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かなえたい夢「嫁さんと二人で絵本作家」
私と嫁さんは二人合わせてバツ4だ。
そして、
私と嫁さんは二人合わせて6回結婚している。
なにより特異点は私も嫁さんも
「同じ相手と2回結婚」
している事だ。
こんなに離婚届と婚姻届けを無駄遣いし、
落書きだらけの戸籍票をもっている夫婦は
他にはいないだろう。
本当に笑顔の絶えない家族だった。
「あの時」までは。
出会いと別れ 三年後 数年後
出逢ったのは二人とも20代
諸事情で離婚したのは30代前半
別れ際に彼女がくれた
「3年後に迎えに来てね…」という言葉
その言葉を心の支えに新天地で心を無にして働いた。
私に見えている景色はずっとモノクロだった。
3年後の約束の日、
私は彼女のもとへ逢いに行った。
『またあの頃に戻れる』
飛行機の中で色鮮やかな景色を見ながら
そう確信していた。
「子供の生活を変えたくないの・・・。」
「だから・・・。」
彼女は一度決めたら自分の考えを一切曲げない。
私は・・・。
そっと彼女の電話番号を削除した。
帰りの飛行機の窓から見える景色は、
あの時のようにまたモノクロに戻っていた。
数年後のある日、
知らない電話番号から着信があった。
「久しぶり。たいへんな事になったね。
私、震災の行方不明者リストをネットで調べる。
貴方の家族の安否確認の協力がしたいの。」
「・・・。」
いろんな事がありすぎていて
何も言えなかった。
言葉を振り絞って二言三言話をしたが、
何を話したのか今となっては覚えていない。
きっともう電話はかかってこないだろう。
そんな気がした。
貴方の家族か・・・。
「あの時」よりきっと幸せなんだろうな。
君の新しい家族が羨ましい。
通話のあと、彼女の電話番号を着信履歴から消した。
登録しなかった。
できなかった。
縁切
彼女の電話から数年後
私は縁切りで有名な四国の神社を訪ねた。
理由は
「彼女の電話番号を登録しなかった自分」
を
「自分自身が責めはじめた」
から。
何度も同じ夢を見るようになった。
「あの時」の夢だ。
「別れよう、こんな情けない姿もう見せたくない。」
その場面でいつも目が覚めた。
当時の私の1日はいつもこうだった。
「出勤した上司から2時間お説教を受ける」
↓
「疲弊した状態で営業に行く」
↓
「営業を終えて帰社 上司から2時間お説教を受ける」
↓
「事務処理が終わらない為、午前0時を過ぎる」
↓
「深夜に帰宅 嫁さんが自宅で待っている」
↓
「朝5時起床 終わっていない仕事をする為 出勤」
↓
振り出しにもどる
パワハラのループは一年半続いた。
ご主人様のストレス発散の為に毎日鞭で打たれる
首輪で繋がれた子犬のような気分だった。
私は無力だった。
最後は抵抗もできなくなっていた。
日々ふさぎ込んで壊れていく情けない自分。
支えてくれている嫁さんがどんどん疲弊していく。
意味もなく誰かを恨みはじめる。
限界だった。
幸せにすると誓っておいて、
嫁さんを不幸にしている自分が許せなかった。
疲労とストレス、怒りと悲しみ、
恨み辛みは積み重なり
ドス黒い感情の山になって
ガラガラと崩れた
会社から帰宅した私は、
私は嫁さんに別れを切り出した。
「別れよう。こんな情けない姿、もう見せたくない。」
お前は逃げたんだ。
自分から。
都合のいい言い訳を自分自身にして。
夢から覚めた私を
私の心が責め立てる。
私は夢をみるのが怖くなった。
眠りが浅くなり、眠れている実感が無くなった。
医者に通う。
カウンセリングを受ける。
酒に逃げる。
何をしても「あの時」の夢は
少しずつ私を追い詰めた。
少し前まで
忙しい日々がほんの少しだけ、
心の痛みを和らげてくれていた。
忘れられると思っていた。
忘れたと思っていた。
でも根本は何も変わっていなかった。
幸せは自分が当たり前と思っている事が、
「一」つ足りなくなるだけで、
辛いと感じる。
たった「一」つ足りないだけなのに・・・。
「逢いたい」
この辛い自分を幸せにしてくれる
たった「一」つは彼女だった。
でも彼女には新しい家庭があるかもしれない。
あの頃に戻りたい。
でも戻れない・・・。
だめだ・・・
後悔が積み重なった分だけ、
「あの時」よりも辛い。
私は生まれて初めて本気で神仏に縋った。
うそでしょ?
神社を訪れた日の翌日
私は生まれ変わった気分だった。
今までお祓いなんて信じてた事はなかった。
すがすがしい心。迷いは消えた気がした。
もう2度と彼女と逢わない。
私は生まれ変わった。
そう思った。
神社を訪れた日から数日後
知らない番号から着信があった。
電話に出ると「彼女」だった。
なんで?
私は固まった。
うそでしょ?
心臓が苦しくて痛かった。
彼女「久しぶり。元気だった?」
当たり障りのない会話
私「何の用?」
必死に感情を押し殺して
冷静なフリをしてこたえた。
すこしの沈黙
意を決したように彼女から
「あなたが死ぬ夢を見た。
二度と会えないような気がした。」
「すごい胸騒ぎがして・・・。」
「居ても立っても居られなくて電話をした。」
「元気ならいいの・・・。」
長い長い沈黙
私「一度…会えない…かな。」
自分で自分の言葉に驚く。
完全に無意識だった。
思いもよらなかった。
心は彼女を拒否していた。
精神は彼女に怯えていた。
でも体は正直だった。
堰を切ったように彼女との会話が始まった。
数日後、私は飛行機で彼女に会いに行った。
彼女は「2度目の彼女」になった。
半年後
私は息子に手紙を送った。
手紙を読んだ息子は泣いてくれたと聞いた。
一年後
私はもう一組の両親に2度目の挨拶をした
両親は「おかえり」と迎えてくれた。
息子は2度目の息子になり
彼女は「2度目の嫁さん」になった。
かなえたい夢
「嫁さんと二人で絵本作家」
私はnoteに自分の体験をコミカルに書いている。
嫁さんは隣で笑いながら絵を描いてくれている。
未来のある子供達に向けて
私が心があたたかくなるお話を書き
嫁さんが優しい絵を描く
想像しただけで未来は明るく楽しい
私たちがつくりたい絵本は
ありふれた普通の絵本
私たちがつくった
何気ないありふれた普通のお話が
読んでくれた子供達の心の隙間を
気がつかないうちに埋めている
辛いを幸せへと変えれる
きっかけの「一」つに
なれたらいいなぁ
そう想っている。
そんなありふれた普通の絵本をつくりたい
それが私の
「かなえたい夢」
です。
私の愛も重かったけど
嫁さんの愛はもっと重かったって話さ
私、嫁さんの生霊に監視されてたもん(笑)
いつも笑顔でファンキーに!!