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新年、ジョン・バージャーの『画家たちの「肖像」』を読むことから始める/一日一微発見488

アートのことを文字にすることはたやすくはない。作家や作品について書くことは、「それ」について書いていながら、同時に、「それ」を感じたり考えたりしている自分のことも書こうとするからだ。
この本にも「二重肖像」というコトバが出てくるが、まさしく重なり合い、まじりあってしまうのである。

ジョン・バージャーは、歴史を客観的なものだと信じている史学の研究者ではないから、彼の書く美術論はアカデミズムからは逸脱している。いや逸脱する美術論以外に意味などないと僕は思っていので、僕はバージャーの文章に魅かれるのである。

「古代ー近代」「近代ー現代」の2冊あわせると800ページちかい大冊だが70本以上の短文で構成されていて副題に「ジョン・バージャーの美術史」とある。

しかし、この本は「美術史」と題されるような本ではまるでないと僕は思う。このサブタイトルにはよい意味ではなく、違和感をもつ。これは「美術史」の本などではない。

ただゆずって書くと、バージャーはマルキストであったから、人間自体を、そして自分をも史的唯物論の産物だと深く考えている人だから、バージャーの「二重肖像」の産物もまた、美術史なのだと強弁しようと思えばできるだろうが。

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