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【考察】事業開発とは?|Wikipedia翻訳から考える事業開発の定義

事業開発(Business Development)のWikipedia記事(日本語)がなかったのでWikipedia英語版の記事を日本語訳することで、事業開発とは何かを考えてみました。

初回更新:2020/9/6

出所:Wikipedia(https://en.wikipedia.org/wiki/Business_development)

事業開発(Business Development)

事業開発とは、組織内および組織間における事業成長機会を実現するためのタスクとプロセスのことである。事業開発は、事業、商取引、組織論と関連し、顧客、市場、関係者から組織に長期的な価値を生み出す行為である。組織の大小を問わず、また営利か非営利かに関わらず、事業を発展させる行為は、事業開発である。事業開発は、組織内部もしくは外部の事業開発コンサルタントによって行われる。外部人材の活用による事業開発は、政府のプランニングシステムによって行われる場合もある。レピュテーションマネジメント(評判をよくすること)も事業開発を助けるとされている。

概要

事業開発に関する学術的な研究はまだ少ないが、事業開発は様々なプロジェクト、特定の成長の形態、組織単位、行動、実行などに関連するコンセプトである。Sorensenは、世界中の成功したテック企業の会長、経営陣、事業開発責任者、ベンチャーキャピタリストから洞察を得て、これらの異なる観点の統合を試みている。Palgrave Encyclopedia of Strategic Managementでは事業開発について以下の様に定義している。

“事業開発は、分析した成長機会に対する準備とその実行の支援とモニタリングに関するタスクとプロセスによって定義されるものだ。しかし、戦略の意思決定とその実行は対象外である”

背景

実際、事業開発という言葉は様々な意味を持つ。事業開発者の仕事は、特定の産業や国に限定されるものではなく、ITプログラマー、エンジニア、マーケター、アカウトマネージャー、セールス、カスタマーサクセスなどと関連する。そのため、事業開発特有の特徴や、事業開発の内のどの業務が利益に直結しているかを特定することは困難である。

最近の事業開発に関する研究で明らかになってきたのは、急速な事業拡大期における役割と、イノベーションのマネージメントプロセスに特有の役割である。事業開発の役割は、製薬やバイオ産業の高度なテック企業で、より明確化されてきている。

専門性

事業開発者は、成長機会に関する分析と準備を経営陣に提供し、その実行を支援しモニタリングすることが仕事である。事業開発の計画と実行の段階において、研究開発、生産、マーケティング、セールスなどの専門家と協力し、彼らの知識と洞察を得て統合することで、組織の成長機会の実行を確実にする。事業開発者の武器は、マネタイズのためのビジネスモデルと、ビジネスプランを実行するための分析データとロードマップである。

事業開発の専門家は、セールス、ファイナンシャルサービス、投資銀行、コンサルタントなどのバックグラウンドを持つことが多いが、オペレーションマネジメントなどの役割から叩き上げで事業開発者になるものもいる。事業開発の専門家のスキルセットと経験は、主に以下の組み合わせから成る。

・セールス
・ファイナンス
・マーケティング
・M&A
・法務
・戦略コンサルタント

事業開発で潜在顧客の開発を 始めるには、"パイプライン"の考え方が役立つ。事業開発者は、商談の可能性と期待数量(商談金額)を考慮し、潜在顧客をパイプラインの中に振り分ける。管理者は、パイプラインの案件の総量を把握することで、新規案件獲得の行動量を管理できる。企業は、パイプライン管理のために顧客管理ツールやデータベースを利用することが多い。事業開発の専門家は営業管理のための情報を得るためにデータを分析することもあるが、情報管理には以下のようなものが含まれる。

・受注/失注の理由
・案件の進捗状況
・パフォーマンスの高い営業員/営業チャネル
・サービス/プロダクトの販売量

洗練された大企業、特にテクノロジー関連企業では、事業開発という言葉が、第三者との戦略的パートナーシップとの関連で語られることがある。この場合、企業はお互いの専門知識、技術、特許などを活用し、研究開発や市場分析を行い、新規事業や新製品を市場投入する力を得ることができる。事業開発は、戦略的なビジネスプランの実行に注力し、エクイティファイナス、技術、製品、企業のM&Aと再編、そして戦略的パートナーシップを活用する。

事業開発が、マーケティング戦術の一部だとも考えられることもある。その目的は、ブランディング、市場の拡大、新規ユーザーの獲得、認知拡大である。しかし、事業開発の主たる役割は、適切な顧客に販売するためにパートナーを活用することである。長期的な価値を生み出すための案件を創出することが重要であり、強固な関係性のパートナーシップが築かれることが、事業開発の成功の鍵である。

事業開発と倫理

促進された開発(グローバル企業の開発倫理)

事業開発は、外部要因に影響を受ける。”プランニングシステム”はビジネスを規制するために作られた仕組みである。多くの場合、ビジネスで生き残るためには、規制機関が必要だと考える。ビジネスセクションが存在し、発展途上国で倫理的な事業発展を促進する。特に2000年代初頭には、発展途上国でのビジネスを支援するために、ビジネス倫理が盛んに叫ばれるようになった。しかし、それは批判を受け、彼らは多くの人が発展することを助けるようなビジネスの支援に焦点を移した。これらの政策によって、人々の生活の質は高まったが、政策が変更されたことで被害を被ったグループもある。そこで、ビジネス倫理家たちは、新しい政策を倫理的な方法で浸透させることを目的に、基本的な必要性を強調するための費用対効果分析を生み出した。さらに懸念がさらに大きくなったことで、ビジネス倫理家たちは、新たに開発倫理と呼ばれる分野を生み出した。今では、単にビジネスの発展を支援するだけでなく、グローバル企業は、基本的人権を考慮し始めている。これらは、法律の整備が未発達な地域で重要である。昨今の開発ポリシーは、Penzが生み出した基準(安全、エンパワーメント、権利、エクイティ、尊厳、文化的自由)に準拠しなくてはいけない。事業開発を促進するために人々の基本的人権を守らなければいけないという考えは、昨今の中国の急速な発展の中でも見られた。ここ数十年で実施された政策はこれらの開発と一致する。1980年代には、政府の政策は識字率と教育を促進することであった。続く数十年は、健康の意味がより重要になった。これらの発展は、もともと金銭的な資本としてではなく、人的な資本として認識されていた。労働者がスキルを獲得し仕事場で力を発揮するようになれば、企業はより早く発展することができた。

よい評判の形成(ステイクホルダーとの関係性)

企業は倫理的問題により敏感になるにつれ、世間の厳しい目を避けるために自社の行動を監視するようになり、企業の評判がより大きな関心ごとになってきた。倫理的ビジネスは評判と緊密な関係にあり、企業がよい評判を得たいのであれば倫理的ガイドラインに従うことは必須である。実際、急速に発展し成功するビジネスは、誠実さ、重要性、全ての関係者への誠意を示す傾向がある。企業が”倫理的である”と認識されるためには、顧客のニーズに答えることを常に肝に命じておく必要がある。これが、顧客のリピートや利益率UPにつながる。サプライヤーからよい評判を得るためには、ビジネスで公正なスタンスを取り、長期的関係性を発展させなければならない。こうした関係性は、両者にとって相互にメリットのあるビジネスにつながる。従業員には、興味を示し、チームワークを促進し、厳格な競争を推進しないことが必要である。こうすることで、企業は最も忠誠心の高く、働き者の従業員をできるだけ長く雇用することができるようになる。企業が各関係者それぞれと倫理的に強い関係性を発展できると、さらなる発展が可能になる。これは返報性の法則に基づいている。複数のグループ間で社会的変化がおきるためには、相互に利益のある行動によって信頼関係が築かれる必要がある。これらは、GTSMとTSEのテクノロジー産業で実施されたアンケート研究の結果からも支持される。企業がビジネス倫理を実行し、事業開発を推進するためには、周囲との良好な関係性構築が必須である。昨今の環境悪化への懸念が増すにつれ、ステイクホルダーは彼らの関係性にダメージを与えるリスクのある、資源保護と環境負荷低減の問題により深く関わるようになっている。

まとめと感想

・事業開発の定義において、既存ビジネスのオペレーションと新領域での成長を明確に業務として分割し、事業開発は後者(新領域での成長)のみを対象とする、というのがいかにもアメリカ的な考えだと思いました。そのためか、事業開発は専門家に任せるものだという主張を感じました。

・事業開発者は、実行と戦略の意思決定には関与しない(コンサルタントとしてアドバイスが仕事)との記載がありました。しかし、日本では事業部門の社員が事業開発も担当することが多いと思われます。日本に限った議論においては、もっと企業内事業開発者に焦点を当てた研究が必要と感じました。

・事業開発と倫理のパートは、途上国開発などの文脈で語られる”Development”の意味が含まれているように感じましたが、学術的な背景知識が乏しいため、よくわからない点がありました。この点は反省です。

もっと学びたい方に

事業開発の範囲をどこに絞るかによって必要なスキルセットは変わってきそうです。仮に、ある事業を成長させる(オーガニックグロースを促進する)ことを「事業開発」と定義するならば、事業戦略、マーケティング、セールス、あたりの知識とスキルが最も重要になってくると思われます。

マーケティング、及び、パイプラインの考え方を学びたい方は、"THE MODEL"がおすすめです。この本は私自身も非常に感銘を受けた本です。これまでBtoBマーケティングの教科書的位置付けの本だと考えていましたが、事業開発にとっても基礎的な概念を抑えるのに役立つ本だということが今回の翻訳を通じてわかりました。

戦略は学ぶことが多すぎますが、個人的には目標設定が最も重要だと考えています。

優れた戦略は、結果的に優れたストーリーになる、ということを理解するためには、名著「ストーリーとしての競争戦略」は、一度は読んでおいて損はないと思います。




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TANAKA ICHIRO / 大企業の事業開発
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