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東京で3台に1台。JPN-TAXI(ジャパンタクシー)について語らせてくれないか。

2017年、私は走り回っていたのだ。全国のタクシー協会長になったばかりの最初の大仕事。凄い車が出る。22年ぶりの、タクシー専用車両。しかも車いすOKのユニバーサルデザイン。東京オリンピックまでには「東京のタクシーの3台に1台がこの新型車両になります!」と、政治家の先生方や国交・経産・警察などの官公庁のお偉いさん方に、タクシー産業の「進化」をアピールすべく。

その時、歴史は動いた。JPN-TAXI登場。

そして10月23日(実は母と姉の誕生日w)、その車は出た。タクシー関連としては前代未聞、ド派手に、お台場のメガウェブにて、石井国交大臣、トヨタ豊田社長をはじめ記者・関係者数百名を集めて!

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(左からトヨタ自動車の佐藤康彦専務、ワタシ、石井啓一国土交通大臣、トヨタ自動車の豊田章男社長、国土交通省自動車局の奥田哲也局長。肩書当時。)

それまでタクシーと言えば、セダン。クラウンのタクシー専用車、「クラウンコンフォート」が8割(後の2割は日産セドリック)。質実剛健、熟成に熟成を重ねた名車。私も1ヶ月タクシー乗務した時に、人馬一体というか、コンフォートの四角い車体ってメチャ車幅つかみやすくて、車体の前の方についているフェンダーミラーと相まって、慣れると自分の体の一部のように取り回せるんです。

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このコンフォートが名車すぎたが故に、まさにイノベーションのジレンマ、22年もかかったわけです、完全新規開発のタクシー専用車両としてJPN-TAXIが開発されるには。

全米が泣いた!? JPN-TAXI開発の「決め手」。

しかも、、、開発スタートの「決め手」を聞いた時に、私は泣いた。全米も泣いた!? それは豊田社長のお父様・豊田章一郎名誉会長の一言。「みなさん、トヨタが自家用車を売り始めた時、最初のメインユーザーはタクシー会社だったのです。それを忘れてはいけない。そのご恩に報いるべくもう一度、心を込めてタクシー専用の車を開発しなさい」という(涙)JPN-TAXIの最初の4人の開発プロジェクトメンバーであった長田准部長(肩書当時)と粥川宏チーフエンジニア(肩書当時)から伺ったので間違いない。

確かに、、、祖父・川鍋秋蔵の書いた昔の文章に、「日本で車を作ると言う。どうしても使ってくれと言われて40台買ったが、壊れまくって大変だった」とあったのを思い出す。トヨタのエンジニアがタクシー会社の整備工場に待機していると、自家用車の7倍走るタクシーですから、言ってみれば耐久試験場、どんどん壊れるので、それを片っ端から直してゆく。そのうち、一般向けに販売開始するまでには、ほとんどの弱い箇所は直っていると言う。アジャイル開発ですな、今風に言うと。

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(日本交通における初期のトヨタ車。「TOYOPET」の文字が光る!

で、豊田章男社長ご自身からも同じお話を伺いました。正直、日本のタクシーはLPGで左ハンドル、海外でそのまま売れるのは香港くらいなので、台数は稼げず利益としてはそれほど見込めない(実際、日本のタクシーは全国で20万台強、6-8年で代替として年間3万台前後)。お父様から言われた、タクシーにご恩返しと言う意味、ご自身もトヨタ入社すぐにオートマのトランスミッション開発時に、やはりタクシーに最初に導入して壊れまくったのを直しまくったと。だからやるんだ、と。

これを聞いて感動しない人はいないでしょ。

「日本には、東京には、JPN-TAXIがある。そうなったら素敵ですよね。」

豊田社長からはひとつ、ご提案を頂いた。「川鍋さん、東京のタクシー協会の会長として、東京だけでもいい、ひとつ車の色を統一できませんか。オリンピックのオフィシャルカラーであり、日本の伝統の色である濃藍(こいあい)に。ロンドンにはブラックキャブ、ニューヨークにはイエローキャブがあって、それぞれが都市のアイコンになっているじゃないですか。日本には、東京には、JPN-TAXIがある。そうなったら素敵ですよね」

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それまでもトヨタから車色を統一したいと言う要望は受けていた。各社のオリジナルカラーって全国で1000種類位あって、とてもじゃないけど費用対効果合わない事は左脳では理解。でもね、流石にそれはムリっしょ。だって、祖父の代から日本交通をはじめとする大手4社は黄色に赤いリボンの入った「四社カラー」、東京無線は緑色、チェッカーはオレンジに市松模様と、それぞれにプライドを持って何十年もやっていて。一度、東京のタクシー協会の会議で色の統一を持ち出した時、けんもほろろだったし、自分自身も納得していなかった。その「車色統一」がストン、と腹落ちしたのは、豊田章一郎名誉会長と豊田社長の、タクシーに対する熱い思いに打たれたからなのでした。

ちなみに豊田社長、「川鍋さん、私の子供の頃の夢は「タクシー運転手」になることだったんですよ」と。確かに調べると色々な所で公言されていて、これも私にとっては響いたのでした。

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(今や懐かしの「黒タク」と「黄タク(四社カラー)」。赤いラインは「リボン」で、タクシー車両全体を「お客様へのプレゼント」と見立てている。)

とはいえ、現実問題として、どうやって思い入れの強い各社の先輩経営者のみなさんに、濃藍(こいあい)に統一する事を説得するのか、妙案が思いつかず時はすぎるばかり。

「車色統一」へ、都からの神風。

そんな折、同い年で、議員になる前からのカラオケ仲間である丸川珠代先生から、「ナベさん、都議会の先生方って面識ある?東京オリンピックだから、色々とご一緒できること多いかもよ」とご紹介頂いたのが高島直樹先生。JPN-TAXIがいかに環境に優しいか(CO2排出量100g/kmはセダン車両より42%減少)、いかに車いすユーザーの生活を向上させるか(車いす対応タクシーが現在の数%から一気に30-50%に増える)、だから東京オリンピック・パラリンピックに間に合わせたい、空港についた外国の方が「最初に出会う日本人」であるタクシー乗務員が、誇りを持ってこのJPN-TAXIで出迎える事ができるようにしたい。東京都として社会インフラの整備を圧倒的にスピードアップし、SDGs Goalsの10番「人や国の不平等をなくそう」や13番「気候変動に具体的な対策を」に直結する、と。

「よーし、やってみるか!」と机をドン、と先生が叩かれたのを昨日の事の様に覚えてます。その後、自民・公明・超党派そしてもちろん都民ファーストの先生方、都の各部署の方々そして都知事のそれぞれのご決断が実り、何と1台あたり60万円を1万台分、事務費等合わせて60数億円!しかもその翌年「おかわり」として5,000台分・30数億円と、合計100億円近いご予算を頂くことになり、そのお陰で東京23区では既に「3台に1台」を超え、「2台に1台」に近づきつつあるのです。また、「東京では60万円も出てるのか」というプレッシャー!?で国はもちろん他の自治体も頑張って頂き全国でも10台に1台がJPN-TAXIに。

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(2020年12月、Mobility Technologies調べ。23区以外や個人タクシー含むので東京30%切ってますが。)

他の地域に羨ましがられるほどの予算に恵まれた東京、これを活かさないでは会長の名がすたる!「都の予算を使って導入するJPN-TAXI車両は、オリンピックカラーである濃藍がマストです」と東京の協会で決め、当然日本交通がまず思い入れ強い「四社カラー」にサヨナラを告げて率先垂範、他の会社のみなさんもしっかりと同調頂き、各社のプライドは(車の色でなく)屋根の上の行燈(アンドン)に託すことになった次第。

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 (車色変われどアンドンは不変!)

お陰様で日本交通の直営事業所は、通常6年を超絶前倒して2年ちょっとで全車両JPN-TAXIに

乗務員からは「運転しやすい、疲れない」、お客様からは「車内が広くて背が高い自分も乗りやすい」「座席の足元真ん中に突起がないので奥まで行きやすい」「もうJPN-TAXIにしか乗りたくない」など、大好評中の大好評を頂いています(グループ会社でまだ少し残っているセダンも鋭意代替え中!)

唯一かつ最後の「喉に引っかかった小骨」、車いす乗降。

JPN-TAXIについて唯一、車いすの乗り降りだけは、、、かなり良くなったものの、今でも「喉に引っかかった小骨」状態でして。助手席をたたみ、お客様の座席を上げ、トランクにあるスロープをスライドドアに設置、、、「トランスフォーマーかいっ」と思うほど複雑な訳で。

早速のマイナーチェンジでかなり改善し、トヨタの皆様のご努力には感謝。それでも、どうしても日々の運行ではタクシー乗務員に負担がかかってしまう。もちろん、そもそも乗務員の資格を取る過程に車いす対応が盛り込まれ、介護・福祉タクシーの第一人者・宮園自動車さんをはじめ、各社がこれまでにない次元でトレーニングを重ね、チェッカーさんでは「車いす乗降コンテスト」も開いているほど。タクシー業界も頑張りますので、トヨタさん、引き続きの改良と、更なる次世代車両では何卒、もっと簡単な機構での開発を切にお願いいたします(汗)

いまできるカイゼンとして、タクシー配車アプリ「GO」で「車いす対応車両」を指定できる様にしました。車両のみならず、対応を苦にしない乗務員さんがマッチングされますので、車いすの方におかれましてはぜひ一度お試し頂ければ幸いです。

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そして救われた、タクシー乗務員の血と汗と涙。

とにかく素敵なJPN-TAXI、タクシー屋3代目として一番嬉しかったのは何といっても「衝突防止ブレーキ」、しかもオプションでなく標準装備

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真面目で、家で待つ妻子のために、眠い目をこすりながら「あと1本、、、」と頑張るお父さん。そのちょっとした無理に悪魔がささやき、、、ドン!と追突(涙)してしまう、というやるせない事故が、衝突防止ブレーキによってどれだけ救われた事か!実際に日本交通では追突事故が半減し、起きてしまった事故も以前より浅く済むようになってます。タクシー乗務員さんたちの血と汗と涙が、これでどれだけ助けられたことか!これぞ、テクノロジーが人を救う、トヨタの掲げる自動運転「チームメート」コンセプトそのもの。もはやここまで書いて涙で画面が見えません、、、本当にありがたいです!

まとめ:「三足の草鞋」。

という訳で、私に与えられた「三足のワラジ」を駆使して、JPN-TAXI普及に邁進してきた「まとめ」がこのチャート。

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出だしは真ん中、タクシー会社の日本交通として、JPN-TAXIが出る前は色々と意見を出しながら、そして発売後は兎に角、買いまくる。初号機なので「バグ出し済んでから」と尻込みしたり、「早く中古で売ってね」と言ってくるタクシー会社、数知れず(汗)そして実際に車いす乗降がマイナーチェンジで大幅改善されるという「えーっそりゃないよ」的なものもありましたが、、、それも含めて業界リーダーの役目、6年の代替サイクルという原則を軽やかに「無視」して数千台を前倒し代替。「買いまくる」事で勢いをつける。初速大事。

次に、協会長として、政治・行政の応援者の皆様に、JPN-TAXIがいかに素晴らしいか、タクシー産業の「進化」を体現しているか、力説に次ぐ力説。ついては東京、オリンピックそして日本の発展のために、何卒資金的な後押しを、とお願いする。実際に国から、そして前述の都から、それぞれ多大なご予算をいただけた。物事、先陣きって勢いを出せば、他府県の予算の後押しにもつながる。「最初のひと転がり」を作る。ねじ込む。チカラワザ上等。

そして最後に、Mobility Technologiesとして、圧倒的なテクノロジーを搭載した新タクシーアプリ「GO」で、車いすユーザーが車イス対応可能な車両と、車両だけでなく車イス対応に前向きな乗務員さんまでもマッチングできるようにする。言うは易し、単純に見えますが、多くのエンジニア、プロダクトマネージャー、セールス等、そしてタクシー会社の乗務員はもちろん職員さん達の努力あってこそ。


ふぅ、だいぶ書けたので、これで終わります。

このタイミングで、JPN-TAXIと言う「奇跡」に恵まれたタクシー産業の「幸運」を噛み締めながら!


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