赤瀬川原平 『1985-1990赤瀬川原平のまなざしから』/目は旅をする086(幸福)
赤瀬川原平 『1985-1990赤瀬川原平のまなざしから』(りぼん舎)刊
コンテンポラリーにおけるアート思考は、アートの価値生成にまつわる要点だが、これは反芸術や非芸術による切断体験や、変成のプロセスが必須である。それは暴力的な「破壊」の場合もあれば、そうでない「脱構築(デコンストラクション)」の場合もあって、しかしいずれにせよ「破壊的創造(ディスラブション)であることには変わりない。
この「やり口」はマルセル・デュシャンの「レディメイド」という既製品をアートの言語に転用する、もっと言えば、非美学的な言語を使ってアートをリコンストラクションしてみせる約100年にわたる変成史を形成してきた。
デュシャン一人の手柄というより、彼のディスラブショナルなアート思考が、伝染し、集合知化されてコンテンポラリーアートが形成されたと言ってもよい。
その中には、ジョーンズ、ナウマン、バルデッサリからブロータースなどの変成体の強者がおり、そして日本のダダオルガナイザーズやハイレッドセンターの首謀者であった赤瀬川原平もそこに連なっているのだ。
2023年末に、台北ビエンナーレに行った。テーマは「THE SMALL WORLD」であり、それは台湾が中国に対する自閉的・自虐的なアイロニーではなく。コロナウィルスの変成モデルを逆手にとって強権主義的な政治体制、管理社会、既成概念へのプロテストを模索するキュレーションであり、地味ながら意義深いものだった。
台湾の三人からなるキュレーターチームのアナーキーな戦略だったが(2024年の横浜トリエンナーレもまたアナーキーな戦略だった)、その中に、「意外」というか赤瀬川原平のトマソンの写真が、グリッド状に並べられていて会場で意表をつかれた。
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目は旅をする・後藤繁雄による写真集セレクション
ヴィジュアルの旅は、大きな快楽を、与えてくれるし、時には長編小説以上に、人生についてのヒントを与えてくれます。 このマガジン「目は旅をす…
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