十二月(エッセイ) #シロクマ文芸部
十二月になった。だからといって例年ならばどうってこともないのだけど、ことしはいつもとすこしちがう。「十二月までながいなあ…」と待ち焦がれすぎて八月と十月に一度ずつしにかけた。というのは嘘で、でも楽しみだったのは本当。
そしてついにきのう(ここまでは12月2日に書いた)十二月がやってきたのだけど、なにがあったのかというと、ライブに行った。
………それだけ。
それだけではあるけど、チケットをとったのは五月だったので七ヶ月(?)待っていたことになる。
『よくこどもは時間の経過がおそく感じるというけれど、それはたのしみなことが多いからである』という説を唱えている何かを読んだことがあったけど、要するにひとはたのしみなことがあると時の経過をのろまに感じるが、たのしみのすくない大人なんかは一年がすばやく過ぎ去るように感じてしまうということらしかった。
『もしもそれがいやだというおとながいるのなら、そういうおとなは無理矢理にでもなんとかたのしみをつくって「まだかまだか」とその日がくるのを首を長くして待ってみたらよい』というようなことが書いてあった気がするが、それに当てはまるかはさておき、七ヶ月待っていたライブはさいこうだった( ♥︎ᴗ♥︎ )*・゜゚・*:.。..。.:*⭐︎
でもめんどうなこともあった。
まず、新橋駅で妹たちと待ち合わせをしていたのだけど、当初の予定では17:02発のゆりかもめに乗って会場にむかうことになっており、それに合わせて問題なく中間子と私は合流できた。ところが、遅刻魔の末っ子がいつものごとく遅刻した。
「太った?」
待ち合わせ場所にあわててやってきた末っ子に対する中間子の第一声はそれであり、「今日の服おかしいよ」とも言ったので、末っ子が毎度くりかえしている遅刻をおこっているのはあきらかだった。それに対して末っ子(遅刻魔)は、
「遅くなってごめんね」
とすなおに謝罪の言葉をくちにすればよかったのかもしれない。けれど、「そっちは顔がおかしいよ」となぜか語気を強めて言い返した。
そんなわけで、会場にむかうゆりかもめのなかは暗かった。だれも口をきかないし、でも口を開いたところで罵り合いになることは目に見えている、というような不穏な空気が流れつづけて、「仲裁したほうがいいのかな?」といちおう年長者のわたしは考えた。
でも疑問が浮かぶ。はたして妹たちはわたしのことを姉だと認めているのか? という疑問。
生物学的には姉で間違いないと思う。たぶん。でもふだん姉らしく何かをしてあげているわけでもないのに、こんな時だけ姉ぶってなにかを言ったところで火に油をそそぐだけかもしれない。
とは思ったが、それでもひとまず「なかなおりしたら?」とぼそぼそつぶやいてみると、「前髪ふざけてる?」と中間子にぴしゃりと言い返された。
これは数日前に切りすぎた前髪について言及されたのだけど、これでわたしは心折れ、そのあとはずっとだんまりをつづけて濡れ場だらけで辟易としはじめた(たぶん人妻に並々ならぬ幻想を抱いているだろう著者へのわるぐちになってしまうかもしれないことを恐れずに言うと、それってどういう状況なんだよっ?と何度も笑った)とある小説を読んでその場をやり過ごすこととなった。
それから、チケットが一枚あまっていた。いっしょに行くはずだった中間子の彼氏が急きょ来られなくなった(インフルエンザ)ということで、Twitter(現X)でチケットを探し求めていた人に一枚ゆずるというミッション(人見知りにとってはイーサン・ハントの任務くらいインポッシブル)があり、しかも待ち合わせ時間に遅れていることもあって会場までの足取りはどんどん重くなっていく。けれど、いざ会場についてその人に会うと、
「ありがとうっっっ!!!」
と待ち合わせに遅れたにもかかわらず、満面の笑みでチケットを受け取ってくれたのでほっとした。
それから、「ほんのお礼です」とたぴおかを買って待っていてくれた。
それからチケットは連番で取っていたので開演中はとなりの席にいたのだけれど、とある曲でその人がなみだをながしているのを見て、「この人にチケットをゆずってよかったなあ」とこの日唯一あたたかい気持ちになれた。
それにわたしとしても七ヶ月待ち焦がれていたライブは感動もひとしおであり、妹たちのもめごとなんて短い睡眠時間をなぜか自慢げに語る上司くらいどうでもいいことのように思えた。
「あと三曲くらいかな?」
とたのしい時間があっというまにすぎてゆくことだけが気がかりであり、ゆりかもめに乗っていた不穏な30分よりもはるかいっしゅんにして終わってしまうことがさみしかった。
要するにこの気持ちは、十二月がくるとなぜかさみしいと感じることと同じかもしれません、というよくわからないオチでとつぜんおわる…。
読んでいただきありがとうございました。
たのしい十二月になりますように♪
(了)
参加させていただきます( › ·̮ ‹ )⭐︎
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