色彩

心が昂ぶる色は何色ですか?

印象派が描く空の青が好きだ。そう言えるくらいには、絵画鑑賞を嗜むことが出来るようになってきたかもしれない。週末に美術館に行ったのだが、鑑賞で立ち止まってしまう絵は、空の青や森の緑が描かれた印象派の絵だった。マネ、モネ、シスレー当たりが特に心惹かれる。これまでの美術鑑賞を考えても、この傾向は再現性高く繰り返されているし、自身がi-padで絵を描く際もこれらの色調を好むことから、ほぼ間違いなく好きだと言い切ることが出来る。好きなものを好きと言い切れるケースは存外に少ないようにも思うが、これは結構自信を持って言えることではある。

さて、印象派の絵が好きなことは確かではあるが、印象派の画家について、また彼らが生きた時代背景については何も知らない。そこで今回、鑑賞した後のグッズ店で『印象派で「近代」を読む』という本を購入した。本著は、カラーや白黒の挿絵もたくさんある中で、印象派の勃興や普及の経緯が示されていた。目の保養にもなるし、教養にもなるヴィジュアルに訴えかける良書だったように思う。

印象派の生きた時代は、王政の終焉、個人主義の台頭(P, S)、植民地化、南北戦争(E)、近代都市化、絵の具チューブ、写真技術の向上(T)など、様々な出来事が起こっていた。職業柄フレームワークはよく使うけれど、PESTで整理してみてもなるほどと思う部分はあった。一方で、ゴッホのような時代が追い付かずに死後著名になった画家もいる。平和と動乱の狭間を生きた人々が創り上げた芸術だったことが想像できる。確かに、印象派の絵には自然の美を描いたもの以外に、工場や蒸気機関車の煙、観光地のバカンス、娼婦の裸像などが描かれたものも多数あることを改めて認識するとともに、時代背景を表現した絵であることも理解できた。

当時の人たちが見た景色も、見る立場によっては全く異なる印象だったのかもしれない。爽快な目覚めの青に感じる人もいれば、夜の快楽から現実へ戻る憂鬱の青に感じた人がいたかもしれない。空気がきれいな緑の森に感じる人もいれば、孤独や逢引きを想像させる昏い森の緑を感じた人もいるかもしれない。置かれた立場や環境で、見え方も変わるのだろうと改めて感じた次第である。

色々と考えさせられる一冊ではあったけれど、それでもやっぱり、彼らが描いた青と緑は美しい。その色に酔えるくらいには、人生を楽しむことが出来ていると感じる今日この頃である。



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