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コーチング・1on1での共感のキモは、「共感なんて簡単にできるわけがないのだ」という心がまえである!?

コーチング研修などの場で、「共感なんてそう簡単にできるわけないんですよね」と言うと、「え、お前の立場でそんなこと言っていいの?」的な重苦しい空気が流れることがあります。

相手に共感することはぜったいにムリ、といってるわけではないし、「そうそう」「分かる、分かる」「だよね」とか言いながら話を聞けば共感できるわけじゃないことは明らかだから、何にビックリされるのかがよく分かりません。

そういうときに、「こういうわけだから」とうまく説明してくれる記事を見つけました。

さらに、そう簡単に共感ができない理由を考えていけば、コーチングに関連して寄せられることの多い質問に対してもバッチリな回答が得られることになる。一石二鳥です。

「コツコツ頑張る」の万華鏡

『努力を誰も認めてくれない』と感じる人の共通点は」と題されたそのコラムは、行動経済学の視点から努力のいろいろな側面を考えていこうという連載コラムの1つ。

ミもフタもない言葉でいえば、コラムの結論は、「これだけやれば努力と呼べるが、これに満たないものは努力ではない」という明確な基準はなく、「努力の基準は大いに主観的」だから、周囲の「努力」基準よりもユルい基準で自分自身の努力を評価している人は、「努力を誰も認めてくれない」と感じる可能性が高い、というもの。

この記事が面白いのは、そうした人による「努力」基準の違いを、筆者が大学生を対象に行った具体的なアンケート調査を例に説明しているところです。

アンケートで投げかける質問はこんな感じ。誰かが「資格試験の勉強をコツコツ頑張った」と言った場合、以下の勉強量のうち、「コツコツ頑張った」の意味として違和感のないものはどれか?

  • 3日間毎日勉強した

  • 1週間毎日勉強した

  • 2週間毎日勉強した

  • 1カ月間毎日勉強した

  • 1週間に1回勉強することを、半年間続けた

  • 1カ月に1回勉強することを、1年間続けた

「コツコツ」基準の違いはどこから生まれる?

結果をみると、さすがに「3日間毎日」はコツコツじゃないだろうとか、「1ヶ月間毎日」ならコツコツだよねみたいなところでは多くの人の意見が一致している。

ところが、「2週間毎日」と「週1で半年」については、60%の人がコツコツ側で考えるのに対し、40%の人はそうではないと考えている。

(個人的には「そんなものは断じてコツコツではない」と思うけど)

さらに面白いのは、回答者の6割は「週1で半年」派だけど、「月1で1年」をコツコツと見なす人の割合は4割になっていること。

(個人的には月1 x 1年がコツコツなわけがない)

そういうわけで、「『コツコツした努力』はこなした回数ではなく、『ある程度短い期間に高い頻度で行うこと』が必要」だということになる。が、「ある程度の短い期間」がどれくらいなのか、どれくらいの頻度が「高い頻度」なのかについては明確な基準がないから、人によるバラつきが生まれてくる。

では、バラつきを生む要因にはどのようなものがあるのか?

それを調べるために、「コツコツ」基準アンケートの結果と、回答した学生の成績を突き合わせると、「真面目な学生ほど、「コツコツした努力」の基準が厳しい」一方で、「3日間毎日」もコツコツにカウントする学生は、「自分が努力する際にもどこか甘くなってしまっている」かもしれないとのこと。

だから、「自分自身が何を『努力』とみなしているかを見つめ直してみる」ことが大事。そして、自分と周囲との間に「コツコツ」基準のズレがあることに気づけたら、「『努力』を続けるコツ、そして周りとうまく付き合うコツ」を見つけることができるかもしれない。

このコラムにはそんなことが語られています。

何が共感をさまたげるのか?

で、この話、コーチング1on1における共感と深くかかわり合っています。

目の前の相手が語る「コツコツ頑張った」という言葉を聞いて、「ああ、コツコツ頑張ったんだなぁ」と想像し、「共感」する。そのとき、自分が感じている「コツコツ」と相手の念頭にある「コツコツ」にズレがあれば、そこに生まれているのは、「勝手に共感できていると思っている感覚」であって、真の共感ではないはず。

そう考えれば、「コツコツ」にかぎらず、相手が語るすべての言葉の背後にある感情や感覚は、その言葉を聞いて想像している自分自身の感情や感覚とはまったく別物である可能性がある。

だから、相手の話を聞いて、「共感できていると思っている感覚」ではなく、真に共感するためには、相手と自分の感覚との間にズレがないことを細かく確認していく必要がある。とはいえ、なにしろ主観的な感覚の話なので、「しっかりピッタリ重なり合っている」ことを確かめるのは、そう簡単なことじゃないはず。

そういうわけで、「共感なんてそう簡単にできるわけないんですよね」という話になるわけです。そして、「共感なんて簡単にできるわけないのだ」という心がまえのもと、しっかりと相手と自分の感覚の間にズレがないことを確かめていくことによって、真の共感が実現するはずです。

コーチングや1on1における共感の問題をこんな視点から考えていくことで、関連して寄せられ得ることの多い質問に対してもしっかりした答えを出すことができます。

その質問(悩み?)は、「傾聴を心がけてはいるんですが、何を質問すればいいのか分からないんですよね」というもの。

ここまでの話から明らかなように、「真の共感を実現すべく、相手と自分の感覚にズレがないことをい確かめながら傾聴する」ということは、相手が語るさまざまな言葉に対して、自分が理解している意味合いで語られているのかどうかをしっかり確認する作業、つまり質問することが不可欠なんですね。

そういうわけで、(自分の努力が認められないと思いがちな人と同様に)コーチングや1on1での共感を実現しようと思う人も、「話を聞きながら自分自身が何に共感しているとみなしているかを見つめ直す」ことが大切で、相手と自分が感じていることの間にズレ(の可能性)があることに気づけたら、さまざまな質問を投げかけ、そのズレをなくしていくことが大事なのだと思います。

#日経COMEMO #NIKKEI

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