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その賢さはどう使う
九月ももう終わろうとしている。
保育園での一年も半年が経ったわけだが、子どもたちの成長も目覚ましくて、みんなそれぞれ色んなことができるようになっている。
その中で私がとても嬉しかったことがある。
年長のとある子が、とても心優しくなっていたことだ。
彼は2歳児クラスで担任をしている時、それはそれは感情的で、おもちゃを取られたり思い通りにならないことがあると突発的に手や口が出ることが多い子だった。
そのために、園庭からお部屋に戻るのも少し遅らせてギリギリまで遊ばせたり、大人数で遊ぶときは少し気を紛らわせるために園内を散歩したりと別行動をしていることも度々。
私自身、なかなか話が通じずに疲れ切ってしまうこともあったが、でも彼も悪気があってやっているわけではない。
何故なら私もその気持ちがわかるから。
私は妹2人も含め、ADHDである。妹のほうは注意欠陥の方が強めなので凡ミスだったり不注意が多い。反して私は多動の傾向が強めなので、感情的になりやすい。おそらく彼と同じタイプなのである。
ただ、HSPなことも相まって保育園で友達に牙を剥くようなことこそなかったものの、内弁慶だった私は妹や母に対してはものすごく感情的だったし、学校生活の中でも本当に腹が立った時には我を忘れて首根っこを掴んで相手に詰めかけるようなことをしてしまったこともある。
大人になった今こそ、自分で自分のコントロールをだいぶできるようにはなったけれど、それでも人生は予期せぬことが起こったりするから抗えなかった気分の波に飲み込まれて当分戻ってこれなくなることもある。
つい最近もそんなことがあって、まだまだだなと自分のことを卑下しかけてしまった。でも我に返って「あんた頑張りすぎだよ」と休めるようにしたら、少しずつ調子も戻ってきた。
自分の心と話をすることは大切だ。
だからこそ、私は基本的に子どもたちに無理やり行動を矯正するようなことはしないように心がけている。
悲しい、悔しいの感情で他人を傷つけることはしてほしくないが、その分きちんと受け止めてその子の感情に勝手にセーブをかけないようにしている。
たまに「泣いたら弱虫なんだよ」「怒ったらダメなんだよ」と感情的になっている子を見て言ってしまう子がいるけれど、「それは違うよ」とも伝えている。
各家庭でおそらく普段言われているのかもしれないが、きちんと子どものうちに色んな感情に出会って、その度に大人がしっかり受け止めていればとても豊かな子になっていく。
実際に2歳の時に荒ぶっていたその子も、小さい子を見かけると心優しく接することもできるし、嫌なことがあっても話し合いで解決しようとする姿がとても増えた。
もちろん、日によっては爆発してしまうこともあるけれど、そんな時もきちんとまず受け止めるようにしている。いけないことは伝えるけれど、自分じゃどうしようもできないこともある。大人の私にだってそんな日はあるのだから。
私はそれよりも手がかからなかった子のほうが、今になってすごく手を焼いていることが多いなと感じている。
賢いがゆえに平気で人を傷つけたり、バレなければ約束を破ってもいい、ということを早くも6歳にしてやり始めてしまっている。
怖いのはそれを共有して結束までし始めてしまっている姿だ。
私自身、過去に同級生にいじめられたことがあるので、その辛さは知っている。けれど、私自身は好きなものがはっきりしていたから辛くてもそっちにのめり込むことでこの命は守り通すことができた。
好きなことがあることは無敵なのである。
そして、めちゃくちゃ熱中していることがある子に限って、グレーゾーンな節がある。
電車の駅名を全て覚えて路線図を書いてしまえる子、生き物の生態について図鑑並みに頭に入っている子、色んな特技を持った子がいるけれど、そんな子たちに限って友達と会話でトラブルになったり、支度で別のことに気を取られてものすごく時間がかかっていたりする。
だからこそ私は保育園にいるときに、そういった発達に少し難がありそうな子ほど、自分で最低限の生活や関わりができるように繰り返し関わるようにしている。
でも結局大切なのは、発達障害を持っていない子たちがそういったちょっと変わった行動をしている子に対してどんな関わり方をするのか、のほうだったりする。
どんな子も素敵な種を持っているからこそ、ずる賢い子にはなってほしくない。
せっかく育ち始めたその芽を潰さないことがすごく大切だ。
何かに秀でている子は人からの嫉妬でいじめられやすい傾向にある。でも長い目でみれば、そういった子が未来に何かを発明したり、革新的なことをして自分達の暮らしを豊かにするかもしれない。学生時代のしょうもない妬み嫉みをきっかけにいじめて才能の芽を潰してしまうのが一番恐ろしいことだと私は思う。
潰されそうだったら逃げてもいい。自分の芽を大切に育てられるならそうするべきだと思う。生きていたらいつだって巻き返しはきく。亡くなってしまったらそれは叶わない。命はもう元には戻らないのだから。
大人になっても思う。嘘をついたり、誠実でない身勝手な人はすぐにバレる。その時はうまくやり過ごせても、必ず後で結果となって自分に返ってくる。
だからこそ、私も自分自身が誠実に生きたいと思うし、子どもにその姿を持って伝えて行けたらいいなと思っている。
賢さは自分だけのためではなく、誰かのため、未来のために使いたいし、子どもたちにもそうであってほしいと思う。
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