未日本語化の傑作ゲーム紹介#2 - 『Tales from the Borderlands』| 森田一郎の毎日戯文 #142
本日は今日届いた荷重ブランケットが重すぎてお布団から出られないため、一回休みとします
…とでも言うと思ったか!!!
ドーモ、森田一郎です。本日は日本語化されていない『Tales from the Borderlands』のお話をします。同作からBGMをどうぞ。
『ボーダーランズ』といえば、シューター/ハクスラファンにとっては割とお馴染みのフランチャイズなのではないでしょうか。筆者森田も初代『ボーダーランズ』が出た当初は友達と一緒にパンドラの荒野に繰り出したものです。『ボーダーランズ2』もソロながら楽しく遊び、3は、えーと、いつかまた遊ぶ時が来ると思います。たぶん。
さて、メインシリーズも一通り遊んでいる森田でありますが、『ボーダーランズ』フランチャイズでどれが一番好き?と聞かれたら『Tales from the Borderlands』と答えるくらい、ADVスピンオフである同作を気に入っています。もちろん、メインシリーズが劣っているということではありません。
パンドラという惑星の文化、シリーズ独特のねじれたシニカルなユーモアなどを、私が個人的に一番鮮烈に感じたのが『Tales from the Borderlands』だったのでした。
『Tales from the Borderlands』を制作したのは、今は(実質)解散しているTelltale Gamesというデベロッパーです。こちらの会社はアメコミ原作のADV『The Wolf Among Us(超面白い)』や、人気ドラマ『ウォーキング・デッド』のゲーム作品である『The Walking Dead: A Telltale Games Series』シリーズなどを手がけています。こちらの作品も超ハイパード傑作でかつ、日本語版がリリースされていない(部分的にされていた気もするけど今調べる元気がない)作品なので、また今度この連載で紹介しようと思います。
さて、何が申し上げたいかというと、Telltale Gamesはめちゃくちゃに良いアドベンチャーゲームを作るということです。この会社はどの作品でも基本の仕組みは一貫しており、画面内の気になるところをクリックして調査したりアイテムを回収したりしていくいわゆる「ポイントアンドクリック型」といわれるゲーム形態と、時には慎重に、あるいは即座に判断を下さねばならないダイアログシステムの組み合わせで進行します。あと、たまにスパイス的に入ってくるシューティングパートとかもあったり。
同スタジオの作品はADVゲームながら緊迫感を演出するのが非常に上手です。そして、プレイヤーの選択によってはレギュラー格のキャラクターが一発退場したりします。大筋の物語の良さと、そういったプレイヤーに「責任」をもたせるゲームプレイのバランスが絶妙で、「この選択は取り返しがつかないかも」と思いつつも勇気を持って先に進ませてくれるデザインとなっております。
今回紹介している『Tales from the Borderlands』についても同様で、なんなら5つのエピソードを通して歩いてきたプレイヤーの軌跡や、仲間と築いた絆がクライマックスに直影響するのでかなりグッと来ます。まるで人生シミュレーター。逆に変なプレイをすると「私、人望ねえなあ」というダメージを食らうこともあります。
とにかくユーモアのセンスも最高なのですけれども、この点についてはかなりハイコンテクストな英文が絡んできたりするので、慣れた方でないとついていくのが難しいとは思われます。その分キャラクターの書き込みは抜群で、フランチャイズで好きなキャラを挙げるとまず『Tales from the Borderlands』のキャラクターが出てきます。繰り返しますが、これは原作のキャラが魅力的でないわけではありません。同作のキャラクターたちがあまりにも親しみやすすぎるのです。言うなれば「苦楽を共にした仲間」という感覚です。
いやマジでいいんだ。主人公がダメなんだけどいいやつなんだよ。親友もダメなやつだけどいいやつなんだよ。しかもダメ主人公にシリーズお馴染みのカリスマヴィラン「ハンサム・ジャック」が取り憑いているという設定もかなりポイントが高い。この設定も物語の要所でめちゃくちゃしっかり振るわれます。
さて、ベタボメしつつも日本語版がなく、なおかつ文章量や素早い英文解読が求められる『Tales from the Borderlands』。「そんなもんオレっちに紹介してどうしよってんだ!」という罵声が聞こえてくるので、最後にちょっとだけ希望が見えるお話をしたいと思います。
まず、Telltale Games自体は実を言えば存続しています。現在はLCG Entertainmentという企業に買収されており、「バットマン」などのADVゲームを制作中と報じられています。なぜ(実質)解散と申しましたかというと、元Telltale Gamesのメンバーがどの程度この新Telltale Gamesに編入されているかはいまひとつ不透明であり、新作についても動きが見えてこない点が理由です。
しかし、『Tales from the Borderlands』については今年動きがありました。オリジナル版リリースから約6年を経た今年、Steamや各プラットフォームでパブリッシャー2Kから再リリースされたのです。
これを理由に「日本語版が出るかも」と期待するのは早計であるものの、少なくとも作品としてバリューがあると大手パブリッシャーが評価している点は希望を持てる要素ではあります。
いつか日本の多くのプレイヤーがこの傑作をプレイできる日が来ることを心から願いつつ、今日は筆を起きます。
また明日。