『アホによく効く博覧読本 大阪パノラミン』(朝日ワンテーママガジン)
ユニークな大阪案内、というか、大阪ペディアとでもいうべき本。「観光」「都市計画」「交通」「事件」など、25の項目に分けて、大阪を多角的に取り上げているのですが、「名物」という項目に、大阪市立中央図書館が取り上げられてます。たしかに名物かも。
とはいえ、この本が刊行された1994年当時、大阪市立中央図書館はまだ建設中でした。
しかしここでの話題の中心は、挿絵にもありますが、当時「仮の宿」に間借りしていた図書館というよりも、「ダンボールさん」のこと。
『毎日あほうだんす』の西川紀光さんを思い起こさずにはいられませんね。
本書は、こうした「家のないダンボールさん」をはじめとして、
などなど、こうした人々を「さまよえる人々」と呼び、「さまよえる人々は、もしかすると失ってしまった夢や希望を見つけにここに通っているのかもしれない。」と、想像力豊かに結んでいるのですが、どうやら「さまよえる図書館」から「さまよえる人々」へと、図書館とその周辺をパラレルに描きだしているようです。
ところで大阪の図書館といえば、市立もさることながら、府立もまさに「名物」。『大阪パノラミン』の「建築」の項目には、中之島中央公会堂の記事があり、府立図書館についても併せてふれられています。
読んだところ、どうやら本書の執筆に際しても、府立図書館が活用されたのかもしれません。
「さまよえる人々」にもロマンがありますけど、この女子学生たちは、ゼミで建築を学んでいた学生だったようです。築70年、老朽化の進んでいた公会堂は、保存と再生で論議をよんだそうですが、学生たちがこうして中之島の本を紐解いていたのは、保存派と建て替え派に分かれて、ディベートをするための下準備だった模様。
市立中央図書館が当時、建て替え中だった一方で、公会堂は本書の刊行数年後に、耐震補強して保存する工事が始まったようです。
ちなみに建築のページは読み進むと、付録として大阪の建築物を題材にした古い絵葉書がいくつか掲載されています。撮影時期は記載されていませんが、そのなかに中之島公園の絵葉書も含まれており、川岸の向こうに建つ丸い屋根の中之島図書館も写っています。