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消費、消耗(掌編小説)


 バナナの皮が真っ黒だ。

 テーブルに放置されて無残な姿になったそれらを見ながら、途方に暮れる。女友達との旅行から帰ってきてすぐの光景がこれだとは。料理は面倒だけど、バナナだった食べるって言ってたから。だから先週買って、私がいない間もちゃんと何かは食べるんだよって置いておいたのに。帰ってきて、どうして手つかずのバナナの山が残っているのか。

 この状況から考えられるのは一つしかない。どうせどこかの女の家で手料理でも作って貰っていたのだろう。ここに帰ってすらなかったのだ。ああ、どうしてやろうか。

 スマホからぴろんと通知音が鳴って、メッセージがうつしだされる。あいつからだった。

『もう帰ってきたー?今日の晩御飯なに?』

 この様子だとバナナをリクエストしたことすら覚えていないのだろう。人から貰えるご飯にしか興味がない、根無し草男が。

 いらいらとした気持ちのまま、検索ででてきたレシピサイトを送りつける。

『大量バナナで簡単パウンドケーキ』

『おいしそ、今日は帰るねー』

 呑気な感想と、今日「は」帰るというメッセージを通知欄だけで確認してスマホを放り投げる。楽しい旅行気分だったのに、嫌な現実に引き戻されてしまった。このままバナナの山を残したままあいつを出迎えたらどういう反応をするだろうか。できもしないことを考えながら、旅行前と変わらないキッチンでエプロンをつけた。



カクヨムにて連載していた掌編集「お似合いだね」より。

マガジンにもまとめています。

読んでいただきありがとうございました💫

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