カンファレンスの代表をやって、今思うこと -Backlog World 2021に寄せて-
僕が代表を務めるBacklog World 2021 旅 ~Journey~ が明日開催を迎えます。プロジェクトに関わる全ての方のための祭典の示す通り、多種多様の職種の方々を集めプロジェクトの進め方、つまり、よりよい仕事のやり方をみんなで学ぼうというカンファレンスです。
ありがたいことに参加申し込み人数は400人を超え、運営としてもあとは開催を待つのみの状態です。
この記事は代表就任からの約5か月僕が何を感じたのか、何をしたのか、そして今どんなことを思うのかについて書きます。Backlog World 2021の宣伝のためではなく、今回の運営メンバーや未来の運営メンバーのための内向きな内容になるはずです。もしかしたらチームで何かに取り組んでいる人たちのヒントにはなるかもしれません。何を書こうかずっと考えていたせいで開催前日の投稿となってしまいました。
この記事からたった一つ伝えられることは「確固たる理想や十分な経験なんかなくてもチームをまとめて成果を出すことはできるよ」ってことです。あとは僕のひとり語りです。
昨年、激動の社会状況の中Backlog World 2020 re:Union は当時としては珍しいオンラインのカンファレンスとして開催されました。参加者は600人を超え大成功したオンラインカンファレンスとなりました。2020代表の西馬さんが退任され空席となった次期代表が決まらず、このままではBacklog World 2021開催されないんじゃないかな?って空気が漂い始めた中で代表をやってみないかとの打診をいただきました。
その時の心境はよく覚えています。「代表を務めさせていただけるなんて光栄だ!素晴らしいカンファレンスにしてやるぞ!」なんてものでは全くなく「超面倒くさそう!開催はしたいけど代表なんかやりたくねー」でした(運営メンバーの皆さん今まで隠しててすみません)。まあでもこのまま誰もやらなかったらBacklog World 2021は立ち消える直前だったので引き受けることにしました。これは僕の性格に起因していて、小さなころから「質問ある人ー?」とか「これやってくれる人いますかー?」のあとの静まり返った空気に耐えられないのです。静寂に耐えきれず、手をあげてしまう性分なのです。
めでたく代表に就任して決意表明を書いたりしました。
まあでも代表を引き受けてすぐに後悔しました。やっぱり非常に面倒だったのです!想像以上に心的負担が大きい。この決意表明も半分本心で、もう半分はあるべき代表としての別人格というか理想のリーダーを想像して書いた気がします。別に思ってないことを書いたわけではないですが、こうあらねば!とか立場を示さねば!の想いが強かったです。
Backlog World 2021運営立ち上げ当初は毎週のミーティングが憂鬱で仕方なかったことを覚えています。というのも成り行きで代表に就任したため「こんなカンファレンスにしたい!」というリーダーとして最も重要なものが僕の中には全然なかったのです。カンファレンスをどう作っていけばいいのか全くわからず、皆をリードする情熱もなく、でも代表なのでしっかり道を示さなきゃいけないというプレッシャーでミーティングの度に落ち込んでいました。
ミーティングの憂鬱やカンファレンスへの不安は運営のメンバーが解消してくれました。特に副委員長の駒田さん、JBUGコミュニティマネージャーの谷山さん、相棒の井上さん、私を含めた4人でどうありたいかを話したときにふと気づいたんです。自分の中に確固たる何かがなくとも、皆の想いを集めてそれを形にするために代表としてふるまえばいいんじゃないかなーって。話していく中で今回のテーマ「旅 ~Journey~」のキーワードが飛び出し、ああ僕はこのテーマを実現するためにがんばってみようと決めました。
「旅 ~Journey~」については僕が明文化し、テーマに沿っているかどうかを皆の判断基準として会の中心に置きました。手前味噌ですがテーマの明文化は非常に意味があったじゃないかなーと感じています。判断に迷うとき、コンテンツを作るとき、メンバーで決めた指針があると決断が楽でした。
十数人の運営メンバーもそろい11月の末にはキックオフを実施しました。キックオフではインセプションデッキを皆で作るというすこし新しい取り組みに挑戦しました。この時つくったインセプションデッキでメンバーが何を思って運営に参加してくれたのか知ることができました。一番の収穫はメンバーのモチベーションの多様さを実感できたことです。非常に意味のある取り組みだったと実感しています。あと、代表という立場に疲れた時にはこれを見て元気をもらってました。
先述したテーマを含め、僕は皆のやりたいことを実現する器になるというスタンスで代表を務めてきました。そもそもモチベーションがバラバラなのにこれを実現しろ!ってリーダーが決めて進むものではないなと、インセプションデッキを通して考えるようになりました。この気づきは自分の中でとても大きかった。自分の中に何かがなくとも、集まったメンバーから湧き上がる創造性を形にすることが僕の役目だと考えるようになり、そのために心理的な安全性を高めたりモチベーションをそぐようなことはしないよう行動したつもりです。
キックオフから1月が経った12月の末には具体的なコンテンツや準備物等が固まり、当初抱えていた不安や憂鬱がかなり無くなってきました。忘年会をしたりメンバーも徐々に打ち解けてコミュニケーションも活発になってきたと感じた頃でした。僕が気を付けていたことと言えば、ミーティングに参加したメンバにはできるだけ話を振ったり役割を提供して一緒にカンファレンスを作っている感を得てもらうことくらいです。自分は役に立っていないと思う人はひとりも作りたくないと強く心掛けていました。
さて新年を迎えて徐々にカンファレンスの全体像が固まってきた1月初頭に妻が入院しました。この文章を書いている今もまだ退院していません。少しずつ代表としての仕事が楽しくなってきた矢先でした。僕は再び代表を引き受けたことを後悔しました。あんなに楽しみにしていた2月のDevelopers Summit 2021の登壇も、開催日が近づくにつれ苦痛な日々が続きました。正直なところDevelopers SummitもBacklog Worldも中止になってくれねーかなーとか思ってました(皆さんすみません)。
そんな時に僕を支えてくれたのは運営メンバーと妻の言葉です。
代表就任から間もないころは毎週のミーティングがいやだとぼやく僕に対して「あなたがやるって決めたことでしょ」って言葉をかけてくれました。冷たい言葉と感じるかもしれませんが、僕は言われるたびに少し反省し、そして勇気をもらいました。それからは「僕がやるって決めたことだから」の想いで代表を務めることができたのだと思います。
Developers Summitもなんとか乗り切りました。この環境の中で登壇をやりきりたくさんの人からあたたかい言葉をいただけたことは大きな自信になりました。運営メンバーが多数駆けつけてくれたことは大きな励みでした。ちなみにコミュニティについて話しました。代表の役得を活用した感じです。
運営メンバーには素直に妻が入院したので今まで通りの働きはできないし、カンファレンス当日僕はいないかもしれないと伝えました。このことがあったからはわかりませんが、現状を話して以降僕が何かを言わずとも各人が目標を設定し、期限を決め、より積極的に成果を出してくれるようになったと感じています。自分の弱い部分を受け入れ、補おうとしてくれる皆に救われました。
今となっては確固たる理想を持っていないリーダーってのもありなのかなと思います。僕は熱血タイプといわれることがよくあるのですが、自分のために血を滾らせるのではなく、皆がやりたいなーって思っていることを形にするために熱くなっていたんだって。
例えば、これをやってみたい!という意見が出た場合、テーマである旅に沿っているか?反対する人はいるか?実際に手を動かす人はやりたいのか?この3点で決断する。自分にこうあらねばならないがないため、メンバーの自主性と手を動かす人の気持ちに任せることができます。素敵な意見が出てもそれを実現するための面倒ごとを積極的にやる人がいなければやらない、という選択をたくさんしました。コミュニティですから。自分で決めた目標じゃないとがんばれませんよね。
終盤では僕がいなくてもどんどん物事が進むので、あーこれがタックマンモデルでいうところの機能期なのかーと自律性の高さに感心しました。仕事においてもここまでのチームに到達したことがなかったので感動しています。明日は僕がいなくても素晴らしいカンファレンスになります。
だいたいのことにいいねー!やりましょう!って言った成果かどうかはわかりませんが、気が付いたらメンバー各々が自律的に行動しコミットしてくれるようになりました。僕のスタンスがよかったのかどうかはわかりません。とにかく素晴らしいメンバーに恵まれただけかもしれません。ただ勇気を持った提案を無下にしないよう気を付けました。
なんでもやりましょうと言ってたおかげで登壇者や運営メンバとの対談配信もたくさん実現しました。対談はJBUGライブとして発信しいろいろな話が聞けてとても楽しかったです。そしてとても疲れました。なんでもやりましょうはほどほどにしておいたほうがいいということを学びました。
基調講演のお二人との対談です。
Backlog World 2021には最小限のお金しかかけていません。やりたいことをやりたい人が挑戦してみて、完璧にできなくてもいいじゃないかの精神です。これはコミュニティだからできる考えだと思います。スポンサーもヌーラボさん以外には募らず、無料のカンファレンスとして開催し、こうあらねばならないを極力取り除きました。失敗を許容し、できるものでいいじゃないかで進められたことは、僕にとってはストレスが少なくありがたいことでした。理想が低い!とお叱りを受けるかもしれませんが。
好き勝手に進める私たちを口出しもせず支えてくれた、スポンサー株式会社ヌーラボ様およびコミュニティマネージャーの谷山さん、この場を借りてお礼申し上げます。この支えがないとBacklog World 2021は構想すらできていません。ありがとうございます。
なんだかんだであと1日で開催です。本当はもっと記事を読んだ人がBacklog Worldに申し込みたくなるような、期待と興奮がほとばしる記事を書こうと先週から構想していたのですがどうもうまく書けませんでした。だから、運営メンバーへの感謝と僕の素直な気持ちを書くことにしました。
Backlog World 2021開催までが僕にとっての長い旅でした。ともに歩んでくれた運営メンバーには感謝しかありません。素晴らしい登壇者の方々にも集結していただきました。代表就任時には、まあ無事開催できればいいやくらいの気持ちでいたのですが、いつの間にか多くの人に注目されるカンファレンスへ成長しました。今は何としても成功させたいと思っています。あんなに憂鬱だったミーティングも、終わってほしくないという気持ちでいっぱいです。
半ば無理やり書いた代表としての決意表明も、不思議なもので今はこの決意表明と嘘偽りないこころもちになりました。リーダーってのはひとりで成長してなるものではなく、周りの人々がリーダーへと成長させてくれるんだなって実感しています。
若輩者ながらもBacklog World 2021の運営委員長を務めることができて心から嬉しく思います。
今日はこの後、コアメンバーで直前の配信を行い(よければ見てやってください)、運営メンバーで決起集会をします。あとは本番でおしまいです。
開催前日はもっとワクワクするものだと思ってましたが、今はこの旅が終わることのほうが寂しいです。
明日を目標に運営メンバー一同精一杯歩んできたので素晴らしいカンファレンスになるでしょう。コンテンツも実にいいものができたと自負しております。なにより運営メンバーの想いが形を成して皆さんに届くことを嬉しく思います。この記事を読んで興味がわいた方には是非ともご覧いただきたいです。
長いひとり語りにお付き合いいただきありがとうございます。この記事が誰のためになるかはわかりませんが、世に出してみることにします。
それではみなさん、明日はオンラインで素敵な旅に出かけましょう。
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