日本の美術をアップデートするということ Ⅰ 奈良と保田與重郎/一日一微発見359
昨年の暮れに、毎年恒例の奈良に行き大神神社の神山を遥拝した。
そのあと、ふと思いたって、隣町の桜井にある保田與重郎邸へ行くことにした(JRの天理線は一時間に一本しか走っていないので、中途あきらめようとしたら目の前に偶然タクシーがあらわれてくれたのだ)。
保田の本は『日本の橋』は愛読していたが、彼の全てを読んでいないし、心酔しているわけではない。しかし、それでも戦中まであった「日本」というもの、日本の美学がどのようなものであったかを知る上で、彼の本は、それこそかけ「橋」のようなものだと思って特別に思ってきた。
彼の単行本『日本の橋』に収録されていた「誰が袖屏風」や「私室の美術」というエッセイは、西洋美術に洗脳された者にとって穴をあけるようなものだった。
僕が聞き書き集『独特老人』をつくりたいと思った動機の一つは、戦前・戦中の想像力が、自分たちの世代にとっては、最も高い神話やSFの世界に思えたから、それをリサーチし、接続が不可欠だと思ったのである。
ロックやポップアートより、自国の文化の方がずっと遠い時代に生まれたのだ。
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