濱口秀司のBTC理論〜イノベーションをデザインする汎用フレームワーク
「何を新しくすればイノベーティブになるのか?」そんな疑問に答えてくれるのが、濱口秀司氏のBTC理論です。濱口秀司氏はイノベーションを起こすべき場所をBusiness(ビジネスモデル), Technology(テクノロジー), Consumer experience(消費者体験)の3分野であるとしています。
私の中で、この「イノベーションのBTC」は「マーケティングの3C」並みに使用頻度の高いフレームワークです。非常に使い勝手がよく、新規ビシネスを考える際は、必ずこのフレームワークを用いて見直すようにしています。本稿では、このBTC理論について紹介したいと思います。
BTC理論とは
イノベーションを起こすべき3つの領域は、Business(ビジネスモデル), Technology(テクノロジー), Consumer experience(消費者体験)だと濱口氏は述べておられます。私はこれをBTC理論と呼んでいます。
1. Business(ビジネスモデル)
「誰に何をどう売るか。どうやって稼ぐか。」という事業構造と事業戦略そのものを示します。事業コンセプトがここに属します。
2. Technology(テクノロジー)
製品/サービス、その提供方法、生産方式など、技術的要素が絡むもの全般を示します。技術は、事業コンセプトを実現する手段です。
3. Consumer experience(消費者体験)
製品/サービスを使用する人々の体験を指します。製品/サービスを提供した結果、何がどう変わるのか、顧客のメリットを示します。消費者体験は、事業コンセプトが実現した結果です。
イノベーションを起こす場所は、BTCのどれか一つだけでなく、複数を組み合わせることでより新規性が出るようになります。アイデアに新規性が足りないなと感じた場合は、BTCの観点からアイデアを見直し、それぞれの分野で新規性があるのかないのか、そして新規性を足す必要があるのかないのか、を考え直すことができます。
BTC理論の勘所
BとTとCの関係性は、下図のような関係だと理解しています。
Bは、事業コンセプトそのものです。ビジネスモデルは、事業コンセプトを具現化するための模式図です。
Tは、事業コンセプトを実現するための手段です。
Cは、事業コンセプトを実現した結果です。
重要なのは、イノベーションをデザインする際に、顧客起点の発想、つまりC(結果)→ B(コンセプト) →T(手段)の順番を忘れないようにすることです。
Tの活用(保有技術の展開)は、シーズ発信のアイデアとして一般的ですが、市場ニーズと合致せずに上手く行かないことが多々あります。技術者のアイデアは、Tに偏りがちになることが多いです。一方、ビジネスサイドの人間(特にMBAなどで知識としてビジネス理論をよく学んでいる人)は、B(ビジネスモデルの革新)にこだわりがちです。Bはあくまでも、Cを実現する手段でしかないことを強く認識しておかないとビジネスモデルばかり考えてしまい、結果的に何がしたいのかよくわからなくなることがあります。
新規ビジネスのアイデアを考える際によくある問題として、考えれば考えるほどアイデアが拡散し、焦点がブレてしまうことが往々にしてあります。しかし、常に顧客起点の発想に立ち返ること、つまり、C(結果)→ B(コンセプト) →T(手段)の順番を忘れないようにすることで焦点がぼやけるのを防ぐことができます。この優先順位を守ることで、全体に芯の通ったアイデアとなり、BTCにも一貫性のある骨太のアイデアを作ることができます。
イノベーションの本質は、C(消費者体験)の革新です。B(ビジネスモデル)とT(テクノロジー)は、イノベーションを起こすための方法論の一つと捉えることで、アイデア出しの途中で本質的な議論からブレてしまうことを避けることができると思います。
BTCフレームワーク、ぜひ活用してみてください。
もっと濱口理論を学びたい方へ
もっと濱口理論について学びたい方には「SHIFT:イノベーションの作法」という論文集が販売されています。
一方、濱口秀司氏の思考法の多くは、実はWeb上でのインタビュー記事などで公開されています。濱口秀司氏の思考法が学べる厳選リンク集を以下のnoteにまとめたので、グーグルで検索して同じ記事を探す時間をSaveし、その時間を学びに当てたい方はご参考ください。
読むたびに気づきがあるので、今でも定期的にリンク集は見直しています。