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「虎に翼」を見て、法律や理論の言葉と時代の感情の関係について考えた

「虎に翼」第10週「女の知恵は鼻の先?」で印象に残ったのは、怒り心頭の寅子が深呼吸で落ち着きを取り戻し、憲法第11条から第14条を口にするところ。

じっくりと自分に言い聞かせるように第11条を口にする寅子。でも、だんだんと感情が高ぶってくる。

第14条の「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」にさしかかるころには、その口調やうるんだ目に新たな決意が感じられるようになるところが感動的。カットバックで以前の場面を挿入したりしないストレートな演出もいい。

20世紀最高のハムレット役者といわれた英国の俳優、ジョン・ギールグッドには、メニューを読み上げてレストランの客を泣かせたという伝説があるけど、その場に居合わせたお客さんの感動も、きっとこんな風だったんじゃないかと思わせる。

憲法や法律の条文、それに理論を語る言葉というのは、感情を排した客観的で厳密なもので、だからともすれば「無味乾燥」なもののように感じられることが多いけど、そこに語られる言葉を生み出しているのは、「この状況を何とか変えたい」とか、「こうならねばならない」といった熱い想いなのだということを教えてくれる。

クラスで「理論やコンセプトやフレームワークは、そこに語られていることの真意をしっかりと『感じる』必要がある」みたいなことを言うと、「えっ、何それ? 『感じる』ってどういうこと? ぜんぜん分からんぞ!」的な反応が返ってくることが多いけど、そういうときにすかさずこの場面を見てもらえば、こちらが言わんとすることをスンナリ理解してもらえそうな気がする。

もちろん、伊藤沙莉ばりの迫真の演技で理論やコンセプトやフレームワークを支える想いを語ったものは存在しない。だから、そうした考え方が生まれた時代の背景やその時代に特有の心のあり方をよくあらわしている映画や本や音楽の話をしながら、その背後にある想いを感じてもらおうとすることが多い。

というわけで、コーチングの基礎的な理論の話をしているときに、映画「卒業」やジミ・ヘンドリックス、それにジャニス・ジョプリンの話になった場合は、理論の背後にある時代の感情と、そこから生まれる熱い想いに一直線につながり合っていることを伝えようとしているのであって、けっして話が「脱線」しているのではない(という具合に言い訳をすればいいのか)。

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