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まさか「うどん」がこれほど美味いとは...!
私は神奈川県の昭和生まれで、子供の頃はお腹を壊しやすい少年だった(今でもあまり変わってないが...)
お腹を壊すと母が消化が良いからと「うどん」を茹でて作ってくれた。
うどんと言っても最近全国展開している「讃岐うどん」の様に、コシのある「うどん」ではなくて、スーパーで売っている柔らか袋麺をクタクタになるまで茹でた「うどん」だ。
子供ながら特に好きだった訳ではなく、食欲のない中、薬の一部と思って、仕方なく食べていた。
その様な「うどん」に対しての先入観は大人になっても大きく変わらず、蕎麦屋に行って「うどん」のメニューがあっても、注文する事はまず無かった。
30歳で結婚をして、妻の手の込んだ手料理には大変満足していたが、たまに「うどん」が出てくる事があった。
自分にとっての「うどん」はお腹を壊した時に食べるもの!
と言う先入観をぶち壊された。
正直ぜんぜん嬉しくなくて、かなり顔に出ていた事と思う。
妻の両親は香川県の高松と愛媛県東部の出身なので、「うどん」に対しての愛が大きく、自分にはその「うどん愛」がまったく理解出来ずにいた。
それから時間は流れ、10年後のある夏に仕事で2ヶ月間、香川県高松市に出張に行った。
ランチは毎日出張先のオジさんが「讃岐うどん」を食べに連れて行ってくれて、ある時は行列のできる人気店や、畑の真ん中にポツンとある地元民しか知らない様な名店を紹介してくれた。
そのオジさんはいつも3玉注文して、自分は2玉を「ぶっかけ」で食べたのだが、そのコシの強さのせいで、「顎が疲れた〜!」と言うと「喉で食べなあな!」と笑われた。
社員食堂でも、「定食」か「ぶっかけ」の2択しかなく「ぶっかけ」は食べ放題だった。どんぶりに「うどん」を入れてもらい、ザルに山盛りの薬味(ネギ、天かす、ゴマ、生姜)と、ポットに入った出汁は自分で入れて食べると、これがまた美味かった。
最初は定食を食べていたが、慣れた頃にはずっと「ぶっかけ」を注文して食べた。
子供の頃に食べた「クタクタのうどん」とあまりにも違い、「うどん」の概念を覆された。
今でこそ丸亀製麺など、全国展開されているうどん屋がどこにでもあるので、定期的に美味しいうどんを食べる事ができるが、当時は高松に行かないと食べられなかったと思う。
まさかこれ程「うどん」を美味しいと思う未来が来るとは...思いもしなかった。
ある日、旨そうに「うどん」を食べている姿を見て、妻が「だから言ったじゃない!」と、うどんの美味しさを分かってもらえて嬉しそうだった。
経験こそが自分の概念や先入観を変えてくれる近道じゃないかなあ、と実感する出来事だった。
あの20年前の暑い夏の2ヶ月間、
「讃岐うどん」の地で汗をかいて働いた事と、あの「ぶっかけ」の味が、決して忘れられない良い思い出となっている。
終わり