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抽象画の強度・衰弱・再生をめぐって。アカデミアのデ・クーニング/一日一微発見454
ヴェネツィア・ビエンナーレのタイミングでいくつかの美術館は力を入れた企画を行う。なかでもアカデミア美術館のデ•クーニング「L‘ITALIA」展は、実に素晴らしく、素晴らしいが故に考えさせられる展覧会だった。
デ•クーニングは1904年にオランダのロッテルダムに生まれ、1997年に93才の長い人生をおえた。言うまでもなく抽象表現主義の巨人である。
彼は22才の時にアメリカに密航した。オランダ時代から装飾や塗装職人をしていたので、アメリカでも職をえて、生活は楽ではなかったがアシル・ゴーキーなど友人ができたことで、ペインティングへの道を進んでいくことになる。
やがて彼は、ポロック、ロスコ、ニューマンら抽象表現主義のアーティストと並ぶ最も重要な存在に成長していく。
アブストラクト・ペインティングと言うと、まずは、カンディンスキーやクレーなどバウハウス系のアーティストが浮かぶだろう。乱暴に言えば、彼らはみな「宇宙言語」「造形言語」としてアブストラクトを追求した。
その一方で、アメリカのニューヨーク派においては、異なる原理でアブストラクションが生成される。これも乱暴に整理すれば、現代文明の坩堝としての都市が持つ速度やリズム、ノイズ、距離、逸脱としての崇高や瞑想への衝動によって生成された。
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