エバーグリーンでなくても
久しぶりに最晩年のカラヤンがウィーン・フィルを振ったシューマンとドヴォルザークのアルバムを聴きました。これがメチャクチャいい。でも、これ30年前の演奏なんですよね。まさしくエバーグリーン。
それを考えると「クラシックの演奏家って大変だな」と思うのです。だって(録音というジャンルにおいては)演奏する曲が同じなわけですから、これまでの全演奏家がライバルということになります。(テクノロジー的には確かに録音技術は上がっていますが、でも30年前の録音だって普通に聴く分には全然問題ないですからね。何ならこちらの視聴環境もそう立派なものではありませんし。)
その点、比較するのもなんですが「ICT×教育関連」は気楽なものです。どんな教育学の古典的名著も「タブレット一人一台環境」なんて考えていなかった時代に書かれているわけですから、それを前面に押し出す分には過去の名著と比較されることはありません。
ただし、それは「書籍としての賞味期限の短さ」とバーターになっています。現代の教育課題に立ち向かいつつエバーグリーンを目指すのは並大抵のことではありません。
さて、自分の本はどうか? いやぁ、エバーグリーンとはならないでしょう。各種ツールの How to がメインの書籍ではありませんが、それでも時間を経るに従って古びていく部分はあります。
しかし、「ICT×インクルーシブ教育」というタイトルで書籍を出せたことで一先ずの使命は果たせたかな、と思っています。
「通常学級に在籍する学びに困難を抱えた児童が、その困難を乗り越えて他の児童とお互いに影響を与え合いながら学んでいく。そんな学びをICTの活用によって実現することは可能か。」
本書が目指したのはこの問いへの答えを表すことでした。それができているかどうかは読者の判断を仰ぐよりありませんが、この問いを追求することが普通のことになって「こんな本、古臭いよね」と言われるようになることが目標だったりします。