天声人語(2021年12月20日)を読んで

 昨年の年末に読んだ「天声人語」に気になる記述があったので紹介しておきます。医師 山本健人(たけひと)さんの『すばらしき人体』からの紹介箇所だった。以下、引用。

ここ2年近くは、体温をはるのが日課になった。当たり前のことながら、やはり自分は恒温動物なのだと実感する。36度台に収まる安定ぶりに、感動すらおぼえる
 のどに違和感はないか。嗅覚に異常は。コロナ禍は自分の体に向き合う機会にもなった。そんな日々のなか、医師の山本健人さんが著した『すばらしい人体』を手に取ったで何げない体の動きのなかに、精巧極まる仕組みがあると教えてくれる。
 例えば読んでいる本を左右に細かく揺らしてほしいと著者は書く。読み進めるのはとても無理だ。では頭のほうを揺らしたらどうか。はるかに読みやすいはずだ。耳の奥にある器官が頭の動きを感知し、逆方向に眼球を回転させているという。カメラの手ぶれ防止よりずっと高性能だ。
 尾寵(びろう)な話で恐縮だが、おならを出すのも実はすごの働きがあってこその技という。近づいてきたものが固体か気体かを瞬時に判別する。そんな肛門の働きがあってこその技という。1本約10キログラムもある足や4~5キログラムある腕を動かすのに、重さを感じさせない筋肉もなかなかのものだ。
 どこかに行くのも誰かと会うのも自分の意思にもとづいている。しかし一つ一つの行動は、意識せずに動いてくれる体の部分部分に支えられている。そう思うと体のあちこちをなでてやりたくなる

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