親近感

どんな時に親近感を覚えますか?

横道誠氏の『イスタンブールで青に溺れる 発達障害者の世界周航記』を読了。著者とはほぼ同じ世代を生き、かつ住んでいたことのある場所も近しく、本書に出てくる都市も複数に訪問したことがあり、親近感が湧く内容だった。時折出てくる絵画や文学作品についても興味深い記載が多く、本については早速ポチってしまった。

著者は40歳で発達障害と診断され、それを機に本業の文学者としてだけでなく、発達障害の当事者として諸経験を当事者批評するような試みをしている。本著も過去の海外経験を改めて掘り起こし批評する形式であり、当時と現在の世界の捉え方の差異なども出てきて興味深かった。

本著では、冒頭にニューロダイバーシティについても触れられている。昨今は内向性、HSP、ギフテッドなどの議論も活発になされており、そこから脳科学と紐づけられた学術的な研究も進んでいる。その中で、発達障害との関連性についても研究はなされている。LGBTQ+で性の多様性が容認されつつある世界で、次の分野として注目されているのが発達障害や気質といったところなのかもしれない。

私自身もこの数年で、性格診断から始まり、認知科学、哲学と精神分析、パーソナリティ障害、セラピー等の分野の著書を読んできた。最初は自己理解も含めての探究ではあったけれど、自分に何かをラベリングしても遺伝的要因や脳機能を変えられる訳でもないので、「そういう部分もあるのかも」と思う程度に留めている。ただ、この数年で学術分野だけでなく、一般書としても様々な分類の仕方が増えてきたことは事実のように思う。

さて、性にしろ脳にしろ、分類が増えてくる背景は何なのだろうか。カテゴライズされることで得られる安心感というものはあるだろうし、マイノリティとしての主張がやりやすい世の中になるというメリットもあるだろう。一方で、カテゴライズすることによって、その対象領域に新たな商売を作り上げている側面もあると感じる。

ビジネスの基本としてSTPの考えがあるが、これもセグメンテーションはまさしくカテゴライズすることと同義である。資本主義の競争社会で、セグメンテーションによりターゲット層が設定され、それを差別化によりポジショニングを行っていく。新たなセグメントを産み出せれば、そこに新しいビジネスが誕生して金儲けも出来るようになる。それが、「モノ」の飽和によって、対象が「ヒト」に移っており、ヒトがどんどんと細分化されている時代に入ってきたのかもしれない。

これはマイノリティ側だけではなく、マジョリティ側でも起こっている。白人も今やエリート層とプアホワイトに分断された。プアホワイトの指示によりトランプは大統領にまでなっている。このように、集団がどんどん細分化されていくことは、価値観の多様性、個人主義、自由主義が基軸となりつつある世の中とも相性がよさそうだ。

分断だけが進めば世界は孤立していくだろう。その過程に再統合があれば、新たなコミュニティーも築けるかもしれない。そのためには親近感を覚えることも大切だろう。カテゴライズが、単なる商売の道具ではなく、ヒトの関わりを促すキッカケになればよいと思う。

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