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Christer Stromholm 『In Memory of Himself』/目は旅をする015(もうひとつの人生)
Christer Stromholm 『In Memory of Himself』
Steidel Publishing 刊
その出会いは、今でも、とても運命的に思える。
偶然とは時に、重要な恩寵となる。
2006年の11月中旬のことだ。パリへ行った。
それは、その年に10年目をむかえる、写真のアートフェア「ParisPHOTO月間」を見るためだった。
2003年ごろから、僕は世界中のアートフェアをまわりだした。
アートバーゼルやアーモリーショー、グローバル経済の加速で、世界の様々な都市でアートフェアが雨後の竹の子のように出現しだした頃だ。
でも、名高い「ParisPHOTO」は、初めての体験だった。
当時の会場は、グランパレではなく、ルーブルの地下、カルーセルドルーブルCarrousel du Louvreだった(88のギャラリーと18の出版社。今おもえば、古き良き時代だ)。
狭い地下空間にブースがひしめき、そこでアジェやブラッサイなどのヴィンテージプリントから、コンテンポラリーフォトまで、充実したブースをめぐるのは「写真という密かな愉しみ」を体験させてくれた。
しかし、その時にとりわけ収穫だったのは、フランスの写真ではなく、それまで全く未知だった、ノルディック北欧の写真家との遭遇だったのだ(その年は、ノルディックフォトの特集年だった)。
クリステル・ストロムホルム
アンドレアス・ピーターソン
ヨハン・エグストローム
とりわけクリステル・ストロムホルムの写真集『Poste Restante』(Before the Photographsを意味する)には衝撃を受けた。
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目は旅をする・後藤繁雄による写真集セレクション
ヴィジュアルの旅は、大きな快楽を、与えてくれるし、時には長編小説以上に、人生についてのヒントを与えてくれます。 このマガジン「目は旅をす…
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