重枝一郎 / 学校経営の進化を考える   Ichiro Shigeeda

福岡女学院中学校・高等学校校長。 中学校教諭(数学)、教育委員会主任指導主事、市立高校…

重枝一郎 / 学校経営の進化を考える   Ichiro Shigeeda

福岡女学院中学校・高等学校校長。 中学校教諭(数学)、教育委員会主任指導主事、市立高校副校長、市立中学校長を経て、現職。2005年、『班形態を生かした集団作りの実践』で、福岡市民教育賞受賞。生徒指導総合講座や福岡県、釜山市などの学校・地域などの講演活動は、500回を超える。

最近の記事

「組織」のリーダシップの取り方をメンバーに示す

リーダーが「こうする」と言っても,成員の中には「私はそうは思わない」という人がいる。集団ではそれは至極当然のことです。  そんなとき,「みんなが納得するまで話し合いましょう」のようなことは,スピード感がなく、おそらく疲労感が漂う結果となるだけです。「起こりがちなすれ違い」で終わってしまいます。世代の違い、立場の違いなどで、それぞれが見えている世界が違うからです。時間をかけて話し合って計画を立てたとしても,その「念入りな話し合い」が自分たちの足を引っ張ることもあります。「計画通

    • ◆傾聴◆「話す」ことは、「聴く」こと

      ◆「話し合い」の力はスキルである 「話し合いが大切だ」と、だれもが言います。 人間関係を築く上では当たり前のことです。 しかし、「話し合い」というのは、単に言葉や意見のやり取りだけでないのです。顔の表情,声の調子,しぐさ,間などから相手の気持ち,心の変化を察知します。これは,対人関係をつくる基礎基本になるのです。相手の話を聞く力,話を引き出す力,この人に話したいという気持ちにさせる力につながります。つまり、「話し合い」の力は,人間関係を築くコミュニケーションスキルの一つとも

      • ポジティブな言葉は共同体感覚を作る

        ◆口ぐせがネガティブな人 頑張り屋で,とてもまじめなのだが,よく落ち込み,なかなか思ったように事が運ばないことを悩んで、私のところにときどき相談に来る人がいました。 誰にでもうまくいかないことはあるのですが,私は,励ますだけでなく,なんらかのマインドをセットしてあげたいと思いました。うまくいかない要因に,なんとなく心当たりを感じている部分があったからです。 それは,その人の「ネガティブな口ぐせ」です。ネガティブな言葉が自分自身を不安にしていくのです。 ◆ネガティブな言

        • 「対話的」とは~

          ■「対話的」とは 生徒が意欲的になっているということは,学ぶことに生徒自身が関心をもち,自分の将来と関連付けながら学習するということである。それはコーチングをして生徒の主体性を感じ取れる瞬間ともいえる。そのプロセスにおいても「対話的な学び」がある。これからの時代では,自分ひとりの力ではなく他者との協働を繰り返しながら考え抜くことが必要不可欠であることから,「対話的な学び」はとても大切である。つまり「対話的な学び」は,生徒同士のコラボレーションや,学内外の他者との対話を通じて

          「深い学び」とは~

          ■問い 生徒の思考を高め,深い学びに導く上で最も重視するのが,洞察を促す「問い」である。一般的に「AならばBである」は順思考と呼ばれ,それを深く吟味したり,多様な観点から解釈するプロセスが失われたりすることがある。そうならない「問い」で思考を深めていかなくてはならない。 「問い」の代表的な形式は「~にもかかわらず,○○なのはどうしてか」。 例えば,国語の教材によく取り上げられる「羅生門」では,「芥川龍之介は大正期の作家であるにもかかわらず,なぜ小説の舞台に平安時代を選んだ

          「主体的」とは~

          新学習指導要領では,教える内容のマイナーチェンジではなく,教え方のモデルチェンジを求めている。アクティブ・ラーニングという言葉があまり使われなくなったのは,単に「活動的な授業」と捉え,表面的なグループ活動に終始し,思考が深まらない授業が散見されたためだと言われている。  そこで,言葉を「主体的・対話的で深い学び」と置き換えることになった。主体的とは,意欲・興味があると,脳内からドーパミンが放出され,学習が心地よく感じ,また,記憶の保持を強化すると言われる。 ■「主体的」とは

          ~2学期のマインドセットを~

          昔から,「可愛い子には旅をさせよ」という言葉があるように,知らない場所に行っ たり,知らない人と会ったりすることは,成長の機会や学びの宝庫であると言われてい ます。だから,学校・学年行事において,修学旅行やフィールドワークが依然として存在してい ます。私が着目するのは,日常の中で,「自分の立ち位置を変える」ことです。 ■立ち位置を変えてみる この「自分の立ち位置を変える」という「旅」は,どこか遠くに出かけたり、それなりの目的をもって行動を起こすような特別なことではありませ

          私は、「白黒思考」をやめた

          春は,出会いと別れの季節。 私は、新しい生活のスターに際して、先生方や生徒たちが、おだやかで,ほっとできて,ハッピーであってほしいと願っている。 そんな時、「心理的安全」を保つことができているだろうかと心配になる。 「心理的安全」を自らつくるための具体的な考え方をいくつか述べる。 ■「正解」にこだわらない 一つ目は,「自分の正解にこだわらない」ということである。 社会の変化,相手の変化,環境の変化などの中で,自分の考え方や うまくいく「正解」自体も変わっていくのは当然で

          「黄金週間」…連休明けからでも大丈夫

          学校では、新年度スタートの一週間を「黄金週間」と呼んで、計画を立てている。「黄金週間」とは5月のゴールデンウイークのことではない(笑)。この時期の取組みは、これからの1年間に大きく影響する重要な時になる。いわゆる「初頭効果」である。 そのためには,すべきポイントがある。 ○学級経営方針を伝える こんなクラスにしたいを明確に具体的に伝えること   例 仲間を大切にする(全学年)     基本的な生活ができるようにする(1年)     自主性を身につける(2年)      全

          「黄金週間」…連休明けからでも大丈夫

          「学ぶ」は、「真似る」から

          「学ぶ」の語源は,ご存知の通り,まねる→まねぶ→まなぶ と言われる。新学期がスタートして一か月、ぜひ、全体・同学年・同教科でのOJTを活性化した取り組みを進めてほしい。 経験の量に関わらず,いつも「今がチャンス!」というマインドで,有意義な学びの機会にしていきたいものだ。時には、一から自分の授業や学級づくりを見つめ直すことも大切である。 以下,OJTで授業を参観するときのポイントを示す。 ■授業を参観するときのお約束 ①   最低一週間前に,参観のお願いをしておくこと ②

          On the Job Training

          GWが明けると,生徒達は久しぶりにワクワクしながら登校してくる。 先生方も,生徒の喜ぶ顔を想像しながら教材研究等をしていることだろう。 夏休みまでを見通して準備をすることも大事である。 まずは,職員室に新風を吹き込む元気な挨拶から一日をスタートさせていこう! ■いつも「今がチャンス」と思うことが大切である 新年度のスタートは,生徒たちとの出会いに,先生方の緊張感,喜びの空気が職員室全体を支配する。新しい環境の中,慣れない仕事や会議をこなすだけでも,右往左往して過ぎていく。

          「働きやすさ」と「働き甲斐」のバランス

          「働きやすさ」と「働きがい」… このバランスは難しい。 「働きやすさ」をつくるには,規制を強める必要があり, 「働きがい」を高めるには,自由度を高める必要がある。 相反する性質だから難しい。 働く人たちの実態に合わせて改善していかなくてはならない。 ■働きがい 私たち教師の職業は,「働きがい」を維持しつつ,業務改善を図っていくべきである。  業務を一律に削減しても業務改善はうまくいかない。 なぜなら,一人一人が感じていること.見ていることが違うからだ。 だから,それぞれが

          「働きやすさ」と「働き甲斐」のバランス

          ブラックな会議

           “ブラックな会議”… *結論が出ない,何も決まらない,先送りばかり *出席者が多すぎる,時間が長い,一人一人の発言が長い *報告会のよう,資料説明が多い,空気がどんより *否定的コメントや代案のない批判が多い *最後にどんでん返し,今までの議論は何だったのかと思ってしまう *意見対立で終わっていいと思っている  いつの時代も学校現場では,課題に直面し、教師が多様な考えを語り合う中で「答え」を打ち出していくことが求められる。 会議の中で今求めるのは,拡散か?収束か?参加者

          ’これから’を考える

           保護者世代が考える社会人像と現在のそれとでは大きく変わってきている。具体的に何がどう変わっているのだろう。  ここ数年で学校教育が大きく変わってきていることは誰もが知るところである。大学は,私や保護者の世代では、自由を満喫できる時間と捉えていた人が多かったのも否めない。しかし、現在では、大学で学んで社会に貢献できる人間になることが求められている。就職活動でも,大学の名前よりも,大学で何を学び,何を得たかをきちんと語れる人が選ばれる時代になりつつある。 では、若者が「これから

          感動を演出するパラダイムシフ

            ■パラダイムシフト  先生方の経験則でも既にご存知のことだと思うが,感動には大きなパラダイムシフトがつきものである。  例えば,「楽しみにしていた映画を見に行って,実につまらない映画でガッカリした」という経験はないだろうか。おもしろいと思って楽しみに見に行ったら,おもしろくなかったときは,本当にガッカリである。逆に,「つまらないと思っていたら,おもしろかった」ときはどうだろう。たまたま時間つぶしに見た映画だったが,そのおもしろさに感激し,期待以上に感動し・・・これはパラ

          「自尊感情」? それとも「自己有用感」?

          ■ 「自尊感情」と「自己有用感」 「自尊感情」は,自己に対して肯定的な評価を抱いている状態を指すself-esteemの日本語訳である。自分に自信が持てず,人間関係に不安を感じている生徒には、「自尊感情」を高めることが必要と言われる。  しかしながら,日本の社会では,「規範意識(きまりを進んで守ろうとする意識)」の重要性も大切にしなければならない。それらを併せて考えるならば、「自尊感情」よりも「自己有用感」の育成を目指すほうが適当だと言える。  なぜなら,”人の役に立った

          「自尊感情」? それとも「自己有用感」?