小惑星のIdentificationで仮符号をもぎ取ろう -COIAS Tips集補足1-
(2024/7)この記事がCOIASの使い方上級編としてHPより紹介されております。
この記事で扱うのはCOIASで解析しMPCに報告した結果についてあれやこれやと扱う話です。前提として、私たちCOIASユーザーがそんなことする必要は1ミリもなく、気長に待っていればちゃんと観測は新天体として形になります。
しかしその「気長に」を待っていられない、私含め一部のユーザーが「勝手に」行っているのが本記事の内容です。
「上級編」を超えた「蛇足編」ですので、本記事が難しいからと言ってどうか、COIASが難しそう、とまで思わないでください。
概要
未発見天体として送られてきた観測を、既知の天体と一致させること(ITFtoDESと呼ばれる)、また既知天体と一致せずにITFにストックされた天体と一致させたり、ITFにストックされた天体同士で軌道が繋がるものを見つけたりして仮符号にすること(ITFtoITF)などを、MPCではIdentificationsと呼んでいます。同定、識別と訳語をあてるべきでしょう。
これはもちろんある程度はMPCが絶えず自動でやってくれますが、計算リソースにも限りがあるからか、同定漏れもあります。(WAMOでも報告後数日はITFだったのに数か月たって番号付き小惑星になったりすることからも、すぐに完ぺきにできるものではないと分かります)
特に、COIASのように今から追跡観測をするわけでもない何年も前のアーカイブデータからの報告だと特に漏れが多いようです。(そこまで重点的にやってない?)
そこで、MPCではだれでも以下のフォーム(当記事で何度も参照します)から
「ITFにあるこの天体ってこの既知天体じゃない?」「ITFにあるこれとこれとこれ、同じ天体じゃない?」とサブミットできます。
個人でこの同定をやっている人が世界で何人かいて、1人で年間何万件も送っている人もいます。
以下が2023年のサマリー。
ITFに「ある限り」は観測は何の役にも立ちませんから、そこから新しい仮符号天体として、または軌道改良として拾い上げることも小惑星捜索と同じくらい重要です。
23年のITF to ITFの成功数個人1位のAndreas C. Dopplerさんは、1人で45000個もの新仮符号天体を発見したといっても過言ではありません。
同定の流れ概略
ある程度パソコンに強くて、英語も読める人はこの項を読めばあとは独力でできると思います。
以下のページに書かれているフォーマット(当記事で何度も参照します)
で、報告する同定内容をテキストファイルに書いて前述のフォームから送ります。
それをMPCがチェック(本当に軌道が合うかの検算)をして、以下の基準
をクリアすれば受理されます。フォーマットに書いたメールアドレスに合否が来るわけではないので、WAMOを通して自分で確認します。
検算の進捗状況も分かるようです。
COIASで報告した自分の観測も、ITFから解放させてあげられるかもしれません。
用語解説
・トラックレット
「1回の報告メールで」「同じ天体名」で送ったひとまとまりの観測群のこと。同定とは、トラックレットを既知の天体に結び付ける・トラックレット同士を結ぶつけて新しい仮符号を得る作業と言い換えることができます。なお、同じ日の同じ天体でも、別々の報告で送ると別のトラックレットとして扱われます。(そもそもMPCの同定過程で、天体名が同じであるかはどうも全く気にされていないようです)
・jsonファイル
観測データを扱う際のファイル形式の一種。普通にメモ帳などのテキストエディタで読み書きできるので、最初にPCで開く際に普段使いのエディターを既定のプログラムにしておく。
ITF to DES
ここからはもっと詳しく、同定の種類ごとに方法を解説していきます。
多分一番簡単なのはこのITFtoDESのリンクです。
大規模にやろうと思えば極端な話、報告してITFに入ったままの天体を1つずつMPCheckerに投げて、位置や移動方向・速度・光度が近いものを見つけたら報告できます。
もちろん時間かかるので、とりあえずは自分がCOIASで報告した中で、ITF入りしているけどそれにしては明るい天体(20等前後)をMPCheckerに投げてみるのがいいと思います。
MPCheckerで観測を1行入力し、「These Observation」にチェックして「Produce list」を押せば(この場合日時入力は不要、観測から勝手に読み取ってくれる)、その観測に一致するかもしれない既知天体候補が出力されます。Radius of search =20、Limiting magnitudeは観測より1~2等暗い程度で設定しておきます。
Object designation R.A. Decl. V Offsets Motion/hr Orbit Further observations?
h m s ° ' " R.A. Decl. R.A. Decl. Comment (Elong/Decl/V at date 1)
(612148) 2000 CG105 10 02 01.6 +02 48 04 23.8 0.6W 2.2N 1- 0- 6o Desirable between 2024 Mar. 5-Apr. 4. (165.8,-02.7,23.7)
結果としてこんな感じで出力された中で、
・Offsets として表わされた既知天体の予報位置と入力した天体の位置の差である2つの数字( 0.6W 2.2N )が小さい(とりあえずは1.0以内)
・移動方向( 1- 0- )の正負が一致する(元の観測で時間を経るごとにRaとDecが増えているか、減っているか)
・明るさもめちゃくちゃ違わない
なら、同定報告を出してみてもいいと思います。
もしくは、同じ名前の天体の報告データなのに、仮符号等に変わったトラックレットとそうでないトラックレットがある際に、取り残されたトラックレットに対して行ってもいいと思います。(ただし取り残されるには、制度が悪かったなどのそれなりの理由があるので、同定を送っても通らないことが多いです)
送り方ですが、前述のMPCのページで示されたフォーマットに従えばたとえば、2019年10月27日に観測されて(報告した日ではない!)H334334でITFに入った天体が、小惑星2019AA1と一致しそうな場合は、テキストファイルに
{
"header": {
"name": "A. Manaka",
"email": "mira_ao_kimasitower@gmaaail.com",
"comment": "Here are some identifications that I gone and done."
},
"links": {
"link_0": {
"designations": [
"K19A01A"
],
"trksubs": [
[
"H334334",
"20191027",
"T09"
]
]
}
}
}
とだけ書いてフォームから送ります。designationsの部分が同定先の天体で、trksubsがこれから繋げるトラックレットを指します。ヘッダー部分の名前とメールアドレスはもちろん適宜変更。名前の表記は、COIASの発見者表記のルールと同じです。コメント部分は何でもいいです。
ちなみに複数のトラックレットを一気につなげるには
{
"header": {
"name": "A. Manaka",
"email": "mira_ao_kimasitower@gmaaail.com",
"comment": "Here are some identifications that I gone and done."
},
"links": {
"link_0": {
"designations": [
"K19A01A"
],
"trksubs": [
[
"H334334",
"20191027",
"T09"
],
[
"H334334",
"20191101,
"T09"
],
[
"H334334",
"20191102",
"T09"
]
]
}
}
}
という風に増やしていきます。また、同日同名のトラックレットが複数ある場合は、日付部分を"2017 01 02.43785"のように、つなげたいトラックレットの最初の観測の時刻まで示して区別させます。
送った結果はMPCが検算して、クリアしたものが反映されます。
MPC全体の計算状況は以下で確認でき、
計算中のタスクが0になれば間違いなく計算終了です。
繋げたトラックレットをWAMOで
https://www.minorplanetcenter.net/cgi-bin/cgipy/wamo?obs=H334334 T09
のように呼び出して、結果が変わっているかを確認します。
ITF to ITF
途端に難易度が上がります。
簡単な流れとしては
・一致する組み合わせを見つける(基準を満たすように。最低3夜で、3夜しかない場合は40日以上空かないとか色々)
・その組み合わせの天体それぞれ、観測(80行形式)を入手してひとまとめに。(WAMOからの呼び出しなり、ITFをダウンロードして取り出すなり)
・軌道フィッティング
・報告フォーマットを作ってフォームで送信
です。
下準備
自分の観測と他人の観測を繋げる際、自分の観測はsend_all.txtから持ってこれますが、ほかの人の分は入手できません。
入手したい観測の天体名を
https://www.minorplanetcenter.net/cgi-bin/cgipy/wamo?obs=H334334 T09
のように入力し、出力結果の「T09」より後ろの部分を1個1個消していく方法もありますが、前もってITFを入手したほうが楽です。
実はMPCがストックしているITFは誰でもダウンロードできます。
の一番下「Isolated Tracklets can be downloaded from here」からダウンロードできます。
得られたgzファイルを解凍すれば、700MB近いテキストファイルが得られます。ここにはCOIAS以外の世界中の観測機関が報告し、どこにもつなげられなかった観測が溜まっているのでこんな要領になっています。
とりあえずitfの入ったフォルダーのアドレスバーにpowershellと打ち込んでPowershellを起動し、Powershellで
Select-String "T09" itf.txt -CaseSensitive | Select Line | ft -AutoSize -Wrap > T09only.txt
と打ち込めば、COIASのものだけの報告を取り出せます。(それでも50MBくらいあるのと、このコードは簡易なのでちょっとだけ他所の、たまたま天体名にT09を含む観測まで持ってきている)
次に軌道フィットの準備です。
軌道フィットはOnline-FInd orbというウェブ上でできるサイトもありますが
ソフトウェア版をインストールしたほうが便利です。
なぜなら、フィッティングしたら自動で同定報告のフォーマットファイルを出力してくれるから。
Find orbを作っているProject Plutoのビル・グレイさん(多分この人、レモン山サーベイで名前を見るB. Grayさんじゃないかなあ)は他にも便利なソフトを多数公開しています。
GUIじゃないのでコンピューターにそこそこ慣れた人じゃないと難しいと思います。
ちなみにここで公開されているastcheckは強化版MPCheckerといったところで、ITF to DESをするうえで強力なツールとなります。
話がそれましたが、FindOrbをインストールしたら、できたフォルダー内の「link_def.json」を開いて、名前とメールアドレスを報告時に使う自分のものに変えておきます。(形式はITF toDES参照)
ステップ1-1 繋がりそうなトラックレットを選ぶ
MPCのルール上、ITFtoITFで仮符号を得るには最低3夜の観測が必要で(最初の観測から最後の観測まで40日以上あるときは4夜以上)、かつ軌道誤差が小さい(もっと詳しい基準はhttps://www.minorplanetcenter.net/mpcops/documentation/identifications/additional/ 参照)ことが必要です。
ITF to ITFのできる組み合わせを、ITFの観測ファイルの中からコンピューターに探させるとなると、もはや普通に計算機科学の研究になってきます。
Dopplerさんはじめ個人の同定者は独自のソフトウェアを作って取り組んでいるそうです。
で、そのようなソフトなしで私たちが手動でリンクを探すのに役立つCOIASの要素・機能が、DeepField、名前の変更機能、予測円機能(特に2月にアップデートされたもの)です。
・Deep Field 1~数か月の短い期間に何日分ものデータが存在します。近い日付ほど天体を追いやすくなるので、簡単に3夜分の観測を集められます(とはいえ3日連続までいくと、逆に観測期間が短すぎて誤差が大きいままのことがあります。)
・名前の変更機能 これのおかげで、3つのトラックレットを繋げるうえでまず大事な作業であり、骨の折れる作業のはずの「とりあえず、繋がる2夜のペアを見つける」をすっ飛ばすことができます。なにしろ、ITF内に同じ名前で2夜分のデータが存在してくれるのですから、あとやることが「残りの1夜を探す」だけになります。そして2夜分の暫定軌道は1夜内での暫定軌道より飛躍的に精度がいいので、その残り1つの捜索も楽です。
・予測円機能 名前の変更機能の基礎となりますが、もう1つ活用方法が。特にdeepfieldで解析済みの画像を開くと、赤い測定済みの円の近くで、黄色の円が全く同じ動きをしていることがあります。この2天体はつながることが多いです。さらに24年2月のアップデートで予測円の期間が拡張され、3つ以上の円が表示される可能性があります。そうなればそれだけで3夜以上集まります。
なんでもいいから同定をしてみたい、という方は上の「名前の変更機能により既に2夜分同じ名前で存在する天体」、もしくは「予測円機能で偶然見つけた、つながりそうな複数天体」を選びます。
そして、下準備でダウンロードしておいたITF(やT09を抽出したものなど)から天体名で検索し、それらの天体の観測を入手します。
どうしても自分が報告した天体で(1夜分のデータしかないが)仮符号にしたい天体があるときは、その1夜のデータだけで次ステップに進みます。(一応、その前に前述のMPCheckerで本当に未知天体か確かめておくと良いでしょう)
ステップ 1-2 繋がりそうなトラックレットを探す
ここでは、1-1で選んでた天体と同一の天体を探します。
1-1の予測円機能がうまくいき、すでに3夜分集まった場合でも、さらにリンクを伸ばせば軌道が改良されるのでこのステップは飛ばさないで行きましょう。
① まず、Online-Find orbの「Paste astrometry here」に、リンク候補の天体を入れ、「Ephemeris starting date」をその天体があるエリアの観測日の、リンクする天体の観測の前後の観測がある日(わからなければ、その観測の座標を後述のHSC-Mapに入力して、COIAS画像選択画面で調べる)に設定する。2019年11月27日だと19-11-27という風に。StepSizeはとりあえず3h、2Number of stepはとりあえず200。
②Compute~を押すと暫定軌道が出るが、大事なのはそのあと。
Ephemerides (geocentric):
Date (UTC) HH RA Dec delta r elong mag
---- -------- ------------ ------------ ------ ------ ----- ---
2024 03 05 05 10 41 47.217 +04 36 08.11 34.057 35.044 174.3 25.4
みたいに、その暫定軌道での、設定した期間での予想位置が出る。このRa,Decの部分10 41 47.217 +04 36 08.11をコピーして次に進む。
(例)Area1 DeepBで2019/11/1と11/2にある同じ名前の天体を見つけた。このエリアには10/27の6:00(UTC)台に撮影された画像があるので、Ephemeris starting dateに19-10-27と入れてCompute。出てきた予想位置のうち2019 10 27 06の行からRa decの値をコピー。
③ 以下のHSC Mapを開く。
最初に左上の「ビュー>レイヤー>トラクト」にチェックを入れる。次に「ビュー>座標を指定して移動」を押して出てきたダイヤログに先ほどコピーした座標を入力すると、画面がその位置に飛ぶ。
適切な倍率にいろいろ変更すると、その位置がHSCの画像=COIASの画像の何番のトラクト内の、さらに81分割されたパッチのうち右から何番目で上から何番目の区画に相当するかがわかる。
ステップ1-3 繋がりそうなトラックレットを入手する
1-2で見つけた領域をCOIASで開き、HSC-Mapと見比べて近い位置に天体があるか調べます。既に解析済みの天体があるなら、その天体名をまたITFから取ってきます。解析済み天体はないorその画像がまだ未解析の場合はよくその画像を観察し、天体を見つけます。通常通り報告し、send_allから予測位置付近の天体の観測を入手します。
これで、1夜分のトラックレットが増えました。この1-1から1-3を、どんどん探す日を伸ばして、予測位置がCOIASの圏外になるまで繰り返します。
ステップ1 FAQ
ステップ1の段階でOnline-Foを使うのは、使い勝手がオンライン版のほうが良いからです。
フィッティングの精度は結果画面のmean residualの部分で分かります。これが0.25より悪いと、提出しても同定は通りません。
複数の観測を出すと、最低1個か2個は必ず軌道にわずかに合わない観測が出てきます。そういったものは結果画面のAstrometryの部分でバツがつけられ、計算に使われずにいてくれます。
このバツが、同じ日の全観測につくようだと、基本的にその天体は同一ではなかったということです。(といっても、日を増やすと一度弾かれた日がまた復活したりもする・・・)
ステップ2 報告用フィッティング
まず、ステップ1で集めた観測ファイルを1つのテキストファイルにまとめます。この時、そのファイルの1番上の行に
COM Combine all
と入力します。
ここでようやくFind_orbのPC版を起動。最初の画面でFキーを叩けばファイル選択画面になるので、作ったファイルを開きます。
すると、Online-Foでも見たフィット内容が画面に表示されますが、このときFind_orbが入っていたフォルダに「linkage.json」というファイルができています。
このファイルこそが、MPCの同定フォーマットを満たす報告用ファイルで、下準備でlink_def.jsonをあらかじめ編集していればほとんどそのまま使えます。
ファイルの中身は延々と
"links": {
"link_0": {
"trksubs": [
[
"H272338",
"2017 12 25.56034",
"T09"
],
[
"H270000",
"2015 11 20.59129",
"T09"
],
[
"H278000",
"2016 12 25.60712",
"T09"
],
とトラックレットが続いていると思います。
1点だけ、このトラックレットの表示されている時刻は、読み込ませた観測ファイルに書かれた時刻となぜか0.0001日だけずれていることがあるので、そこだけ修正します。
ステップ2 FAQ
2夜分の天体の名前が同じだと、jsonファイル内のtrcsubsでは1夜分しか書かれません。2019年11月1日と11月2日の同じ名前の観測があっても、"2019 11 02. "の項目が作られないのです。自分で書き加えるか、もしくは読み込ませる観測ファイル内でどちらか1夜の天体名を適当に変えておき、出力されたjsonファイル内で名前を戻します。
さらに、読み込ませるファイル内の天体の名前がすべて同じだと、FindOrbはそれをリンクだと認識してくれないので、そもそもjsonファイルの出力すらされません。読み込ませる観測ファイル内のどれか1夜の天体名を適当に変えておきます。出力されたjsonファイル内で名前を戻します。
ステップ3 報告
前述の報告フォームから、出力したjsonファイルを送ります。MPCがビジー状態でなければ、早ければ数分で結果がWAMOで反映されます。(WAMOでしか反映されません。メールが返ってくることもないです。)同定が通っていれば新しい仮符号がpendingで表示され、どれかに発見観測を示す*がついています。
ちなみに自動で受け付けられるのはメインベルト天体だけのようで、TNOやNEOはすぐには結果が出ず、MPCで人が直接レビューするようです。
さらに、同定が通った日の夜22時くらいにhttps://www.minorplanetcenter.net/mpec/RecentMPECs.html で発行されるDaily Orbit Updateの「New perturbed one-opposition orbits」に、新しい仮符号が載っていると思います。
別解
ある程度解析が済んだ時期領域については、いちいち画像を開かなくても、「ITFから1日ずつ抜粋したT09の観測ファイルをHSC-MAPに投影し、近い時期分を色分けして、FindOrbも使いながら繋がりそうなトラックレットを目視で拾っていく」方法で、3夜すべてのバンドで見つかるような明るめの天体であれば片っ端から繋げていけます。
まとめ
すでに個人で独自の計算方法でコンピューター計算で大量の同定をしている人の弱点は、当たり前ですが「報告されていない観測はリンクできない」ことです。
ここで紹介した方法を使えば、同定に使いたいが見落とされているorまだ解析/報告されていない観測を自分で補いながら、仮符号を作ることができます。1個1個地道な道のりですが、COIASにしかできない方法です。
見落とされている天体は、暗かったり、画像が荒れている部分に埋もれていたりと探しにくいものばかりです。「広い画像の中のどこかに天体があるかも」として探すのと、「この画像のこのあたりに、こんな動きをする天体がいるはずだ」として探すのは確実性が違います。
こうして拾われた暗い天体は、COIASが掲げている目標のうち非常に小さな天体の分布を解明するという部分にダイレクトで役立つかもしれません。
同定に役立つプログラムが複数種類、以下で公開されています。
付録
ステップ1-1段階で使える、同じ名前で複数夜の観測がある天体=最低あと1夜見つければ同定ができる天体のリストを筆者はITFから自分で作っています。
そのうち一部、「2019/10/31,11/1,11/2の観測の中から2夜分の観測がある天体(Area1の両deep fieldに相当)from 2024/3/5のITF」を以下に公開します。(2019/10/23,10/27あたりにまで拡張してみてください。Area1 deep2だとうまくいけば11/28以降にもつながるかもしれません。)
ぜひ同定の練習に使ってみてください。
このリストを使う際は、本記事公開後、同定がされているかもしれないので、まずITFからとってきたらwamoに通して、まだ仮符号になっていないことを確認してください。(もしくは、ITFを最新のものにしていれば既にITFから消えて検索にかからないかもしれません)
name y m d mag band
H200099 4C2019 11 1 23.7 g1 1
H200119 4C2019 10 31 22.6 z1 1
H200119 4C2019 11 1 23 g1 1
H200740 4C2019 11 1 24.6 g1 1
H200741 4C2019 11 1 24.3 g1 1
H204614 4C2019 11 1 24.3 g1 1
H205202 4C2019 11 1 23.2 g1 1
H205203 4C2019 11 1 25.3 g1 1
H211439 4C2019 11 1 25.4 g1 1
H211944 4C2019 11 1 23.1 g1 1
H213244 4C2019 11 1 25.9 g1 1
H213248 4C2019 11 1 24.5 g1 1
H213378 4C2019 11 1 24.4 g1 1
H213379 4C2019 11 1 24.3 g1 1
H213382 4C2019 11 1 24.6 g1 1
H214245 4C2019 11 1 24.4 g1 1
H214349 4C2019 11 1 24.3 g1 1
H214380 4C2019 11 1 24 g1 1
H214415 4C2019 11 1 25.6 g1 1
H214419 4C2019 11 1 24.2 g1 1
H214420 4C2019 11 1 24.3 g1 1
H214437 4C2019 11 1 24.8 g1 1
H214439 4C2019 11 1 24.4 g1 1
H214442 4C2019 10 31 23.4 z1 1
H214444 4C2019 10 31 23.4 z1 1
H214454 4C2019 11 1 23.5 g1 1
H214455 4C2019 11 1 23.7 g1 1
H214819 4C2019 11 1 23 g1 1
H214821 4C2019 11 1 25.4 g1 1
H215037 4C2019 11 1 24.9 g1 1
H215087 4C2019 11 1 23.9 g1 1
H215089 4C2019 11 1 24.5 g1 1
H215162 4C2019 11 1 23 g1 1
H215165 4C2019 11 1 24.9 g1 1
H215317 4C2019 11 1 25.8 g1 1
H215362 4C2019 11 1 24.4 g1 1
H215904 4C2019 11 1 25.1 g1 1
H216279 4C2019 10 31 22.6 z1 1
H216947 4C2019 11 1 25 g1 1
H217066 4C2019 11 1 25.3 g1 1
H217067 4C2019 11 1 24.9 g1 1
H217068 4C2019 11 1 25 g1 1
H217305 4C2019 11 1 25 g1 1
H217354 4C2019 11 1 24.6 g1 1
H217367 4C2019 11 1 25.5 g1 1
H217368 4C2019 11 1 25.3 g1 1
H217426 4C2019 11 1 24.3 g1 1
H217508 4C2019 11 1 25.1 g1 1
H217509 4C2019 11 1 25.3 g1 1
H217510 4C2019 11 1 25 g1 1
H217570 4C2019 11 1 25.5 g1 1
H218218 4C2019 11 1 25.4 g1 1
H218222 4C2019 11 1 25.9 g1 1
H218224 4C2019 11 1 24.4 g1 1
H218476 4C2019 11 1 24.9 g1 1
H218735 4C2019 11 1 23.1 g1 1
H218853 4C2019 11 1 25.7 g1 1
H218922 4C2019 11 1 25.1 g1 1
H218989 4C2019 11 1 26.3 g1 1
H219071 4C2019 11 1 24 g1 1
H219074 4C2019 11 1 23.8 g1 1
H219075 4C2019 11 1 24.1 g1 1
H219088 4C2019 11 1 23.8 g1 1
H219089 4C2019 11 1 24.6 g1 1
H219221 4C2019 11 1 23.8 g1 1
H219248 4C2019 11 1 25 g1 1
H219251 4C2019 11 1 25.2 g1 1
H219270 4C2019 11 1 25.1 g1 1
H219273 4C2019 11 1 25.1 g1 1
H219386 4C2019 11 1 24.2 g1 1
H219581 4C2019 11 1 24.4 g1 1
H219616 4C2019 11 1 22.9 g1 1
H219617 4C2019 11 1 24.9 g1 1
H219690 4C2019 11 1 26.1 g1 1
H219723 4C2019 11 1 25.3 g1 1
H219725 4C2019 11 1 24.7 g1 1
H219810 4C2019 11 1 25.5 g1 1
H219824 4C2019 11 1 24.6 g1 1
H219861 4C2019 11 1 24.7 g1 1
H219861 4C2019 11 2 24.2 i1 1
H219971 4C2019 11 1 24.5 g1 1
H220029 4C2019 11 1 25.5 g1 1
H220053 4C2019 11 1 23.3 g1 1
H220172 4C2019 11 1 26.1 g1 1
H220237 4C2019 11 1 24.6 g1 1
H220394 4C2019 11 1 25.3 g1 1
H220395 4C2019 11 1 23.9 g1 1
H220411 4C2019 11 1 24.3 g1 1
H220511 4C2019 11 1 25.8 g1 1
H220537 4C2019 11 1 25.4 g1 1
H220561 4C2019 11 1 23.7 g1 1
H221585 4C2019 11 1 24.8 g1 1
H221642 4C2019 11 1 24.6 g1 1
H221728 4C2019 11 1 23.1 g1 1
H221742 4C2019 11 1 25.7 g1 1
H221763 4C2019 11 1 24.8 g1 1
H221978 4C2019 11 1 25.8 g1 1
H222034 4C2019 11 1 22.8 g1 1
H222035 4C2019 11 1 24.7 g1 1
H222037 4C2019 11 1 25.7 g1 1
H222043 4C2019 11 1 25.3 g1 1
H222073 4C2019 11 1 23.9 g1 1
H222115 4C2019 11 1 24.2 g1 1
H222118 4C2019 11 1 25.5 g1 1
H222172 4C2019 11 1 23.3 g1 1
H222173 4C2019 11 1 23.9 g1 1
H222175 4C2019 11 1 23.4 g1 1
H222192 4C2019 11 1 23.8 g1 1
H222286 4C2019 11 1 25.5 g1 1
H222351 4C2019 11 1 25.6 g1 1
H222353 4C2019 11 1 24.5 g1 1
H222354 4C2019 11 1 25.2 g1 1
H222373 4C2019 11 1 23.8 g1 1
H222375 4C2019 11 1 26.3 g1 1
H222376 4C2019 11 1 24.7 g1 1
H222392 4C2019 11 1 25.1 g1 1
H222395 4C2019 11 1 26.4 g1 1
H222400 4C2019 11 1 24.8 g1 1
H222401 4C2019 11 1 25.2 g1 1
H222403 4C2019 11 1 26.4 g1 1
H222404 4C2019 11 1 25.3 g1 1
H222406 4C2019 11 1 25.7 g1 1
H222431 4C2019 11 1 25.4 g1 1
H222775 4C2019 11 1 24.3 g1 1
H222775 4C2019 11 2 24.7 i1 1
H222778 4C2019 11 1 25.7 g1 1
H222857 4C2019 11 1 26.4 g1 1
H222926 4C2019 10 31 22.9 z1 1
H222926 4C2019 11 1 23.4 g1 1
H222927 4C2019 10 31 24.3 z1 1
H222927 4C2019 11 1 24.1 g1 1
H222928 4C2019 10 31 24.2 z1 1
H222928 4C2019 11 1 25.1 g1 1
H222929 4C2019 10 31 23.3 z1 1
H222930 4C2019 10 31 23.1 z1 1
H222931 4C2019 10 31 23.6 z1 1
H222952 4C2019 11 1 24 g1 1
H222953 4C2019 10 31 23.9 z1 1
H222953 4C2019 11 1 25.6 g1 1
H222955 4C2019 11 1 24.9 g1 1
H223139 4C2019 11 1 25.9 g1 1
H223154 4C2019 11 1 24.8 g1 1
H223155 4C2019 11 1 24.9 g1 1
H223184 4C2019 11 1 24.4 g1 1
H223199 4C2019 10 31 23 z1 1
H223199 4C2019 11 1 23.9 g1 1
H223201 4C2019 10 31 24.1 z1 1
H223201 4C2019 11 1 23.8 g1 1
H223201 4C2019 11 2 23 i1 1
H223433 4C2019 11 1 25.6 g1 1
H223435 4C2019 11 1 26.4 g1 1
H223463 4C2019 11 1 25 g1 1
H223464 4C2019 11 1 24.4 g1 1
H223465 4C2019 11 1 25.6 g1 1
H223510 4C2019 11 1 25.1 g1 1
H223511 4C2019 11 1 24.2 g1 1
H223512 4C2019 11 1 25.6 g1 1
H223514 4C2019 11 1 25.3 g1 1
H223664 4C2019 11 1 25.4 g1 1
H223665 4C2019 11 1 23.6 g1 1
H223666 4C2019 11 1 23.7 g1 1
H223755 4C2019 11 1 25.2 g1 1
H223756 4C2019 11 1 24.5 g1 1
H224313 4C2019 11 1 25.8 g1 1
H224413 4C2019 11 1 25.7 g1 1
H224638 4C2019 11 1 25.6 g1 1
H224639 4C2019 11 1 25.8 g1 1
H224828 4C2019 11 1 25.4 g1 1
H224829 4C2019 11 1 24.9 g1 1
H225071 4C2019 10 31 24.2 z1 1
H225071 4C2019 11 1 25.2 g1 1
H225289 4C2019 11 1 24.5 g1 1
H225290 4C2019 11 1 24.5 g1 1
H225339 4C2019 11 1 25.2 g1 1
H225340 4C2019 11 1 24.7 g1 1
H225341 4C2019 11 1 25.8 g1 1
H225355 4C2019 11 1 25.8 g1 1
H225356 4C2019 11 1 24.5 g1 1
H225756 4C2019 11 1 25.8 g1 1
H226081 4C2019 11 1 25.4 g1 1
H226223 4C2019 10 31 22.4 z1 1
H226295 4C2019 11 1 25.6 g1 1
H226861 4C2019 10 31 23.3 z1 1
H226893 4C2019 11 1 24.3 g1 1
H226894 4C2019 11 1 24.8 g1 1
H226895 4C2019 11 1 24.8 g1 1
H226896 4C2019 11 1 24.6 g1 1
H226929 4C2019 11 1 24.4 g1 1
H226931 4C2019 11 1 25.1 g1 1
H226932 4C2019 11 1 25.3 g1 1
H227148 4C2019 10 31 22.6 z1 1
H227217 4C2019 11 1 25.6 g1 1
H227218 4C2019 11 1 25.3 g1 1
H227219 4C2019 11 1 25.4 g1 1
H227221 4C2019 11 1 25.3 g1 1
H227804 4C2019 11 1 24.3 g1 1
H228054 4C2019 11 1 24.3 g1 1
H228078 4C2019 11 1 25.4 g1 1
H228134 C2019 11 1 25.3 g1 1
H228135 C2019 11 1 24.3 g1 1
H228145 4C2019 11 1 25.6 g1 1
H228801 4C2019 11 1 24 g1 1
H228803 4C2019 10 31 25.7 z1 1
H228803 4C2019 11 2 24.3 i1 1
H228826 4C2019 11 1 25.6 g1 1
H229215 4C2019 11 1 25.2 g1 1
H229545 4C2019 11 1 23.8 g1 1
H229548 4C2019 10 31 23.1 z1 1
H230023 4C2019 11 1 23 g1 1
H230042 4C2019 11 1 22.1 g1 1
H230596 4C2019 10 31 21.8 z1 1
H230597 4C2019 10 31 22.4 z1 1
H230597 4C2019 11 1 23.3 g1 1
H230700 4C2019 10 31 22.8 z1 1
H230700 4C2019 11 1 23.3 g1 1
H230702 4C2019 11 1 23.8 g1 1
H230721 4C2019 10 31 22 z1 1
H230843 4C2019 11 1 23.5 g1 1
H230875 4C2019 10 31 23.2 z1 1
H231682 4C2019 10 31 22 z1 1
H231684 4C2019 10 31 24.3 z1 1
H231688 4C2019 11 1 23.9 g1 1
H231691 4C2019 11 1 26.1 g1 1
H232948 4C2019 10 31 22.7 z1 1
H232949 4C2019 10 31 23.4 z1 1
H238653 4C2019 10 31 21.7 z1 1
H238666 4C2019 11 1 23.8 g1 1
H238667 4C2019 11 1 24.3 g1 1
H239000 4C2019 10 31 23.2 z1 1
H240015 4C2019 11 1 22.8 g1 1
H240024 4C2019 11 1 24.1 g1 1
H240393 4C2019 11 1 24.7 g1 1
H242349 4C2019 10 31 22.9 z1 1
H256006 4C2019 11 1 25.1 g1 1
H256006 4C2019 11 2 23.9 i1 1
H256006 4C2019 11 1 24.7 g1 1
H256438 4C2019 10 31 23.9 z1 1
H256438 4C2019 11 1 23.8 g1 1
H256438 4C2019 10 31 23.8 z1 1
H278887 4C2019 10 31 24 z1 1
H279577 4C2019 11 1 23.8 g1 1
このリストの作り方は簡単で、
①ITFからT09だけ抜いたファイルから、Powershellで
Select-String "2019 11 01" T09only.txt -CaseSensitive | Select Line | ft -AutoSize -Wrap > 20191101.csv
とでもして、連続する観測がある日ごとのデータを取り出す。
②引き続きPowrshellで
cat *.csv | sort | sc matome.csv
とでもして、数日分のデータをひとまとめにしてソートする
③csvをエクセルで開き、データをスペースと*を区切り文字で分割。さらに日のセルを小数点を区切りに分割。
④どっかの行でif関数系統で「その行の日付と1つ下の日付が同じで、かつその行の天体名と1つ下の天体名が違う」みたいな条件を作る
⑤合致した行だけテキスト化(かつ、ここへの公開に当たっては一応位置とかは全部消す)
(コード書ける人はそのほうが早いと思います 多分どうせ誰かがgithubに上げてくれるゴニョゴニョ)
ぜひ他のフィールド、日付でも使ってみてください。
ちなみに、この作り方のリストでたまに同じ天体が2行以上現れることがありますが、それは観測が3夜以上存在することを意味します。
ただし、名前の変更を使わずに解析された天体はこのリストをすり抜けるので、たとえこの方法で作ったリストを全部同定し終えてもまだまだ同定チャンスはあります。
追記
(2024/11) 最近、海外の同定者(浦川さん風に言うと「軌道連結士」)の方の同定の網羅度が急に向上し、COIAS上で手動でできる範囲のトラックレット3日分であればほぼ取りこぼしなく繋げられるようになりました。3夜目が揃ってから数週間以内にリンクされるので、放っておいても大丈夫になりました。
それでもなおCOIASユーザーにしかできないことは、自分で2夜目・3夜目の観測を画像から自分で測定して自らトラックレットを生み出すことです。ですので、ステップ2以降が難しく感じても、ステップ1だけでもやってITF上に3夜分揃えておけば、TNOとかでなければあとはお任せでも大丈夫です。