クルマの静電気を取り除くと、燃費が良くなる理由を調べてみた
トヨタ自動車が約6年前に発表した特許「アルミテープ(除電装置)を車体の様々な場所に貼ると、静電気を除去でき、車体の操安性や、燃費を改善する」。不思議なこの理屈を調べた内容をメモします。
帯電するようになった背景
クルマが走ることで、空気と摩擦し、静電気が発生します。昔のクルマは金属でできていたため、そもそも帯電し辛く、タイヤを通ってアースされ放電されていました。
近年の自動車は樹脂パーツを多用するようになり、静電気の逃げ場が無くなりプラスに帯電しやすくなりました。
加えて、近年のタイヤは、転がり抵抗とウェット性能の両立のため、補強剤としてカーボンブラック(導電性のある)だけでなく、シリカ(絶縁体)を混ぜるようになり、アースされ辛くなっている状況があります。
このように、近年のクルマは静電気が溜まりやすく、放電しにくい状況になっているようです。
なお、このようなシリカ配合量の多い低燃費タイヤには、対策のため導電スリッドを設けて放電できるようにしており、静電気が全く放電できないわ訳ではありません。
また、導電スリットがない場合には、車体のコントローラユニットが異常動作を起こすほどの静電気が帯電するそうです。
帯電すると起きること
すると、プラスに帯電した物体は、埃を引き寄せたり、空気を退けたり、コンピュータの誤作動を招いたり、オイルの粘度が硬くなるなどの現象を引き起こす恐れがあります。(トヨタ特許記載)
空気を退ける理由は、境界層剥離という現象。車体部品がプラスに帯電すると、空気中にあるプラスの電荷とお互いに反発し合い、車体から少し離れたところを空気が通ります。剥離すると、綺麗に車体に沿って空気が流れている場合に比べて、空気が乱れ、車体がブレやすくなります。
オイルの粘度が硬くなる理由は、分かりませんでした。帯電する理由は、記載がありました。
空気と同様にオイルが流れる配管の壁と、オイルの接触する界面において、正負どちらかのイオンが壁面に吸着されて、オイルには壁面と逆極性の電荷が残ります。これにより、配管の壁とオイルの双方が帯電します。これを流動帯電現象と呼ぶようです。
帯電する理屈までは分かったのですが、帯電することで粘度が変化する理由までは分かりませんでした。オイルフィルタはものすごく帯電しそうですね。
そこで、タイヤでアースする以外の方法で静電気を取り除きたい訳です。
ここまでの理由を見ると、このままでは、少なからず走行実験をする度に、静電気の帯電状態によって試験結果がブレるはずです。洗車した直後は除電されて調子が良いが、しばらく走行し帯電すると燃費が悪化すると言った具合です。
除電する仕組み
今回の特許ではアルミテープを除電器として使います。帯電した物体に貼られたアルミテープの電圧が帯電と共に上昇し、ある電圧に達すると、周囲の空気の絶縁が失われ、放電が始まる現象(コロナ放電)を利用するようです。
これは、電荷は尖った場所に集まる性質があるため、プラスの電荷がアルミテープに集まってきます。すると、空気中に漂っているマイナスの電荷が引き寄せられて集まってきます。この電荷がある一定以上になると、一気にアルミテープより空気中に放電され、アルミテープのプラスの電荷が大気中に開放されます。これにより、”除電”される仕組みです。
除電されると
埃を引き寄せ辛くなり、車体表面に汚れが付き辛くなる
空気が綺麗に車体表面に沿って流れるため、空気の乱れが少なくなり、操安性が改善。空気抵抗が減り、速度域に応じて燃費改善(速度が高いほど、燃費に影響の内空気抵抗が占める割合は変化する)
コントローラユニット間の通信が阻害されていた場合には、パケットエラーレート?が改善される。ソフトウェアが正しく振る舞えるようになる。
センサにノイズが載っていた場合には、ノイズの少ない値に対してフィードバック制御をかけられる(制御が安定する)
これらの効果が見込まれます。
感想
トヨタから発表された当初は、ただ「不思議」な現象でオカルトと思っていました。その後、理論は無視して貼って体験してみると確かに変わる。
トヨタの特許は、その後も部位別に出願され、読んでいく内に、「そこまで変なことを言っている訳では無さそうだ?」となり、現在の大まかな理解をnoteを書くに至りました。
情報工学専攻で、流体力学や、電気は遠い分野でしたが、好きなクルマを通して再び学ぶ機会に恵まれて楽しかったです。誤りがありましたら、優しく教えてください。