【一体何が違う?】ラクスとSansan時価総額に2倍の差、ナゼ?
企業データが使えるノート監修の「SaaS初学者向け企画」第一弾、新入社員・転職者向けSaaS入門-KPI編-、お読みいただきましたか?
今回は、SaaS企業の「バリュエーション」に注目した記事です。
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5月も終わり、決算発表が出揃いましたね。企業データが使えるnoteでも「SaaS上場企業 ARRランキング」 の最新版が更新されました。
国内上場企業で初めてARR100億円に到達し、これまでトップを走っていたSansan。主力5プロダクトで目下、急成長中のラクス。両社ARRは230億円を超える水準となりました。
ARRが肩を並べる一方で、実は、両者の時価総額にはおよそ2倍の差があるってご存じでしたか?
今回もそのワケをスタートアップコンテンツプロデューサーのいちのせが「企業データが使えるノート」アナリスト早船さんと探っていきます!
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いちのせ:最新の決算資料を見ていくとラクスもSansanもARR200億円の大台を突破して絶好調ですね。
ただ、私、気付いたことがあります。Sansanとラクスの時価総額には2倍近くの差がありますよね?
前回のKPIのお話では、「ARRはSaaS企業の事業規模を示す」と聞いていたので、この開きに驚きました。
早船:前回、ARRはSaaS企業にとって、もっとも基本的で重要なKPIとお伝えしました。株式市場で時価総額(株価)が形成される際は、その時点のARR以外にも様々な要素が考慮されています。
これは「バリュエーション」と呼ばれる企業価値の測り方から読み解くことが可能です。今回は「ARRが同じでも、なぜ時価総額の差が出るのか」といった観点から、この「バリュエーション」について学んでいきたいと思います。
いちのせ:ARR以外でSaaS企業の価値を決めるものってなんだろう、、
SaaS企業の時価総額は「成長率」「利益(への信頼)」「TAM(市場規模)」がポイント
――― ポイント① 「成長率」
早船:現時点ではARRに差のないラクスとSansan、どうして時価総額に大きな差があると思いますか?
いちのせ:これまでARRランキングでトップを走っていたSansanに対して、ラクスが追い付いていますよね。成長の勢いの違いが時価総額の差を生んだのでしょうか?
早船:いいですね。こちらのグラフを見てください。これは、SansanとラクスのARRを時系列で示したものです。
2020年11月では2社のARRは20億円の差がありましたが、現在では、その差が1億円に縮まっています。
これは、ラクスがより一層成長スピードが早いためで、直近決算でもSansanの前年同期比成長率は+24%に対し、ラクスは+31.6%と高成長を見せています。
製品別のARR・売り上げを見ていくと、Sansanは祖業である名刺管理サービスが以前よりは安定成長に差し掛かっている中で、請求書受領管理サービスの「Bill One」が成長を支えている様子が伺えます。
一方、ラクスは、主力の経費精算システム「楽楽精算」が100億円の売り上げを超える中でも35%という高成長に加え、「楽楽明細」「楽楽販売」といったプロダクトも急速に伸びています。両社の成長率の違いは製品の成長フェーズの違いにあるとも言えます。
現時点では、ARRが同水準ですが、この成長トレンドが3年、5年と続いていくと長期的には大きな差が生まれそうなことが直感的にも分かると思います。
いちのせ:なるほど。企業データが使えるノートのSaaS企業のARRランキングでは、実額だけでなく「YonY+20%」と成長率を併記していますね。それは、成長スピードを掴むためだったんですね。
早船:YonYは「Year on Year」の略で、直近の四半期と、1年前の四半期を比べた成長率です。前年同期比とも言います。
特定のSaaSプロダクト、例えば、freeeは確定申告時期が終わると一時的に解約が増えるなど、季節要素が発生することもあるので、apple to appleで比較するため、YonYで成長率を捉えることが一般的です。
一般的に上場企業で「グロース企業」とみなされるには、最低でもYonY+20%以上の成長が求められ、YonY+30%を超えてくると通常のSaaS企業よりも高い評価が付き始めます。
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