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ひびきあい 窓【総合文芸&研究ノート】より
WTOルール権威の揺らぎ・・・3
ロシアのウクライナ侵攻に対峙して、日米欧の経済制裁には30国が加わってドル決済や金融資産の停止、凍結、さらにロシア産の原油の禁輸など多岐にわたる制裁措置をしているが実際には米国の意思決定への同調戦略であり、換言すれば、米国主体の戦略統制的のルール適用であると言ってよい。本来、各国が独自に判断すべきところのことであり、独自の国家戦略の行為に委ねられるべき側面は多い。しかしロシアの平和破壊と侵略への抑止であり、各国の大多数は本来、平和の共有観を欲求しているのは間違いないのである。すなわち国際ルールというより緊急な米国流の主導ルールに呼応させたと言えよう。永久拒否権を保持する、ロシアが強引な平和の秩序破壊に対峙する正当性と認識しての経済制裁ゆえ、是認もしくは暗黙の了解をしているに違いない。
平和であれば、米国流は自由貿易を標榜するWTOの協定違反として非難されるべきである。
しかし、米国も元来、突出した自国主義でありその表れに通商法301条というまさに他国にとって悪名高い制裁条項をもって他国に対応する。事実、WTO機関構築の筆頭国でありながらWTOを無視した協定破りとさえ言えることを他国との交易ルールを構築するからである。
米国とは歴史的にもそのような国際政策を押し付けて来たことが多い。第2次世界大戦前の国際連盟の設立の主導国家でありながら(米国ウイルソン大統領が主たる提唱者でありながら)国際連盟に参加しなかった。又、近々ではオバマ前大統領主導の環太平洋の国際交易の連盟化を米国の主体的提唱で環太平洋諸国との協定制約を狙っていたにもかかわらずTPPに自ら加盟しなかったなど、やはり常時、米国のあらゆる動向の表裏を冷徹に注視・加味し読み取って諸国は対応しなければならない。
301条項適用は米国の判断で一方的に不公正であると決定すれば、そう見なされた国は一方的に強圧的制裁をされる事になっている。米国も自国にとって不利有利のみを考えて、これまで他国との交易上多様な一方的自国主義の制約法を制定してきたのである。言わばWTO思想やぶりと言ってもよい。
このように言い切り、断罪したくなるけれど国際政治・外交政策にはつきものであり、特に国際外交は魑魅魍魎の世界だと言われる所以でもある。