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誰も、部外者になれない

レッドクローバー』は、勧善懲悪にスカッとする物語ではない。

そこに描かれた「怒り」が、少しでも解るからこそ、苦しい。もどかしい。やるせない。

それでも、ページを捲る手を止められない。そういう小説だ。

地方集落、家庭問題、格差、社会的なテーマもふんだんに盛り込みながら、エンタメ的な展開も保証しつつ、人間のどうしようもない感情をまざまざと描く。その絶妙なバランスに、夢中にさせられる。

この小説に登場する誰ひとり、「部外者」ではない。
主人公格である記者・勝木も、外側からの観測者ではなく、痛みを抱えた一人の人間として描かれている。

そして、読み手である私たちも、決して、「部外者」にはなれない。させてもらえない。

「怒っている」=「困っている」
水島広子『大人のための「困った感情」のトリセツ』1章 怒り(いか・り)

『レッドクローバー』に出てくる、「怒り」を抱えた人々は、それぞれが困った状況に置かれていた。

そして、「閉塞感」という言葉が頻出する今の日本社会で、困っていない人の方が少ないだろう。

あなたが今、何かに困っているなら、誰かに怒っているなら。きっと、『レッドクローバー』のなかに、思い当たる感情が、共鳴できる「怒り」がある。

あなたも、『レッドクローバー』に巻き込まれる。

#読書の秋2022  #レッドクローバー