#8 親孝行は、親不孝に気づくことから始まる
「親孝行をしなさい」
「親孝行したい時には親はなし」
非常によく聞く言葉ですが、具体的に親孝行とは、どのようなものでしょうか。
また、どうすれば、親孝行できるのでしょうか。
今回は親孝行について考えていきたいと思います。
1.親孝行とは何か
親孝行とは、何でしょうか。
Wikipediaでは、
孝とは、儒教における伝統的徳目と一つで子供が自身の親を敬い支えるべしと説く道徳的概念である。
Wikipediaより
とあります。
また、『大辞林』第一版(私が持ってるのがこれしかないです…)では、
親を大切にすること。また、そのさま。
『大辞林』第一版 p367
とあります。
つまり、親孝行とは、儒教で、子供が親を敬い支えるべきであるという道徳から来たもので、親を大切にすることであると考えられます。
親孝行のイメージは、親にプレゼントを贈ったり、親との会話を増やしたり、実家を掃除したりすることなどが思い浮かびますが、親を大切にすることと考えると納得がいきます。
2.天理教における親孝行
次に、天理教における親孝行は、どのようにとらえられているのでしょうか。
私が、親孝行と聞いて思い浮かぶのは、『逸話篇』の「十六 子供が親のために」です。
十六 子供が親のために
桝井伊三郎の母キクが病気になり、次第に重く、危篤の容態になって来たので、伊三郎は夜の明けるのを待ちかねて、伊豆七条村を出発し、五十町の道のりを歩いてお屋敷に帰り、教祖にお目通りさせて頂いて、「母親の身上の患いを、どうかお救け下さいませ。」と、お願いすると、教祖は、
「伊三郎さん、せっかくやけれども、身上救からんで。」
と、仰せになった。これを承って、他ならぬ教祖の仰せであるから、伊三郎は、「さようでございますか。」と言って、そのまま御前を引き下がって、家へ帰って来た。が、家へ着いて、目の前に、病気で苦しんでいる母親の姿を見ていると、心が変わって来て、「ああ、どうでも救けてもらいたいなあ。」という気持ちで一杯になって来た。
それで、再びお屋敷へ帰って、「どうかお願いです。ならん中を救けて頂きとうございます。」と願うと、教祖は、重ねて、
「伊三郎さん、気の毒やけれども、救からん。」
と仰せになった。教祖に、こう仰せ頂くと、伊三郎は、「ああ、やむをえない。」と、その時は得心した。が、家にもどって、苦しみ悩んでいる母親の姿を見た時、子供としてジッとしていられなくなった。
又、トボトボと五十町の道のりを歩いて、お屋敷へ着いた時には、もう、夜になっていた。教祖は、もう、お寝みになった、と聞いたのに、更にお願いをした。「ならん中でございましょうが、何とか、お救け頂きとうございます。」と。すると、教祖は、
「救からんものを、何でもと言うて、子供が親のために運ぶ心、これが真実やがな。真実なら神が受け取る。」
と、仰せ下された。
この有難いお言葉を頂戴して、キクは、救からん命を救けて頂き、八十八才まで長命させて頂いた。
『稿本天理教教祖伝逸話篇』p22~24
この話の中で、教祖は、
「救からんものを、何でもと言うて、子供が親のために運ぶ心、これが真実やがな。真実なら神が受け取る。」
と、言われています。親のために何でもと運ぶ心が真実であり、神様が受け取って下さると言われています。
何か身上事情があったときは、この心が大切になると思いますが、普段から、親孝行していくにはどうすればいいでしょうか。
3.親不孝の自覚
普段から、親孝行をするためにはどうすればよいのでしょうか。
ある先生から聞かせて頂いたお話に、
親孝行をするためには、親不孝の自覚が必要。
親不孝とは、親が子供に対して心を尽くしてくれているということに気づかないこと。そのことに気づくことが親不孝の自覚である。
と、言われていました。
子供は、自分一人では生きていけません。
親に一から十までお世話をしてもらって成長していきます。
また、信仰があれば、子供が身上事情になったときに、親は一生懸命子供が御守護いただけるように、親神様、教祖にお願いし、心定めをし、実行してくれていると思います。
しかし、子供は親が子供のために心を尽くしてくれていることはわからないのです。
そこに気づかない状態が親不孝であり、そこに気づくことが、親不孝の自覚であります。
親不孝の自覚ができて初めて親孝行ができると考えます。
そして、我々人間の親である親神様、教祖も同じだと思います。
人間の体は親神様からのかりもので、親神様の十全の守護を受けて、生きることができています。
また、人間に成人してほしいという一心で、身上事情によって導いて下さるのです。
その親心に気づくことが、かしものかりものが分かるということに繋がると思います。
親孝行するには、親不孝の自覚が大切であると考えます。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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