シリーズ「おまえ(ニッポン)はすでに死んでいる」2 菅政権の「黒い雨」訴訟 首相談話を批判する

 7月26日(月)の夕方、菅首相が「上告断念」の記者会見を開いたが、その内容を聞いていて、違和感を禁じ得なかった。一つは、10月に予定されている衆院選を意識して「上告断念」アピールをしたのだろうということと、「判決には、受け入れがたい部分がある」という発言だ。

その違和感は、28日(水)の新聞を読んではっきりした。「談話では一方で、「今回の判決には過去の裁判例と整合しない点があるなど、重大な法律上の問題点があり、政府としては本来は受け入れがたい」とも指摘した。とりわけ、高裁判決が空気中の放射性物質を吸つたり。汚染された水や野喋を飲食したりする「内部被曝」による健康被害を受ける可能性があったと指摘した部分について「内部被曝の健康影響を科学的な線量推計によらず、広く認める・べきとした点は政府としては容認できるものではない」として、政府として高裁判決の考え方はとらないとの立場を示した。」(7月28日付朝日新聞より)という点だ。

 「上告を断念する」と言っておいて、その一部は受け入れないということは、憲法のいう「三権分立」を否定することではないか?裁判では、こういうことはよくあるのだろうか?「法曹業界の常識は、一般社会の非常識」という話をよく聞くが、全くふざけた話だと思う。以下、7月28日付 朝日新聞から引用する。

原告「根本的解決にならぬ」
 厚生労働省や関係自治体は今後、首相談話を踏まえ、原告と同じ状況に置かれた人びとに救済を広げる作業を急ぐことになるが、救済の指針など国と関係自治体でこれから調整して決める課題もあり、迅速な救済につながるかは不透明だ。
 広島県の湯崎英彦知事は27日、首相談話について「すべての黒い雨を受けた方々を救済する内容で、ありがたい」と記者団に語った。県や広島市が黒い雨が降ったと推計する範囲で生存する約1万3千人が救済対象になるべきだとの認識を示し、「県と市と国で工
リアをどうするか決める」と述べた。
 厚労省は、被爆者援護法上の被爆者の要件の一つである「身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」に当たるかどうかを一人ひとり、個別に判断していくことを想定する。その前提として、関係自治体とともに、被爆者に当たるかどうかの指針の見直し作業が必要だという。首相談話は「早急に対応を検討する」としているが、田村憲久厚労相は27日、「いつごろといっても我が方だけの話ではない。これから自治体と相談する」と語り、救済の時期を示さなかった。
 指針の見直しには同じ被爆地で黒い雨が降った長崎からも長崎県・市が参加する。ただ、厚労省の担当者は「一義的には広島の黒い雨での対応で、長崎は少し別の問題になる」と語り、広島と同じように救済を広げることに慎重な姿勢を示す。菅義偉首相も27日、記
者団に「長崎については、その後の裁判等の行方も見守つていきたい」と述べた。
 首相談話に対し、地元・広島からは批判が出ている。談話では、高裁判決が黒い雨や放射能に汚染された飲食物の摂取などによる内部被曝の健康影響を広く認めたことに、政府として容認しない姿勢を鮮明にした。高裁判決の影響が広く及ぶことを避けたい考えが
見え隠れする。
 訴訟の原告で「原爆『黒い雨』訴訟を支援する会」の事務局長も務める高東征二さん(80)は「内部被曝を認めないのであれば、救済範囲を広げたとしても根本的な解決策にならない」と語り、「被爆者の立場に立って現状を考えようという国の姿勢を感じられない」と憤る。

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