マガジンのカバー画像

目は旅をする・後藤繁雄による写真集セレクション

ヴィジュアルの旅は、大きな快楽を、与えてくれるし、時には長編小説以上に、人生についてのヒントを与えてくれます。 このマガジン「目は旅をする」は、長く写真家たちと仕事をして、写真…
後藤繁雄おすすめの写真集についての記事を月に2~3本ずつ投稿します。アーカイブも閲覧できるようにな…
¥300 / 月
運営しているクリエイター

#現代アート写真

赤瀬川原平 『1985-1990赤瀬川原平のまなざしから』/目は旅をする086(幸福)

赤瀬川原平 『1985-1990赤瀬川原平のまなざしから』(りぼん舎)刊 コンテンポラリーにおけるアート思考は、アートの価値生成にまつわる要点だが、これは反芸術や非芸術による切断体験や、変成のプロセスが必須である。それは暴力的な「破壊」の場合もあれば、そうでない「脱構築(デコンストラクション)」の場合もあって、しかしいずれにせよ「破壊的創造(ディスラブション)であることには変わりない。 この「やり口」はマルセル・デュシャンの「レディメイド」という既製品をアートの言語に転用

佐藤ヒデキ『OSAKA 大阪残景』/目は旅をする085(都市と写真)

佐藤ヒデキ『OSAKA 大阪残景』 (アートビートパブリッシャーズ刊行) この写真集『OSAKA 大阪残景』は、1989年から90年代初めにかけて写真家・佐藤ヒデキ(1953年生まれ)が撮影した大阪の環状線の内側の街の風景をフィルムで撮影した195点の写真から51点をセレクトし構成した。 企画・編集・発行はワタクシ後藤繁雄(1954年生まれ)が行った。写真は「アカ」「アオ」「キイロ」の3冊に分冊され、収録された写真は3冊全て違う。「信号機の3つの色」に分けた意図は、別に無

ブラッサイ『PARIS DE NUIT 夜のパリ 』/目は旅をする060(都市と写真)

ブラッサイ『PARIS DE NUIT 夜のパリ 』 (みすず書房刊) コロナ期の間に、ウイルスのおかげで世界は随分変わった。アメリカは分断され、ロシアや中国のような、20世紀であればコミュニズムであった国家が露骨に全体主義になり侵略戦争を引き起こし、ついには核戦争に突入しようとしている。 一方では、AIの進化は人間の予想以上に早く、ますます人間の奴隷化、無力化は加速化して行くだろう。 何がこのような「ニューダークエイジ」「ディストピア」への道を牽引しているのだろうか?

フィオナ・タン『Vox Populi Switzerland』/目は旅をする056(人間の秘密)

フィオナ・タン『Vox Populi Switzerland』(Aargauer Kunsthaus刊) スイスには僕のお気に入りの現代美術館がいくつかあって、そのうちの一つが、アーラウにあるAargauer Kunsthausアールガウアー美術館である。 この美術館はスイスの現代アーティストの膨大なコレクションで知られるが、2003年に建築家ヘルツォーク &ド・ムーロンが見事なリノベーションをはたして、小ぶりながら実に先見性のある施設とプログラムを提出してくれるのだ。

タイヨー &ニコ Taiyo Onorato & Nico Kreb『Future Memories』 /目は旅をする049(地図のない旅/行先のない旅)

タイヨー &ニコTaiyo Onorato & Nico Kreb『Future Memories』 (EDITION PATRICK FREY刊) タイヨー&ニコはスイス出身のアーティストデュオで、この15年近く、「実験的」な写真に取り組み続けてきた。 この最新写真集は、同じくスイスの出版社であるパトリック・フューレ一と彼らが組んでスタートさせた「未来FUTURE」新プロジェクトで、今後5、6冊が継続的にシリーズで出る予定だと出版社のプレスは告げている。 それも、計画的に