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サントリー美術館「歌枕」展で「武蔵野図屏風」・秘密の歓び/一日一微発見326

僕の頭の中に、ずっと巣食っているヤツがいる。それはどんなに忙しくて仕事をし続けていても消えることがないのである。

不治のウイルスのようなものだ。
それを僕は「反時代精神」と密かに呼んでいるものがそれである。けして、ニーチェからの伝染ではない。
もっと単純に、「この時代に生きていながら同時に生きていない」そんな存在のあり方、生き方についてである。

テクノロジーが進化してAIの時代になろうが、全体主義の暴君が全てを支配しようが、「ここにいて、そしていない」という状態こそが僕の求めているモノだ、というオブセッションなのである。
誰かが、第二次世界大戦の時に自分は、江戸に亡命していた、と書いていたが、それに近い。

だから革新的な思想であれ、イノベーションや批評も、実はすでにあるものを、とやかく書きたてているだけで、全く意味などないんではないかと本音では思っているのかもしれない。
そう言っちゃあ、身も蓋もないが。

ずいぶん前だけれど進化論者のスティーブン・J・グールドにインタビューできる機会が『花椿』誌であり、インタビューの終わりで僕が

「人類は今、進化のどのへんにいると考えていらっしゃいますか? 僕は下に降りるエレベーターの中で天上のことを考えているように思うのですが」

とシニカルに聞こえるようなこと言ったら、やはり彼は科学者だけあって、「いや私はそうは思わないね」ときっぱり返されたことを思い出す。
グールドには苦笑いされたが、やっぱりその思いは拭えない。

なぜこんな話から書き出したかというと、真夏の東京で、行こうとした展覧会があって目の前まで行ったのだが、実はその日は臨時休館で、ならば「そうだサントリー美術館がある」と思い出し気を取り直して「歌枕 あなたの知らない心の風景」展へ行ったのであった。

なんだか、話しがまどろっこしくて申し訳ないが、日本の古美術の展覧会に行くことは、僕にとって、「反時代精神」をチャージするための装置のようなものである。

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