マガジンのカバー画像

目は旅をする・後藤繁雄による写真集セレクション

ヴィジュアルの旅は、大きな快楽を、与えてくれるし、時には長編小説以上に、人生についてのヒントを与えてくれます。 このマガジン「目は旅をする」は、長く写真家たちと仕事をして、写真…
後藤繁雄おすすめの写真集についての記事を月に2~3本ずつ投稿します。アーカイブも閲覧できるようにな…
¥300 / 月
運営しているクリエイター

#アート写真

アレック・ソス『Gathered Leaves Annotated』/目は旅をする054(地図のない旅/行先のない旅)

アレック・ソス『Gathered Leaves Annotated』 MACK刊 アレック・ソスは、極めて今日的であり、かつ特異な写真家だと思う。 彼の写真には、「風景」や「人」といった抽象的なものはない。「風景」や「人」というコトバで括れない具体的なもので出来ている。結論めいたものもない。朝起きると太陽が昇り一日が始まることが繰り返されるように、終わりもない。 『Gathered Leaves Annotated』と題されたザラ紙に印刷された720ページにもおよぶ「写真

イネス・ファン・ラムスウィールド&ヴィノード・マタディン 『 Pretty Much Everything』/目は旅をする053(写真の未来形)

イネス・ファン・ラムスウィールド&ヴィノード・マタディンInez van Lamsweerde/Vinoodh Matadin 『 Pretty Much Everything』 (Taschen刊) ファッションフォトは、単純には商品としての服を売るためのものである。 しかし、早くからその洋服に、資本主義的な価値生成を増幅させるための重要な共犯者であった。 ファッションの特異なところは、デザイナーによる「作品」でありながら、「流行」という常に変化し続けるトレンドを持って

タイヨー &ニコ Taiyo Onorato & Nico Kreb『Future Memories』 /目は旅をする049(地図のない旅/行先のない旅)

タイヨー &ニコTaiyo Onorato & Nico Kreb『Future Memories』 (EDITION PATRICK FREY刊) タイヨー&ニコはスイス出身のアーティストデュオで、この15年近く、「実験的」な写真に取り組み続けてきた。 この最新写真集は、同じくスイスの出版社であるパトリック・フューレ一と彼らが組んでスタートさせた「未来FUTURE」新プロジェクトで、今後5、6冊が継続的にシリーズで出る予定だと出版社のプレスは告げている。 それも、計画的に

PHOTO | BRUT: Collection Bruno Decharme & Compagnie/目は旅をする048(人間の秘密)

PHOTO | BRUT: Collection Bruno Decharme & Compagnie (Flamarion刊) 日本では、無前提的に「アウトサイダーアート」と言うが、はたしてそれでよいのだろうか?  かつて画家のジャン・デュビュッフェが提唱したように「アール・ブリュット」と言うことから再検証すべきだろう。 彼はアートに対して非アートをぶつけることをねらって、コレクションをしたから、必ずしも「ボーダー」を取り外すことを狙ったわけではなかったろう。 しかし、彼