寡黙なる隊列
寡黙なる隊列
浮遊する都市の影を
白髪の少年達が追う
高く掲げた両の手に
天空からこぼれ落ちる
時の雫を受け止め
駆けのぼる摩天楼の屋上から
砂嵐の谷へと身を投げる
無情なる黄灰色の霧に覆われた
(basalt)玄武岩の峡谷には
生臭い息を吐く
獣達が群れ成し
福音の衣を纏った
少年達の隊列に襲いかかる
古の大地を駆け抜けて来た巨大な風は
苦悩と混沌を運び込み
深紅のバラの血を
其処此処へと撒き散らすのだった
純白なる少年達は
もはや年を取り過ぎてしまった
氷雪の大河をさかのぼり
打ち捨てて来た激情の松明を取り戻さんと
空虚なる歩みを続ける少年達よ
君たちを駆り立てるものは何だ?!
黴臭(ばいしゅう)の立ちこめる
忘却の街中で
少年達は立ち止まり
鉛色の天を仰ぐ
不安と悲しみに押しつぶされそうになりながらも
彼らは無表情を保ち
深い呼吸を一度すると
やがて 再び
寡黙なる歩みを続けるのであった
ハデスへの入り口に続くと云われるこの道を
少年達はひたすらに行く
冷酷な大地から沸き立つ
白い大気の中に
いつの間にか
少年達は姿を消してしまうのだった
隊列の最後の少年が
振り向く
虚空に放たれた少年の叫びは
誰の耳にも達することはなかった
只 恐怖に引き裂かれた
仮面のような少年の顔が
残視となって
人々の目に
焼き付いたのだった
à Tokyo 一陽 Ichiyoh