これは、「金融商品トラブル」ではなく、金融機関による詐欺ではないのか?

 年末にたまった新聞記事の切り抜きをしていて、とても腹立たしい思いをした。朝日新聞20年8月24日付けの記事を以下に引用するが、これは、決して「金融商品トラブル」ではなく、銀行など金融機関による詐欺だとおもう。遠藤俊秀・前金融庁長官が退任前に高齢顧客への金融商品販売手法について証券界へ「警告」を7月に発しなければならないほど金融業界あげての詐欺行為がまかり通っていることを報じた記事やニュースはあまり見ないがそれはどうしてだろうか?これほど特殊詐欺被害が取りざたされているのに。

高齢者 金融商品 トラブル注意

■高齢者の金融商品購入、気をつけたい七つの注意点
① 退職金や相続時の大きなお金で、高リスク性の商品を一括購入していないか
② そのうち必要となるお金なのに、当面必要のない「余裕資金」とみてしまう
③ 深<考えず、契約時に親族が同席することを「不要」と判断しないで
④ 「日本は低金利」と、高リスクの外貨建て商品への投資に偏重してしまう
⑤ 自ら理解・判断せずに、担当者の言う通叫こ株式を売り・買いする
⑥ 「後で解約できる」と思っても、違約金や手数料が発生する場合が多い
⑦ 一見親切心と思える助言が、手数料獲得のための勧誘かもしれない
 (読者から寄せられた勧誘被害の声などをもとに作成)


 高齢顧客への金融商品販売でトラブルが後を絶たない。入知れず思わぬ損失を抱えたお年寄りからは「施設入居の準備金と思っていたのに……」「子に迷惑をかけまいとためたお金を失った」などと後悔の声があがる。あなたの夫や妻、実家の親は大丈夫ですか。(柴田秀並)

損失1500万円「施設入居資金が・・・」

 高齢者のお金のトラブルに関して読者から届いた数々のお便り

 遠藤俊英・前金融庁長官が退任前、高齢顧客への金融商品販売の手法について証券界へ「警告」を発していた。そんな記事を7月24日付の経済面で掲載したところ、読者から40通を超すメールや手紙が届いた。大切な老後のお金を失って悶々とする悲痛な思いが多く記されていた。
 「人任せにした自分の馬鹿さ加減化嫌気がさすばかりです」。直筆の手紙にこうつづった関東の一人暮らしの女性(85)に記者が連絡をとった。退職時に株を買ったが、その後約20年間ほぼ取引がなかったという。
 証券会社から約10年前に、「管理が大変だから、まとめた方がよいですよ」と勧められた。親切にアドバイスしてくれる人だと感じ、「会社四季報」も知らない女性だったが、株取引を本格的に始めた。
 営業担当からたびたび電話があり、「今のうちに売った方がよさそうです」「外国人観光客が増えており、たばこ会社の株が買いです」。そう誘われては深く考えず売買に応じた。
 問題に気づいたのは2018年に体調を崩した頃。病院を転々とする生活で自らの終活を意識し始め、株取引の残高を確認した。
 すると、1千万円を超す損が出ていた。過去の取引を記した「顧客勘定元帳」を取り寄せて調べると、外貨建ての債券や投資信託、新興企業株などの売買記録が5年間に60回以上。売りで利益を出した後、新たな買いで損を抱えているケースがいくつも見つかった。
 「高齢で根気も体力もない。新型コロナウイルスの影響で外にも出られず、泣き寝入りするしかない」。女性は後悔の念を漏らす。
 関西の80代女性は約5年前に夫を亡くし、数千万円を相続した。その直後、メガバンクの支店長がグループの証券会社の女性社員を連れてやってきた。
 女性は勧誘を受けて証券口座をつくり、夫の遺産を移した。約2500万円分の外貨建て債券や高リスクの商品を次々と購入。今年調べると、損失が1500万円近くになっていた。「これからの施設入居の準備金とも思っていたのに・・・」。取材班に届いた手紙にはそう記されていた。

甘い言葉で高リスク次々と
 複雑で高リスクの商品を十分わからず買う。高齢顧客の勧誘被害の共通点だ。
 まとまったお金が銀行口座犯入った直後、金融機関が「密室」の自宅を訪問。熱心な勧誘に相手を信頼し、甘い言葉に乗る。実は資産のバランスを考えた運用ではなく、多くの手数料を得られる商品の契約。その後の相場で損を抱える。そんな事例が目立つ。
 東京都内の一人暮らしの女性(81)は夫の残した金融資産で、複雑な仕組み債などを買って損を出した。
 「随分高い授業料を払わせられた。わからない事はやめるべきでした」と悔やむ。
 80代になるという一人暮らしの高齢者は、自宅を訪れた信託銀行の女性行員の熱心な勧誘を受け、外貨建て保険を契約。いざという時に必要なお金だったため、その後クーリングオフをしようとしたが、期限の8日以内に間に合わなかった。書類を見返すなかで気づいたのは、顧客の属性や投資目的を記したカードの「運用可能期間」に「10年以上」と記されていだこと。「自分は『2年後に必要なお金だ』と話したのに、怒りがこみ上げる」
 神奈川県内の70代後半の夫婦は「子供に迷惑をかけまいと、無駄遣いせず夫婦でコツコツためたお金をほとんど失いました」。大手証券の担当者の勧誘で外貨建て債券を次々と買い、資産を減らしたという。東北の70代男性は「自分の成績を上げるためなのか、『『もう100万多くできませんか』と懇願してる』と営業担当への不満を記した。
 「老後に2千万円必要」とする金融庁の報告が昨年話題となった。超低金利のなか、個人の資産形成の重要性が叫ばれる。そこで注目されるのが投資信託や高金利の外貨建て商品だ。しかし、商品内容の説明が不十分だったり、投資の不安を抑えるための言葉が誤解を招いたりしがち。例えば、外貨建て保険での「元本保証」は一般に外貨での話。日本円に戻す際に為替次第で元本より減る可能性があるが、こんな文言もトラブルを招く一因だ。
「夫婦で老後のためとてやったのがこの結果です」。70代の女性は海外の債券に投じる仕組み債など高リスク商品を次々と買い、老後資金に大きな損が出た体験を伝え、さらにこんな思いも記していた。
 「政府は老後資金づくりに欠かせない商品と投資信託を勧めているが、高齢者の弱点をうまく利用されているみたいで腹立たしい毎日です」

金融機関は終了まで適切なフォローを
全国地域生活支援機構 尾川宏豪(ひろひで))理事

 顧客のことを知り深く理解しようと努力を重ねる。その姿勢が金融機関側にあれば大きな問題は起きないはずだが、勧誘など都合のよい時だけ会おうとするとトラブルはなくならない。
 現在、高齢者への販売ルールを持たない金融機関はないはずだが、現場ではルールが形骸化し、トラブルの温床になっている。例えば、契約時に家族が同席するルールについても「本人が同席は無理と言っている」で済ませず、家族に会う、確認する努力を金融機関側はどこまでしているだろうか。
 金融商品販売では「(顧客の知識・経験・財産の状況などに照らして不適当な勧誘をしてはならない)適ふに性の原則」がある。現状のルールでは、勧誘時の個別商品の判定とどまっているが、顧客の生活環境や能力は変化するし、運用成果も変わる。高齢顧客の多くは運用状況を毎日確認するような「セミプロ」ではない。複雑な商品も多く、契約時の内容をいつまでも覚えているとは限らない。一方で、金融機関は頻繁に担当者が代わり、契約時の状況もわからなくなる。これでは問題がいつまでもなくならない。
 金融機関は「売ったら終わり」となりがちだが、噸客にとっては契約時がスタート。金融機関は運用結果を保証できないだけに、契約段階から終了までの適切なフォローが求められる。        (聞き手・柴田秀並)

外貨建て
 米ドルなど外国の通貨に交換し、主にその国の株式や債券で運用する金融商品。金利が日本より高いことが多い一方で、為替変動の影響を受ける。例えば、外貨から円に戻す際、契約時より円高になっていれば運用資産が目減りする恐れがある
 円から外貨外貨から円へと、通貨を交換する際に手数料がかかる。
    
仕組み債
 通常の国債や社債より複雑な仕組みの債券。「高利回り」をうたう一方で、為替や株価が契約時の設定水準を一度でも下回ると大きく損する恐れがあるなど、高リスクの商品もある。投資家の特定の目的や需要に沿った金融派生商品(デリバティブ)を組み込んだ債券で、一般家庭の長期・安定的な資産形成には向かない。

    
クーリングオフ
 保険などを契約した際、一定期間内ならば契約を解除でき、払ったお金が戻ってくる制度。例えば、外貨建て保険は契約から8日以内に書面で申し込む。保険の中でも対象にならない商品や取引形態があるほか、株式や投資信託などは対象外。契約時に適用の有無や手続き方法をよく確かめることが重要になる。

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