歌人「石川啄木」と親友「金田一京助」との関係について
明治時代に活躍した歌人・石川啄木には、唯一無二の親友である金田一京助という人がいました。ここでは、石川啄木と金田一京助の関係についてご紹介したいと思います。
石川啄木とは
石川啄木は岩手県出身の明治時代に活躍した歌人で、26歳のときに肺結核で亡くなっています。
作品数は「あこがれ」、「一握の砂」
、「悲しき玩具」の3冊。
あとは雑誌に掲載した小説など。
幼い頃から神童ともてはやされて育った彼は、小学校を一年早く入学式して一番の成績で卒業するような秀才でした。
そして中学に通う中で出会ったのが、短歌でした。短歌にハマって中学の勉強が疎かになりテストでカンニングが見つかったので、退学させられる前に自主退学を決めます。
すでに波乱万丈の臭いがしますね…。
そして短歌で食べていく決意をして上京を決めたのです。しかしあまりうまく行かず、東京や札幌、岩手を行き来する苦労の連続。そんな貧困や孤独、ひっ迫した生活感のある短歌が多く残ります。
そんな中でも、夏目漱石や森鴎外に認められ、北原白秋や吉井勇など同年代の詩人達とも交流を重ねます。
どれだけ書いても生活水準は上がらず、それでももがくように書き続ける姿を想像してしまいます。
…とまぁここまでが定石通りの石川啄木語りです。
親友の金田一京助
色々と短歌の素晴らしさなど、語りたくもあるんですが、この人を語る上で外せないのが「金田一京助」です。
この方は今も使われ続けている漢和辞典の編者であり、言語学者でもありました。そして、石川啄木の先輩で親友でもあります。
この金田一京助と石川啄木は、同じ岩手県渋民村出身で、小中学校の先輩と後輩関係になります。この金田一さんの啄木好きはとんでもないのです。
金田一京助が石川啄木を支援する理由
金田一さんの前に、実は啄木という男はお金にルーズで女性にもルーズな割とダメ男だとお伝えしたいと思います。お金がないのに、それでも遊びたい…だから借金をする。
そんなダメ男なんですが、短歌の才能がありました。筆者は、石川啄木の歌も性格も含めて大好きです。それに、この時代の文士達は往々にしてこうした人間的に破綻した部分を持ち合わせているものですからね。
人とは相容れない部分があるからこそ、後世にも残るような作品を表現できるんだとも思います。
とまぁ金田一さんも、そんなところに惚れ込んでいたようで、お金を貸してくれと言われれば自身の蔵書を売ってお金を工面します。住むところがないと言えば、下宿に一緒に住もうと言い出したりもします。
金田一さんも優しく思いやりのある人だと思いますが、ただの同郷にここまでするのは妙ですよね。
そんな金田一さんですが、実はこの人も文学の道を志してはいました。ただ文学の才能はないと諦め、堅実に大学を出て教師をしながら自身の言語学の研究を進めていました。のちに國學院大學教授にまでなりますがこの時はぺーぺーでした。
また、金田一さんが出ているのは帝大であり、現在の東大です。この時代、大学まで出るには頭の出来はもちろんのこと、通常よりもお金がないと通うことはできません。なのでそれができる金田一さんはエリート中のエリートなのです。
まぁそれでも自分には選ぶことができなかった道を、啄木は筆一本で進んでいる。そんなところに自分の夢を一緒に重ねていたのかな?とも思います。
金田一さんは、結婚後も変わらず支援し続けます。奥さんの嫁入り道具の着物まで質屋に入れて啄木のためのお金を作るところは、なんとも狂気めいたものすら感じます。
石川啄木の死後
啄木は肺結核を患い1911年4月13日の朝に亡くなっています。冒頭にも書きましたが、26歳というあまりにも早い死です。
危篤の知らせを受けて、金田一さんは早朝に啄木の家にかけつけていますが、一旦状態が良くなるのを見届け家を去っています。そのあと啄木は息を引きとったと言います。
後年、金田一さんは日本を代表する言語学者になりますが、幾度も親友である啄木のこと繰り返し語り、本に書いています。
80年余りの生涯の中、啄木と過ごしたときはほんの一瞬です。それでも語り続ける金田一さんにとって、啄木とは大きな存在だったんでしょうね。
おわりに
何だか全体的に金田一さんに寄り添った感じになってしまい「この人は本当に石川啄木が好きなのか?」と思う方もいらっしゃることでしょう…。
私ですらたまに、彼のどこが好きなのかと悩むことがあります。
石川啄木という人は、わがままで見栄っ張りな借金王なんですが、その実、明るく素直でさっぱりした性格の人なんですよね。
そういう可愛いところが、他人はなんとなく手を貸したくなるんだろうなと思います。
ただそれを見守る周りの気持ちを考えると胃が痛いところはあります。そう、金田一さんとかね。なぜか金田一さん贔屓になるのはそういうことなんです。
でもやっぱりクズな面も含めて石川啄木は愛すべき人だと思います。教科書には載らない、そんな魅力が1ミリでも伝われば嬉しいです。
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