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目は旅をする・後藤繁雄による写真集セレクション

ヴィジュアルの旅は、大きな快楽を、与えてくれるし、時には長編小説以上に、人生についてのヒントを与えてくれます。 このマガジン「目は旅をする」は、長く写真家たちと仕事をして、写真…
後藤繁雄おすすめの写真集についての記事を月に2~3本ずつ投稿します。アーカイブも閲覧できるようにな…
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#アート

リチャード・アヴェドン『Richard Avedon: Avedon 100』/目は旅をする068(人間の秘密)

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岡田佑里奈『HEAVENLY FLOWERS』/目は旅をする063(私と他者)

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タイラー・ミッチェル『I Can Make You Feel Good』/目は旅をする061(写真の未来形)

タイラー・ミッチェル『I Can Make You Feel Good』(Prestel刊) 新しい写真の時代は、新しい才能(ユース)が作る。これは残酷なまでに、真実だ。 またもう一つの真実は、残酷なまでに、時代がその才能の出現を選ぶということだ。写真家や写真が生き残れるかは、ますます苛烈な闘いになるだろう。 コロナウィルスが全地球をマヒに陥れたり、ロシアのプーチンが過去のロシアの栄光という妄想にとらわれウクライナ侵略戦争を始めたり、それらカタストロフは可能性として議論

ブラッサイ『PARIS DE NUIT 夜のパリ 』/目は旅をする060(都市と写真)

ブラッサイ『PARIS DE NUIT 夜のパリ 』 (みすず書房刊) コロナ期の間に、ウイルスのおかげで世界は随分変わった。アメリカは分断され、ロシアや中国のような、20世紀であればコミュニズムであった国家が露骨に全体主義になり侵略戦争を引き起こし、ついには核戦争に突入しようとしている。 一方では、AIの進化は人間の予想以上に早く、ますます人間の奴隷化、無力化は加速化して行くだろう。 何がこのような「ニューダークエイジ」「ディストピア」への道を牽引しているのだろうか?

カッセルでルアンルパの「戦略」について考える/一日一微発見338

今、このテキストをドクメンタ15が開催されているカッセルで書いている。 時は昼メシどきで、僕(と妻の渚)は、カッセル駅前からすぐのトルコ料理屋で、うまくてリーズナブルなケバブをくった後、すぐ隣にあるドクメンタのサテライト会場にもなっているバーとクラブが合体した店で、昼から一杯やっているのである。 今日は昨日までの寒さはやわらいで、晴天が広がっていて、ピースフルな雰囲気に街が包まれている。 今日はカッセル3日目(初日は深夜に着いたので、何もしていない)で、朝にカッセル駅にジ

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フィオナ・タン『Vox Populi Switzerland』/目は旅をする056(人間の秘密)

フィオナ・タン『Vox Populi Switzerland』(Aargauer Kunsthaus刊) スイスには僕のお気に入りの現代美術館がいくつかあって、そのうちの一つが、アーラウにあるAargauer Kunsthausアールガウアー美術館である。 この美術館はスイスの現代アーティストの膨大なコレクションで知られるが、2003年に建築家ヘルツォーク &ド・ムーロンが見事なリノベーションをはたして、小ぶりながら実に先見性のある施設とプログラムを提出してくれるのだ。

アレック・ソス『Gathered Leaves Annotated』/目は旅をする054(地図のない旅/行先のない旅)

アレック・ソス『Gathered Leaves Annotated』 MACK刊 アレック・ソスは、極めて今日的であり、かつ特異な写真家だと思う。 彼の写真には、「風景」や「人」といった抽象的なものはない。「風景」や「人」というコトバで括れない具体的なもので出来ている。結論めいたものもない。朝起きると太陽が昇り一日が始まることが繰り返されるように、終わりもない。 『Gathered Leaves Annotated』と題されたザラ紙に印刷された720ページにもおよぶ「写真

イネス・ファン・ラムスウィールド&ヴィノード・マタディン 『 Pretty Much Everything』/目は旅をする053(写真の未来形)

イネス・ファン・ラムスウィールド&ヴィノード・マタディンInez van Lamsweerde/Vinoodh Matadin 『 Pretty Much Everything』 (Taschen刊) ファッションフォトは、単純には商品としての服を売るためのものである。 しかし、早くからその洋服に、資本主義的な価値生成を増幅させるための重要な共犯者であった。 ファッションの特異なところは、デザイナーによる「作品」でありながら、「流行」という常に変化し続けるトレンドを持って

マン・レイ『MAN RAY PHOTOGRAPH』/目は旅をする052(写真の未来形)

マン・レイ『MAN RAY PHOTOGRAPH』 (Schirmer / Mosel, Munchen刊) マン・レイは1890年にニューヨークで生まれ、1976年にパリで死んだ。 86歳に亡くなる直前まで精力的に制作を行なっていたし、絵画(彼は一貫してペインターを目指していた)、オブジェ、写真、映画などその表現手法も多岐にわたる。 ポートレートやファッション写真も素晴らしい仕事が数多いが、50才代で商業写真はきっぱりとやめてしまった。だから、普通の意味で彼を「写真家」と

ヴィヴィアン・サッセン『Venus & Mercury 』/目は旅をする051(天国と地獄)

ヴィヴィアン・サッセン『Venus & Mercury 』 (Aperture刊) アムステルダムを活動拠点とするヴィヴィアン・サッセンと知り合って、この10年の間に、東京のG/Pgalleryでの2度の個展、そして2冊の写真集をG/P+abpから出版してきた。 1冊めの『LEXICON』は、2014年のヴェニス・ビエンナーレにヴィヴィアンが出たときに出版したもので、収録された31点の写真は、ビエンナーレのディレクターのマッシミリアーノ・ジオーニと共同で選んだものだった。

スティーブン・ギル 『COMING UP FOR AIR: STEPHEN GILL – A RETROSPECTIVE』/目は旅をする050(写真の未来形)

スティーブン・ギル 『COMING UP FOR AIR: STEPHEN GILL – A RETROSPECTIVE』 (Nobody刊) 2021年秋にスティーブン・ギルは、30年以上に渡る活動を集約した大規模な「回顧展」をアルノルフィニで開催した。 この本は、そのタイミングで発行され、ギルが今までに発表してきた写真集を、ほぼ年代順に収録し直した600ページをこす大著である。 僕が彼の写真集『Buried』をフォトグラファーズギャラリーの売店で見たのが(それは土だら

タイヨー &ニコ Taiyo Onorato & Nico Kreb『Future Memories』 /目は旅をする049(地図のない旅/行先のない旅)

タイヨー &ニコTaiyo Onorato & Nico Kreb『Future Memories』 (EDITION PATRICK FREY刊) タイヨー&ニコはスイス出身のアーティストデュオで、この15年近く、「実験的」な写真に取り組み続けてきた。 この最新写真集は、同じくスイスの出版社であるパトリック・フューレ一と彼らが組んでスタートさせた「未来FUTURE」新プロジェクトで、今後5、6冊が継続的にシリーズで出る予定だと出版社のプレスは告げている。 それも、計画的に

ディアナ・ローソン『DEANA LAWSON by Deana Lawson』/目は旅をする047(人間の秘密)

ディアナ・ローソン『DEANA LAWSON by Deana Lawson』(MACK刊) はっきりと言おう。僕らはかつてない大きな時代の変化の時にいるのだと。今まで習得してきた知識はもう役に立たなくなるだろう。 偶然か必然か、2020年代の初頭に世界中がコロナ禍に襲われ、トランプとバイデンの世界を失望させる泥試合の大統領選があり、中国やロシアは領土拡張や覇権の野暮をむき出しにし、SNSのプラットフォーマーたちはメタバースやMRのイニシアティブを競いあう。世界な富はます

杉本博司『アートの起源』/目は旅をする046(写真の未来形)

この本は、2010年11月から1年間を通じて、丸亀の猪熊源一郎美術館で行われた展覧会に合わせて作られた。「科学」「建築」「歴史」「宗教」の4つのテーマによる展覧会プロジェクトであり、『アートの起源』は、そのことについて杉本博司が自らが筆をとり書いたものだ(中沢新一との対談も示唆に富む)。

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