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東野圭吾 『魔女と過ごした7日間』を読んだ。この作品に出てくる全国民のDNA型データベースの構築こそ、政府がマイナンバーカードで目指す最終形態だ。

東野圭吾 『魔女と過ごした7日間』に作品に出てくる全国民のDNA型データベースの構築とは何か?作品中から引用してその内容を告発する!!!

「心外だな。私が保身のためにやったとでも思っているのか。社会システムに革命を起こすには、誰かが手を汚さなければならないこともある,それを身勝手とは」
「社会システム??革命??何のことだ」
「さっき、君は知らなくていいといったが、訂正したほうがよさそうだ。教えてやろう。

その革命とは、全国民のDNA型データベースの構築だ。しかもこれまで警察庁で管理していたものとはレベルが違う。従来は単に個人識別だけを目的にしていたので、DNAの中でも身体的特徴や人種といった具体的な情報を含まない部分が登録されていた。しかし現在構築が進んでいるシステムには、すべての情報が登録される。ある人物をビックアップすれば、持病、体質、容姿などがすべてわかる。それだけじゃないこ,血縁関係にある人間を見つけだすことも可能になる


「馬鹿な。そんなことが認められるはずがない.同じようなことが過去に何度も提案されたけれど、いつも廃案になったじゃないか」
「廃案になったのは、国民に対してDNA情報の登録を義務化することだ。勝手に情報を集める分には合法だ」
「勝手に集めるって、どうやって?」
「おいおい、君はここ数日、D資料の対象者たちと会ってたんじゃないのか。警察は彼等のDNAをどうやって集めた?」
「捨てられた吸い殻や売二き缶を拾ってきたって、それが誰のものかがわからなければ、データベース化することなんてできないはずだ」
「なぜわからないと決めつける? 先程から我々は何の話をしてきた?」
脇坂は全身に鳥肌が立つのを感じた。伊庭のいいたいことがわかった。
「そうか。ゲノム・モンタージュを作ればいいんだ」
「ようやく気づいたか。そういうことだ。ゲノム。モンタージュがあれば、今の世の中、それがどこの誰かを突き止めるのはじつに容易い」
「全国の防犯カメラの映像から顔認証システムで捜し出すのか? しかし身元はそう簡単にはわからないはず……」そこまでしゃべったところで脇坂は、ある可能性に思い当たった。「いや、そんなことはしなくていいのか。

今や多くの国民が、自分の顔と名前をセットにして国に提出している」
「その通り。国が義務化を推し進めるIDナンバーカードだ。運転免許証や健康保険証とも一体化されつつある。あの顔写真と照合すれば、ゲノム・モンタージュの主はたちどころに判明する。だからこそ君も、多摩川で吸い殻や空き缶をポイ捨てした人物のところへ出向くことができたわけだ」


「DNAの資料はどこで採取しているんだ?」
「いろいろなところだ。喫煙所、公園、図書館――無防備にDNAが廃棄されている場所など、いたるところにある。学校や会社、病院といった、業者を取り込めば大量の採取が可能になる場所もある」
「そんなことが明るみに出たら人騒ぎになるぞ」
「だからゲノム。モンタージュの存在は現時点では伏せられている。公にしたら犯罪捜査が楽になるし、犯罪防止にも役立つだろうが、世間からの反発も予想されるからね。しかしすべてが公表される日はそう遠くない。全国民の約半数のDNA情報が登録されれば発表にゴーサインが出されるんじゃないかな」
「そんなにうまくいくものか」
「わかってないね、君は。うまくいってるんだよ。じつに順調なんだ。間もなくこの国の人間は二分される。DNAを管理する側とされる側だ。当然、管理する側に回ったほうが将来は明るい。どんなビジネスを手がける者でも、喉から手が出るほどほしい情報だろうからね。そこで君に提案だ。こちら側の人間にならないか? 私なら、君がそれなりのポジションにつけるよう差配できる。悪くない話だと思うが。直近のメリットをあげるとすれば、今の状況を打開できる。さっきから君はこのお嬢さんの身を案じているが、君の態度次第では無傷で帰ってもらおうじゃないか」
「あんたがやったことを黙っていろ、というのか」 (p378~380)

「僕は円華さんのいったことには一理あると思う。本当に国民のことを思っているなら、ギャンブルは全部禁止にしたらいいんだ.結局法律なんて、国や役人が都合のいいように作られてるだけだ。連中は、僕たちのことをバズルのビースぐらいにしか思ってないじだから管理しやすいようにルールを作っていくんだ。IDナンバーカードなんか、その典型だと思う。僕はそんなものには振り回されたくない。何が正しいかは自分で考える。闇カジノが悪いところなら、どう悪いのか、この日で確かめる。だって僕たち、もう中学二年だぜ。あと二年もしたら選挙権があるんだ」 (p387)

 だがあの不思議な女性のおかげで、陸真は大切なことに気づけた。きっと彼女のいう通りに違いない。国家が作るのは、国民をコントロールするのに都合のいい法律だけだ。DNAもIDナンバーカードも、国民を管理するツールにすぎない。だからこそ大事なのは、そんなものに振り回されたりせず、困難にぶち当たった時には、自分で考え、道を切り拓かねばならないということだ。頼るのはAIなんかじゃない。自分の頭だ。
だからたぶん、もっと勉強しなきゃいけないんだろうな――。

(p409)

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