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目は旅をする・後藤繁雄による写真集セレクション

ヴィジュアルの旅は、大きな快楽を、与えてくれるし、時には長編小説以上に、人生についてのヒントを与えてくれます。 このマガジン「目は旅をする」は、長く写真家たちと仕事をして、写真…
後藤繁雄おすすめの写真集についての記事を月に2~3本ずつ投稿します。アーカイブも閲覧できるようにな…
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2020年9月の記事一覧

Christer Stromholm 『In Memory of Himself』/目は旅をする015(もうひとつの人生)

Christer Stromholm 『In Memory of Himself』 Steidel Publishing 刊 その出会いは、今でも、とても運命的に思える。 偶然とは時に、重要な恩寵となる。 2006年の11月中旬のことだ。パリへ行った。 それは、その年に10年目をむかえる、写真のアートフェア「ParisPHOTO月間」を見るためだった。 2003年ごろから、僕は世界中のアートフェアをまわりだした。 アートバーゼルやアーモリーショー、グローバル経済の加

アリソン・M.ジンジャラス『ギイ・ブルダン』/目は旅をする014(ファッション)

アリソン・M.ジンジャラス『ギイ・ブルダン』 ファイドン刊 ギイ・ブルダンは1991年に故郷のパリで、ガンのために亡くなった。 まだ62歳だった。ライバルのヘルムート・ニュートンが21世紀まで生きて、80歳で駐車場での事故で昇天したことを思えば、なんと静かな死か。 ギイの写真を初めて見たのは、70年代のことで、彼がシャルル・ジョルダンの広告で一世風靡していたころだ。靴を履いたマネキンの切り取られた足だけが歩いていたり、倒れた裸の女の傍に靴が揃えられていたり、それらを一言

アンドレイ・タルコフスキー『Bright,bright day』/目は旅をする013(記憶の遠近)

アンドレイ・タルコフスキー『Bright,bright day』 white space gallery/Tarkovsky Foundation タルコフスキーは、ロシアの映画監督だが、彼は素晴らしいポラロイド写真を残した。それは、彼の映像の力の秘密を解く鍵でもあると僕は思っている。 僕は彼が撮影したポラロイドの写真集を2つ持っているが、今回は、敬愛する写真家であり、友人でもあるスティーブン・ギルが編集したタルコフスキーの写真集をとりあげる。 話は頭から逸れるかもしれ