著者のトム・ギルは、明治学院大学の文化人類学者。日本のホームレスについて、いくつかの著作を発表しています。
この本で取り上げられている西川紀光氏は、そんな著者がインタビューしたひとりですが、たいへんな読書家だったようで、ギルによれば、「『読んだ本の数』では紀光に負けているだろう」とのこと。また蔵書家だったようで、紀光が泊っていたドヤの2畳半は「『現代思想』『世界』『理想』などのインテリ雑誌や古本屋で買った小説と学術書の山で畳が見えない」ほどだったとか。その一方で、図書館も使っていたようです。
紀光はアメリカの思想家エリック・ホッファーについて語っていますが、ホッファーを知ったきっかけは図書館だったと語っています。三十数歳、川崎にいた時のこと、
また仏教に学ぶようになったきっかけについて、こんなことも。
また紀光自身も、「歩く百科事典」であり、ギルはその死を「図書館の消失」にならぞえていました。
また読書だけでなく、図書館で音楽にも親しんでいたようです。横浜に来る前、自衛隊にいたときのこと、札幌の真駒内基地でも図書館を使っていたようです。
このLibraryはたぶん、いわゆるキャンプ・クロフォード(戦後、進駐軍によって真駒内に建設された米軍基地。のちに自衛隊の駐屯地となる)にあった図書館のことと思われます。