見出し画像

七月の老人(物言わぬ人)


七月の老人(物言わぬ人)


七月の蒼穹

静かなる村にひびく
優しき渡り鳥の歌声

遠い南の国の出来事を語る
鳥たちの囀りに
そっと耳を傾ける 老爺

柔かな風は
木漏れ日を揺らし

甘く涼しげな香りが
肌を撫でる


喜びや哀しみ
ときめきや落胆・・・



夢と現に彷徨う
彼の人の

時を照らし続けた
燭台の灯が

今 静寂の中に
消えゆこうとしている

高台の鐘は
遠き国へ旅立つ男の魂を讃え

庭に揺らぐ
薄紫のツルハナナスの花が
物言わぬ人の顔を
じっと見つめ続けていた
                     

Seconde moitié du 20e siècle / Dans le sud de la France 一陽 Ichiyoh

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?