのは、主に防衛のためではない。親密な関係にある女性が、一方的な暴力を振るう可能性は男性の2倍であるにも拘らず、その暴力は男性から女性への暴力よりも容認されている。女性がパートナーに暴力を振るい始めることが、女性自身が暴力の被害者になる主な理由である(Stith et al., 2004)。
     子どもの監護権争いにおけるファミリーバイオレンス事件には、継続的または断続的な男性による殴打、女性が引き起こす暴力、男性による支配的な相互暴力、別離や離婚による暴力、精神病的および妄想的な反応を含め、様々な形態がある。相互暴力が最も一般的な形態であり、男性による殴打(古典的な「暴力の連鎖」パラダイム)は、別離や離婚の事件におけるファミリーバイオレンスの5分の1にすぎない。監護権争いの事件における親密なパートナーからの暴力行為の全てが、構造的に生成される男性の権利意識と支配欲に由来する動機と表現を有しているわけではない (Johnston & Campbell, 1993)。

  7. 片親疎外は性差のある現象であり、片親疎外は男性にのみ影響するようである。更に言えば、片親疎外の申立ては性差が著しく、父親が母親に対して頻繁に使用し、母親が疎外する親であると告訴される。これは、女性が疎外行動をしていると男性が偽って告訴していることを意味する。それ故、片親疎外理論の使用は禁止すべきである。
     親密なパートナーによる暴力と同様に、PAは性差のある現象ではない。男性と女性はどちらも同様の割合で加害者と被害者である。アメリカ、カナダ、イギリスの全国的な代表サンプルを使用した調査では、母親と父親は疎外行動の加害者と標的になる可能性が同等であり (Harman et al., 2019; Hine et al., 2023)、それ故、法的単独監護権または主たる監護者の地位が与えられた場合に権力を乱用する可能性も同様に高いことが示されている。家庭裁判所では父親よりも母親が疎外する親であると判断されるケースが多い(約70%)が、こうした性差は、監護権のステイタス(母親が主たる監護者である可能性が高い)、監護評価における性差バイアス、訴訟に伴う金銭的コスト、疎外された親としての自覚における性別の違いなど、性別以外の様々な理由によるものであると研究者らは指摘している(Harman et al., 2023; Harman & Lorandos, 2021; Lorandos, 2020; Paquin-Boudreau et al., 2022)。
     ファミリーバイオレンスおよび親密なパートナーによる暴力の一形態として、疎外行動も女性に対するファミリーバイオレンスの一形態でもあり、子どもから疎外された母親が受ける危害は、標的となった親である父親が受ける危害と同等である(Kruk, 2018; Lorandos, 2020; Warshak, 2015)。女性も男性パートナーによるPAの被害を受けているという認識が欠如しているため、こうした被害者を見えなくしてしまう。PAが男性は勿論のこと女性にとっても深刻な被害と虐待の一形態であることを認めないことは、非常に問題である。被害者は不安、抑うつ、無力感、加えて一方の親、子ども、そして彼らのニーズに応えてくれない無数の法律、メンタルヘルス、学校制度による被害意識を抱えて暮しており、こうした感情が自殺念慮につながることもある (例えば、Harman et al., 2019)。
     最後に、虐待(PAを含む)について虚偽の申立てをする親がいるとしても、だからといってこの種の虐待を家庭裁判所で「禁止」すべきだということにはならない。この立場は、PA訴訟で提起された虐待の申立てのうち、立証されるのはごく一部(~10%、Harman et al., 2023)に過ぎないことを考えると、特に懸念される。児童虐待やIPVの申立てはPA事件で悪用されることが多いため、禁止すべきだという同じ主張をすることもできる。実際、カナダの裁判レベルの訴訟における申立ての30%は、裁判所への申立てまたは裁判所の命令発出の直後になされており、恐らく報復として申立てたのであろうと裁判所職員は報告している(Harman et al., 2023)。親があらゆる形態の虐待に対し司法救済を求めることを禁止することは、解決策にならない。

  8. 片親疎外の実際の発生頻度は低い。片親疎外は個人の病理の問題であり、体系の問題ではない。
     幸いなことに、全ての子どもが親から疎外されるわけではない。アメリカ、カナダ、イギリスの親の32~36%が疎外的行動の標的になっていると報告されているが (Harman et al., Citation2019; Hine et al., 2023)、それらの子どものうち中度から重度の疎外状況にあると判明したのは僅か6~7%だった。この後者の推定値は控えめな値である。なぜなら、各家庭で疎外されている子どもは1人だけであると想定しており(殆どの家庭には1人以上の子どもがいた)、より広く行き渡っている軽度のPAの症状を含んでいないからである(Harman et al., 2019)。疎外された子どもの数は疎外行為を経験する親の数に比べると少ないものの、アメリカの全人口の約1.3%を占め、これはアメリカの自閉症児の数のほぼ3倍に相当する(Kogan et al., 2018)。自閉症の研究と治療には毎年何百万ドルも費やしている一方、PAは、より多くの子どもに影響を与えるにも拘らず、認識されていない。
     更に、研究は、PAは個人的かつ政治的な問題であると同時に、個人的かつ体系の問題でもあることを示唆している (Kruk, 2018)。初回のファミリーバイオレンスは、PAを含め、その半分が、敵対的な離婚や子どもの監護権争いの文脈で発生しており、家族法の基礎として共同親責任を確立することで完全に予防できる(Kruk, 2013)。居所の取決めと意思決定権に関する明確なガイドラインを伴う共同養育の司法命令は、葛藤の軽減と初回の暴力の防止に関連している(Halla, 2013)。共同養育は、子どもに両方の親との質の高い養育時間を保証するため、PAに対する防壁としても機能する(Kruk, 2013)。

  9. 片親疎外が子どもや標的となった親に深刻な結果をもたらし得るという説得力のあるエビデンスは殆ど存在しない。
     片親疎外行為は、子どもや標的となった親に有害であり、重大な危害の原因であり、人間の主体性の結果であり、ファミリーバイオレンスと児童虐待の両方の深刻な形態を構成するという確固たるエビデンスが存在する。片親疎外行為は、子どもが曝されるファミリーバイオレンスや親密なパートナーによる暴力の一形態でもあり、そのような行為は感情的な児童虐待の一形態となる (Harman et al., 2018)。加えて、成人期まで続く子どもへの長期的な影響に関する、様々な研究方法(回顧的な説明だけでなく)を使用したエビデンスも存在する (Baker, 2009; Baker & Chambers, 2011; Baker & Verrocchio, 2013; Kruk, 2018; Miralles et al., 2023; Verrocchio et a., 2019; Verhaar et al., 2022)。子どもにとって、PAは疎外された親は危険で、思いやりがなく、価値のない親であるという誤った信念に基づいている。
     PAの状況では、子どもは親に愛を与える能力と親から愛を受ける能力を失う。子どもは両親を愛し、両親から愛されたいという生来の欲求があるにも拘らず、標的にされた親を憎むように操作される。標的となった親に対する疎外する親の軽蔑行為は、子どもが標的となった親を感情的に拒絶し、子どもの生活から有能で愛情深い親と親戚を失うことにつながる (Harman, Matthewson et al.,2022)。このような精神的虐待は、子どもに対する身体的虐待や性的虐待と同程度、あるいはそれ以上に子どもを衰弱させる。疎外行動が子どもに及ぼす深刻な影響には、自尊心の低下や自己嫌悪、うつ病、社会的孤立、学業成績の低下、薬物乱用、その他の依存症や自傷行為などがある (Kruk, 2018; Baker & Ben-Ami, 2011)。
     疎外行動は、その影響を受けた親にとっては複雑なトラウマの一形態であり、子どもにとっては、疎外された親は危険で価値のない親であるという誤った信念に基づく、深刻な児童虐待となる。重度のPAの場合、疎外された子どもと親が受ける心理的虐待を認めないと、彼らは脆弱で無防備な状態に置き、深刻な危害を受けるリスクに晒すことになる(Harman et al、2018; Kruk、2018)。
     児童虐待の一形態としての親疎外行為(PAB)に関するKruk(2018)の分析では、子どもへの影響を5つの主要なカテゴリに分け、詳しく説明している。第一に、親への憎しみを教えることは、子どもに自己嫌悪を植え付けることに等しい。自己嫌悪は疎外された子どもの間で特に見られる厄介な特徴であり、片親疎外のより深刻で一般的な影響の1つである。子どもは疎外された親に向けた憎しみを内在化し、疎外された親は自分たちを愛していなかった、あるいは望んでいなかったと信じるようになり、疎外された親を裏切ったことに関連する深刻な罪悪感を経験する。彼らの自己嫌悪(および鬱)は、一方の親に愛されていないという気持ちと、その親から引き離され、親の喪失を悼む機会、親について話す機会さえも否定されたことに根ざしている(Warshak, 2015)。親への憎しみは、子どもが自然に抱く感情ではない。PAの状況では、そのような憎しみが継続的に教え込まれる。親への憎しみとともに自己嫌悪が生まれ、子どもは自分には価値がない、欠陥がある、愛されていない、望まれていない、危険に曝されている、他の人のニーズを満たすことだけが自分の価値であると感じるようになる(Baker&Chambers, 2011)。
     第二に、多くの研究は、疎外された子どもは深刻な心理社会的障害を示すことを明らかにしている。これには、社会情緒的発達の阻害、人間関係における信頼の欠如、社会不安、社会的孤立が含まれる(Baker, 2005, 2010; Ben-Ami&Baker, 2012; Friedlander&Walters, 2010)。このような子どもは、両親との関係が悪くなる。大人になると、より早くパートナー関係を結ぶ傾向があり、離婚や同棲解消の可能性が高く、パートナー関係を結ばずに子どもを作る可能性が高く、自分の子どもを阻害する可能性も高くなる (Ben-Ami & Baker, 2012)。
     低い自立心、自律性の欠如、そして疎外する親への依存の持続は、疎外された子どもの第三の特徴である。Garber(2011)は、これが次の3つの形で現れることを見出した。大人化(疎外する親が子どもを大人として扱う)、親化(役割が逆転し、子どもが親の責任を負う)、幼児化(その関係が発展して子どもが無能になり、大人としての生活課題をこなせなくなる)。第四に、疎外された子どもは学校をサボる可能性が高く、疎外する親が些細な理由で子どもを学校に行かせないことが原因の場合が多く、また、幼少期に学校を辞める傾向がある。彼らは成人になってから学業や職業の資格を取得する可能性が低く、失業を経験し、収入が低く、社会扶助を受け続ける可能性が高くなる。このような子どもは、人生を無目的に漂っているように見えることが多い。最後に、疎外された子どもは衝動を制御できず、メンタルヘルス、依存症、自傷行為に苦しむ。彼らは喫煙、飲酒、薬物乱用をする傾向が高く、行動依存症に陥りやすく、乱交傾向があり、避妊をせず、10代の親になる傾向がある(Otowa et al., 2014)。

  10. 片親疎外治療計画の一環として、子どもを親から引き離すことは有害である。このような居所の変更は、子どもを片親疎外行動に曝すことよりも子どもにとってトラウマになる。
     離婚の結果に子どもが適応する上で最も重要な2つの要素は、共同養育生活の取決めの中で両方の親との有意義な関係を維持することと、ファミリーバイオレンスから守られることである(Fabricius, 2020; Kruk, 2013; Nielsen, 2018)。一方の親から子どもを引き離し、拒絶された親の元に置くことに不安に感じるかもしれないが、研究から得られたエビデンスは重度のPAにおけるこのアプローチを支持している。そのような状況で子どもを疎外する親から引き離す場合、この対応は通常、PAの有害な影響に対抗するためには子どもを引き離す必要があると見なされた時点で、一時的な措置として命令を発出する(Templer et al., 2017)。疎外された親への監護権の移譲と疎外する(虐待する)親との接触制限は、他の全ての努力が失敗し、子どもを加害親から保護する必要ばあると判断した場合にのみ推奨している (Warshak, 2020b)。
     どんな形態のファミリーバイオレンスであろうと、それを経験または目撃した子どもは保護が必要である。なぜなら、親密なパートナーによる暴力、ファミリーバイオレンス、PAの事件では、子どもと標的となった親の安全を最優先にするからである (Harman et al., 2018; Kruk, 2018; Warshak, 2021)。それほど深刻ではない疎外された低リスクの子どもに対する介入は、主に教育と予防に重点を置いている (Niemelä et al., 2019)。一方、中程度および重度の虐待には、より集中的な介入が必要である (Rossen et al., 2019)。重度の虐待の場合、家庭外養育の必要性を疑問視することはあまりなく、家族に支援サービスを提供し、再統合への道を開くことになる。重度のPAの場合も、同じ治療アプローチを適用する。子どもを疎外する親の監護下から引き離すことは子どもに有害であるという主張は、科学的エビデンスによって裏付けられていない。寧ろ、実証的研究は、疎外された親に子どもの監護権を移すことが、重度のPAの場合、家族の再統合計画とともに、最も効果的な介入であることを示している (Templar et al., 2016)。

  11. 子どもや青年が何を言い、何を望んでいるかを、監護権争いの訴訟における決定要因にすべきである。ファミリーバイオレンスの文脈では、子どもの暴力体験を検証し、より情報に基づいた決定を下し、子どもの安全と福祉を促進することを目的として、子どもの暴力体験に耳を傾け、対応する義務がある。
     子どもの監護権を決定する際には子どもの声を考慮すべきであることには一般的な合意があるが、子どもに意見を述べる権利を与えることと、子どもの生活の取決めについて完全な選択権を与えることとは異なる。大人と比較すると、子どもや青年は、健全な関係であっても、自分の決定の長期的な影響を理解するには、精神的能力および感情的能力が十分ではない (Miralles et al., 2023)。子どもは疎外されると、疎外する親の歪んだ見方を取り入れ、疎外する親から歪んだ情報を提供され (Harman, Matthewson et al., 2022)、どちらも生活の取決めに関する子どもの意見を偏った、真実と異なるものにする。国連児童の権利条約(UNCRC)第12条第1項(国連, 1989)は、子どもの意見を表明する権利の詳細を定めている。それ以来、学者たちは、子どもに譲歩を求めたり、悪影響を与えたりした場合の子どもの「声」について懸念を表明してきた(例えば、Robinson, 2021; 国連委員会, 2009)。この考察は、PAの場合。即ち、子どもが標的にされた親との接触を断ち、関係を解消したいと子どもが望み、子どもの安全が危険に曝される場合に特に重要である。PAの場合-特により重度のPAの場合-には、子どもは洗脳されていて、論理的に考える能力や、自分の人生経験に基づいて感情や意見を述べる能力を失っている。このような状況では、裁判所やその他の意思決定者は子どもの説明を聞いて対応することはあっても、子どもの説明を必ずしも信じる必要はない。寧ろ、提示されたエビデンスのより大きな文脈で考慮すれば、子どもの声はPAが起きていたことのエビデンスとして使用できる(Warshak, 2020a)。一般的な規則は、家庭裁判所では子どもに発言権はあっても選択権はないということである。
     両親の離婚後の生活の取決めに関する疎外されていない子どもの希望と好みに関する実証的研究では、共同養育が好ましい生活の取決めとして圧倒的な支持を得ている(Fabricius, 2020)。しかし、これらの好みは、子どもの監護権決定において共同養育の推定よりも「子の最善の利益」基準を採用している法域では、一般的に認められていない。Baker et al(2016)は、BIOC基準が監護権決定の中心的な要素として子どもの好みとPAをどの程度含んでいるかに関してアメリカの全ての州法をレビューし、多くの州が子どもの好みを考慮することを認めているものの、不当な影響が生じた場合にその好みを限定している州はないことを見出した。著者らは、PAが子どもに与える長期的な悪影響を特に考慮すると、BIOC基準は両親の葛藤に巻き込まれた子どもに悪影響を与え得る点で具体性を欠いていると結論付けた。

  12. 片親疎外の治療に関するデータは殆ど存在せず、片親疎外治療の有効性に関するエビデンスも存在しない。子どもの意思に反し、子どもの視点や感情的なウェルビーイングを考慮せずに強制的に再統合すると、既に脆弱になった子どもが、どうすることもできないという感情や抱えている問題を解決するには力不足だという感情を強めることが予想される。このような治療は、良いことよりも悪いことの方が多くなることが予想され、特に、強制的に再統合させられた親が虐待的であると主張する子どもの場合、永続的な心理的ダメージを引き起こす可能性がある。
     PAの治療に関するデータは他の家族介入の形態よりも少ないかもしれないが、PAは親密なパートナーによる暴力やファミリーバイオレンスの一形態、他の虐待形態に関連する児童虐待の一形態、および複雑なトラウマの一形態として治療が必要であるという点で合意されている(Kruk, 20189)。更に、重度のPAに対する家族治療および再統合プログラムの入院プログラムおよび外来プログラムの有効性に関する豊富なエビデンスが存在する(Friedlander&Walters, 2010; Gottlieb, 2012; Harmanet al., 2021; Lowenstein, 2015; Matthewson et al., 2023, Reay, 2015; Templer et al., 2017; Warshak, 2019)。これらの研究は、子どもと標的にされた親への専門的な介入や親子の再統合プログラムを含むPAの治療が、疎外された子どもと親のウェルビーイングにとっていかに重要であるかを総合的に実証している。
     再統合療法の成功の予測因子と成功の障壁に関する医師の見解を包括的に調査した結果、Baker et al.(2020)は、成功の定義方法、共同セッションの提供の有無、再統合の障壁の数が治療の成功の重要な要因であることを見出した。臨床医が主な治療目標を養育時間の回復と概念化すると、養育時間の回復が実現する可能性が高くなる。裁判所命令による最も一般的な介入の1つは、親同士の葛藤に対処するため子どもに個別カウンセリングを命じることである。この介入はその意図は正しいが、PAの場合には禁忌である(Warshak, 2020b)。第一に、個人心理療法には規定がなく、治療計画や治療目標を達成しているかどうかを判断するために裁判所が監視を行うことは殆どない。子どもたちは往々にして、オープンエンドの診療をいつまでも受けることになり、子どもたちが疎外されている場合、治療提供者が疎外を強化することが多いため、子どもたちの疎外は更に悪化する。残念なことに、疎外する親は、往々にして裁判所命令の子どもに対する医療上の決定権を有しており、家族の状況に対する自分の見解に共感するセラピストを「探し」、セラビストが疎外する親の操作に疑念を抱くようになると、別のセラビストにケアを移そうとする(Harman & Matthewson, 2020)。疎外する親の虐待行為から子どもを守ることを念頭に置いた、家族システム全体の治療が最も効果的である。

  13. 片親疎外に関する専門家証人は、裁判手続きで疎外を特定することに偏った関心を持っている。監護権評価者は、特に父親が疎外されたと主張する場合、母親による虐待の申立てを却下する。専門家は、子どもの監護権紛争におけるPAの申立ての誤用に関して、訓練を受ける必要がある。
     Warshak(2020a)は、親同士で争われている子どもの監護権訴訟におけるPAの誤認の問題について論じている。この誤認により、裁判所は実際には存在しないPAを存在すると結論付けてしまう。彼は、監護権評価者は、不合理に疎外された子どもと、否定的または拒絶的な行動をとるPAを構成しない子どもとを区別することを含め、子どもと親の行動について合理的な代替説明を徹底的に調査する必要があることを強調している。事例報告や査読を受けていない研究(Meier, 2020)は、監護権評価者が偏見を持っており、母親の虐待の申立てを信用せず、PAを申立てた虐待する父親に子どもの監護権を与えることを推奨しているという主張を広めるために使われてきた。しかし、国内の訴訟事例を用いた幾つかの査読済み研究(Harman et al., 2023; Harman & Lorandos, 2021)は、監護権評価者、専門家証人、または法定後見人が事件に関与した場合でも、子どもの監護権の結果に違いがないことを見出した。このような専門家は、PAとその介入に関する科学的エビデンスについて専門的な意見を提供し、かつ/または、裁判所が問題となっている家族間の葛藤の種類(PAだけではない)を判断するのを支援するために、裁判所の事実調査員として働くことが求められている。このような専門家は貴重な時間に対して報酬を受けているが、だからといって、PAが発生したと裁判所が結論付けることに「偏った関心を持っている」わけではない。寧ろ、子どもが親との関係を拒否または抵抗する理由として考えられる全ての説明を検討し、適切な介入を適用できるようにすることが関与の目的である。エキスパートやプロフェッショナルがPAの最終結果に偏った関心を持っていると主張することは、彼らの心構えに対する人身攻撃であり、このような家族とともに課題に取り組む専門家の信頼性を損なおうとする批評家の動機を示している。

  14. 親の軽蔑行動は、それを行う親だけがしっぺ返しを食らう。したがって、一方の親がもう一方の親を軽蔑して敵に回すことはできず、それ故、疎外の罪で訴えられた親は、子どもがもう一方の親を拒否したことに対して責任を負わない。
     PABに関する査読済みの実証研究は52件以上発表されており、そのうち13件はPABと子どものPAの兆候を直接結び付けている(Harman et al., 2022)。親の軽蔑的な行動の影響は、観察者には明らかであるが、疎外される子どもには明らかではない、あるいは子どもが否定する(Warshak, 2021)。親の軽蔑行動は、忠誠葛藤などの家族力学でしっぺ返しを食らうことがある(Afifi et al., 2008)。しかし、人は、好意を抱く人と同調してその人の意見を採用し、「外集団」のメンバーと見做される人から距離を置いた後、感情的に二極化することがある(Brown & Gaertner, 2001)。好意を抱く親と同調した疎外された子ども(「私たち」)は、嫌悪する親(「彼ら」)に対するアンビバレンスが欠如し(Kelly & Johnston, 2001)、危険に曝されたり脅かされたりしたと感じたときに確証バイアスを使用する傾向がある(Dibbets & Meesters, 2017)。親の軽蔑行動は、子どもに、もう一方の親は自分を愛したことがなく、自分を見捨て、自分にとって安全ではなく、不適格であると信じ込ませることを意図としている(Harman et al., 2022)。そのため、今や外集団のメンバーとして認識されている一方の親と対立する、自分が好意を抱く親と子どもが同調した後に、軽蔑行動をとった親がしっぺ返しを食らう可能性は低い。PA研究における重要な発見は、親の軽蔑行動だけではなく、PAB全体が子どものもう一方の親に対する認識に大きな影響を与えること (Harman et al., 2022)、そして子どもが一方的に片親疎外戦略を採用する親と同盟を結ぶことである (Harman et al., 2019)。PAは親密なパートナーによる暴力と児童虐待の両方の深刻な形態であるという科学的コンセンサスが生まれており、往々にして認識されていないが、多くの人が考えるよりも遥かに一般的である。疎外する親の虐待的な戦略は十分に立証されており、PAが子どもと親に与える影響も同様であり、重大な害悪を構成している (Baker & Darnell, 2006; Harman et al, 2018; Kruk, 2018)。

家族政策と実践に関する推奨事項

 ファミリーバイオレンス、PA、共同養育に関する研究に関するデータや重要な調査結果を故意に誤って伝えることは、子どもや親に重大な害悪が降りかかることになる。現在の多数の科学的データを好き勝手に無視して、虚偽の主張をしたり誤った情報を伝えたりする者は、倫理的責任を怠った罪に問われる。PAの概念を最も声高に批判する人々が、このテーマに関する実証研究を発表することも、自らの見解を発表したり議論したりするために国際会議に参加することもせず、科学界に対して説明責任を負わないことは注目に値する。
 PAの問題に効果的に対処するには、エビデンスに基づく介入の4つの柱が推奨されており(Kruk, 2018)、その1番目の柱は、PAをファミリーバイオレンスの特定の形態として認識し、刑事司法の対応を正当化することである。ファミリーバイオレンスは刑法の問題と見做すべきであり、ファミリーバイオレンスの加害者の刑事訴追やファミリーバイオレンスの被害者の保護に対する障壁を認め、認識し、取り除く必要がある。この点では、性別に基づくファミリーバイオレンスが特に懸念される。なぜなら、女性は深刻な身体的暴力によって不釣り合いに被害を受けており、刑事司法制度の完全な保護を必要としているからである。加えて、児童保護当局は、子どもが親の虐待を目撃することを深刻な虐待の一形態と認識すべきであり、それ故に、子どもの安全とウェルビーイングを確保するために調査と介入を必要とする児童保護問題と認識すべきなのである。
 2番目の柱は、PAを感情的な児童虐待の特定の形態として認識し、児童保護の対応を正当化することである。標的となった親は、専門サービス提供者、特に児童保護当局による疎外報告に対する専門家の誤解や無関心に日常的に遭遇している(Poustie et al, 2018)。PAを個別の児童虐待の一形態と認め、片親疎外に対する効果的な児童保護対応を研究することが最優先事項である。これには、家族支援プログラムや児童保護プログラムと、児童福祉当局が阻害する親から子どもを引き離して行う介入の効果が含まれる。
 3番目の柱は、家族法の基礎として共同親責任を確立することにより、PAを防止することである。子どもの監護権を巡る争いのある事件で共同養育を法的に推定することは、ファミリーバイオレンスやPAの事件では反証できることから、増大するPAの問題に対処する上で基本となる。共同養育は、ファミリーバイオレンスや児童虐待が立証されている状況では禁忌であり、ファミリーバイオレンス事件では共同養育に対する反証可能な法的推定が正当化される。ファミリーバイオレンスが一方向的、あるいは相互的かつ互恵的な状況において、裁判官は、暴力を目撃や経験している子どもの安全を確保する居所の取決めに関して決定権を保持すべきである。
 最後の柱は、子どもや標的にされた親への専門的な介入、親子再統合プログラムを含む、PAの治療に関連している。最も効果的であるためには、専門的な家族療法の実践における改革が、次の4つの主要領域で必要とされる。

  1. 片親疎外、ファミリーバイオレンス、家族療法士の教育と訓練。分野は以下:親密な関係における虐待と、共同養育を含む離婚後の養育の取決めへのその虐待の影響。虐待をスクリーニングし安全リスクを評価するための手順、手段、スキル。ファミリーバイオレンスやPAの事件で場合に安全を確保し、特別なプロセスを提供するための専門的なスキルと介入。ファミリーバイオレンスやPAが要因である場合に共同養育の代替となる手段。

  2. ファミリーバイオレンスとPAのスクリーニング。親は以下の内容を査定するため個別にインタビューを受けねばならない。ファミリーバイオレンスとPAのリスクと脅威、子どもの安全ニーズ、自発的かつ適切に子育ての取決めを交渉する各親の能力、力の不均衡の程度とそれが共同養育の取決めに与える影響、共同養育の代替となる安全で適切な手段の必要性。

  3. 安全性と、専門的な介入によって共同養育が可能になり得る過去のファミリーバイオレンスとPAの事例。リスクを最小限に抑え、安全性を最大限に高めるために、過去のファミリーバイオレンスやPAがもはや懸念事項ではなくなった場合の共同養育の選択肢に関連するプロトコルの開発の主導、および標的にされた親とその子どもに対するサービスのサポートをすべきである。安全性の規定には、共同養育の取決めに関する交渉前、交渉中、交渉後の安全を確保し、力関係の不均衡を補い、共同養育の交渉を安全かつ効果的に終了させるための専門的な介入が含まれる。

  4. ファミリーバイオレンスやPAの事件で共同養育の代替にする方案。これには、法的交渉、裁定、メディエーション、交渉、仲介による和解会議を包含し得る一連の婚姻解消モデルが含まれる。

結論:収束点

 PA理論をめぐる議論は収束していないものの、PABはドメスティックバイオレンスおよび児童虐待の一形態であるという主張の支持者と反対者の間には、幾つかの収束点が存在する。第一に、家庭裁判所で争われている子どもの監護権訴訟を扱う際に、子どものウェルビーイングを最大の考慮事項にすべきという点は、一般的に同意されている。第二に、子どもが離婚の結果に適応するための重要な要素は、両方の親との有意義で愛情のある関係を維持することであるという点について、コンセンサスが得られている。第三に、子どもを暴力や虐待、親同士の激しい葛藤への長期的暴露、およびPAから保護する必要があるという点は、同意されている。最後に、両親の別離中に子どもがファミリーバイオレンスやPAに曝されていると申立てられた場合または曝されていると疑われる場合、その子どもを保護し、ウェルビーイングを確保するためにどのような措置を講じる必要があるかを判断するために、タイムリーで徹底した情報に基づいた評価を行うべきであることが、一般的に認められている。
 離婚に子どもが適応するための2つの重要な要素は、両方の親との有意義な関係の維持と、暴力や虐待からの保護であるという点については、ある程度の合意がある。残る重要な問題は、有意義な親子関係の維持を確保しながら、同時に子どもを暴力や虐待から保護するにはどうすればよいかということである。高葛藤の事件における共同親責任の反証可能な法的推定、および親密なパートナーによる暴力や片親疎外の状況を含むファミリーバイオレンスや児童虐待の事件における共同親責任の反証可能な推定は、ファミリーバイオレンスやPAの防止に不可欠である。
 相違点もあるが、更に詳しく検討すると、解決可能な論点となる。PA理論の支持者は、別離後の家庭における子どものアウトカムに関する科学的エビデンスに基づき、共同養育を支持する反証可能な法的推定はPAを予防し、結果として大多数の子どものウェルビーイングと最善の利益に見合うと結論付けているが、反対者はPA理論と法定共同養育の概念の両方を否定し、共同養育に反対する反証可能な法的推定が別離後の家庭における女性と子どもを最もよく保護すると主張する。これらの2つの推定は、1つはファミリーバイオレンスの状況における反証可能な共同養育の推定を支持し、もう1つはファミリーバイオレンスの場合における共同養育に反対する推定を支持することから、通常、正反対の政策であると理解されている。私たちは、これら2つの推定が根本的に相反するという考えに異議を唱え、実際には補完的であり、家族法が、ファミリーバイオレンスの状況における脆弱な親と子どもの保護の必要性に十分対処し、同時に、有意義な親子関係に対する親と子どもの必要性が平等に保護されることを保証することが、双方の利益になると主張する。

情報開示声明

著者らによる潜在的な利益相反の報告はなかった。

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[訳者註]スコーピングレビュー scoping review
既存の知見を網羅的にマッピングし、ガイドラインに沿って整理し、研究が行われていない範囲(ギャップ)を特定することを目的としたレビューの手法。文献レビューには14種類の手法があるとされており、その中でシステマティックレビュー(Systematic Review)やメタアナリシスス(Meta-analysis)が著名だが、スコーピングレビューもその一つである。文献の検索手順やデータ抽出はプロトコールに従って明確に方法が確立されている。当該手法の主な目的は、幅広い知見を網羅的に概観し、どんな研究がすでになされているのか、研究する必要のある課題(ギャップ)を見つけ出すことである。

[訳者註]モラルパニック moral panic
社会の道徳的秩序を脅かす問題に対して大衆が懸念したり恐怖に襲われたりすること。

[訳者註]専門家証人 expert witness
アメリカの法廷における証人は「事実証人fact witness」と「専門家証人」とに大別される。事実関係について証言するのが事実証人であり、専門的立場から意見を述べる証人である。事実証人は事実を述べることはできるが、自らの意見を述べることはできないのに対し、専門家証人は学者などが専門知識に基づいて証言し、自らの意見を述べることができる。

附録

監護権争いにおける暴力から女性と子どもを守るために必要な緊急改革:国連専門家

2023年6月23日

ジュネーブ(2023年6月23日)-世界中の家庭裁判所制度に深く根付いたジェンダーバイアスにより、女性や子どもが甚大な苦しみと暴力に曝されていると、本日国連専門家が述べた。

「特に母親かつ/または子どもが、強制的な支配、身体的虐待、性的虐待を含む家庭内虐待の信憑性のある申立てを提出している場合、監護権訴訟において家庭内暴力や虐待の履歴を家庭裁判所が無視する傾向は容認できない」と、女性に対する暴力、その原因と結果に関する国連特別報告者のリーム・アルサレム氏は昨日ジュネーブの人権理事会に提出した報告書の中で述べた。

彼女は、親密なパートナーによる女性への暴力の歴史は往々にして無視され、子どもの監護権、面会、接触、訪問の取決めや決定に関しては、共同監護権または共同親権というデフォルトルールが優勢になっているようだと述べた。

「子どもの意見が十分に考慮されないまま、疎外されていると主張する親に有利な形で監護権が決定され、該当する子どものレジリエンスが損なわれ得る。子どもは永続的な危害に曝され続け得る」とアルサレム氏は述べた。彼女はまた、子の最善の利益に焦点を当てた子どもに配慮したアプローチを採用していない監護権決定プロセスも批判した。

報告書は、否定的な固定観念は勿論、司法へのアクセスの障壁が増加することにより、少数派の女性は「片親疎外」の罪で起訴される際に更なる障壁に直面すると強調している。

アルサレム氏の報告書は、根拠がなく非科学的な片親疎外という概念の使用が、非常に性差別的であることを強調している。この概念は父親と母親の両方に対して主張されているが、主に母親に対して使用されている。偏った監護権決定の結果は、関係者にとって有害で取り返しのつかないものとなり、別離の前後に暴力が継続することにつながる懸念があると専門家は述べた。このような重大な結果にも拘らず、「片親疎外」と関連する疑似概念は、子の最善の利益について家庭裁判所に報告する任務を負っている評価者の間も含め、法制度に根付いており、支持されている。

アルサレム氏の報告書はまた、個人、家族、社会が受けている長期的な被害を修復するための各国およびその他の関係者への勧告も述べている。彼女は、多くの母親と子どもが家庭裁判所の手で経験している多層的な暴力の人権的側面を国際社会の共通の良心に取り入れるよう求めた。

「監護権や訪問権の取決めを定める際には、女性や子どもの暴力からの保護、被害者中心のアプローチ、子の最善の利益が、他の全ての基準よりも優先されなければならない」と彼女は述べた。

特別報告者はまた、リビアとトルコへの訪問に関する報告書も提出した。

結び リーム・アルサレム氏(ヨルダン)は、2021年8月に人権理事会により女性に対する暴力、その原因と結果に関する特別報告者に任命された。彼女は、エジプトのカイロにあるアメリカン大学で国際関係論の修士号(2001)、グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国のオックスフォード大学で人権法の修士号(2003)を取得している。彼女は、ジェンダー問題、難民と移民の権利、移行期正義、人道的対応に関する独立系コンサルタントである。特別報告者は、人権理事会の特別手続きと呼ばれる組織の一部である。国連人権システムにおける最大の独立専門家組織である特別手続きは、特定の国の状況または世界各地のテーマ別問題に対処する、理事会の独立した事実調査および監視メカニズムの総称である。特別手続きの専門家はボランティアで働いており、国連職員ではなく、仕事に対して給料を受け取っていない。彼らはいかなる政府や組織からも独立しており、個人の資格で活動している。

(了)

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